じーさんず & We are

Tro

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#5 魔王をやっつけるで章

#5.3 ドラゴン

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「少年A、少年A、少年A!」

少年Bが少年Aを呼び続けます。その甲斐があってか、少年Aの瞳に光が戻りました。再起動完了です。

「ああ、悪い。実は残念は知らせがある」

少年Aの、痛いまでの表情。この時点で少女Aが半泣き状態になりました。バラ色の人生計画が倒産です。

「覚悟は出来ている。何でも行って」
少年Bが魔法で自身の精神を強化しました。便利な魔法です。

「実は、マオさん達は、魔王ではなかった」
「うえーん、それ本当? なら私達の……」

少女Aが本泣きに移行しました。バラ色の人生計画が頓挫した瞬間です。

「うん、それで当然、賞金も無し、今回の魔王討伐は終了したと」

涙を流す少年Aです。それを堪えている少年Bですが心の中では大泣きです。少女Aはその場に崩れるように倒れました。壮絶な惨敗です。ああ、勇者候補~。

「だけど、まだ、僕達にはチャンスがある」と希望を失わない少年A。ですが、

「ないよー、チャンスって、気休めは言わないで~」と人生に破綻した少女Aが吠えまくります。その目にはどこにも希望が見出せません。

「チャンスはある。こっちにドラゴンが向かってきているそうだ。それが直に国を襲うらしい。それをここで阻止したら賞金が出るらしいんだ」と希望を語る少年A。

「ドラゴンだって。それは大きすぎるよ。とても僕らの手には負えない」

少年Bが冷静な魔法で分析をしています。ドラゴンとは一体。それに『大きすぎる』と言っていますが、その大きさを少年Bは知りません。ただ、ドラゴンという響きだけで『大きい』と予想したようです。

「ドラゴンですって! バカにしないでよね。全くバカにして……」

少女Aは大いなる絶望の淵から立ち直ることは、まだ出来ないようです。借金の返済方法も考えたくありません。

◇◇

「おりゃー」

少女Aの絶望の目に、泥人形が3匹、湧き上がってくるのが見えました。それはそれはオゾマシイ光景です。思わず少女Aは「オエェ」です。ついでに少年A、Bも見ては「オエェ」です。私も見て「オエェ」です。

「ほら、さっさと起きろ、ジジイ」

その下品さから容易に『じーさんず』であることが予想できます。ちっ、魚の餌にならなかったのですね。良かったです。

「マオさん達ですか」

少年Aが、その腐った泥人形に勇気を捨てて声を掛けてみました。

「おう、そうだ。どうだ、終わったんだろう」と泥人形マオ。
「ええ、全て終わりました。そして僕達の人生も」と失意の少年A。
「そうか、終わったか。なら、帰るとしよう」
「マオさん! あの」
「なんだ?」
「あの、謝りませんからね、その」
「あん? そんなのはいい。役目だからな。こっちは間違えられて散々だが」
「マオさん! あの」
「なんだ? あのあのって」
「あの、ドラゴンって知ってますか?」
「ドラゴン? ああ、知って……ない」

知ったか振りをしようとして途中で止めたマオです。もう、そんな空元気は残ってないようです。

「そうですか(期待を持たせないでくださいよ)」の少年A。
「何があった? ああ、いいや。俺、帰るから」と関わりたくないマオですが、
「ドラゴンとは、あれじゃろう」と大きい泥人形が喋りました。やっと立ち上がったシロちゃんです。

「知ってるんですか、ドラゴンを」と何かに希望を見出した少年A。
「勿論じゃ」と偉そうなシロちゃん。
「さすがは、えっと、教授?」
「いかにもじゃ」
「教えてください、ドラゴンの正体を」
「正体も何も、お主も知っておろうが」
「それが分からないんです」
「はあ、仕方ないの。その代わり」
「それは無しで」
「無いのか~、もう、あれじゃよ、あれ、台風のことじゃ」
「台風?」
「やっぱり知らんのか。台風にはな、それぞれ名前が付いとるんじゃ、今度来る大風055号が、それ、ドラゴンじゃ」
「ああ、それじゃあ、どの道ダメだ~」

「ドラゴンがどうしたって?」
残りの泥人形が喋りました。やっと生き返ったアッ君です。

ところで、この泥人形、どうしてここにあるのでしょうか。スローで再生してみましょう。

シロちゃんの投げた小石が風で舞い上がり、それが上から高速飛来する矢にあたります。矢は地面に落下、爆発、炎上です。『じーさんず』の目前で起きた爆発はシロちゃんの魔法で直撃を免れています。それが『かまいたち』なのでしょう。

そして爆発で巻き起こった粉塵の中で、3人は白衣を脱ぎ捨てて海に放り投げています。その後、アッ君がレーザー剣で岬をぶった切り、爆発の衝撃でできた穴に収まったところで、大量の土砂が降り注いできます。これで泥人形と爆発で死んだことにする偽装の完成です。

「どうでもいい、俺は帰るから」

素っ気なく帰ろうとするマオです。でも、方角も分からない方向音痴がどうやって帰るのでしょうか。

「待て、マオ」
マオを引き止めるシロちゃんです。

「なんだよ、シロちゃん」
「ドラゴンを何とかしないとお前の帰るところも無くなってしまうぞ」
「はあ? 何で」
「一国を飲み込むほどの大型台風じゃ、タダではすまん。だからドラゴンなんじゃ」
「帰る場所が無くなるのは、困るな。ところで少年、お前もドラゴンを何とかしたいのか?」
「出来れば」と言いつつ、余り期待はしていない少年A。
「何で? お前達には関係ないだろう」
「実は、魔王討伐は失敗で、それでドラゴン退治するば何とかなるらしいんです」

「それは嘘だな」
アッ君が険しい顔で割り込んできました。それに驚く少年Aが反論します。

「いえ、政府が検討してくれるって言ってましたよ」と無垢な少年A。
「思うだけなら誰でも出来る。それで何度も騙されてきたから分かる」とこちらも無垢なアッ君(嘘です)。
「そんな~」と嘆く少年A。いいんですか? その言葉を信じても。

「どっちにしろ、何とかせなならんのは変わらんぞ、おい、マオ」
マオの帰るところはわしの帰るところ、と決めているシロちゃんです。

「そう言われてもな~、無くなるのは困るが~、俺の力じゃな~」と言いつつ本気ではないマオ、のはずです。

「おい、マオ。何とかしろ。俺の帰る場所を守れ」
マオの帰るところは俺の帰るところ、と決めているアッ君です。

「でもな~、せめてあんにゃろうがいれば話は別なんだがな~」と、さもやる気がありそうなマオです。
「あんにゃろって?」
「ああ? あんにゃろって、おお!」

はい、マオが驚くのも無理はありません。私の登場です。いきなりで済みません。

◇◇
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