苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

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異世界旅行

222 さらに下層へ

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狙われているのは私たちだって思っていたが、どうも違うようだ。

「ど、どういうことなの?キノさん」

 昨日と今日の付き合いだけで見える部分には、キノさんとそのお嫁さんであるカムラさんが狙われる理由が皆目見当がつかなかった。

 それだけの付き合いなのだから仕方がないと言えば仕方がない話なのだが、見当たらないものは見当たらない。

「説明すると長くなるんだけど……。正確に言えば狙われているのは僕じゃなくてカムラなんだ。僕はカムラに対する人質か、付属品程度にしか思われてないと思う」

 カムラ・バレンティノさん、キノさん曰く、本気を出せば恐るべきドラゴンを倒せるほど強いらしく、一ヶ月前に家出して目撃情報が今いるダンジョンでとまっている。

「カムラが狙われているのは、カムラの一族が関係しているんだ。詳しいことは知らないけれど、カムラの一族が封印したものを狙っているようで、時々仕掛けてくるんだ」

「その仕掛けてきてのが、上であったアレ?」

「そうだよ」

 “カムラさんの一族が封印したものを狙う”なんて、封印されたものがろくでもないものであることも、狙っているやつらがろくでもないことも指し示していた。

 ひとまず、SDSの手先がやって来たのではないかとヒヤヒヤしてしまった。

 ……いや、狙いが私たちではないってだけで相手がSDSではないと言う保証はにもないんだった。

 もしかしたら、ちょうどカムラさんはダンジョンの奥に、私たちとキノさんはダンジョンの浅いそうでも固まっている状態。

 そんな状態だから、アレが現れてしまったのだろうか?

 ……否定できないな。

「一ヶ月前に襲われたばかりだから、当分来ないものだと思ったんだけどな……。巻き込んでごめんね」

「……あの、アレを差し向けてきたのは誰なんですか?」

「えっと、僕は名乗られてはいないんだけど……。カムラ曰く、“七つの大罪”だって言ってたよ」

 七つの大罪?

 それって人の欲がどうのこうのって言う、宗教の考えだったっけ?

 大罪の種類はアニメで出ていたから知ってるけど、詳しい話は名にも知らないんだよね。

SDSセブン・デットリー・シンズ……。七つの大罪って意味だな」

「じゃあ……」

「僕たちを狙っている組織と、キノさん達のことを狙ってる組織は同じだと思った方がいいだろうね」

 たまたま宿屋と併設している飯屋でであった冒険者だろう人が同じ犯罪組織に狙われているなんて、どんな偶然だ……。

「やっぱり君たちも狙われているんだね。カムラがメルトポリア王国に幹部がいるから近づきたくないって言ってたから、犯罪組織の幹部が暴れたって聞いたときはまさかと思ったよ。君たちが、その事件の影響で旅してるって言ってたから余計にね」

 やっぱりあの時、私余計なこと言っちゃってたみたいだな……。

「暴れた幹部って誰か分かる?」

「虚飾の幹部、キャシー・ミシーと名乗っていました」

「虚飾、キャシー……」

 必死に記憶を掘り起こしているのか、キノさんはぶつぶつと、なにかを呟いている。

 当分は考え事に集中しているかも?と考えた私はカルタに話かけた。

「虚飾って七つの大罪じゃないよね?」

「あぁ、でも七つの大罪の大元になっている八つの枢要罪にはあるんだ。あと、七つの大罪になくて八つの枢要罪にあるものといえば憂鬱だな」

 納得はしたがいまいちわからない状態に首をかしげていると、カルタが補足してくれた。

「八つの枢要罪はエジプト修道士の著書に現れる概念だ。七つの大罪の詳しいことは知らないが、キリスト教関係であるのは間違いないな」

「ふ~ん。なんで減ってるのさ?」

「虚飾が傲慢に、憂鬱は怠惰に含まれて、嫉妬が追加されたんだよ」

 なるほど、それは理解できた。

「でもそうなると……キャシーを含めて幹部は九人いるってこと?あと八人も相手にしないと行けないの……?」

「そ、れは……」

 考えただけでも眉間にシワが出きるような現状にカルタも口を閉ざしてしまった。

 もしかしたら同じ異世界人である皇さん達の方に何人か行くかもしれないが、それでも半分にしてもあと四人だ。

 キャシー並み、もしくはキャシーよりも強い四人の相手をしないとダメかもしれないと思うと頭がいたくなってくる。

「いや、あと七人だね」

 ふとキノさんが答えた。

「アニエス王国で何をしようと思ったのか、何をしたのか……。まあ、未遂に終わったみたいなんだけど憂鬱が捕まってるんだよ」

 アニエス王国……。

 確か、魔獣を魔法かなにかで操って、王族を襲撃したりした魔獣襲撃事件が起こった国だっけ?

 同時期に他の問題も抱えてたこともあって、確か王太子や王太子妃、第二王子や護衛達で何とかしたんだっけ。

「それ、どこの情報ですか?」

「カムラだよ。わざわざ今追いかけてきているやつの親玉が教えてくれたんだって、それを聞いた俺の気持ちも考えて欲しいけどねえ……」

 キノさんはため息をついた。

 キノさんって結構振り回され得てるっていうか、尻にしかれているよね。

 いや、カムラさんがヤンチャなだけなのかもしれないな。

「俺たちのことを狙っているのは暴食の幹部だね。わかっている情報は少なくて、慎重が永華ちゃんくらいで声は中性的、喋り方は貴族っぽい。カムラ曰く、女の子だって……。僕は見たことないから定かじゃないんだよね」

「もしかしてカムラさんが暴食に会うとき毎度おいてかれてます?」

「うん……」

 あぁ、やっぱりカムラさんヤンチャな人だ……。

 いや、ヤンチャで片付けたらダメなのか。

 でも、ドラゴンを倒せるほどの人となれば、幹部に会っても簡単に帰ってこれるのだろう。

 いや、でもそれなら簡単に倒せるんじゃないか?

 ならなんで、倒さないで追い駆けっこみたいにしているんだ?

 そう考えた私の頭によぎったのはキノさんとカムラさんにたいする疑いだった。

 ……これ、話を聞いただけじゃあ判断できないから、会ったときに色々と聞いた方が早そうだね。

「失礼を承知で聞きますけれど、カムラさんが狙われている理由の、封印って何を封印しているんですか?」

「それは……本人の口から聞いた方がいいかな。俺も、いまいち、よくわかってないから」

「そうですか。まあ、一族特有のものですから仕方ありませんか」

「そういう君たちは?」

 聞かれると思った……。

「異世界から来たんですよ。僕は五体満足で、永華は生きてさえいればいい、といった感じで命令が下っているらしいです。儀式が~とか言っていましたけど、他は不明ですね」

「え?儀式?」

 儀式という言葉を聞いたキノさんが慌てたようすで、こちらを振り替える。

「……どうかしましたか?」

「カムラの一族に伝わる話だけど、封印がとかれることも儀式が成功することも絶対似合ってらダメらしいんだよね。封印よりも儀式の方がやばいらしいよ。でも……ん~、俺じゃダメだね。カムラに話を聞かないと」

 カムラさん、というかカムラさんの一族は色々と知っているみたいだけど、何でだろう?

 新たに沸いて出てきた疑問を解消するにはカムラさん本人似合う以外に術はなく、私たちは出てくる魔獣達を出きるだけ無視して、下層へ、さらに下層へと下りていく。

 あの真っ当ではない何かと、どれ程の距離が空いたのかはわからないが、足を止めるわけには行かないだろう。

 ……カムラさん、本当にこのダンジョンにいるのかな?何て不安は内緒だ。
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