じーさんず & We are

Tro

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#5 魔王をやっつけるで章

#5.2 じーさんず

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戦いの火蓋が切って落とされました。ドローンもブンブンと飛んでいます。

「まいったー、降参だー」

マオが両手を上げています。拍子抜けのアッ君とシロちゃんです。それを説明するマオです。

「今回は偶数回だ。魔王が負ける番だからな。これはお約束だ。負けを認めればやらずに済む」
「成る程、楽なもんだ」と納得するアッ君に、
「これでお終いか」と残念そうなシロちゃんです。

説明を聞いて安堵するアッ君とシロちゃんです。一方、勇者候補の3人は困惑しています。取り敢えずまた確認するようです。

「マオさん! 少し待てもらえますか?」と中断を申し入れる少年Aに、
「ああ、待ってやるとも」と態度のでかいマオです。

少年Aが政府に確認している間もドローンはブンブンと言っています。

さあ、出ました。政府の回答です。それは『目の前の敵を倒せ』です。正確には『全ての敵を撃破、殲滅せよ』です。当初らの指示と変わりません。

「マオさん!」と何かが吹っ切れた少年A。
「なんだー」と驚くマオ、それは意外だとでも言いたいのでしょうか。
「死んでもらいます」と高らかに宣言する少年Aに、
「あっそー。なんだって!」としっかりと聞いていないマオです。

少年Aが剣を構えてマオに突進していきます。逃げるマオです。魔剣は持っていません、その心に『負けん』があるだけです。

少年Bもアッ君に詰め寄りました。ちょうど3対3、上手い組み合わせのように感じます。

「お爺さん、僕のために死んでください」
出ました、少年Bの、死の宣告魔法、その呪文です。

「なにおー、どの口がそんなふざけたことを言うんだ」
アッ君が少年Bの頬をつねっています。死の魔法、破れたり! です。

弓を構える少女Aにシロちゃんがジジイとは思えない動きで接近、立ったりしゃがんだりの屈伸運動をしています。身長があるせいか、その動きに弓の照準が合いません。何という単純かつ効果的な技なのでしょうか。そして時折見せるイヤラシイ目つきです。その分、余計にシロちゃんを警戒してしまう少女Aです。

一方、走り疲れたマオが転倒しました。

「丸腰の俺をいたぶって、それでも恥ずかしくないのか!」
「死んだら分からないですから、問題ないです」と容赦のない少年A、やる気です。

万事休すのマオです。ここで人生、終了でしょうか。少年A、大きく振りかぶってマオにトドメを刺しに振り下ろします。

ビューン、ポン。

アッ君のレーザー剣です。それが伸びて少年Aの剣を弾き飛ばしました。

「おい、お前。剣士として恥ずかしくないのか!」

アッ君が真面なことを言っています。このジジイ、見識があったのですね。その隙に、アッ君の後ろに隠れるマオです。全く役に立ちません。

シロちゃんの動きが目障りになってきた少女Aは、矢を適当に放ち始めました。それはシロちゃんの腰を抜かすには十分な威力があります。とうとうシロちゃんは撤退を余儀なくされマオの後ろに隠れます。

バラバラだった3人が図らずとも一箇所に寄せられてしまいました。更に悪いことに岬の先端です。もう後がありません。こうなると少女Aの思う壺です。威力の大きい矢に変えて『じーさんず』に狙いを定めます。

「あのお姉ちゃん、やばいぞ」
シロちゃんの呟きで選手交代です。シロちゃんを先頭にマオ、アッ君が並びました。

「シロちゃん、責任取れ」とマオがシロちゃんを責め、
「そうだぞ、このエロジジイ」と続いてアッ君も責め立てます。

巻き添えを食わないように少年A、Bが少女Aの後方に下がります。万事休す、『じーさんず』。

少女Aの脳裏に賞金を貰う自分の姿が浮かんでいます。これで終わる、これで貰える、エヘヘ、とバラ色の将来が確約されたようです。

一方、『じーさんず』では、マオが策略を講じています。

「シロちゃん、歳の順だ、先きにいってくれ」
「いやじゃ」と駄々を捏ねるシロちゃん。
「アッ君、俺より年上だよな。俺の前に並べ」と屁理屈のマオに、
「バカか、俺は3才だ」と反論するアッ君、それに、
「俺は赤ちゃんだ、いいから前に並べ」と更に反論するマオです。

無理やりアッ君の後ろに並ぶマオです。これのどこが策略だったのか、そう見えた私が恥ずかしいです。

「いい風が吹いてきたの~」

シロちゃんの遺言は『いい風』でした。強い海風が『じーさんず』を襲います。天も運も全て『じーさんず』を嫌っているようです。仕方ありません!

少女Aは悠々自適の人生を担った矢を解き放しました。それは金の矢ですか、それとも幸せの黄色い矢ですか?

「魔法奥義、カマイタチ」

シロちゃんが魔法を発動させました。何が起こるのでしょうか。少女Aの放った矢が真っ赤になって、一直線に向かってきます。それが目前に迫った時、海風が一瞬だけ強くなり、矢が少しだけ揺らぎます。それ目掛けてシロちゃんが小石を投げつけました。どんだけ動体視力が良いのでしょうか。それが矢に当たり爆発が起こりました。ドカーンです、バーンです。

まだ続きます。爆発の粉塵で『じーさんず』の周囲が見えなくなりましたが、今度は地震が起こったように地面が揺れています。その影響でしょうか、岬の先端が崩れ落ちていきます。ああ、じーさんず。

勇者候補の3人が岬のあったところに駆け寄ります。そこから見える海辺に白衣が3着、浮かんでいるのが見えました。ああ、じーさんず。最後はお魚の餌になって役に立ってください。

「やったよ」
「やってしまった」
「これで、ああ、これで」

少年A、B、少女Aの感想です。これで晴れて勇者の仲間入りです。勇気ある若者の勝利です。ああ、じーさんず。

事態を確認したドローンがその役目を終えたのか、あらぬ方向に飛び去って行きました。それに時をおかず、少年Aの携帯に着信音が鳴ります。

「はい、やりました、終わりました」

少年Aが言うまでもなく、政府はドローンで監視していたので一部始終を把握しています。あえて言うこともないでしょうが、興奮のあまり言わずにはいられないのでしょう。だが、しかし……です。

「なんですか、それは!」

少年Aの顔が険しく、それは怒りの顔に変わっていきます。

「それは……え!、はい、はあ? え? はい、はあ? うっそー」

電話はそれで切れたようです。少年Aは怒りのような悲しような呆れたような、残念のような、得体の知れない闇に飲み込まれていきます。携帯を持った手を下ろし、しばし放心状態となりました。

◇◇
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