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#5 魔王をやっつけるで章
#5.4 魔王降臨
しおりを挟む「何でここに!」と驚愕するマオに、
「あら、呼んだでしょう?」と、さらりと答える私。
「呼んでない」
「では、帰ろうかしら」
「じゃあ俺も」
「え? あなたはここで暮らすのよ」
「え? 嘘でしょう?」
「え? 本当よ」
「魔王様、どうがご慈悲を」
「ええ? この人が魔王?」
私を見て驚く少年達です。私の登場には驚かなかったくせに。世間ずれしているようですね。
「おい、マオ。あんにゃろうが来たんだ、頼め」
私を『あんにゃろう』呼ばわりするアッ君です。ムカッ、です。
「いや、俺は何も言ってないぞ」と前言撤回の早いアッ君。
「ちと、触っても良いかの、それなら許す」
私に触れようとするシロちゃんです、ムカッ、です。
「いや、許さなくても、いいんじゃ、ああ、いいんじゃ」と自分を見失うシロちゃんです。
「俺達が倒すはずだった魔王が、これ?」
私を『これ』呼ばわりする少年A。ムカッ、です。
「あの、魔王さま。おねげえしますだ。助けてくんろ、私、生活、ヤバイ」
私にすがる少女Aです。既に人生にお困りのようです。ホホ。
「わかった! 俺が何とかしよう」
俺、とはマオのことです。さて、どんな悪知恵を披露してくれるのでしょうか。
◇◇
嵐の前の静けさ、は疾《と》うに過ぎました。今は吹けよ風、嵐の真っ最中です。幸いなことに雨はそれほど降っていません。ガオーとドラゴン級の台風がすぐ目の前に迫ってきました。陣頭指揮はマオにお任せです。それぐらいは働いてもらいましょう。
今回は『じーさんず』と勇者サークルの合同作戦です。私一人でも良かったのですが、何やら恩を売りたいマオの浅知恵で全員参加型のイベントになりました。
まずは私からです。『えいっ』と何かをしました。その何かとは企業秘密です。私の『えいっ』で台風の左回転が止まりました。静止状態ですね。大風の中心もそれなりに大きいです。一度は行ってみたい場所となりました。次回はご一緒しましょう。
次はアッ君の出番です。
「奥義、千切り」
奥義を付けるのが好きなようです。付けても付けなくても同じことだと思いますが、格好つけたい年頃なのでしょう。ビーム剣の剣先が天まで届き、渦巻き状の雲を細切れにしていきます。これで台風の勢力がだいぶ弱まりました。しかし、このまま放置していると元に戻ってしまいます。自然の驚異ですね。
次は勇者サークルの出番です。メインは弓使いの少女Aです。残っていた爆発系の矢を束ねてシロちゃんが魔改造しました。それに少年Bが「頑張ってね」と魔法の言葉を振りかけて完成です。
矢が大きくなったので少女A一人では扱いきれません。そこで少女Aと少年Aが向かい合うように弓を引きます。遠目には抱き合っているようでもあります。いえ、実際は抱き合っていたかもしれません。少年Bが嫉妬の嵐を発生させています。しかし、これはお勤め。ぐっと我慢する少年Bです。
「ちょっと、触んなよ。当たってるぞ」と少女Aに、
「仕方ないだろう」と少年A。どうやら本当にどこかが触れている? のですか。
少女Aと少年Aのやりとに聞き耳をたてる少年Bとシロちゃんです。
「なんでわしにやらせてくれんのじゃー」
シロちゃんが駄々をこねています。
「身長が合わんだろうが」
マオがシロちゃんをなだめています。目を離すと何をしでかすか分からない二人です。
さあ、準備は整いました。
「やったれー」
マオの合図で矢が放たれました。そういえばマオは何もしていませんね。これは後でお仕置きが必要です。
矢は一直線に飛んでいきます。飛びます、飛びます。あれ、ちょっと届かないかもしれません。そう思った矢先、矢のロケットブースターが点火、勢いを増して飛んでいきます。
ドカーン、ゴロゴロ、パッパ。
目標地点で大爆発を起こしました。結果やいかに……ガオーのドラゴン級台風が消滅しました。めでたし、めでたしです。勇者サークルの3人は抱き合って喜び合います。じーさんず達は……いいでしょう。
喜びが冷めぬ内に早速、少年Aが政府に報告します。これで明るい未来への扉が開かれたことでしょう。
トゥルルル・ツートン・ツートン・ガガガ。
さあ出ました、政府の回答です。それは、台風が自然消滅したので帰還せよ、ということでした。そこで自分達の功績を主張しましたが、確認のしようがないためホラ吹き少年隊と扱われたようです。
報告後、携帯を投げ捨て踏みつける少年Aです。それを見た少年Bが少年Aに抱きつき、二人で声をあげて泣き崩れるのでした。少女Aは、……そうですね、半狂乱です、はい。
◇◇
マオが私の元にすり寄ってきました。
「これで会社、いや国も安泰だ。さあ、終わったことだし帰ろうかな。ねえ、魔王様」
「え?(あなたの言っている意味が分かりません)」の私です。
「え?(冗談だろう?)」のマオです。
少女Aが私の元にすり寄ってきました。
「魔王様~、私を、雇って、くださいまし~、行くところが、ないよ~」
「う~ん、いいでしょう。付いて来なさい」と慈悲深い私です。
「ありがとうごぜいますだ~」と感謝感激の少女A。
「他の2人もいらっしゃい」次いでなので、の私に、
「「はい」」と元気よく答える少年A、Bです。
マオが半泣きの顔を私に向けています。
「ねえ、俺は? 俺は?」
「え?(あなたの言っている意味が分かりません)」の私。
「マオ、死んで詫びろ」
「そうじゃ、それで許す」
アッ君とシロちゃんが、これでもか、というぐらいマオに詰め寄っています。
「さあ、帰りましょう」と撤収の私。
「ねえ、俺は? 俺は?」と泣きながら訴えるマオ。
さて、一件落着しましたが、政府の、あのやり方は許せません。通例の約束を反故にした上に殲滅を図るとは。それに勇者候補に対する傲慢な態度。それならこちらも手を打たねばなりませんね。
そうですね、あの国を征服してもいいかもしれません。
「ねえ、俺は? 俺は?」と泣きながら訴えるマオ。
「え?(あなたの言っている意味が分かりません)」の私です。
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