5 / 6
追いかけてくる恐怖
しおりを挟む
本人?がいないことが気にかかったものの、教室に入る。
春と実は同じクラス、一年B組である。だから入る教室は同じだった。
教室には言って早々、噂好きのクラスメイト、沢田 千花に声をかけられた。
「おはよ~。春ちゃん、実くん」
「あ、千花。はよー」
「おはよう、沢田さん」
学生らしい朝の日常風景だ。
決して、朝イチで変人と怪異に会いに行くのが日常風景というわけではない。決して、違う。
「相変わらず仲いいね」
「別によくないと思うけど?」
「一緒にいるのは久我先輩のせいだから」
すぐさま否定する二人、そういえども他人から見たら春と実は仲のいい二人組である。
春も実も一緒にいて相手に特段不満は抱いていない。
旧校舎での険悪加減は双方の不機嫌が原因のものだ。
「すぐに否定する辺り怪しいよね」
沢田はからかい半分でそういった。
実際、二人の仲を邪推しているものは多い。沢田もその一人なので早くはっきりさせて欲しい、なんて思ってからかっていたりする。
「あ、そうそう。今日、転校生が来るんだって」
「今日?」
「連絡なかったよね?」
「何でも急にきまったんだとか。先生達が話してたの聞いたから、間違いないと思うよ?」
四月中旬のこの時期に転校生だなんて、随分と変な時期で転校してくるものだ。
もうすでにグループが出来上がっている現状、転校生がつまはじきにされないことを祈るばかりだ。
二人は何となく、嫌な予感がしていたが口に出さないことにした。
クラスメイトと話しているとチャイムが鳴った。廊下で雑談していた生徒達は慌てて自分の教室に向かっていく。
教室につき、色々と準備をしていると担任教師が入ってきて教室は静まり返る。
転校生の話が始まるかなと思っていたら、最終下校時刻になっても学校にいた生徒がいたと言う話になった。
恐らく、というか十中八九、春と実のことだろう。
気まずさから視線をそらす。
話を聞いたとき生徒会長が怒りのあまり震えていたと担任は言うが、そんなことは決してないと言える。
生徒会長である羽澄 静は霊冥怪団の高等部団長で、旧校舎侵入の件の発案と計画は久我がしたものの旧校舎に入れるよう手引きしたのは羽澄だからだ。
多分笑いをこらえるのに必死だったんだろう。
説教された生徒達はうんざりとした様子で、嵐が過ぎ去るのを待つ。
だが嵐は案外、早くに過ぎ去った。
理由は単純、転校生が廊下で待っているからだ。
転校生を待たせてはいけないと担任は早々に説教を切り上げ、転校生に教室に入るよう促した。
少しして入ってきた転校生は一瞬にして教室中の生徒の視線が吸い寄せられた。
絹のような長い黒髪、椿の花を連想させる赤い瞳、血色のよい陶器のような肌、アイドルと並んでも遜色のない美しい顔。
完成されたような美しさが人の視線を奪い、惑わし、釘付けにする。
春と実の二人も視線を奪われていたが、それは美しさからではなかった。
二人を支配したのは美しさではなく恐怖。
だって……__
「転校生だ。仲良くしてやれ」
だって!__
「狐坂 誠です」
だって!!__
「よろしくお願いします」
だって……教壇の横に立ち、天使のような美しい微笑みを浮かべるのは、旧校舎で遭遇した怪異だったからだ。
狐宮の怪談、漆の怪「狐面のセーラー服少女」。
旧校舎にいた恐ろしい“何か”。
それが、教室の中に“転校生”としてやってきた。
体が震える。視線が外せない。
何で?
頭の中が疑問一色に染まる。
望まれたいなり寿司は旧校舎に置いてきた。指定されたことをしたのに、なんでここに怪異がいる?
黒板の文の解釈を誤ったのか?だが、あれ以外になんと解釈すればよかった?
わからない、怖い。死にたくない。
今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られるが、体がまるで縫い付けられてしまったかのように椅子から離れない。立ち上がれない。
一瞬、一瞬だけ、遭遇したときと全く同じ無表情の“何か”と目があった気がした。
目があったと思った瞬間、二人は弾かれたように転校生から視線をそらす。
これ以上、見ていれば食い殺されてしまうような気がしたからだ。
ホームルームは自己紹介、それから席決めで終わり、続いて一時限目の数学、二時限目の国語、三時限目の英語、四時限目の理科。
春と実の授業に集中できないでいたが、一方の“何か”は何一つ怪異としての本性を出さずに遂行していた。
給食の時間が終わり、休み時間。授業も合間もそうだが、すさまじい勢いで“何か”のもとに人が集まっている。
とびきり美しく、転校生と言うラベルが貼られた“何か”に人が食いつくのはわかるが、その正体を知っている二人からすれば二つの意味で悪趣味極まりないと感じていた。
そして五時限目の体育も滞りなく終わる。
何も起きない。狐坂誠と名乗った“何か”は二人に接触してこようとはしなかった。
朝、目があったのも気のせいかもしれない。
何も起こらない現状に安堵した二人は気が抜けてしまった。
油断、していたのだろう。
放課後、ことは起きた。
掃除も終わり、鞄を抱えて早々に霊冥怪団の使っている部屋に向かおうとする。教室の後方にある扉から教室を出ようとすると二人の行く手を阻むように誰かが佇んだ。
二人の行く手を遮ったのは、狐坂誠だった。
思わず、二人は固まる。
すぐにその場から退こうとしたが、遅かった。
にこりと笑った狐坂誠は二人に告げる。
「君達のこれから行く先、ついていっていいか?」
有無を言わせぬ物言いであったが、連れていったら団員に危害を加える可能性がある以上は連れていくのは憚られた。
考えた末に実は言葉を絞り出す。
「……とりあえず、話しやすいところにいきましょう」
少しの間を置いて、狐坂誠は了承した。
途中、階段を通るとき、屋上に続く踊り場で知り合いが数人、座り込み雑談していた。
転校生のことにつてい楽しげに声をかけられる。
お気楽なものだと思ってしまう。さらっと流して、先に進む。
向かった先は図書館、構内でも取り分け大きいであろう図書館は放課後になると使う人数も減り、密談にもってこいの状態になる場所だ。
それから不思議な事に、常にカーテンが閉められている。
室内にはカウンターにいる生徒以外には人は見えない。
カウンターにいる生徒の目は狐坂誠よりも濃い赤い瞳を持っており、どうにも血を連想させた。
春は、その赤い目に一瞬惹かれるが、すぐに視線を狐坂誠に戻す。
何も喋らずニコニコとしているのが不気味だ。
狐坂誠は図書館に備え付けられている椅子に座る。春と実はお互いの顔を見合わせ、少し考えたあと狐坂誠の対面に座った。
少しの沈黙の間、実が口を開いた。
「なんで僕たちについてこようとしたんですか?」
実の言葉に、狐坂誠の表情はストンと抜け落ち旧校舎で遭遇したときのような視認のような表情に変わった。
その豹変具合に二人は肩を震わせる。
「ワシの目的を達成するために最適の場所だと判断しからだ」
「目的?」
「そうだ」
何が目的なのか。聞こうと思ったが、聞かないことにした。
「それから色々と、立場として都合がいい。だから霊冥怪団とやらに入りたい」
その都合が一体なんなのか……。
この学校の生徒に何かしようとしているのかもしれない。
判断が、つかない。
「……不用意に、人に危害を加えないと言うのならば連れていきます」
「誓おう」
表情が変わらないから“何か”の真意はわからない。だけど、これ以上は団長に任せることにした。
恐怖で正常に頭が回っていないだろう現状、自分達が“何か”相手にうまく立ち回れるとも、うまく対処できるとも思えない。
あの変人に、久我に投げてしまおう。会いたがっていたのだから喜ぶだろう。
それに“何か”が用があるのは団長達だ。
無責任だろう。他人任せだろう。だけれど、手におえるものではないと判断した。
実が口を開こうとしたところで、見計らったように春のスマホからメロディーが鳴った。
春と実は同じクラス、一年B組である。だから入る教室は同じだった。
教室には言って早々、噂好きのクラスメイト、沢田 千花に声をかけられた。
「おはよ~。春ちゃん、実くん」
「あ、千花。はよー」
「おはよう、沢田さん」
学生らしい朝の日常風景だ。
決して、朝イチで変人と怪異に会いに行くのが日常風景というわけではない。決して、違う。
「相変わらず仲いいね」
「別によくないと思うけど?」
「一緒にいるのは久我先輩のせいだから」
すぐさま否定する二人、そういえども他人から見たら春と実は仲のいい二人組である。
春も実も一緒にいて相手に特段不満は抱いていない。
旧校舎での険悪加減は双方の不機嫌が原因のものだ。
「すぐに否定する辺り怪しいよね」
沢田はからかい半分でそういった。
実際、二人の仲を邪推しているものは多い。沢田もその一人なので早くはっきりさせて欲しい、なんて思ってからかっていたりする。
「あ、そうそう。今日、転校生が来るんだって」
「今日?」
「連絡なかったよね?」
「何でも急にきまったんだとか。先生達が話してたの聞いたから、間違いないと思うよ?」
四月中旬のこの時期に転校生だなんて、随分と変な時期で転校してくるものだ。
もうすでにグループが出来上がっている現状、転校生がつまはじきにされないことを祈るばかりだ。
二人は何となく、嫌な予感がしていたが口に出さないことにした。
クラスメイトと話しているとチャイムが鳴った。廊下で雑談していた生徒達は慌てて自分の教室に向かっていく。
教室につき、色々と準備をしていると担任教師が入ってきて教室は静まり返る。
転校生の話が始まるかなと思っていたら、最終下校時刻になっても学校にいた生徒がいたと言う話になった。
恐らく、というか十中八九、春と実のことだろう。
気まずさから視線をそらす。
話を聞いたとき生徒会長が怒りのあまり震えていたと担任は言うが、そんなことは決してないと言える。
生徒会長である羽澄 静は霊冥怪団の高等部団長で、旧校舎侵入の件の発案と計画は久我がしたものの旧校舎に入れるよう手引きしたのは羽澄だからだ。
多分笑いをこらえるのに必死だったんだろう。
説教された生徒達はうんざりとした様子で、嵐が過ぎ去るのを待つ。
だが嵐は案外、早くに過ぎ去った。
理由は単純、転校生が廊下で待っているからだ。
転校生を待たせてはいけないと担任は早々に説教を切り上げ、転校生に教室に入るよう促した。
少しして入ってきた転校生は一瞬にして教室中の生徒の視線が吸い寄せられた。
絹のような長い黒髪、椿の花を連想させる赤い瞳、血色のよい陶器のような肌、アイドルと並んでも遜色のない美しい顔。
完成されたような美しさが人の視線を奪い、惑わし、釘付けにする。
春と実の二人も視線を奪われていたが、それは美しさからではなかった。
二人を支配したのは美しさではなく恐怖。
だって……__
「転校生だ。仲良くしてやれ」
だって!__
「狐坂 誠です」
だって!!__
「よろしくお願いします」
だって……教壇の横に立ち、天使のような美しい微笑みを浮かべるのは、旧校舎で遭遇した怪異だったからだ。
狐宮の怪談、漆の怪「狐面のセーラー服少女」。
旧校舎にいた恐ろしい“何か”。
それが、教室の中に“転校生”としてやってきた。
体が震える。視線が外せない。
何で?
頭の中が疑問一色に染まる。
望まれたいなり寿司は旧校舎に置いてきた。指定されたことをしたのに、なんでここに怪異がいる?
黒板の文の解釈を誤ったのか?だが、あれ以外になんと解釈すればよかった?
わからない、怖い。死にたくない。
今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られるが、体がまるで縫い付けられてしまったかのように椅子から離れない。立ち上がれない。
一瞬、一瞬だけ、遭遇したときと全く同じ無表情の“何か”と目があった気がした。
目があったと思った瞬間、二人は弾かれたように転校生から視線をそらす。
これ以上、見ていれば食い殺されてしまうような気がしたからだ。
ホームルームは自己紹介、それから席決めで終わり、続いて一時限目の数学、二時限目の国語、三時限目の英語、四時限目の理科。
春と実の授業に集中できないでいたが、一方の“何か”は何一つ怪異としての本性を出さずに遂行していた。
給食の時間が終わり、休み時間。授業も合間もそうだが、すさまじい勢いで“何か”のもとに人が集まっている。
とびきり美しく、転校生と言うラベルが貼られた“何か”に人が食いつくのはわかるが、その正体を知っている二人からすれば二つの意味で悪趣味極まりないと感じていた。
そして五時限目の体育も滞りなく終わる。
何も起きない。狐坂誠と名乗った“何か”は二人に接触してこようとはしなかった。
朝、目があったのも気のせいかもしれない。
何も起こらない現状に安堵した二人は気が抜けてしまった。
油断、していたのだろう。
放課後、ことは起きた。
掃除も終わり、鞄を抱えて早々に霊冥怪団の使っている部屋に向かおうとする。教室の後方にある扉から教室を出ようとすると二人の行く手を阻むように誰かが佇んだ。
二人の行く手を遮ったのは、狐坂誠だった。
思わず、二人は固まる。
すぐにその場から退こうとしたが、遅かった。
にこりと笑った狐坂誠は二人に告げる。
「君達のこれから行く先、ついていっていいか?」
有無を言わせぬ物言いであったが、連れていったら団員に危害を加える可能性がある以上は連れていくのは憚られた。
考えた末に実は言葉を絞り出す。
「……とりあえず、話しやすいところにいきましょう」
少しの間を置いて、狐坂誠は了承した。
途中、階段を通るとき、屋上に続く踊り場で知り合いが数人、座り込み雑談していた。
転校生のことにつてい楽しげに声をかけられる。
お気楽なものだと思ってしまう。さらっと流して、先に進む。
向かった先は図書館、構内でも取り分け大きいであろう図書館は放課後になると使う人数も減り、密談にもってこいの状態になる場所だ。
それから不思議な事に、常にカーテンが閉められている。
室内にはカウンターにいる生徒以外には人は見えない。
カウンターにいる生徒の目は狐坂誠よりも濃い赤い瞳を持っており、どうにも血を連想させた。
春は、その赤い目に一瞬惹かれるが、すぐに視線を狐坂誠に戻す。
何も喋らずニコニコとしているのが不気味だ。
狐坂誠は図書館に備え付けられている椅子に座る。春と実はお互いの顔を見合わせ、少し考えたあと狐坂誠の対面に座った。
少しの沈黙の間、実が口を開いた。
「なんで僕たちについてこようとしたんですか?」
実の言葉に、狐坂誠の表情はストンと抜け落ち旧校舎で遭遇したときのような視認のような表情に変わった。
その豹変具合に二人は肩を震わせる。
「ワシの目的を達成するために最適の場所だと判断しからだ」
「目的?」
「そうだ」
何が目的なのか。聞こうと思ったが、聞かないことにした。
「それから色々と、立場として都合がいい。だから霊冥怪団とやらに入りたい」
その都合が一体なんなのか……。
この学校の生徒に何かしようとしているのかもしれない。
判断が、つかない。
「……不用意に、人に危害を加えないと言うのならば連れていきます」
「誓おう」
表情が変わらないから“何か”の真意はわからない。だけど、これ以上は団長に任せることにした。
恐怖で正常に頭が回っていないだろう現状、自分達が“何か”相手にうまく立ち回れるとも、うまく対処できるとも思えない。
あの変人に、久我に投げてしまおう。会いたがっていたのだから喜ぶだろう。
それに“何か”が用があるのは団長達だ。
無責任だろう。他人任せだろう。だけれど、手におえるものではないと判断した。
実が口を開こうとしたところで、見計らったように春のスマホからメロディーが鳴った。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる