【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その①〜初めての発情期編〜

26.ウラーさんのお人柄

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「おかげでクッソ寝不足なんです。ハルオミ殿とフレイヤ様の愛の巣には乗り上げませんので、少しそちらの椅子に腰掛けて惰眠を貪ってもよろしいですか?」

「ベッドでも全然いいのに。ま、どこでも好きに使ってよ!  出来上がったら呼ぶからさ」

ウラーさんは「恐縮です」と言って服を着直しながら窓の近くのテーブルについた。

ウラーさんにお茶を出して、引き続きあんこ係のパネースさんときなこ係のイザベラへの指導に取り掛かる。小豆は煮汁が減ってとろみが出てきたので、柔らかさを確認する。指に力を加えなくても豆がすんなり潰れたらOK。

「じゃあ弱火にして、この砂糖を加えて引き続き混ぜて?」

「かしこまりました!……って、こんなにたくさん砂糖を加えるのですか?」

「うげ!  めちゃめちゃ甘くなりそう。ハルオミ、本当に合ってんのか?」

「びっくりするでしょ~?  でも間違ってないよ。食べてからのお楽しみ!」

「ハルオミ君が言うなら間違いないでしょうから……ひとまずやってみます!」

砂糖の量に怪訝な顔をする二人の気持ちはよーく分かる。僕も自分でお菓子を作り始めた頃、バターや砂糖の量に驚いたものだ。

幼き日を懐かしんでいると、次はイザベラから悩ましげな声が聞こえた。

「ハルオミ、これ、豆の皮がなかなか潰れねえんだけど、どうすればいい?」

すり鉢には、まだらにすり潰された大豆が。

「そうだよね……やっぱ人力じゃ難しいよね……どうしようかな」

日本で自家製きな粉作る時って、みんなフードプロセッサーとかでやってるっぽいしなあ。どうしたものかと首をひねれば、イザベラが「そうだ!」と閃いたように手を叩いた。

「ハルオミ、蓋付きの鍋とかあるか?」

「鍋?  うん、此処にあるけど……これなんかどうかな?」

手ごろな鍋を差し出すと、イザベラは「丁度いい!」と言って大豆を全て鍋に移した。そして蓋をして……

——ボンッッッ!!!!!

「「「!?!?」」」

突然鍋の中で乾いた音が弾けた。座ってウトウトしていたウラーさんも目をひん剥いて驚いている。

「ば、爆発!?」

「イザベラ、ハルオミ君の部屋でおどろおどろしいことは辞めてくださいよ!」

「別におどろおどろしくないだろ。料理してるだけなんだから。ホラ」

「へ?」

ホラ、と開いた鍋には、先ほどまでまだらに砕けていた大豆がサラサラの粉状になっていた。

「す……すご!!」

めちゃくちゃきな粉じゃん。売り物みたいに完璧なきな粉じゃん。

「弾けさせたらすぐだろ?  こういうの、"ジタン料理"って言うんだっけ?」

ちょっと次元が違う気がするけど、明らかに時短にはなった。しかもイザベラの魔法は正確で、きちんと大豆だけを弾けさせていて鍋には傷一つ無かった。大胆なように見えて実は繊細な魔法使うんだなぁ。



イザベラの時短粉砕とパネースさんの丁寧な作業のおかげでだいぶ完成に近づいてきたので、僕も餅米に取り掛かる。

おはぎって餅米とうるち米を混ぜて作ることもあるそうだけど、今回は餅米100%だから、すりこぎでちょっとだけ潰すくらいで大丈夫かな。



2人のおかげできなこもあんこも完成して、下準備はこれで完了!今回作るおはぎは3種類の予定。
「あんこ」と「きなこ」と、少し贅沢な「あんこ&きなこ」。
まずは、つぶしたお米を俵形にまとめる。僕が馴染みがあるのはスーパーで売ってる大きめのおはぎだけど、ちょっとずつ食べられるように、小判大くらいの大きさにしてみた。

「こんな感じですか?  ハルオミ君」

「うん!  とってもいい形!」

「なんか地味な作業だな。料理ってもっと派手にやるもんだと思ってた。さっきみたいに」

「さっきのは派手すぎだから。ウラーさんもせっかくウトウトしてたのに起こしちゃったでしょ?」

「大丈夫だって、今ちゃんと寝てるし」

ほら、とイザベラがテーブルに視線を向けた。彼の言うとおり、ウラーさんは机に伏せて横を向いてすやすや寝息を立てていた。

「わあ……ウラーさんが眠ってるとこ初めて見た……かわいい」

「ウラーさん、普段は付け入る隙が無いですが、寝顔はとっても可愛いですよね」

「ほっぺたが腕に押し付けられて小動物みてえだな。あいつどんな夢見るんだろうな」

「夢かあ……甘い匂いしてるから、甘い物食べてる夢見てるんじゃない?」

「えぇ~ウラーだけひと足先にずりぃ!」

「はははっ、ずるいって何、ずるいって」

「俺も早くこの丸いの食いてえ。豆が甘いって想像できねえけど、ハルオミが作ったもんなら何でもうまいだろ」

「ふふっ、ありがとう。もうすぐ完成するからあと少しの我慢だよ」

「はぁ~~い」

間延びした返事をするイザベラも可愛い。

「っていうかさ、二人は僕よりも昔からウラーさんと過ごしてたんでしょ?  ウラーさん、昔からああいう感じなの?」

僕はすやすやと穏やかに寝息を立てる彼を見ながら二人に問いかけた。

「まあな、珍しい性格の執事だろ?  俺、この屋敷に来た時一瞬で気に入った」

確かにイザベラが気に入りそうな性格してる。同時にぶつかる事も多そうだけど。

「今ではあれこそがウラーさんらしさですが、私も最初に出会った時はびっくりしました。一見、絵に描いたような完璧な執事さんですが、ところどころ漏れ出る正直さと言うのでしょうか、私もすぐに大好きになりました」

「そっか。そういえばフレイヤさんも言ってたな、昔から正直に何でも言ってくれるから気を遣わないで良いって」

「これだけ皆さんに好かれているというのは、やはり彼の人柄やお仕事ぶりが素晴らしい証拠でしょう」

「何でもできちゃうもんね。薬も作れちゃうし、他の執事さんたちのまとめ役でもあるし」

「だよなあ……それに床上手だし」

「……へ!?」

人柄や仕事を褒める流れでサラッと何を言い出したかと思えば……。イザベラは何食わぬ顔で話を続けた。

「あいつ普段自分が受け身だから、気持ち良いとこ全部知ってんのかな。ハルオミも触られた事あるだろ?  ウラーの指やばくね?」

何だそう言うことか。イザベラとウラーさんの貞操観念が想像以上に緩いのかと思っちゃった。二人がまぐわっている姿を連想しちゃう前に慌てて頭から振り払う。
そして僕はウラーさんと出会ったばかりの頃を思い出した。側仕えの準備やら練習やらと銘打って色々な開発を施された思い出がよみがえる。

そっか、二人とも側仕えだからウラーさんともそういう事してるのかな。

思い出して顔が熱くなる。
パネースさんは呆れた声でイザベラに注意した。

「だからって"床上手"は誤解を与える表現ですよイザベラ」

うん、びっくりした。
びっくりしたけど、お年頃だもの。その話とても興味あります。

「あの……パネースさんも、ウラーさんとそういう触れ合いしたこと、あるの?」

恐る恐る聞くと、「はい」と答えが返ってきた。

「でも私は屋敷に来る前から側仕えだったので、イザベラやハルオミ君のように何か練習を施していただいたわけではありませんが。大人の色気というものを磨きたいなと思って、色々教えていただいたことはあります……。私と彼は同い年ですが、ウラーさんのほうが大人っぽいので」

パネースさんは照れながら控えめにそう言った。

「色々!  色々って、な、なななにを教えてもらったの?」

「はははっ!  ハルオミ興味津々じゃん、顔真っ赤!」

「年頃だもん!  仕方ないでしょ?  それにさ……」

僕は先ほど見たウラーさんの引き締まった体を思い出す。

「それに?  何だ?」

「それに僕にも"大人の色気"があったらさ、フレイヤさんに赤いのいっぱい付けてもらえるかな、と思って……」

「赤いの?  あぁ……キスマークのことですか?」

「何だよハルオミ、ウラーのこと羨ましかったのか」

「だ、だって!  僕もちょこっと付けてもらったことあるけど、あんなにたくさんは無いから」

「いや、あんなにいっぱい付けられたら大変だろ……でも、ん~~そーだなー……」

イザベラは頭を捻りに捻り、ある一つの答えを導き出してくれた。

「ハルオミがフレイヤ様にいっぱい付ければ良いんじゃね?」

「僕が?」

「おうよ、フレイヤ様が自分のものだって周りに見せつけたいんだろ?  ハルオミから付けたらフレイヤ様も応えてくれるかも」

イザベラはたまに、頭のいいことを言う。

「それだ!  それとっても良い!  ナイスアイデアイザベラ!」

「へへへっ、だろ?」

「何だか……明日ハルオミ君が寝込んでいるが頭に浮かびます……」

「?  なにか言った?  パネースさん」

「い、いいえ!  ぜひ楽しい時間を過ごしていただければ」

パネースさんからの激励も受けて、どんな場所につけてやろうかと目論みつつ、黙々とおはぎを完成させた。


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