じーさんず & We are

Tro

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#4 勇者で章

#4.3 生き残るのは誰だ?

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「お前達はー、人生の敗者、人間のクズだー。だがなー、一度でいいからお前らの輝きを、見せてみろー。そうして花となって、散っていけー、バンザーイ」

勇者訓練では恒例の鬼軍曹が新人達を前に戦意を鼓舞していきます。訓練の様子は、それはもう過酷で厳しく、残酷無慈悲で小汚いものでした。その辺はカッ飛ばしましょう。

少年Aは剣の達人に、少年Bは魔法の使い手に、少女Aは弓の達人になった? ようです。そして向えるは最終試練です。真夜中の山中に放り投げられ生還したら無事卒業です。簡単ですね、ただ山を降りてくるだけですから。



月明かりだけが頼りの、山の中です。ホーホケキョ、違いますね、ホーホーホー、これも違うようです。とにかく何がしらの、獣の鳴き声が聞こえてきます。おー怖です。

「おい! 少年B、飯買って来い」

木の根元に座り込んだ人が少年Bに頼んで、いいえ、命令しているように見えますが。その人は、何でしょうか全てに疲れ果てた顔をしているようです。正確には顔が汚すぎてよく分かりません。でも命令するくらいなので偉い人? なのでしょう? ムム、その顔その声、どこかで見覚えがあるような。

「買って来いって、どこで?」と素直に答える少年Bですが、ここは人里離れた山の、そのまた奥地であります。安請け合いしても大丈夫なんですか?

「コンビニに決まってるだろうが」
「そんなの、この辺にはないよ」
「バカ野郎、目の前にあるじゃないか、ほれ、便利~」

「相手にするな少年B」と少年Aが会話を遮りました。それでも、
「だって少女Aが」と気遣う少年B、
「あれはもう、アレなんだ」と諭す少年Aです。

勇者サークルの面々はこの二日程、何も食べていません。他のグループは既に下山済みです。どうやら、というかしっかりと道も人生も迷っている最中のようです。それにしても少女Aは変わったようです。まるで別人です。

「おい! 少年B。この金の矢と、金の矢と、金の矢、どれを選ぶんだ?」止まらない少女Aです。選べと言っておきながらその手には何も握られていません。

「じゃあ、これ」と付き合いの良い少年B。
「ブッブー、ハズレ~。罰としてワンワンするんだ」
「相手にするな少年B」とまた少年Aが会話を遮りました。それでも、
「だって少女Aが」と気遣う少年B、
「あれはもう、アレなんだ」と諭す少年Aです。

「おい! 少年B。屁、いたな。なんて奴だ」と執拗な少女A。
「すまない」と答える少年B、本当でしょうか。
「本当にしたのか」
「はい」
「相手にするな少年B」とまた少年Aが会話を遮りました。それでも、
「だって少女Aが」と気遣う少年B、
「あれはもう、アレなんだ」と諭す少年Aです。

やけに少年Bに突っかかる少女Aです。何があったのでしょうか? 何もありません。ただ、嫉妬しているだけです。何に? ですか、それは全てです。少女Aは自分に欠けているものを、この訓練の間に嫌という程、思い知りました。

そのストレスを発散しているだけです。空腹で少し本性がはみ出した程度です。少女Aの本当の姿はこんなものではありません。あんなものです、はい。

◇◇

ガサガサ(お前を狙っているぞ、覚悟しろ。今からそっちに行く)という正体不明の獣が音を立てています。

「気をつけろ! 何か、いる!」

勘のいい少年Aが剣を構えて警戒態勢に入りました。続いて少年Bが周囲を魔法で探索します。

「僕の鼓動が聞こえる」

探索結果が出たようです。少女Aが何かを食べている妄想状態に入りました。それはとても不味そうです。

「ウエッ、プッ」

コサックターン(お前を狙っているぞ。踊りながら近づく、華麗な舞)という正体不明の獣が音を立てています。

「気をつけろ! 近くに、いる!」

少年Aが構えていた剣を振り回し始めました。続いて少年Bが夜空を魔法で探索します。

「今夜も星が綺麗だよ」

探索結果が出たようです。少女Aが何か不幸な夢を見て妄想状態に入りました。それはとても悲しそうです。

「お金、ありません、勘弁してください」

ゴーファイト(俺、戦う、俺、強い、お前達、食う、お前達、俺に食われる)という正体不明の獣が襲いかかってきました!

カキクケコキーン。

少年Aが剣で打って出ます。そして剣が獣の腕に当たりました。それは熊のようです。熊ではありません、熊に似た熊です。

「静まりたまえ、気を静めたまえ」

少年Bが魔法で攻撃を試みます。しかし全然効果がありません。それ、魔法ですか?

少女Aはみんなが楽しそうにキャンプファイアーをしているように見えているようです。その『楽しそう』にムカついたのか、弓を引き始めました。それは金の矢ですか、それとも普通の矢ですか?

ガオー(俺は無敵な獣)が少年Aの剣をその腕力でなぎ払いました。それを取りに走る少年Aです。

少年Bが魔法のタバコに火を点けました。少年と言っていますが20才を超えています。

「ゲホゲホ」

何がしたかったのでしょうか。その隙に、熊に似た熊が少女Aにガアー(俺の女になれ)と言っています。少女Aは熊に似た熊に照準を合わせます。その時、熊に似た熊と目が合ったようです。それと同時に剣を回収した少年Aが熊に似た熊の背後に立ち剣を振り上げた時、少女Aが叫びます。

「覚悟せいやー、このリア充が」

叫ぶ少女Aの放った矢が熊に似た熊の太もも辺りに命中しました。その衝撃で熊に似た熊が少年Aを伴って吹き飛んでいきます。一匹と一人は野山を駆け巡り、どこかの舗装された道に出ました。その路上で熊に似た熊と少年Aが倒れています。ですが、驚いたことに、その先にはコンビニがあります。それは光輝く神殿のようでもあります。

少年Aは頭を抱えながら立ち上がりました。その手には貴重な武器である剣がありません。これでは素手で熊に似た熊に立ち向かうしかありません。

しかし、少年Aはコンビニに駆け込んで行きます。素早い行動です。そして暫くすると、その手には剣が握られています。最初に持っていた剣よりは多少見劣りしましが、何も無いよりはマシでしょう。これで準備が整いました。剣を構えて熊に似た熊と対戦です。

その様子を見ていた少年Bが羨望の眼差しでコンビニを見ています。早速、携帯を取り出して少年Aと連絡を取り合うようです。おっと、訓練中は通信端末の持ち込みは厳禁のはず。それは魔法の携帯と認識しました。

「もしもし、少年A」
「なんだい、少年B」
「お金が無いのに、どうやってその剣を手に入れたの? 借りたの?」
「いや、買ったんだ」
「お金で?」
「いや、付けさ」
「なんだって?」
「訓練施設の近くだけあってさ、訓練生には付けがきくんだ」
「それは良かったね、じゃあ」
「ああ、また後で」
「愛しているよ」
「俺もだよ」

その話を聞きつけた少女Aが猛ダッシュで駆け出していきました。きっとお弁当の匂いを嗅ぎつけたのでしょう。それともトイレでしょうか。

路上に寝転がっていた熊に似た熊も起き上がりました。ガオー(俺の敵はどいつだ)と言っています。どうやら視力に問題があるようです。

熊に似た熊と対峙する少年Aの横を韋駄天のごとくすり抜けていく少女Aです。その姿は飢えた野獣そのものです。そしてコンビニに入るとお弁当を片っ端からカウンターに並べました。

「おっちゃん、弁当」言葉を話す野獣のような少女Aに、
「あいよ、温めるからちょっと待ちな」と店のおっちゃん、それを制して、
「うんにゃ、いい。このまま食う!」の少女Aです。

ガシャポン、キーキキ、ウエぇ、ペロリンコ、プッ。

少年Bがゆっくりと山を降りてきます。その足取りは一歩また一歩と慎重です。その慎重さは空腹のため走れないとも考えられます。

少年Aも空腹ですが、それに耐えながら熊に似た熊と戦っています。カキクケコキーンと、剣と熊に似た熊の鋭い爪が激しくぶつかり合います。

ブル(お主、なかなかやるな)
「お前もな」

少年Aは戦いの中で、熊に似た熊との意思疎通を会得したようです。ついでに互いの強さを認め合ううちに友情のようなものも芽生え始めているようです。

一方、コンビニの店内では残飯を荒らす獣のように、少女Aがお弁当を食い散らかしています。見かねた店のおっちゃんが声を掛けます。

「おい、あんた。もっとゆっくり食べないか」
「プハー、生き返る~」
「ところで、お代をまだ貰ってないんだが」
「いくら~」
「ちょうど100万だな」
「ブハー、100万? 外のあいつに付けてくれ」
「いいのか?」
「いいとも。あいつは俺の仲間だ」
「じゃあ、ここにサインしてくれるかい」
「ああ」

おっちゃんが書類のようなものをカウンターに置き、ペンを少女Aに渡しています。少女Aはペンを握ると屈み込んで書き始めましたが、何故かおっちゃんも一緒になって屈み込んでいます。そしてその口が少し、綻んだようです。

「あんた、女の子だったんかい」
「なんで俺の名前が」

どうやら『付けの書類』に少女Aの名前が既に書かれていたようです。それは少年Aの『のたくった』特徴のある筆跡でした。

「あの○○野郎があ!」

女の子が口にしてはいけない○○が飛び出してきました。怒り心頭の少女Aはその勢いで店の外に躍り出ます。

「おい、少年A。あれはなんだ!」

少年Aは熊に似た熊と格闘中です。カキクケコキーンが山中に木霊しています。少女Aの気配に少年Aが一瞬だけ振り向きました。

「いい時に来た、少女A。加勢してくれ」
「ああ、いいとも」

少女Aは夜空に向けて弓を引きます。かつてない力を込めているようです。その矢は金の矢でしょうか、それとも普通の矢でしょうか。それとも——。

「クラスター・アロー」

少女Aは叫びながら矢を放ちました。その声は力強く、怨念が込められているようです。それは技の名前なのでしょうか、それとも矢の種類なのでしょうか。それはともかく、叫びながら矢を放つヒーロの真似は、少女Aがやってみたかった事の一つです。願いが叶ってなによりです。

少年Aと熊に似た熊は接近戦の最中です。力と力でお互いを押し合っています。息をすれば相手に届きそうな、そんな感じです。

少女Aの放った矢が、その放物線を描いて矢の先端が下を向き始め、少年Aと熊に似た熊の頭上めがけて落下していきます。このままでは、どちらかに当たるのでは、と思われた時、落下する矢が複数の矢に分かれ、それが少年Aと熊に似た熊の周囲に、まるで檻のように突き刺さりました。身動きの取れなくなった一人と一匹です。

「なんだ! これは」
フンガー(ふざけるなー)と言っています。少年Aは檻のような矢のせいで剣を振るうことが出来ません。檻の中の一人と一匹です。

「少年A! そこで反省しろ」

少女Aが叫んでいます。勝ち誇ったポーズも忘れません。そこに少年Bがやっと下山してきました。少年Bは熊に似た熊と戦う少年Aを見て愕然としています。それは少年Bにとっては許しがた光景だったようです。少年Aが知らない誰かと抱き合っている、少年Bの曇った眼には、そう写ったようです。

「少年A! 僕は、僕は、」

外の騒ぎに呆れたコンビニのおっちゃんが迷惑顔で店から出てきました。さあ、これで全員が揃いました。一体これから何が起こるというのでしょうかー。

◇◇
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