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異世界旅行
219 宿屋での出会い
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永華視点
悪夢を見てカルタと手を繋いで寝ると言う、幼い子供みたいなことをしてしまった野宿初日。
いや、本当にやらかしたなって思った。
どこの幼児だよ……。
まぁ、その話は置いてといてだ。
野宿初日から四ヶ月がたったし、なんだったら年を越した。
道中、親切な人が助けてくれたり、ギルドで同じ依頼を受けた冒険者の人たちと一緒に次の国に進んだり、雪が降り積もるような頃になると流石に野宿は危ないと判断し、近くの国で雪が積もらなくなるまで滞在したりと、わりと野宿生活に適応していた。
まあ、適応したと言うか、うまくいっていたのは魔法があったことや、釣りや山での山菜採りなんかの経験があったからだろう。
ありがとう、私たちの祖父母。
老人たちの知恵は場かにはできないと改めて実感したものだ。
それで、滞在していた期間も様々で最初の一ヶ月から一週間と様々な期間、あちこちの国にいって安めの宿を拠点に生活した。
で、四ヶ月後、私たちは何をしているとか言うとだ。
ダンジョンがある小国ながらも賑わっている国でギルドの依頼をこなしていた。
名を売るのもあるのだが、積もる雪を嫌ってある国で長い間滞在していたときに使った宿の分のお金を回収しようとしているのもある。
そんなこんな、巻く過ごしていると今私たちが拠点にしている宿屋の下にある飯屋兼酒場にて、事件に巻き込まれることになった。
夕食を食べつつ、これから依頼を受け続けるのか、それともこの国にあるダンジョンに行ってみるか話し合っていた。
「どうする?ダンジョン行く?ギルドの依頼でお金集めもダンジョンの財宝で一攫千金も似たようなものだよ?もしかしたら望遠鏡的な魔具が見つかるかもよ」
「それなら君が望む刀が見つかるほうがいいだろうな。それか防具か、買っても良いのに頑なに拒否するのは何でなんだ?」
私たちが話しているこの話題、この四ヶ月の間ギルドで依頼をこなしたり盗賊に襲われたりしたときに発見した弱点__というか改善点だ。
「重いんだよ……。機動力削がれちゃ、好きに動けないし。剣も同じ理由だよ。重たいし、あれは切るんじゃなくて叩き潰すもので、私は専門外だからさ。そういうカルタは?」
「僕が使ってるのは弓だぞ。両手は空けておきたいんだよ。その手も魔法を使うのも考えてみたが、人体に影響を及ぼすだけあって難しいし、メガネみたいなのがあれば良いんだ」
う~ん、無い物ねだりってかんじだね。
私が欲している刀は全くもって売っておらず、佐之助さん曰く東の方出身の者くらいしか取り扱っていないんじゃないかと言われてしまった。
私は刀以外に扱える武器なんてないから、刀がてに入れられない今は木刀で対応しているのだ。
防具も、普通の鋼の奴は強度をだすために分厚目に作っているせいで重たくてしかたがなくて、思ったように動けなくなるし。
カルタの言っていることも分かる。
片手で弓を打てって、無理難題が過ぎるもん。
魔法で固定すれば?って行けんも出たけれど、自己魔法でなくても私みたいなタイプでもないのなら魔法を平行して二つ使うのって中々に難しいことだからね。
「うまく行ってるようなうまく行かないような……」
「だな。全く、どこでも現実はかわらないものだな」
そうやって話していると店内が騒がしくなってきた。
一体何が起こってるんだ?
疑問に思って騒がしい方を覗き込んでみると酔っ払いが気弱そうなおじさんに絡まれているようだ。
よくあることだな、と居酒屋でのバイト経験がある私は特に気にしないでいると段々と酔っ払いが一方的にヒートアップしたようで酔っ払いが気弱そうなおじさんに掴みかかった。
店内がいざわつき、視線が二人に集まる。
気弱そうなおじさんは防具を身に付けて、細身の剣を腰にさげているところから見るに、気弱そうに見えるだけで実は強いのかもしれない。
「なんだ?」
「酔っ払いが絡んでるだけだよ。気にしない方がいいんじゃない」
これは早いことご飯を食べて宿の方に戻った方がいいかもしれないね。
ああいうのには店員でもない限りあまりかかわらない方がいいんだよね。
酔っ払いはアルコール入ってるから話が通じないし、短期になってることがあるから下手打てば殴られるかもしれないし。
早めにごはんを食べようと手を進めていると、店員と気弱そうなおじさんの止める声と酔っ払いの大きな声が店内に響く。
客たちは静まり返って面倒ごとに巻き込まれないように息を潜めているし、早々に会計をして店からでていく人たちもいる。
これが元いた世界だったら営業妨害で訴えられてもおかしくないよね。
こんな酔っ払いはどこにでもいるんだな。
そんな風に思っていると段々と酔っ払い達がこっちに来るという不穏な状態になっていた。
警戒しつつ、料理を食べてるとカルタの近くにいる酔っ払いが躓いて、ガシャン!!と言う音と共に倒れこんでしまった。
そして__
バシャッ!!__
__痩けた拍子に酔っ払いの手に握られていたグラスの中に入っていたビールがカルタに頭からかかった。
「え?」
「は?」
唐突な出来事に固まる。
店内が静まり返り、最初に正気に戻った店員が慌ててタオルを持ってきくる。
「お、お客様、大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ、大丈夫です……」
カルタはタオルを受けとるとかぶったビールを拭き取る。
酔っ払いは痛がりながら起き上がり、ビールでびしょ濡れになったカルタをみて笑って言った。
「ははは!なよっちい兄ちゃんがいっちょ前に女連れてると思ってたら随分と男前になったじゃねえか!」
謝るどころか、笑っている。
「あなた、いい加減にしてください!」
「おい……」
店員や気弱そうなおじさんが酔っ払いに怒るが、酔っ払いは何のその、気にすることもなくヘラヘラと笑って、今度はカルタに絡みだす。
「面が女みてえな奴だと思ったが、色気付いて女連れてんのか?は~、獣だなあ?おい、こんな美人と一緒にいれるなんて羨ましいぜ」
「ちょ、おい!やめろ!いっ!」
酔っ払いはカルタの頭に手を置くと痛がっている声を無視して乱暴に、グシャグシャと動かす。
カルタは手を退かそうとしているが、力加減なんて忘れている酔っ払いとの力勝負で勝てないのか手を掴んでいるものの、手を退けれないようだ。
絡まれていた気弱そうなおじさんと店員が止めに入ろうと動くよりも先に私が動いた。
勢いよく立ち上がり、その衝撃で倒れた椅子も気にすることもなく、自分に視線が集まるのも気にすることもなく、水の入ったコップをひっつかむ。
「なんだ?このボウズのかわりに姉ちゃんが相手してくれんのか?」
あぁ、一から十まで言動が不愉快で仕方がない。
カルタ達が止めるのも聞かず、つかつかと酔っ払いに歩み寄って目の前で立ち止まると酔っ払いの鬱陶しい目が私を見定めるように上から下に視線を動かす。
足を肩幅に開いて、勢いよく酔っ払いの胴体に蹴りをいれた。
完全に油断していた酔っ払いは対応できるわけもなく、私の蹴りになすすべなく勢いよく地面に転がった。
「これ、あげる」
そういって、持っていた氷が入っている冷たい水を酔っ払いの顔にぶっかけた。
「え、永華!よせ、酔っ払いなんてっ……!いてて……」
「お客様!?今冷やすものを持ってきますね!」
カルタが私を止めようとするが、さっきの酔っ払いの乱暴な動きが原因で首を痛めてしまったようだ。
「大丈夫、治せますから」
「で、でも……」
それを見た店員がさっき以上に慌てた様子で裏に引っ込んでいきそうなのをカルタが止めた。
「ぶふ、何しやがる!!」
「人の前でさあ。連れに酒かけて、絡んで、アホみたいなこと言って、怪我させて、“何しやがる”だ?それはこっちの台詞なんだよ」
「はあ!?ガキが偉そうに……!」
「気がついてないの?その生意気なガキにキレられないといけないぐらいに馬鹿なことしてるんだよ」
酔っ払いを冷たい目で見下ろせば癪に触ったのか、立ち上がり私に掴みかかろうとする。
自己魔法で操ったいとで縛り上げて外に放り出してやろうと、魔法を発動させようとすると間に少し前まで絡まれていた気弱そうなおじさんがはいってきた。
驚いている私を他所に、気弱そうなおじさんは近寄ってきて私の胸ぐらを掴もうとする酔っ払いの腕を掴んだかと思うと腕を捻り上げて動けなくした。
「おいたが過ぎるな?」
気弱そうなおじさんの低い声が酔っ払いを威圧する。
酔っ払いは顔色を青くさせる。
誰かが扉を空けたのか、気弱そうなおじさんは酔っ払いを開いたままの店の外に放り投げる。
「早く帰ったら?」
気弱そうなおじさんは腰にさげている剣に手を添えて、酔っ払いに告げた。
完全に酔いが覚め、怖じけずいた酔っ払いは何度も転けそうになりながら走っていった。
呆気に取られていると、扉を閉めてこちらを向いたおじさんはさっきまでの雰囲気はどこへやら、気弱そうなおじさんに戻っていた。
「俺が絡まれてたのに、巻き込んでごめんね?首は大丈夫?」
おじさんの言葉にハッとしてカルタの方を振り向く。
店員さんが心配そうに見守るなか、カルタは自分に治癒魔法をかけていた。
「治したので、大丈夫ですよ」
「それならいいんだけれど……」
気にした様子のおじさんにカルタは再度、大丈夫だと言った。
「気分悪くなったりしたらすぐに医者に行くんだよ?」
「えぇ」
そうこう話していると厨房の方から人がでてきた。
エプロンをつけた、恰幅のいい女性だ。
「騒がしかったけど、何かあったのかい?油使ってて手が話せなくてね」
「また、あの酔っ払いが暴れてたのよ!そこの冒険者さんに絡むし、白髪のお兄さんにビール引っ掻けて怪我させるし!お客さん何人か帰っちゃった。でも、冒険者さんが追い出してくれたの!」
親子のようで、店員さんがことの敬意を説明した。
店員さんが“また”と言っているあたり常習犯のようだ。
店員さんの言葉に頷いた女性は胸を張って宣言した。
「今日は奢りだよ。好きなだけ飲んで食べな!」
女性の言葉に白けていた店内は大盛り上がり、酔っ払いが暴れる前の賑やかさが一瞬で戻ってきた。
「え、大丈夫なの?」
「あの馬鹿に無理矢理払わせるから大丈夫よ」
酔っ払いに払わせるらしい。
強か……。
悪夢を見てカルタと手を繋いで寝ると言う、幼い子供みたいなことをしてしまった野宿初日。
いや、本当にやらかしたなって思った。
どこの幼児だよ……。
まぁ、その話は置いてといてだ。
野宿初日から四ヶ月がたったし、なんだったら年を越した。
道中、親切な人が助けてくれたり、ギルドで同じ依頼を受けた冒険者の人たちと一緒に次の国に進んだり、雪が降り積もるような頃になると流石に野宿は危ないと判断し、近くの国で雪が積もらなくなるまで滞在したりと、わりと野宿生活に適応していた。
まあ、適応したと言うか、うまくいっていたのは魔法があったことや、釣りや山での山菜採りなんかの経験があったからだろう。
ありがとう、私たちの祖父母。
老人たちの知恵は場かにはできないと改めて実感したものだ。
それで、滞在していた期間も様々で最初の一ヶ月から一週間と様々な期間、あちこちの国にいって安めの宿を拠点に生活した。
で、四ヶ月後、私たちは何をしているとか言うとだ。
ダンジョンがある小国ながらも賑わっている国でギルドの依頼をこなしていた。
名を売るのもあるのだが、積もる雪を嫌ってある国で長い間滞在していたときに使った宿の分のお金を回収しようとしているのもある。
そんなこんな、巻く過ごしていると今私たちが拠点にしている宿屋の下にある飯屋兼酒場にて、事件に巻き込まれることになった。
夕食を食べつつ、これから依頼を受け続けるのか、それともこの国にあるダンジョンに行ってみるか話し合っていた。
「どうする?ダンジョン行く?ギルドの依頼でお金集めもダンジョンの財宝で一攫千金も似たようなものだよ?もしかしたら望遠鏡的な魔具が見つかるかもよ」
「それなら君が望む刀が見つかるほうがいいだろうな。それか防具か、買っても良いのに頑なに拒否するのは何でなんだ?」
私たちが話しているこの話題、この四ヶ月の間ギルドで依頼をこなしたり盗賊に襲われたりしたときに発見した弱点__というか改善点だ。
「重いんだよ……。機動力削がれちゃ、好きに動けないし。剣も同じ理由だよ。重たいし、あれは切るんじゃなくて叩き潰すもので、私は専門外だからさ。そういうカルタは?」
「僕が使ってるのは弓だぞ。両手は空けておきたいんだよ。その手も魔法を使うのも考えてみたが、人体に影響を及ぼすだけあって難しいし、メガネみたいなのがあれば良いんだ」
う~ん、無い物ねだりってかんじだね。
私が欲している刀は全くもって売っておらず、佐之助さん曰く東の方出身の者くらいしか取り扱っていないんじゃないかと言われてしまった。
私は刀以外に扱える武器なんてないから、刀がてに入れられない今は木刀で対応しているのだ。
防具も、普通の鋼の奴は強度をだすために分厚目に作っているせいで重たくてしかたがなくて、思ったように動けなくなるし。
カルタの言っていることも分かる。
片手で弓を打てって、無理難題が過ぎるもん。
魔法で固定すれば?って行けんも出たけれど、自己魔法でなくても私みたいなタイプでもないのなら魔法を平行して二つ使うのって中々に難しいことだからね。
「うまく行ってるようなうまく行かないような……」
「だな。全く、どこでも現実はかわらないものだな」
そうやって話していると店内が騒がしくなってきた。
一体何が起こってるんだ?
疑問に思って騒がしい方を覗き込んでみると酔っ払いが気弱そうなおじさんに絡まれているようだ。
よくあることだな、と居酒屋でのバイト経験がある私は特に気にしないでいると段々と酔っ払いが一方的にヒートアップしたようで酔っ払いが気弱そうなおじさんに掴みかかった。
店内がいざわつき、視線が二人に集まる。
気弱そうなおじさんは防具を身に付けて、細身の剣を腰にさげているところから見るに、気弱そうに見えるだけで実は強いのかもしれない。
「なんだ?」
「酔っ払いが絡んでるだけだよ。気にしない方がいいんじゃない」
これは早いことご飯を食べて宿の方に戻った方がいいかもしれないね。
ああいうのには店員でもない限りあまりかかわらない方がいいんだよね。
酔っ払いはアルコール入ってるから話が通じないし、短期になってることがあるから下手打てば殴られるかもしれないし。
早めにごはんを食べようと手を進めていると、店員と気弱そうなおじさんの止める声と酔っ払いの大きな声が店内に響く。
客たちは静まり返って面倒ごとに巻き込まれないように息を潜めているし、早々に会計をして店からでていく人たちもいる。
これが元いた世界だったら営業妨害で訴えられてもおかしくないよね。
こんな酔っ払いはどこにでもいるんだな。
そんな風に思っていると段々と酔っ払い達がこっちに来るという不穏な状態になっていた。
警戒しつつ、料理を食べてるとカルタの近くにいる酔っ払いが躓いて、ガシャン!!と言う音と共に倒れこんでしまった。
そして__
バシャッ!!__
__痩けた拍子に酔っ払いの手に握られていたグラスの中に入っていたビールがカルタに頭からかかった。
「え?」
「は?」
唐突な出来事に固まる。
店内が静まり返り、最初に正気に戻った店員が慌ててタオルを持ってきくる。
「お、お客様、大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ、大丈夫です……」
カルタはタオルを受けとるとかぶったビールを拭き取る。
酔っ払いは痛がりながら起き上がり、ビールでびしょ濡れになったカルタをみて笑って言った。
「ははは!なよっちい兄ちゃんがいっちょ前に女連れてると思ってたら随分と男前になったじゃねえか!」
謝るどころか、笑っている。
「あなた、いい加減にしてください!」
「おい……」
店員や気弱そうなおじさんが酔っ払いに怒るが、酔っ払いは何のその、気にすることもなくヘラヘラと笑って、今度はカルタに絡みだす。
「面が女みてえな奴だと思ったが、色気付いて女連れてんのか?は~、獣だなあ?おい、こんな美人と一緒にいれるなんて羨ましいぜ」
「ちょ、おい!やめろ!いっ!」
酔っ払いはカルタの頭に手を置くと痛がっている声を無視して乱暴に、グシャグシャと動かす。
カルタは手を退かそうとしているが、力加減なんて忘れている酔っ払いとの力勝負で勝てないのか手を掴んでいるものの、手を退けれないようだ。
絡まれていた気弱そうなおじさんと店員が止めに入ろうと動くよりも先に私が動いた。
勢いよく立ち上がり、その衝撃で倒れた椅子も気にすることもなく、自分に視線が集まるのも気にすることもなく、水の入ったコップをひっつかむ。
「なんだ?このボウズのかわりに姉ちゃんが相手してくれんのか?」
あぁ、一から十まで言動が不愉快で仕方がない。
カルタ達が止めるのも聞かず、つかつかと酔っ払いに歩み寄って目の前で立ち止まると酔っ払いの鬱陶しい目が私を見定めるように上から下に視線を動かす。
足を肩幅に開いて、勢いよく酔っ払いの胴体に蹴りをいれた。
完全に油断していた酔っ払いは対応できるわけもなく、私の蹴りになすすべなく勢いよく地面に転がった。
「これ、あげる」
そういって、持っていた氷が入っている冷たい水を酔っ払いの顔にぶっかけた。
「え、永華!よせ、酔っ払いなんてっ……!いてて……」
「お客様!?今冷やすものを持ってきますね!」
カルタが私を止めようとするが、さっきの酔っ払いの乱暴な動きが原因で首を痛めてしまったようだ。
「大丈夫、治せますから」
「で、でも……」
それを見た店員がさっき以上に慌てた様子で裏に引っ込んでいきそうなのをカルタが止めた。
「ぶふ、何しやがる!!」
「人の前でさあ。連れに酒かけて、絡んで、アホみたいなこと言って、怪我させて、“何しやがる”だ?それはこっちの台詞なんだよ」
「はあ!?ガキが偉そうに……!」
「気がついてないの?その生意気なガキにキレられないといけないぐらいに馬鹿なことしてるんだよ」
酔っ払いを冷たい目で見下ろせば癪に触ったのか、立ち上がり私に掴みかかろうとする。
自己魔法で操ったいとで縛り上げて外に放り出してやろうと、魔法を発動させようとすると間に少し前まで絡まれていた気弱そうなおじさんがはいってきた。
驚いている私を他所に、気弱そうなおじさんは近寄ってきて私の胸ぐらを掴もうとする酔っ払いの腕を掴んだかと思うと腕を捻り上げて動けなくした。
「おいたが過ぎるな?」
気弱そうなおじさんの低い声が酔っ払いを威圧する。
酔っ払いは顔色を青くさせる。
誰かが扉を空けたのか、気弱そうなおじさんは酔っ払いを開いたままの店の外に放り投げる。
「早く帰ったら?」
気弱そうなおじさんは腰にさげている剣に手を添えて、酔っ払いに告げた。
完全に酔いが覚め、怖じけずいた酔っ払いは何度も転けそうになりながら走っていった。
呆気に取られていると、扉を閉めてこちらを向いたおじさんはさっきまでの雰囲気はどこへやら、気弱そうなおじさんに戻っていた。
「俺が絡まれてたのに、巻き込んでごめんね?首は大丈夫?」
おじさんの言葉にハッとしてカルタの方を振り向く。
店員さんが心配そうに見守るなか、カルタは自分に治癒魔法をかけていた。
「治したので、大丈夫ですよ」
「それならいいんだけれど……」
気にした様子のおじさんにカルタは再度、大丈夫だと言った。
「気分悪くなったりしたらすぐに医者に行くんだよ?」
「えぇ」
そうこう話していると厨房の方から人がでてきた。
エプロンをつけた、恰幅のいい女性だ。
「騒がしかったけど、何かあったのかい?油使ってて手が話せなくてね」
「また、あの酔っ払いが暴れてたのよ!そこの冒険者さんに絡むし、白髪のお兄さんにビール引っ掻けて怪我させるし!お客さん何人か帰っちゃった。でも、冒険者さんが追い出してくれたの!」
親子のようで、店員さんがことの敬意を説明した。
店員さんが“また”と言っているあたり常習犯のようだ。
店員さんの言葉に頷いた女性は胸を張って宣言した。
「今日は奢りだよ。好きなだけ飲んで食べな!」
女性の言葉に白けていた店内は大盛り上がり、酔っ払いが暴れる前の賑やかさが一瞬で戻ってきた。
「え、大丈夫なの?」
「あの馬鹿に無理矢理払わせるから大丈夫よ」
酔っ払いに払わせるらしい。
強か……。
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