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8話 丸投げ先生と無茶振り王子
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その後ですが、特に可もなく不可もないような感じで午前の授業は進んでおります。教養、魔法基礎はクラス担当の先生が行うようで、午前2コマはコレット先生の授業でございます。本日の午前は魔法属性と魔力コントロールについて、この国の神話についての2コマ。恐らく大抵の貴族は知識として知っていることでしょうが、一応平民と商家の方々もいらっしゃいます。恐らくその為のカリキュラムなのでしょうね。
「昨日の魔力検査で何の属性があるかは分かってはいただろう。それぞれ何が出来るのかを雑に説明するとだな」
終始気怠い口調ながらも分かりやすいコレット先生の説明を聞き流しつつ、私は現在の状況を振り返っています。昨日色々あった割には、思ったよりも絡まれてございませんわね。まぁ2日目も始まったばかりですものねぇ。オウフロア様のお陰なのかは定かではございませんが、私もモカ嬢も必要以上に注目を集めずに済んでいるような気が致します。……いえ、モカ嬢は結構視線を集めておりますわね。今のところ攻略対象達が濃い上に、一番近くにいらっしゃる殿下があまり話しかけてこないのが大きいのか、視線のみで済んでいるというような状態が正しいのでしょうけれど。私がリタプレッソ家の三女であるという事実は、上手いこと皆の印象から抜け落ちているようでございますわ!よっしゃ!
モカ嬢の側に居る事で相対的にモブに近しい存在になってるのでしたら儲け物ですけれども、今後の事を考えると何かしら対策を練った方が良さそうですわねぇ。ベルビット様を囲んでいるご令嬢方に粘着されたりでもしたら、それこそ面倒ですものねぇ。
「本来実技の授業ですべき事だが、このクラスヤバい奴が多いからな…魔力コントロールちょっとやってみるか」
どうせ俺も実技指導入るしな、とぼやいたコレット先生は2人1組になるように促します。隣同士や前後など皆様近いお席の方々が組んでいらっしゃるようでございます。私達はどういたしましょう。確かここは原作にはなかったシーンですわよねぇ。でも恐らく放っておいたら、殿下はモカ嬢に声をかけるでしょうね。そうなるとモカ嬢、あまりの畏れ多さに卒倒してしまうかもしれませんわ。
「キフィ様、モカ様と組んで頂いても?」
「あーそうよねぇ。でもカルファ様、大丈夫?」
「えぇ、まぁ大丈夫でしょう」
そう、殿下さえ回避すれば問題ないわ。
「あぁ、そうだ。モカ君、カルファ・リタプレッソ君。君達はロースト殿下に見てもらいなさい。」
私たちが準備しようとしたところで声をかけられました。回避失敗……ですって!見守られる必要があるのでしたら、どちらかと言えばコレット先生の方がマシですわ。今のところコレット先生のモカ嬢への印象「面倒な生徒」でしょうから。そして私もまたそういう印象。対して殿下は、
「僕が見るんですか?」
キラキラとエフェクトを飛ばして、楽しそうに、それはもう本当に楽しそうに仰います。そうですわよねぇー。殿下からしたら私たちは新しい玩具みたいなものですものねぇ。キフィ嬢は私達に向かって祈りを捧げ、ご愁傷様と言いました。
「王宮で散々見たが、貴方の魔力操作は完璧だ。見本になりつつその2人が暴発した時に他の生徒を守ってくれたら良い」
「出来るかな?」
「出来るでしょう。貴方王族なんですから」
王族に丸投げするとはコレット先生……貴方様も中々鋼メンタルでございますわね。キフィ嬢は殿下の後ろになってしまった男子生徒と組むことにしたようです。恐らく商家の方なのでしょう。私達に哀れみの視線を向けつつも、キフィ嬢とお話し出来る事に喜んでいる様子。
「モカ様、授業が終わったら美味しいご飯を頂きましょうね」
「えぇ、カルファ様……でも私、その前に胃が駄目になりそうです」
乾いた笑みで言葉を交わした私達は覚悟を決めて後ろを振り返ります。
「しかし驚いたなぁ。貴女が噂のリタプレッソ辺境伯令嬢だったとは」
「あら、私噂になっておりましたの?」
「父上の呼び出しに応じなかった唯一の令嬢だからねぇ。しかも光属性!」
コレット先生が腕輪を配って歩いている間に交わされたこの会話。ニッコニコ語る殿下に私はこう思いました。"あ、これあかんやつや"と。どうやら、私も既に殿下に目をつけられていたようですわね。面倒な予感しかしませんわ。
さて、配られた腕輪ですけれども。この腕輪には石が嵌められておりますの。この銅色に光る石はジャズベ石という魔石。この石結構万能でして、武器や防具に埋め込むことで性能が上がったり、アクセサリーとして身につけると魔力が安定したりといろんな所で使われますの。ちなみにうちの領地でも採掘出来る品ですわ。
この石の性能と腕輪の付け方をコレット先生が話している間も、私たちの会話は続きます。
「期待外れで残念でございましたわね」
「そんな事ないよ?辺境伯が隠したがるのも頷ける。目立たないようにしてるみたいだけど、僕の婚約者候補だっただけあるねぇ」
それはどういう意味で仰ってますの……?私の訝しげな視線をにこにこと受け流すと、殿下は空中に水色の球を作りました。それに合わせるかのように、コレット先生が説明を行います。魔力の塊を出現させるこの訓練法。魔力の色、形は人によって異なりますが、大体の人はメインの属性に近い色の球体が出現するようでございます。懐かしいですわ。
「辺境伯令嬢なら、魔力コントロールは大丈夫なんじゃない?あっ、モカ嬢はジャズベ石使った方が良いかもね」
大きな瞳を見開いてこちらを見ていたモカ嬢は、慌てて殿下に目を向けます。あれだけ目を見開いても可愛らしいだなんて、ヒロインってすごいのねぇ。
殿下は配布されていたジャズベ石の腕輪2つをモカ嬢に渡すと、
「さ、やってみて!」
そう和かに言いました。
「あのー、私のジャズベ石は?」
「え?要らないでしょ?」
「一応最初ですし、使いたいのですけども……」
「必要あるかなぁ?」
必要な訳ないよね?と、言外に示す殿下。一応魔法は使えますけど、魔力の塊出すの久しぶりですのに……。困りましたわね。優しいモカ嬢が1つこちらに渡そうとしたところ、殿下はにっこり笑って首を横に振りました。どうやら意地でも使わせて頂けないようですわね……
「はい、じゃあリタプレッソ辺境伯ーー長いな。カルファって呼んでいい?」
思わず溜息が出てしまう。
「……駄目と仰っても呼ぶおつもりでしょう」
「まぁそうなんだけどさ。一応レディには確認取れって兄上に言われてるからね」
ご自由にどうぞと告げると、隣でカチャカチャ腕輪を弄っていたモカ嬢にこっそり声をかけられました。
「カルファ様、この腕輪……調整とかって出来るのでしょうか?」
「あら、先程コレット先生が….…ごめんなさい、私たちの会話が邪魔してしまったようね」
「いえ!そんな!!」
ブンブンと首を振るモカ嬢に、腕輪の調整方法を教える私たち。この腕輪、魔力を流し込むことでフィットするようになるのよね。
「魔力を流し込む?ですか?」
「そう、石に軽く触れて、力を込めるの。あまり魔力を流し込み過ぎると石が割れちゃうから気をつけてね」
「僕は雫を落とすイメージでやってるよ。だいたい2~3滴ぐらいかな」
私の言葉に、殿下は一瞬驚いたような顔をすると何でもなかったようにアドバイスを続けました。何で驚いたのかしら?
「2~3滴の雫を落とすように、魔力を流し込む……わっ!できました!!ぴったりです!」
何度か挑戦したあと腕輪の調整が出来たモカ嬢。とても嬉しそうに笑うからこちらまで嬉しくなってしまいましたわ!
「まだ腕輪の調整してたのか」
いつの間にきていたコレット先生に声をかけられた私たち。周りの生徒たちは既に魔力の塊を出現させていました。
「モカ嬢ね、魔力を流し込むの初めてだったんだ」
「それは失礼した。……リタプレッソ君は腕輪を使わなくていいのか?」
「辺境伯令嬢だから大丈夫だよ」
辺境伯令嬢だからとは一体……私の事などそっちのけで、先生と殿下で勝手に話が進められ、2人同時に塊を出すことになりました。
両の掌の上にソフトボール大の球体をイメージして魔力を放出致します。私の魔力は白い球体に赤い帯状の雲がかかったような魔力の塊。久々に見ましたけれど、上手く出来て良かったですわ。
「ね、だから大丈夫って言ったでしょう?」
殿下のその爽やかな笑顔が段々と悪魔の笑みに見えてきましたわ……
一方のモカ嬢。私の動作を見よう見真似でやってらっしゃるようですが、なかなか上手くいきません。噴水のようにキラキラと光のシャワーを手から流れ落としています。
「流石はリタプレッソ家だな。ふむ、モカ君は……どうやら魔力を放出するばかりで固定出来ていないようだな」
「結構な量が流れ出てるけど、大丈夫かい?」
「なにがでしょう??」
殿下に聞かれたモカ嬢は首をこてん、と傾けて答えました。顔色ひとつ変えずに光の噴水を出しては止め、出しては止めを繰り返しています。
流石は大聖女ですわね……あれだけの魔力を放出してもケロッとしているなんて……
「……まぁ、放出が出来ているならひとまずは大丈夫だ」
あとはタンブラ先生に任せよう、と独りごちたコレット先生は教壇へと戻ります。タンブラ先生は恐らく実技の先生ですわね。
「まぁだいたいは魔力放出までは出来てるから、あとは実技で。今の魔力コントロールの用語おさらいするから席に戻れ」
そんな感じで私たちは前を振り返り、キフィ嬢も戻ってきて残りの授業を終えましたわ。
午前の終わると同時に机に突っ伏した私とモカ嬢。令嬢にあるまじき行為ですが今回ばかりは許して頂きたいですわ……
「ふたりともお疲れ様……ランチ食べに行く気力はある?」
キフィ嬢のその言葉で息を吹き返す私たち。ランチ……そうだわ今はお昼休みだものね。そうねモカ嬢。美味しいものを食べようって約束しましたものね。きっとここのご飯も美味しい筈ですわ。知らんけど。
とにかくご飯!!ご飯の時間よ!!午後に向けて英気を養わなければなりませんものね!
私たち3人は足取り軽く……はないですけれど、教室から旅立ちました。
「昨日の魔力検査で何の属性があるかは分かってはいただろう。それぞれ何が出来るのかを雑に説明するとだな」
終始気怠い口調ながらも分かりやすいコレット先生の説明を聞き流しつつ、私は現在の状況を振り返っています。昨日色々あった割には、思ったよりも絡まれてございませんわね。まぁ2日目も始まったばかりですものねぇ。オウフロア様のお陰なのかは定かではございませんが、私もモカ嬢も必要以上に注目を集めずに済んでいるような気が致します。……いえ、モカ嬢は結構視線を集めておりますわね。今のところ攻略対象達が濃い上に、一番近くにいらっしゃる殿下があまり話しかけてこないのが大きいのか、視線のみで済んでいるというような状態が正しいのでしょうけれど。私がリタプレッソ家の三女であるという事実は、上手いこと皆の印象から抜け落ちているようでございますわ!よっしゃ!
モカ嬢の側に居る事で相対的にモブに近しい存在になってるのでしたら儲け物ですけれども、今後の事を考えると何かしら対策を練った方が良さそうですわねぇ。ベルビット様を囲んでいるご令嬢方に粘着されたりでもしたら、それこそ面倒ですものねぇ。
「本来実技の授業ですべき事だが、このクラスヤバい奴が多いからな…魔力コントロールちょっとやってみるか」
どうせ俺も実技指導入るしな、とぼやいたコレット先生は2人1組になるように促します。隣同士や前後など皆様近いお席の方々が組んでいらっしゃるようでございます。私達はどういたしましょう。確かここは原作にはなかったシーンですわよねぇ。でも恐らく放っておいたら、殿下はモカ嬢に声をかけるでしょうね。そうなるとモカ嬢、あまりの畏れ多さに卒倒してしまうかもしれませんわ。
「キフィ様、モカ様と組んで頂いても?」
「あーそうよねぇ。でもカルファ様、大丈夫?」
「えぇ、まぁ大丈夫でしょう」
そう、殿下さえ回避すれば問題ないわ。
「あぁ、そうだ。モカ君、カルファ・リタプレッソ君。君達はロースト殿下に見てもらいなさい。」
私たちが準備しようとしたところで声をかけられました。回避失敗……ですって!見守られる必要があるのでしたら、どちらかと言えばコレット先生の方がマシですわ。今のところコレット先生のモカ嬢への印象「面倒な生徒」でしょうから。そして私もまたそういう印象。対して殿下は、
「僕が見るんですか?」
キラキラとエフェクトを飛ばして、楽しそうに、それはもう本当に楽しそうに仰います。そうですわよねぇー。殿下からしたら私たちは新しい玩具みたいなものですものねぇ。キフィ嬢は私達に向かって祈りを捧げ、ご愁傷様と言いました。
「王宮で散々見たが、貴方の魔力操作は完璧だ。見本になりつつその2人が暴発した時に他の生徒を守ってくれたら良い」
「出来るかな?」
「出来るでしょう。貴方王族なんですから」
王族に丸投げするとはコレット先生……貴方様も中々鋼メンタルでございますわね。キフィ嬢は殿下の後ろになってしまった男子生徒と組むことにしたようです。恐らく商家の方なのでしょう。私達に哀れみの視線を向けつつも、キフィ嬢とお話し出来る事に喜んでいる様子。
「モカ様、授業が終わったら美味しいご飯を頂きましょうね」
「えぇ、カルファ様……でも私、その前に胃が駄目になりそうです」
乾いた笑みで言葉を交わした私達は覚悟を決めて後ろを振り返ります。
「しかし驚いたなぁ。貴女が噂のリタプレッソ辺境伯令嬢だったとは」
「あら、私噂になっておりましたの?」
「父上の呼び出しに応じなかった唯一の令嬢だからねぇ。しかも光属性!」
コレット先生が腕輪を配って歩いている間に交わされたこの会話。ニッコニコ語る殿下に私はこう思いました。"あ、これあかんやつや"と。どうやら、私も既に殿下に目をつけられていたようですわね。面倒な予感しかしませんわ。
さて、配られた腕輪ですけれども。この腕輪には石が嵌められておりますの。この銅色に光る石はジャズベ石という魔石。この石結構万能でして、武器や防具に埋め込むことで性能が上がったり、アクセサリーとして身につけると魔力が安定したりといろんな所で使われますの。ちなみにうちの領地でも採掘出来る品ですわ。
この石の性能と腕輪の付け方をコレット先生が話している間も、私たちの会話は続きます。
「期待外れで残念でございましたわね」
「そんな事ないよ?辺境伯が隠したがるのも頷ける。目立たないようにしてるみたいだけど、僕の婚約者候補だっただけあるねぇ」
それはどういう意味で仰ってますの……?私の訝しげな視線をにこにこと受け流すと、殿下は空中に水色の球を作りました。それに合わせるかのように、コレット先生が説明を行います。魔力の塊を出現させるこの訓練法。魔力の色、形は人によって異なりますが、大体の人はメインの属性に近い色の球体が出現するようでございます。懐かしいですわ。
「辺境伯令嬢なら、魔力コントロールは大丈夫なんじゃない?あっ、モカ嬢はジャズベ石使った方が良いかもね」
大きな瞳を見開いてこちらを見ていたモカ嬢は、慌てて殿下に目を向けます。あれだけ目を見開いても可愛らしいだなんて、ヒロインってすごいのねぇ。
殿下は配布されていたジャズベ石の腕輪2つをモカ嬢に渡すと、
「さ、やってみて!」
そう和かに言いました。
「あのー、私のジャズベ石は?」
「え?要らないでしょ?」
「一応最初ですし、使いたいのですけども……」
「必要あるかなぁ?」
必要な訳ないよね?と、言外に示す殿下。一応魔法は使えますけど、魔力の塊出すの久しぶりですのに……。困りましたわね。優しいモカ嬢が1つこちらに渡そうとしたところ、殿下はにっこり笑って首を横に振りました。どうやら意地でも使わせて頂けないようですわね……
「はい、じゃあリタプレッソ辺境伯ーー長いな。カルファって呼んでいい?」
思わず溜息が出てしまう。
「……駄目と仰っても呼ぶおつもりでしょう」
「まぁそうなんだけどさ。一応レディには確認取れって兄上に言われてるからね」
ご自由にどうぞと告げると、隣でカチャカチャ腕輪を弄っていたモカ嬢にこっそり声をかけられました。
「カルファ様、この腕輪……調整とかって出来るのでしょうか?」
「あら、先程コレット先生が….…ごめんなさい、私たちの会話が邪魔してしまったようね」
「いえ!そんな!!」
ブンブンと首を振るモカ嬢に、腕輪の調整方法を教える私たち。この腕輪、魔力を流し込むことでフィットするようになるのよね。
「魔力を流し込む?ですか?」
「そう、石に軽く触れて、力を込めるの。あまり魔力を流し込み過ぎると石が割れちゃうから気をつけてね」
「僕は雫を落とすイメージでやってるよ。だいたい2~3滴ぐらいかな」
私の言葉に、殿下は一瞬驚いたような顔をすると何でもなかったようにアドバイスを続けました。何で驚いたのかしら?
「2~3滴の雫を落とすように、魔力を流し込む……わっ!できました!!ぴったりです!」
何度か挑戦したあと腕輪の調整が出来たモカ嬢。とても嬉しそうに笑うからこちらまで嬉しくなってしまいましたわ!
「まだ腕輪の調整してたのか」
いつの間にきていたコレット先生に声をかけられた私たち。周りの生徒たちは既に魔力の塊を出現させていました。
「モカ嬢ね、魔力を流し込むの初めてだったんだ」
「それは失礼した。……リタプレッソ君は腕輪を使わなくていいのか?」
「辺境伯令嬢だから大丈夫だよ」
辺境伯令嬢だからとは一体……私の事などそっちのけで、先生と殿下で勝手に話が進められ、2人同時に塊を出すことになりました。
両の掌の上にソフトボール大の球体をイメージして魔力を放出致します。私の魔力は白い球体に赤い帯状の雲がかかったような魔力の塊。久々に見ましたけれど、上手く出来て良かったですわ。
「ね、だから大丈夫って言ったでしょう?」
殿下のその爽やかな笑顔が段々と悪魔の笑みに見えてきましたわ……
一方のモカ嬢。私の動作を見よう見真似でやってらっしゃるようですが、なかなか上手くいきません。噴水のようにキラキラと光のシャワーを手から流れ落としています。
「流石はリタプレッソ家だな。ふむ、モカ君は……どうやら魔力を放出するばかりで固定出来ていないようだな」
「結構な量が流れ出てるけど、大丈夫かい?」
「なにがでしょう??」
殿下に聞かれたモカ嬢は首をこてん、と傾けて答えました。顔色ひとつ変えずに光の噴水を出しては止め、出しては止めを繰り返しています。
流石は大聖女ですわね……あれだけの魔力を放出してもケロッとしているなんて……
「……まぁ、放出が出来ているならひとまずは大丈夫だ」
あとはタンブラ先生に任せよう、と独りごちたコレット先生は教壇へと戻ります。タンブラ先生は恐らく実技の先生ですわね。
「まぁだいたいは魔力放出までは出来てるから、あとは実技で。今の魔力コントロールの用語おさらいするから席に戻れ」
そんな感じで私たちは前を振り返り、キフィ嬢も戻ってきて残りの授業を終えましたわ。
午前の終わると同時に机に突っ伏した私とモカ嬢。令嬢にあるまじき行為ですが今回ばかりは許して頂きたいですわ……
「ふたりともお疲れ様……ランチ食べに行く気力はある?」
キフィ嬢のその言葉で息を吹き返す私たち。ランチ……そうだわ今はお昼休みだものね。そうねモカ嬢。美味しいものを食べようって約束しましたものね。きっとここのご飯も美味しい筈ですわ。知らんけど。
とにかくご飯!!ご飯の時間よ!!午後に向けて英気を養わなければなりませんものね!
私たち3人は足取り軽く……はないですけれど、教室から旅立ちました。
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