リンダ

Tro

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#11 境界線

#11.1 その理由と動機と根拠

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ガス欠で前進を諦めた車。車外は冷たい風が吹き荒れている。俺の次の行動を待つリンダ。途方に暮れる俺。外界は真っ暗闇で、もはやお得意のフラッシュバックは終演のようだ。

全てが最悪のように思えるが、幸いなことに目的地までは数百メートルから数キロの距離である。幅があるのは正確な位置が分からないためである。それでも大体、そんなところであろう。取れる手段は、このまま何もせず動かないこと。それは遭難した場合では有効であろう。しかし誰かが救助に来てくれる訳ではないので却下だ。次に、この寒空の中を歩いて移動する。それは可能だと思われるが、仮に目的地に辿り着いたとして、その次の手立てが無い。そこで奇跡的に何かが起こらない限り、ここに戻って来る必要がある。

奇跡が起きる確率はゼロに等しい。そもそも何が起これば奇跡なのか想像することも出来ない。いや、この異様な世界から脱出できることだろうか。そうすれば万事解決である。

奇跡を期待せず、そのまま目的地を通り過ぎるという手もあるだろう。その場合、どこまで行くかだが、徒歩で移動できる距離は高が知れている。そもそも俺が歩ける距離など笑ってしまえる程、短いのだ。自慢しても良いだろう。なら、俺が行けるところまで行き、その先をリンダに託す。そうすると、おそらく物言わぬ屍の俺が数年後に発見されるのがオチであろう。もしかしたら永遠に発見されないかもしれない。だが、死後のことまで面倒は見れないので問題は無いだろう。さて、どうしたものか。

「リンダ、俺はアホか?」

「今頃、気が付いたの? 私は最初から知ってたわ、よ」

という感じで俺を嘲るリンダである。アホならば後先を考えても仕方なかろう。どの道、行動を起こすまでは現状は何も変わらないはずである。それでは少しでも足掻くことをしなければならないだろう。それが俺達の宿命である、はずだ。

ここで位置関係を確認しておこう。大雑把に言うと地図上で左からA国、B国、C国の三国が縦長に繋がっている地域、そのC国を右側に少し出たD国が俺達が居る場所である。D国を基準に見れば、そこの南西部分である。

C国の国境を越え、そのまま右方向、つまり東に進んだ直後にジョンが車から消え、その付近で夜を明かしたところでリンダも消えたわけである。よって俺の勘と記憶が正しければ、西の方角に向かえばC国の国境付近に行き着くはずである。そしてその道は目の前にある道である、はずだ。

俺がリンダにアホであるかを尋ねたのは、この寒く暗い道を歩いて行くことの理由が欲しかったからである。このまま車の中に留まれば安全ではあるが、何も起こらないし、何も解決しない。されど凍えそうな外を歩いて行くのも愚かすぎるが、他に選択肢が思いつかない。それでも前に進むには、それしか方法はないだろう。いわば賭けのような選択である。このままの方がより長く生存できる可能性は高いが、それはいずれ時間切れとなる。ならば賭けるしかないと俺は思う。その理由、動機、根拠が、馬鹿なことをしたものだと言えるようなものでなくてはならないからだ。自分で自分の背中を押しているようだが、それが俺が尋ねた理由である。

「リンダ、俺達はこれから車を降りて道を歩いて行く。はぐれないように付いてきくれ」

「何を言っても無駄のようね。分かったわ、付いて行く、わ」

と決心を固めたリンダ、のような気がする。イザという時には、なかなか頼りになるリンダである。

「さあ、行くか。一緒に日の出を見に行こう」

「おう!」

◇◇

威勢の良い掛け声と共に車を降りようとするリンダである。しかしそのまま車を降りられては困る俺である。

「ちょっと待ってくれ、リンダ」

「へぇ?」

と困惑の表情を浮かべるリンダ、のようであるが、外は極寒の世界である。リンダにとってみれば暑さ寒さは関係ないだろうが、見ている此方としては見過ごせない問題である。薄着のままのリンダを外に出したとなれば、世間に顔向け出来ないというものだ。そこでジョンが着ていた防寒着を着るように指示したところである。

これでようやく車の外に出た二人であるが、例によって頭にはヘッドライトを、互いの体にはロープを繋げ、遭難対策もしたところだ。暗闇の中、リンダが先行し行方不明にでもなれば再会するのは難しいだろう。

これから歩く道は舗装された道である。その中央を歩いても問題はないが、万全を期すため道路脇を進むこととした。天候は相変わらず真っ暗闇、気温が下がり始めてから吹き始めたであろう風は、そう強くはない。視界は頭に取り付けたヘッドライトの光が届く範囲である。では、二人並んで歩き始めるとする。いざ出陣じゃ。

◇◇
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