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#1 剣士で章
#1.3 真実の扉
しおりを挟む飯を食った二人は、とても満足そうです。もう、この世に未練は無いでしょう。大魔王はゆっくりと目を閉じると、そのまま椅子の背もたれに寄りかかりました。そして私の期待を裏切って目を開けやがったぞな。
「ああ、思い出したぞ。お前、初代の敗者だな」
「勇者だ、元」
「お前が二代目だったら、勇者になれたのにな」
「何のことだ」
「え~、知らないの~、その歳で」
「はっきり、物を言え、はっきりと」
「いいのかな~、言っちゃうと、泣くよ~」
じれったいので代わりに私が説明しましょう。アッ君の国と、ここ、あれ? なんて国だろう。まあ、魔王国としましょう。この二国間には、ある密約があるのよ~。アッ君のところの政府は国民に重税を課しているんだけど、その目的の殆どが国の防衛費に充てられているのですよ。
「覚悟は、とうに出来ている。さっさと言え」
「実話な、へへへ」
じゃあ、どこかに脅威になる国があるってことになるんだけれど、それがここ、魔
王国なのね。だけどね、戦争なんてここ千年、したことがないのね。それでも税金を掻き集めているって訳なのよ~。なんで~、不思議よね。
「怒るぞ、この野郎」
「待て! 先を急いで、どうする? そう焦らずとも直に迎えが来るんだろう」
そこで定期的に魔王国が襲ってくるって偽情報を流して国民の恐怖心を煽っている訳ですよ。でもね、それで軍隊を動かすとお金がかかるじゃないですか。だから勇者なんてものを差し向ける訳ですよ、それも懸賞金も出してね。それでも軍を派遣するよりもずっと安く済むんだって。
「俺は独り者だ。だれも迎えになんか来ん」
「その迎えじゃないんだかな。まあいい。アッ君のところの政府とさ、約束があるんだよね」
だけどね、一回で魔王を倒したら言い訳が続かないじゃないですか。そこで勇者の派遣回数が奇数会の時は魔王側が、偶数回の時はアッ君の国側が勝つことにしているって訳。これで永遠に戦いが続くのよね。勿論、魔王国側はアッ君の国からお金を貰っているのよ。どう、いい商売でしょう、エヘン。
「本当か? 魔王」
「大魔王だって。本当だ。冥土の土産に持って行け」
アッ君は食べたものを今にも吐きそうなぐらい、顔色が悪くなったようです。そのまま、逝きますか?
ところで、勇者になれなかったアッ君は、魔王討伐失敗後、税金泥棒扱いされたそうです。負けただけでも悔しいのに世間の仕打ちは、それは酷いものだったらしいです。何せ懸賞金がありましたから、そのやっかみもあったのでしょう。金に目が眩んだ守銭奴と言われ、国のためではなく自分のためだけに行ったのだと思われたようです。
勇者が負けたとなると魔王の脅威は続くわけですが、そこは、魔王が勇者を倒してそれで満足した、という噂が流れ、実際、魔王がアッ君の国を攻めることはありませんでした。しかしこれは両国で結ばれた密約によるものですから当然の結果と言えるでしょう。
大敗を喫したアッ君は、不名誉と借金だけが残ったそうです。これが勇者になり損ねた者の末路です。ああ、無情。
◇
食っておしゃべりしたら、眠くなった二人です。椅子に座ったまま寝腐っています。その時見た夢、大魔王はアッ君にコテンパンにされて泣いています。アッ君の方は大魔王が魔王にコテンパンにされて泣いている夢を見ました。どっちも、しょうもない夢を見たものです。
さて、夢から覚めると目が開くものです。二人のご老人は魔王城の城内を散策しに出かけました。それは、二度と戻らない旅になったりして。ちなみに城内には人は殆どいません。でもそれは無駄な人員がいないと考えてください。
「なあ、アッ君。ここまで、どうやって来たんだ」
「どうやってって、歩いてきたに決まっているだろうが」
「おいおい、ここまで、どんだけあるんだよ」
「ほー、心配してくれるのか? 安心しろ。殆どがヒッチハイクだ。皆、年寄りには親切なものだ」
「いやー、途中で死んでたら面倒じゃん」
「そっちかよ。ところでだ。あの魔王のお嬢ちゃん、あのままでいいのか?」
「いいも悪いも、なってしまったからな~」
「悪いことは言わん。あの娘では無理だろう。さっさと適任者に変えたらどうだ」
「それができればな~、苦労はしないぞ」
「お前、そこまで落ちぶれたのか。情けない」
「何おー。この国はなー、一番力のある奴が魔王になるんだよー」
「そうじゃない。いいのか? このままだと、お前、いつか死ぬぞ」
「そりゃあそうだろう」
「言い方が悪かったようだ。『いつか』ではなく『そろそろ』だ。見ていて、そう思ったぞ」
「え? わかる? ……やっぱりな~」
「そう思うのなら、早い方がいいぞ」
「だってさー」
「なら、さっさと殺されるが良い」
「おいおい、随分と冷たいじゃないか。友達だろう」
「何を言うか。友人なのではない」
「なら、何んだよ」
「宿敵、ライバル、強敵、勇者だ」
「少なくとも最後のは違うだろう」
「俺にいい考えがある。聞く気はあるか」
「無い、と言ったら嘘になる……な」
「では、こうしよう」
アッ君は大魔王に何やら耳打ちをしています。その顔が悪巧みを思いついた悪人そのももです。これは見習ってはいけない、典型的な人物です、要注意です。
「なるほど。それはいいかもしれん」
「だろう。これで飯の借りは返せるだろう」
「ああ、十分だ。ところでアッ君。いつになったら帰るんだ?」
「そ、それは全てが終わってからだ」
「そうか。それなら今夜、出て行くんだな?」
「ああ、終わったらな」
「よし、話は決まった。では、その手筈で行こう」
「しくじるなよ」
「はあ? 俺を誰だと思ってやがる」
「魔王に頭が上がらない大魔王だろう」
「……」
◇
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