【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その①〜初めての発情期編〜

28.母性本能

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無事にウラーさんが覚醒したので、暖かいお茶を淹れておやつタイム。ウラーさんは覚醒した目で、興味津々におはぎを観察している。

「これ、何という食べ物ですか?  この周りにまぶしてある粉々のやつが先ほどの豆ですか? 」

「そう。周りに付いているのは『きなこ』で、この食べ物は『おはぎ』って言うんだよ。お米と豆だけど、甘いから最初はびっくりするかも。慣れれば美味しいと思う!」

いただきますをして、それぞれ気になる種類のおはぎを取り、一口食べる。最初に感想を述べたのは、きなこのおはぎを食べたウラーさんだった。

「っっ!  甘い、甘いけどめちゃくちゃ美味いです!  甘いだけではなく何かこう、甘さが引き立つ何かを感じます」

「さすがウラーさん!  この豆……きなこって言うんだけどね、砂糖のほかに塩をちょっと入れてるんだ」

「なるほど、それでこんな味わいに……」

パネースさんもあんこのおはぎを食べながら驚きの声を上げた。

「ハルオミ君、この『あんこ』というものにも少しお塩を入れていましたよね?  こちらも甘いだけでなく、食欲を刺激されるような風味です!」

「あんこはほとんどパネースさんにお任せしちゃったけど、とっても上手にできてるよ!  びっくりしちゃった!」

「ふふふっ、ハルオミ君に褒められると嬉しいですねえ」

「ハルオミ!  こっちの『あんこ』と『きなこ』が両方入ってるやつも美味いぞ!  豆と豆と米なのに、こんなスイーツになるなんて……魔法みたいだな!」

イザベラはそう言って無邪気に笑い、先ほどのウラーさんの寝姿を話題に持ち出す。


「にしても、ウラーって寝てる時と起きてる時、人間が違うみたいだな」

「そりゃ、寝てる時と起きてる時の振る舞いが同じだったら怖いでしょう。誰だって違うと思いますが」

「いやいやいや、寝起きだいぶ小動物みたいだったぞ?  覚えてないのか?」

「小動物……?  私、何かしました?」

「早く起きねえとハルオミのおはぎ全部食っちまうぞ、って言ったら、『いやだ~食べたい~』って拗ねながら夢ん中でもぐもぐおはぎ食ってた」

だいぶ誇張された表現ではあるが、間違ってはいない。ウラーさんは信じられないというふうに目を見開いた。

「………クソ。不覚」

何を言われても堂々としてるウラーさんが、"こりゃ参った"と言わんばかりに頭を抱えた。その様子が面白かったのか、イザベラとパネースさんはウラーさんを揶揄いはじめた。

「はははっ!  まあ良いじゃねぇか、可愛かったし!」

「クールベさんは昔からあんな可愛いウラーさんに甘えられているのですね。所有物の証を刻みたくなる気持ち、よく分かります」

好き勝手言われているウラーさんは「はぁ、」とため息を吐き、怪訝な顔をして「まさか、起床した時に必ずうざったいほどきつく抱き込まれているのはそのせいか……?」と言った。

「絶対そうですね」

「寝起きが悪いヤツって自覚無いんだな」

「あんな赤ちゃんみたいな姿見せられたら、誰だって腕の中に閉じ込めたくなるよね」

ウラーさんは色々思いたある節があるようで、何やら思い出しながら苦い顔をしていた。

「ねえウラーさん、僕もウラーさんのこと抱きしめていい?」

「あ、俺も」

「別に良いですが……あなた方の小さな小さな腕の中に私を抱き込もうなど、百年早いですね」

「またそんな余裕な顔して、三人がかりでお前をギュウギュウにしてやる!!」

——バッ!

「わっ、ちょ、イザベラ殿!  暑苦しい!」

「わー、楽しそう。僕も僕も~」

「それでは私も失礼して」

おはぎをもぐもぐ美味しそうに食べているウラーさんに、僕たちは三人がかりで抱きついた。珍しく慌てた声を上げるウラーさん。

「あなた方は何故こうも引っ付くのがお好きなのですか……っ、もう……以前も似たような光景を見たような気が。ちょっと、頭を撫でないでくださいハルオミ殿」

「良いじゃん~~普段はかっちりオールバックなんだから、今のうちにサラサラウラーさんを堪能しときたいじゃん?」

「おお~!  ウラーの髪の毛ほんとにサラサラだ。いっつも髪下ろしたらいいのに」

「業務に邪魔になるんですよ……っ、全くもう……こねくり回すなら離れてください、私はおはぎをゆっくり味わいたいのですが!」

「まぁまぁ、良いじゃありませんかウラーさん。普段は執事としてしか接することができないので、こうやって貴方と仲良くお話できて二人も嬉しいんですよ。もちろん私もね」

パネースさんの聖母のような微笑みに、ウラーさんは一瞬目を下に向けて、ほんの少しだけ唇を尖らせた。

「………まぁ、少しなら許してやらなくもないですが……」

「「「…………」」」

頬を染めたウラーさんが可愛すぎて、僕たちの母性本能が暴走したのは言うまでも無い。



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