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#10 世界に吹く風(追跡編)
10.2 ミツコの風
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さあ、話はグイーンと戻って、季節風に乗って移動するケイコです。そして何時ものようにグースカと寝ています。そうして知らぬ間に振り落とされたケイコは、大きな葉っぱベッドの上で目を覚ましました。
その葉っぱベッド、ケイコの家のものとは比較にならない程、大きな葉っぱです。そう、ここは自然豊かなジャングル、葉っぱもスクスクと育ったことでしょう。
「むにむに」
眠い目を擦っているケイコは、慣れ親しんだ葉っぱベッドの揺れ具合に錯覚したのか、家に戻っていると勘違いしているようです。それも周囲には大きな木が沢山生えていますから、大変よく似ているのです。但し、一箇所だけ違う箇所があります。それは——
起きたばかりのケイコに、大口を開けてワニさんが突進してきました。そう、違う箇所と言えば目の前が『川』だということでしょう。それも川幅の広い、濁った水がゆっくりと、それでいて力強く流れています。正しくジャングルを流れる川です。
そうしてワニさんは躊躇なく、寝起きのケイコをガブリンチョです。いきなり食べられたケイコは、きっと、おそらく、たぶん、何が起こったのか分からなかったことでしょう。そしてワニさんもケイコを美味しく食べた『つもり』のはずです。
「なにすんじゃあああ、こらあああ」
腰に手を当てたプンスカのケイコがワニさんの長~い口の上に乗っていました。もちろん、ワニさんも再度、ケイコを食べようと口をパカパカしましが、それをヒラリヒラリと躱すケイコです。それでも何度か挑戦するワニさんですが、食べられないと思ったワニさんは退散していきます。それに、
「こらあああ、待たんかあああ」のケイコ、寝起きなので不機嫌です。しかしワニさんの方は、もうケイコには興味がありません。それは、無駄な努力をしたくないから、という理由もあるでしょう。
スイスイ・クネクネと川を泳ぐワニさんです。それをわざわざ追いかけたケイコは、ワニさんの目の前で「こうしてくれよう」と、羽をバタバタさせました。普段のケイコであれば全く威力の無い微風なのですが、不機嫌なのでパワーアップしています。その風がワニさんの両目を直撃、ショボショボしてくるワニさんです。
「姉さん、勘弁してくださいよ。あっしは忙しんで、遊んでる暇は無いんですよ、では」とワニさんが言ったような。そしてケイコを無視してスイスイ・クネクネです。
それに、「待ってよー」と追い縋るケイコ、(ああ、厄介な相手に絡まれてしまったな)とボヤいた、ようなワニさんです。
「何の用ですか、姉さん」と言ったようなワニさんに、
「お迎えに行くんじゃが、どっちに行けば良いかのぉ」と尋ねるケイコです。
「(何を言ってるか、さっぱり分からん)あっちですよ」と答えたようなワニさんに、
「そうか。では、ちと世話になるでのぉ」とワニさんの口の上に立つケイコ、
「(やれやれ。これは下手に逆らわない方が良さそうだ)どうぞ」と言ったようなワニさんです。
こうして、川をスイスイ・クネクネと下っていくケイコです。時折、跳ねる水を受けては「ちょっ」と声を上げ、その度に避けています。本当は、(ちょっとは手加減してくれないかのぉ)とワニさんに言いたいのを我慢しているようです。
そうこうしているうちに川幅が少し狭くなり、川の流れも速くなったような、そんな感じの時です。前方に小さな『何か』がフラフラと浮かんでいる、というか流れているのが見えて参りました。
それは流木か、それともなんでしょうか。もう少し近づいてから見てみることにしましょう。
(そろそろ岸に上がりたい気分なんだが、さて、どうしたものだろう)とワニさんは思ったような。そこで、ふと先程の『何か』を見ると、それは小さな枝のようなものを束ねたゴミ? いいえ、筏のようです。そしてその上には、厄介者のケイコに似た、見るからに美味しそうな餌が乗っているようです。
ここでゴックンと喉を鳴らしたワニさんですが、ちょっと待てよ、と考えを巡らします。それは目の前の餌を取るか、それとも適当なことを言ってケイコを騙して自由を取るか、です。
そして考えた結果、自由を取ることにしたのです。その理由はケイコの時と同様に餌の捕獲に失敗するリスクを考慮したからなのです。(自由になればまたチャンスは訪れる、俺は自由になりたい、俺は自由だー)と思ったような。
「姉さん、あれは『お探し』の方ではないですか?」とワニさんが言ったような。それに、
「どれどれ。う~ん、違うようじゃな」と額に手を翳して目を凝らすケイコです。
「(そんなことは百も承知)いえいえ、そうですよ、間違いありません」と疑い深いケイコを焦ったく思うワニさん、のような。
「そう云われれば、そのような。でもなあ、違うようじゃが」と半分だけその気になったケイコです。それならば、あともう一押しとワニさんが、
「絶対そうです、保証しますって。ほら、近くで確かめてご覧なさいよ」と、どう保証するのか不明なワニさん、のような。
「そうかのぉ。じゃあ、近づいてくれまいか」やっとその気(騙された)になったケイコに、
「それよりも、もっと良い方法がありますぜ」と言ったようなワニさん。
「ほう? どんなあ?」
「こうです!」
ワニさんは急に口をパカッと大きく開け、その勢いでケイコが宙に浮いた瞬間に猛烈な鼻息でケイコを吹き飛ばしました。これが『良い方法』のようです。「あうー」と叫びながら飛んで行くケイコです。
◇◇
どんぶらこ、どんぶらこ。川を筏で下る冒険の子です。小枝を束ねただけの簡易な筏ですが、冒険の子が乗るには十分な大きさです。その子が、どうしてこんなところで川下りをしているのかは分かりませんが、それはきっと遊びの一種なのでしょう。
しかしここは小さな冒険の子にとっては危険が一杯のジャング。しかも穏やかな川の流れと言っても冒険の子にとっては大海原のようなもの。プカプカと浮いているだけも精一杯です。
ほら、すぐ後ろから凶暴なワニさんが迫ってきています。ですがそのワニさんの姿を冒険の子が直に見たわけではありません。今まで培ってきた経験で、迫り来る危険を察知したのでしょう。急いでオール代わりの枝で水面をカキカキしていきます、よいしょ、です。
「あうー」
後方から奇怪な音が聞こえてきました。これは急がなくてはなりません。危機が急速に迫っています、よいしょ、です。
「とうぉぉぉ」
ケイコがクルッと回って筏の上に着地です。序でにドブーンと大揺れする筏、「きゃー」の冒険の子です。その隙にケイコから解放されたワニさんが、どこかにスイスイ・クネクネと行ってしまいました、あばよ、です。
「あなたは、誰ですか」
冒険の子が恐る恐るケイコに尋ねました。その声は小さいのですが、はっきりとした口調です。そして同時にワニさんが去って行ったことを、気配で感じ取る冷静さも兼ね備えているようです。
「私は、ケイコ。突然お邪魔して済まんのぉ」と、ぺこりと頭を下げました。その姿勢に安心したのか、警戒を解いた冒険の子です。
「私は、ミツコです。よろしくです」と、こちらもぺこりと頭を下げ、
「これは、ご丁寧に。こちらこそ、よろしく、です」とまたぺこりと頭を下げるケイコです。そして「付かぬ事をお聞きしたいのですが」と切り出します。
「どのような事でしょうか」
「実は、マチコという子を迎えに来たのですが」
「マチコ……さんですか」
「はい、そのマチコが、どうも迷子になったらしく、探している最中なのです」
「まあ、それは大変ですね」
「そうなんです。全くアホな子なものですから、私も手を焼いているのです」
「まあ、それはそれは」
「そこで、奥さん」
「いいえ、ミツコです」
「そのマチコに心当たりはありませんでしょうか」
「まあ、そうですね。初めて耳にするお名前なものですから。以前に聞き及んでいれば頭の隅っこの方にでも隠れているのでしょうけれどね~。お役に立てませんで、申し訳ありません」
「いえいえ、そのお気持ちだけでも感謝致しますわ、奥様」
「いいえ、ミツコです」
「そうでしたわね、ホホホ」
「ホホホ」
そうこうしている内に、川幅も狭くなったようで、筏が進む川の流れが速くなってきました。そして障害物を発見。前の方で木が生えているのか、それともゆっくりと流れているのか、そのどちらでも筏の進む方向にあるため、避ける必要があります。
ケイコとの会話中でも周囲の警戒を怠らないミツコです。笑顔のまま、キリッと障害物を確認し、素早く回避行動を行います。そして、利用できるものは何でも利用するとばかり、ケイコに筏の右側に寄るように指示を飛ばします。
「こう?」少し不安そうなケイコがミツコに確認を求めると、
「そうです。でも、もう少し右に寄って貰えると助かります」と追加の指示を出すミツコです。
そうして障害物に近づいた時、「よいしょ」と枝で障害物を突くミツコ、これで回避することが出来ました。そして、
「「やったー」」と喜び合うミツコとケイコです。
◇◇
暫く順調な旅が続きます。その間にミツコが、筏で川下りをしている訳をケイコに語りました。そこは、自己鍛錬の序でに遊びながら何か出来ないか、と考えて川下りを思い付いたそうです。
その話を聞いたケイコは、日々遊んでばかりの自分を反省し、ミツコの信念に胸を打たれたのでした。そして、明日から私も頑張ろう、帰ったら頑張ろう、覚えていたら頑張ろう、と誓いを立てたのでした。
◇◇
川は次第に左右へと曲がりくねるようになってきました。そして流れが速まるにつれ、ミツコとケイコの共同作業が続きます。狭い筏の上を忙しく立ち回りながら、徐々に信頼関係が築かれていくのでした。そしてそれを試すかのように最大の難関を迎えることになったようです。
「むむ、これは」
徒ならぬ気配を感じ取ったミツコがケイコにキリッとした顔を向けました。その表情でケイコも、(なんか、やばい)と悟り、お互い無言で頷き合うのでした。そして、
「とうぉぉぉ」の掛け声で、筏から飛び立つケイコです。そして上空に舞い上がったケイコは、この先が無くなっている、つまり、川が途切れていることを確認し、ミツコに見たままを報告します。
「この先、川が無くなっているのを確認しました、以上」
「お疲れ様です。それはおそらく『滝』ですね、分かりました。でも、それでも私たちは——」
「「行かねばならないのです!」」と言葉が重なるミツコとケイコ、息ぴったしです。
ザザザー・ゴゴゴーン・ドーンドーン・ピチャ。
大量の水が高いところから落ち、滝壺にジャバジャバと溢れかえる音が聞こえて参りました。筏はそのまま脇見もせず真っしぐら。この難題をどう乗り切るのでしょうか。
「ミツコー」
まず最初にケイコが狼狽え始めました。何時ものケイコで安心です。それに対してミツコは気丈に振る舞っています。でも、その足はガタガタと震えているような。きっとそれは気のせいでしょう。
「ケイコー」
意味もなく叫ぶミツコです。その顔はとても情けない表情になりました。そうしてケイコの方に振り向くと先程と打って変わって、さわやかな笑顔さんです。その笑顔に救われるケイコ、きっと大丈夫なんだと自分に言い聞かせています。その笑顔の主であるミツコ、作り物の笑顔のため、心の中が揺れまくっています。
そうして迫り来る運命の瞬間、川の終わりです。筏は吸い込まれるように速度を増して一気に、行きまーす! ビューン・ストーン、です。
その時です! いつの間にか意識することなく抱き合っていたミツコとケイコは、互いに目を合わせると、小さく頷き合うのでした。そして、そして——
「「私たちはー、やればできる子ー」」
ミツコとケイコの声が響き渡る豪快な滝、全てを飲み込んでも飲み尽くせないくらい、大きく、でっかい滝、です。
◇◇
ザザザーン・サブサブゴゴゴーン・ドーントコトコ・ピチャリンコ。
滝に飲まれた筏は豪快な水しぶきで何処へやらです。きっと粉々の『けちょんけちょん』になっていることでしょう。その吹き上げる水しぶきの上をヒラヒラと舞い降りるミツコとケイコです。両手を繋ぎ、少しだけ回りながらヒラヒラ・ゆらゆらと滝壺に向かっています。そして満面の笑顔を見せ合いながら、「キャッハウフフ」と笑っているようです。
こうして、でっかい滝を舞い降りながら筏を探すミツコとケイコです。当然、筏が無事であるはずはありません。それでも、ここまで一緒に旅をしてきた仲間です。諦めることなく丹念に探していくと——。
「ありました!」
筏から『ただの木片』になった丸太をミツコが発見、続いて、「こちらも見つけました!」とケイコも探し当てたようです。そうしてお互いの手を離したミツコとケイコは、それぞれ見つけた丸太の上にフワリです。
正確には丸太に乗ったのではなく、そのように見える感じで、フワフワと宙に浮かんでいる、というところでしょうか。それでも遠目には器用に丸太の上に乗っているように見えるミツコとケイコです。
そのまま緩やかな川の流れに乗って、川を下っていきます。そして、ふと振り返ったケイコが「わあああ」と声を上げました。それに釣られてミツコも振り返ると、そこには見事な虹が見えてきました。
「すごいですね、ケイコさん」
「そうですね、ミツコさん」
そうして暫く、開いた口が閉じることなく、目を輝かせながら見入るミツコとケイコです。
◇
チャプン・チャプン。
川の流れが緩やかになり、周囲が草原になった頃、その岸に向かってスイーっと進んでいくミツコ、取り敢えずその後を追うケイコです。そうして岸に上がると、
「ケイコさんは都会に行くのですよね」とミツコがケイコに尋ねています。
「はい、そうです(アホの子を探すんじゃ)」
「では、ほら、あそこに高い山が有りますでしょう?」
「ええ、ありますね」
ミツコが指差した遠くの山は上の方が白く、雪が降るくらい高そうです。でも、そのてっぺんは霞んで見えないので、恐ろしく高い山のはずです。
「あの山を越えて暫く行くと都会に着きますよ」と親切に教ええてくれるミツコ、
「そうですか、あいがとうございます(私に超えられない山など、無い)」と問題にしないケイコです。しかしミツコの、
「ということで、ここでお別れですね」で大いに動揺するしますが、それを隠し、平静を装うケイコです。少しは成長したでしょうか。
「ミツコさんは、これからどうなさるのですか」
「私は、また上流に戻って精進いたします」
「(本当かよ! 流石じゃ。それにひきかえマチコの奴はの~)そうですか。では、今まで、ありがとうございました」
「いいえ、お礼なんて、とんでも御座いません」とペコリとするミツコに、
「いいえ、言わせてください。感謝していますから」とペコリで返すケイコです。
「そうそう、山を越えるにあたり、紹介状を書いておきますね」
「紹介状ですか(私を誰かに紹介するのじゃな。ふふ、隅に置けぬ私だこと)」
「ええ、それを、山越えする鳥さんに見せれば、きっと何がしら助けてくれると思いますので」
「(なんだ、鳥さんかよ)それは、ご丁寧に。重ねてお礼を申し上げます」
「いいえ、いいのです。ここまで来れたのもケイコさんのおかげですから」
「そんな、私は何も」
「まあまあ。でも、お急ぎになって。鳥さんたちが行ってしまいますから」
「これはこれは。では、お言葉に甘えて行かせて頂きます」
「お元気で」
「こちらこそ、お元気で」
「では」
「では」
こうしてミツコと別れることになったケイコです。その場で右手を上げ、手を振りながら風を捕まえます。そして空高く舞い上がるケイコ、それを下から手を振って見送るミツコです。そして、
「その風はねー」と口に両手を添えて叫ぶミツコ、
「(なんじゃろう、聞こえぬ)……」のケイコです。
「人気急上昇って言うのよー」と冗談? それとも本気なの? のミツコです。そうしてケイコが見えなくなるまで手を振っていたのでした。
◇
その葉っぱベッド、ケイコの家のものとは比較にならない程、大きな葉っぱです。そう、ここは自然豊かなジャングル、葉っぱもスクスクと育ったことでしょう。
「むにむに」
眠い目を擦っているケイコは、慣れ親しんだ葉っぱベッドの揺れ具合に錯覚したのか、家に戻っていると勘違いしているようです。それも周囲には大きな木が沢山生えていますから、大変よく似ているのです。但し、一箇所だけ違う箇所があります。それは——
起きたばかりのケイコに、大口を開けてワニさんが突進してきました。そう、違う箇所と言えば目の前が『川』だということでしょう。それも川幅の広い、濁った水がゆっくりと、それでいて力強く流れています。正しくジャングルを流れる川です。
そうしてワニさんは躊躇なく、寝起きのケイコをガブリンチョです。いきなり食べられたケイコは、きっと、おそらく、たぶん、何が起こったのか分からなかったことでしょう。そしてワニさんもケイコを美味しく食べた『つもり』のはずです。
「なにすんじゃあああ、こらあああ」
腰に手を当てたプンスカのケイコがワニさんの長~い口の上に乗っていました。もちろん、ワニさんも再度、ケイコを食べようと口をパカパカしましが、それをヒラリヒラリと躱すケイコです。それでも何度か挑戦するワニさんですが、食べられないと思ったワニさんは退散していきます。それに、
「こらあああ、待たんかあああ」のケイコ、寝起きなので不機嫌です。しかしワニさんの方は、もうケイコには興味がありません。それは、無駄な努力をしたくないから、という理由もあるでしょう。
スイスイ・クネクネと川を泳ぐワニさんです。それをわざわざ追いかけたケイコは、ワニさんの目の前で「こうしてくれよう」と、羽をバタバタさせました。普段のケイコであれば全く威力の無い微風なのですが、不機嫌なのでパワーアップしています。その風がワニさんの両目を直撃、ショボショボしてくるワニさんです。
「姉さん、勘弁してくださいよ。あっしは忙しんで、遊んでる暇は無いんですよ、では」とワニさんが言ったような。そしてケイコを無視してスイスイ・クネクネです。
それに、「待ってよー」と追い縋るケイコ、(ああ、厄介な相手に絡まれてしまったな)とボヤいた、ようなワニさんです。
「何の用ですか、姉さん」と言ったようなワニさんに、
「お迎えに行くんじゃが、どっちに行けば良いかのぉ」と尋ねるケイコです。
「(何を言ってるか、さっぱり分からん)あっちですよ」と答えたようなワニさんに、
「そうか。では、ちと世話になるでのぉ」とワニさんの口の上に立つケイコ、
「(やれやれ。これは下手に逆らわない方が良さそうだ)どうぞ」と言ったようなワニさんです。
こうして、川をスイスイ・クネクネと下っていくケイコです。時折、跳ねる水を受けては「ちょっ」と声を上げ、その度に避けています。本当は、(ちょっとは手加減してくれないかのぉ)とワニさんに言いたいのを我慢しているようです。
そうこうしているうちに川幅が少し狭くなり、川の流れも速くなったような、そんな感じの時です。前方に小さな『何か』がフラフラと浮かんでいる、というか流れているのが見えて参りました。
それは流木か、それともなんでしょうか。もう少し近づいてから見てみることにしましょう。
(そろそろ岸に上がりたい気分なんだが、さて、どうしたものだろう)とワニさんは思ったような。そこで、ふと先程の『何か』を見ると、それは小さな枝のようなものを束ねたゴミ? いいえ、筏のようです。そしてその上には、厄介者のケイコに似た、見るからに美味しそうな餌が乗っているようです。
ここでゴックンと喉を鳴らしたワニさんですが、ちょっと待てよ、と考えを巡らします。それは目の前の餌を取るか、それとも適当なことを言ってケイコを騙して自由を取るか、です。
そして考えた結果、自由を取ることにしたのです。その理由はケイコの時と同様に餌の捕獲に失敗するリスクを考慮したからなのです。(自由になればまたチャンスは訪れる、俺は自由になりたい、俺は自由だー)と思ったような。
「姉さん、あれは『お探し』の方ではないですか?」とワニさんが言ったような。それに、
「どれどれ。う~ん、違うようじゃな」と額に手を翳して目を凝らすケイコです。
「(そんなことは百も承知)いえいえ、そうですよ、間違いありません」と疑い深いケイコを焦ったく思うワニさん、のような。
「そう云われれば、そのような。でもなあ、違うようじゃが」と半分だけその気になったケイコです。それならば、あともう一押しとワニさんが、
「絶対そうです、保証しますって。ほら、近くで確かめてご覧なさいよ」と、どう保証するのか不明なワニさん、のような。
「そうかのぉ。じゃあ、近づいてくれまいか」やっとその気(騙された)になったケイコに、
「それよりも、もっと良い方法がありますぜ」と言ったようなワニさん。
「ほう? どんなあ?」
「こうです!」
ワニさんは急に口をパカッと大きく開け、その勢いでケイコが宙に浮いた瞬間に猛烈な鼻息でケイコを吹き飛ばしました。これが『良い方法』のようです。「あうー」と叫びながら飛んで行くケイコです。
◇◇
どんぶらこ、どんぶらこ。川を筏で下る冒険の子です。小枝を束ねただけの簡易な筏ですが、冒険の子が乗るには十分な大きさです。その子が、どうしてこんなところで川下りをしているのかは分かりませんが、それはきっと遊びの一種なのでしょう。
しかしここは小さな冒険の子にとっては危険が一杯のジャング。しかも穏やかな川の流れと言っても冒険の子にとっては大海原のようなもの。プカプカと浮いているだけも精一杯です。
ほら、すぐ後ろから凶暴なワニさんが迫ってきています。ですがそのワニさんの姿を冒険の子が直に見たわけではありません。今まで培ってきた経験で、迫り来る危険を察知したのでしょう。急いでオール代わりの枝で水面をカキカキしていきます、よいしょ、です。
「あうー」
後方から奇怪な音が聞こえてきました。これは急がなくてはなりません。危機が急速に迫っています、よいしょ、です。
「とうぉぉぉ」
ケイコがクルッと回って筏の上に着地です。序でにドブーンと大揺れする筏、「きゃー」の冒険の子です。その隙にケイコから解放されたワニさんが、どこかにスイスイ・クネクネと行ってしまいました、あばよ、です。
「あなたは、誰ですか」
冒険の子が恐る恐るケイコに尋ねました。その声は小さいのですが、はっきりとした口調です。そして同時にワニさんが去って行ったことを、気配で感じ取る冷静さも兼ね備えているようです。
「私は、ケイコ。突然お邪魔して済まんのぉ」と、ぺこりと頭を下げました。その姿勢に安心したのか、警戒を解いた冒険の子です。
「私は、ミツコです。よろしくです」と、こちらもぺこりと頭を下げ、
「これは、ご丁寧に。こちらこそ、よろしく、です」とまたぺこりと頭を下げるケイコです。そして「付かぬ事をお聞きしたいのですが」と切り出します。
「どのような事でしょうか」
「実は、マチコという子を迎えに来たのですが」
「マチコ……さんですか」
「はい、そのマチコが、どうも迷子になったらしく、探している最中なのです」
「まあ、それは大変ですね」
「そうなんです。全くアホな子なものですから、私も手を焼いているのです」
「まあ、それはそれは」
「そこで、奥さん」
「いいえ、ミツコです」
「そのマチコに心当たりはありませんでしょうか」
「まあ、そうですね。初めて耳にするお名前なものですから。以前に聞き及んでいれば頭の隅っこの方にでも隠れているのでしょうけれどね~。お役に立てませんで、申し訳ありません」
「いえいえ、そのお気持ちだけでも感謝致しますわ、奥様」
「いいえ、ミツコです」
「そうでしたわね、ホホホ」
「ホホホ」
そうこうしている内に、川幅も狭くなったようで、筏が進む川の流れが速くなってきました。そして障害物を発見。前の方で木が生えているのか、それともゆっくりと流れているのか、そのどちらでも筏の進む方向にあるため、避ける必要があります。
ケイコとの会話中でも周囲の警戒を怠らないミツコです。笑顔のまま、キリッと障害物を確認し、素早く回避行動を行います。そして、利用できるものは何でも利用するとばかり、ケイコに筏の右側に寄るように指示を飛ばします。
「こう?」少し不安そうなケイコがミツコに確認を求めると、
「そうです。でも、もう少し右に寄って貰えると助かります」と追加の指示を出すミツコです。
そうして障害物に近づいた時、「よいしょ」と枝で障害物を突くミツコ、これで回避することが出来ました。そして、
「「やったー」」と喜び合うミツコとケイコです。
◇◇
暫く順調な旅が続きます。その間にミツコが、筏で川下りをしている訳をケイコに語りました。そこは、自己鍛錬の序でに遊びながら何か出来ないか、と考えて川下りを思い付いたそうです。
その話を聞いたケイコは、日々遊んでばかりの自分を反省し、ミツコの信念に胸を打たれたのでした。そして、明日から私も頑張ろう、帰ったら頑張ろう、覚えていたら頑張ろう、と誓いを立てたのでした。
◇◇
川は次第に左右へと曲がりくねるようになってきました。そして流れが速まるにつれ、ミツコとケイコの共同作業が続きます。狭い筏の上を忙しく立ち回りながら、徐々に信頼関係が築かれていくのでした。そしてそれを試すかのように最大の難関を迎えることになったようです。
「むむ、これは」
徒ならぬ気配を感じ取ったミツコがケイコにキリッとした顔を向けました。その表情でケイコも、(なんか、やばい)と悟り、お互い無言で頷き合うのでした。そして、
「とうぉぉぉ」の掛け声で、筏から飛び立つケイコです。そして上空に舞い上がったケイコは、この先が無くなっている、つまり、川が途切れていることを確認し、ミツコに見たままを報告します。
「この先、川が無くなっているのを確認しました、以上」
「お疲れ様です。それはおそらく『滝』ですね、分かりました。でも、それでも私たちは——」
「「行かねばならないのです!」」と言葉が重なるミツコとケイコ、息ぴったしです。
ザザザー・ゴゴゴーン・ドーンドーン・ピチャ。
大量の水が高いところから落ち、滝壺にジャバジャバと溢れかえる音が聞こえて参りました。筏はそのまま脇見もせず真っしぐら。この難題をどう乗り切るのでしょうか。
「ミツコー」
まず最初にケイコが狼狽え始めました。何時ものケイコで安心です。それに対してミツコは気丈に振る舞っています。でも、その足はガタガタと震えているような。きっとそれは気のせいでしょう。
「ケイコー」
意味もなく叫ぶミツコです。その顔はとても情けない表情になりました。そうしてケイコの方に振り向くと先程と打って変わって、さわやかな笑顔さんです。その笑顔に救われるケイコ、きっと大丈夫なんだと自分に言い聞かせています。その笑顔の主であるミツコ、作り物の笑顔のため、心の中が揺れまくっています。
そうして迫り来る運命の瞬間、川の終わりです。筏は吸い込まれるように速度を増して一気に、行きまーす! ビューン・ストーン、です。
その時です! いつの間にか意識することなく抱き合っていたミツコとケイコは、互いに目を合わせると、小さく頷き合うのでした。そして、そして——
「「私たちはー、やればできる子ー」」
ミツコとケイコの声が響き渡る豪快な滝、全てを飲み込んでも飲み尽くせないくらい、大きく、でっかい滝、です。
◇◇
ザザザーン・サブサブゴゴゴーン・ドーントコトコ・ピチャリンコ。
滝に飲まれた筏は豪快な水しぶきで何処へやらです。きっと粉々の『けちょんけちょん』になっていることでしょう。その吹き上げる水しぶきの上をヒラヒラと舞い降りるミツコとケイコです。両手を繋ぎ、少しだけ回りながらヒラヒラ・ゆらゆらと滝壺に向かっています。そして満面の笑顔を見せ合いながら、「キャッハウフフ」と笑っているようです。
こうして、でっかい滝を舞い降りながら筏を探すミツコとケイコです。当然、筏が無事であるはずはありません。それでも、ここまで一緒に旅をしてきた仲間です。諦めることなく丹念に探していくと——。
「ありました!」
筏から『ただの木片』になった丸太をミツコが発見、続いて、「こちらも見つけました!」とケイコも探し当てたようです。そうしてお互いの手を離したミツコとケイコは、それぞれ見つけた丸太の上にフワリです。
正確には丸太に乗ったのではなく、そのように見える感じで、フワフワと宙に浮かんでいる、というところでしょうか。それでも遠目には器用に丸太の上に乗っているように見えるミツコとケイコです。
そのまま緩やかな川の流れに乗って、川を下っていきます。そして、ふと振り返ったケイコが「わあああ」と声を上げました。それに釣られてミツコも振り返ると、そこには見事な虹が見えてきました。
「すごいですね、ケイコさん」
「そうですね、ミツコさん」
そうして暫く、開いた口が閉じることなく、目を輝かせながら見入るミツコとケイコです。
◇
チャプン・チャプン。
川の流れが緩やかになり、周囲が草原になった頃、その岸に向かってスイーっと進んでいくミツコ、取り敢えずその後を追うケイコです。そうして岸に上がると、
「ケイコさんは都会に行くのですよね」とミツコがケイコに尋ねています。
「はい、そうです(アホの子を探すんじゃ)」
「では、ほら、あそこに高い山が有りますでしょう?」
「ええ、ありますね」
ミツコが指差した遠くの山は上の方が白く、雪が降るくらい高そうです。でも、そのてっぺんは霞んで見えないので、恐ろしく高い山のはずです。
「あの山を越えて暫く行くと都会に着きますよ」と親切に教ええてくれるミツコ、
「そうですか、あいがとうございます(私に超えられない山など、無い)」と問題にしないケイコです。しかしミツコの、
「ということで、ここでお別れですね」で大いに動揺するしますが、それを隠し、平静を装うケイコです。少しは成長したでしょうか。
「ミツコさんは、これからどうなさるのですか」
「私は、また上流に戻って精進いたします」
「(本当かよ! 流石じゃ。それにひきかえマチコの奴はの~)そうですか。では、今まで、ありがとうございました」
「いいえ、お礼なんて、とんでも御座いません」とペコリとするミツコに、
「いいえ、言わせてください。感謝していますから」とペコリで返すケイコです。
「そうそう、山を越えるにあたり、紹介状を書いておきますね」
「紹介状ですか(私を誰かに紹介するのじゃな。ふふ、隅に置けぬ私だこと)」
「ええ、それを、山越えする鳥さんに見せれば、きっと何がしら助けてくれると思いますので」
「(なんだ、鳥さんかよ)それは、ご丁寧に。重ねてお礼を申し上げます」
「いいえ、いいのです。ここまで来れたのもケイコさんのおかげですから」
「そんな、私は何も」
「まあまあ。でも、お急ぎになって。鳥さんたちが行ってしまいますから」
「これはこれは。では、お言葉に甘えて行かせて頂きます」
「お元気で」
「こちらこそ、お元気で」
「では」
「では」
こうしてミツコと別れることになったケイコです。その場で右手を上げ、手を振りながら風を捕まえます。そして空高く舞い上がるケイコ、それを下から手を振って見送るミツコです。そして、
「その風はねー」と口に両手を添えて叫ぶミツコ、
「(なんじゃろう、聞こえぬ)……」のケイコです。
「人気急上昇って言うのよー」と冗談? それとも本気なの? のミツコです。そうしてケイコが見えなくなるまで手を振っていたのでした。
◇
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かつて迫害により追われたカリンカたちは、地下都市「ユヴァーシ」を作り上げ、豊かに暮らしていた。
彼らは合言葉を用いていた。それは……「ともに生き、ともに生かす」
十三歳の少女メルヴェは、不在の父や病弱な母に代わって、一家の父親役を務めていた。仕事に従事し、弟妹のまとめ役となり、時には厳しく叱ることもあった。そのせいで妹たちとの間に亀裂が走ったことに、メルヴェは気づいていなかった。
幼なじみのタリクはメルヴェを気遣い、きらきら輝く白い石をメルヴェに贈った。メルヴェは幼い頃のように喜んだ。タリクは次はもっと大きな石を掘り当てると約束した。
年に一度の祭にあわせ、父が帰郷した。祭当日、男だけが踊る舞台に妹の一人が上がった。メルヴェは妹を叱った。しかし、メルヴェも、最近みせた傲慢な態度を父から叱られてしまう。
そんな折に地下都市ユヴァーシで起きた事件により、メルヴェは生まれてはじめて外の世界に飛び出していく……。
※本作はトルコのカッパドキアにある地下都市から着想を得ました。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
放課後ゆめみちきっぷ
梅野小吹
児童書・童話
わたし、小日向(こひなた)ゆには、元気で明るくて髪の毛がふわふわなことが自慢の中学一年生!
ある日の放課後、宿題をし忘れて居残りをしていたわたしは、廊下で変わったコウモリを見つけたんだ。気になってあとを追いかけてみたら、たどり着いた視聴覚室で、なぜか同じクラスの玖波(くば)くんが眠っていたの。
心配になって玖波くんの手を取ってみると……なんと、彼の夢の中に引きずり込まれちゃった!
夢の中で出会ったのは、空に虹をかけながら走るヒツジの列車と、人の幸せを食べてしまう悪いコウモリ・「フコウモリ」。そして、そんなフコウモリと戦う玖波くんだった。
玖波くんは悪夢を食べる妖怪・バクの血を引いているらしくて、ヒツジの車掌が運転する〝夢見列車〟に乗ることで、他人の夢の中を渡り歩きながら、人知れずみんなの幸せを守っているんだって。
そんな玖波くんのヒミツを知ってしまったわたしは、なんと、夢の中でフコウモリ退治のお手伝いをすることになってしまって――?
これは、みんなを悪夢から守るわたしたちの、ヒミツの夢旅の物語!
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
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