愛しき君は殺し屋さん

フゥハハハ!!!

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おそらくフィアンセ

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「……はい?」

 雅さんは目を丸くしてこちらを見る。
 私はその隙をついてフードを外す。今まで隠れていた黒髪はふわりと現れ、腰まで伸びた黒髪はウェーブがかっている。

「……えっと~……本気ですか?」
「本気です」
「正気ですか!?」
「正気です」
「私殺し屋なんですよ!?本物の悪い人なんですよ!?」
「私が惚れた人がたまたま悪い人だっただけです」
「でっ……でもっ……」

 私はナイフを取り上げ、雅さんを抱き寄せる。
 私より頭一つ分は小さい体、シルクの様な肌にもちもちな筋肉……その中にアルデンテの様なしっかりとした芯が一本入っている。

「私は本気です……!何を言われようとも……!」
「あう……なんでこんな事に……」
「ところで、あの死体はいつもどうしてるんです?」

 いったん離れ、隣で横たわっている死体に指を指す。

「いつもは、そういう専門の業者に頼んだりして……って、何やってるんですか!?」
「いえ別に、男性って平均67~70kgと言われてますからね、分解して持ち運びしやすくしようと……」
「そ……そう……なんですか……」

 包丁を用いて、いくつかの細かいパーツに分けていき、ちょうどビニール袋が沢山あった為、手当たり次第にパーツを放り込んでいく。れっきとした犯罪である。

「これでよしと」
「すごく綺麗に梱包されてる……」
「このくらい当然です、夫としてやるべきことをやったまでです」
「結婚するのは既定路線なんだ……」

 雅さんに業者を呼んでもらう。マスクや帽子で顔を隠した男が2、3人現れ、ビニール袋を車の中へ放り込んでいく。

「そ……そういえば……その~……」
「? どうかしました?」
「お……お互いに名前もわからないのに……結婚というのは―」





 ガッ!






「忘れてました!私は秋元裕也です!電話番号はxxx-xxxx-xxxx!大正メキシカン株式会社で働いています!お金には自信があります!」

 私とした事が、自己紹介をすっかり飛ばしてしまっていた。
 遅れを取り戻すべく、直ぐ様雅さんの両手を握り、出来るだけ印象に残る様にアピールする。

「えっ!?あっはい!えっと~……みっ……雅恵子ミヤビケイコっていいます!えっと……よろしくお願いします?」
「よろしくお願いしまァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 シャオラァ!勝った!私は遂にOKを引き出した!そうとくれば直ぐに同棲の準備だ!正直分からないことだらけだが関係ない!勉強と仕事を両立すれば良い!




 プルルルル プルルルル プルルルル




 雅さんのスマホから着信音が鳴る。
 それに出た雅さんはしきりにこちらを見てきて、何やら焦っている様子。

「えっと~……その~……」
「どうかしましたか?私が代わりましょうか?」
「それはちょっと困ると言いますか……あっ!」

 スマホを拝借し、耳に当てる。

「変わりました、雅恵子の夫です」
「なんだテメェはぁ!?」

 代わった早々、男の怒鳴り声が響く。
 声からして40代だろうか、少なくとも一般市民的印象はない。

「仕事に割り込んで来たかと思えば夫だぁ!?テメェ舐めた事言ってると指詰めんぞ!アイツにそんなヤツいたの聞いたことねぇよ!」
「そんな事言われたって事実ですから……まぁ、出会ったのは昨日とかなのは確かなんですが」
「あぁ!?テメェもしかして俺の殺し屋を探偵でつけてた奴だな!?なんでまだ死んでねぇ!?」
「だって夫になりましたし」
「なんでカタギの男が殺し屋の夫になってんだよ!?」
「法律には書いてませんよ?」
「んなもん想定してねぇよ!」

 男の頭の硬さぶりに、思わずため息が出る。
 全くいつの時代も厄介な奴はいたものだ。

「分かりました……じゃあ誰を殺せば認めてくれるんです?」
「急になんだよ……殺したどころか万引きだってしたことないくせに!」
「殺しますよ……認めてくれるなら、総理大臣だろうがマフィアのドンだろうが何だって殺してみせます」

 電話越しに凄むと、男はうにゃうにゃ言いながらうーうー唸っている。
 なんか迷っているらしい。

「……分かった、そこまで言うんなら覚悟しろ」
「私に二言はありません」
「良いか?一度だけ言うぞ、広川東ヒロカワアズマつぅ男を知ってるか?」
「最近出てきた政治家でしたっけ……彼を殺せばいいんですか?」
「あぁそうだ、アイツを殺した暁にはあの殺し屋とゴンドラに乗ったって構わねぇ」

 ……ゴンドラ?そんな疑問が一瞬浮かんだが、直ぐ様頭の中から消し去る。
 広川東を殺せばゴール、必ずものにしなければ……

「あの……どうなりました?」
「? あぁ、広川東って人を殺せば結婚を認めてくれるそうです」
「はぁ……


















えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」







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