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#10 ケットシーの涙
第2話 頂点を目指して
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「それでは、再教育プログラムを開始する。だが再教育プログラムを受講する前に幾つかテストを行う。その成績によって再教育プログラムの内容が決定される。まず、目の前の操作パネル下部の引き出しを開けなさい。その中に多機能全天VRフルフェイスヘルメット型音響改善版14号改が入っている。それを装着すること。次に、受講者はそこから移動する必要はない。以降、機器の指示に従うこと。以上だ、質問はあるかね?」
まるで台本を読んでいるかのような、事務的な「社長」である。——いや、そもそも「社長」でもないかもしれない。これはひょっとして新手の詐欺か? こんな安い手口で私を弄ぼうなど笑止千万。——しかし、それに乗って騙されたフリをするのも一考の余地がありそうだ。
「あの、テストの成績で満点だった場合、再教育の内容はどうなりますか?」
「最低の場合は想定しないのか? これは適性を判断するだけだ。質問受付終了。再教育プログラム事前検査、受講者 良子(仮) 推定 24歳。テスト開始」
「ええー、なんで歳がバレてるの?」
ただの「社長」と思っていたが、……むむっ、こ奴、デキる。私の最高機密をどのようにして入手したのかは不明だが、速攻で奥の手を出してくるとは。——ふふっ、まあ良い。序盤で奥の手とは、それ以上の術は持ち合わせていないと見た、愚かなり。
◇
多機能全天VRフルフェイスヘルメット型音響改善版14号改で見えるのは、どこかの洞窟。薄暗く、陰気で、無駄に広い。序でに「前に進め」という感じの黄色い矢印がプカプカ浮かんでいる。でも、「移動する必要はない」と言っていたし、——成る程、思うだけで移動できるのね。私は一瞬で超・能力を会得したようだ。これはこれで愉快・痛快・お腹が痛い。
『検査項目 #1 「欲望の泉」を開始します。私の指示に従ってください。前に進め』
女性の声でナビゲーションが始まった。視界の隅っこに、その人物と思われる「少女」の絵もあるが、これは製作者の、これまでの人生と性格を反映しているのだろう。こんなゲームで私を試すとは、……後で後悔させてやる。
『立ち止まってください。下を見ろ』
ちょっとイラつく声である。機械のくせして流暢に人の言葉を喋っているところは褒めてやろう。でもでも、その命令口調はなんとかならないの? 「少女」はそんな言い方をしません。
『宝箱を開けてください。中を見ろ』
いつの間にか、と言う表現がぴったりな感じで箱がそこに在った。確かに宝箱といえば宝箱に違いない。が、おもちゃの箱と言われればそうにも見える。大きな鍵穴も付いているようだが、これは飾りだろう。だって蓋を開けるも何も、既に大口を開けているじゃないの。——仕方ない、どれどれ、何が入っているのかなぁ、……中は、……空だけど?
『あなたは仮想通貨を入手しました。所持金が1000万になった』
ラッキー。いきなり金持ちじゃないの。ということはこの後、アレもコレも出来ちゃうわけね。……1000万かぁぁぁ、どうしよう、なにに使おうかなぁ。
『前に進んでください。早く歩け』
所持金のことが気になるけれど、ポケットの中には無いようね。どこにあるのかしらって……どこまで歩かせるつもり? だんだん歩きづらくなってるんですけど、これ、壊れてません?
『前方より複数の魔物が出現しました。撃退せよ』
魔物とは……何も禍々しい生物? とは限らない。ごく普通の、人の姿をしながらその心に「魔」を宿す魔物もいるだろう。そういった外見では判断できない分、普通? の魔物より厄介である。しかし今回は普通の魔物、それも数で押し切ろとする魂胆ミエミエの輩である。さて、どうしたものか、やっつけろってこと? 勿論、私の敵ではないが、……どうするのよっと思ったら、目の前に文字らしきものが浮かんで来たぞ。……むむっ、疲れ目?
『攻撃方法を選択してください。好きなのを選べ』
それならそうと早く言ってよね。うーん、どうしよう。好きなものといっても、どれもこれも何なの? まるで全部サッパリだわ。でも、どれかを選ぶ必要があるのね、……うん、これにしよう。
『攻撃方法が選択されました。それでいいんだな?』
「いいよ。やっちゃって!」
『攻撃、「天地異変」、敵は一掃されました。全滅』
軽いわね。一時はどうなるかと思ったけど、うじゃうじゃいた得体のしれない魔物? どころか町? ごと押し潰されて吹き飛んで大爆発よ。ちょっと手加減すれば良かったと思うけど、やるなら徹底的にね。これなら私の敵じゃないわ。もっと強い敵、カモーン。
『仮想通貨 800万の消費。使いすぎ』
なんですと! 私の資産が、財産が……って、ここだけの話なのね。なら、いくら減っても問題ないでしょう。ちょっとだけ夢を……勘違いしただけよ。
『残りの所持金 200万です。生活苦』
それが、どうしたの? 別にここで暮らす訳じゃないから平気、平気、……たぶん。
『検査項目 #1 を終了しました』
これは、満点コースね。こんなのはサッサと片付けて、再教育なんとかを阻止しないといけないわね。この私にそれが必要とは到底思えないけど、たぶん誰かの策略と思うのよ。——うむ、その可能性は大いに高いだろう。私のように突出した者ほど良くも悪くも注目を集めてしまうもの、賞賛と憎悪は表裏一体とはよく言ったものである(出典:私)
◇◇
まるで台本を読んでいるかのような、事務的な「社長」である。——いや、そもそも「社長」でもないかもしれない。これはひょっとして新手の詐欺か? こんな安い手口で私を弄ぼうなど笑止千万。——しかし、それに乗って騙されたフリをするのも一考の余地がありそうだ。
「あの、テストの成績で満点だった場合、再教育の内容はどうなりますか?」
「最低の場合は想定しないのか? これは適性を判断するだけだ。質問受付終了。再教育プログラム事前検査、受講者 良子(仮) 推定 24歳。テスト開始」
「ええー、なんで歳がバレてるの?」
ただの「社長」と思っていたが、……むむっ、こ奴、デキる。私の最高機密をどのようにして入手したのかは不明だが、速攻で奥の手を出してくるとは。——ふふっ、まあ良い。序盤で奥の手とは、それ以上の術は持ち合わせていないと見た、愚かなり。
◇
多機能全天VRフルフェイスヘルメット型音響改善版14号改で見えるのは、どこかの洞窟。薄暗く、陰気で、無駄に広い。序でに「前に進め」という感じの黄色い矢印がプカプカ浮かんでいる。でも、「移動する必要はない」と言っていたし、——成る程、思うだけで移動できるのね。私は一瞬で超・能力を会得したようだ。これはこれで愉快・痛快・お腹が痛い。
『検査項目 #1 「欲望の泉」を開始します。私の指示に従ってください。前に進め』
女性の声でナビゲーションが始まった。視界の隅っこに、その人物と思われる「少女」の絵もあるが、これは製作者の、これまでの人生と性格を反映しているのだろう。こんなゲームで私を試すとは、……後で後悔させてやる。
『立ち止まってください。下を見ろ』
ちょっとイラつく声である。機械のくせして流暢に人の言葉を喋っているところは褒めてやろう。でもでも、その命令口調はなんとかならないの? 「少女」はそんな言い方をしません。
『宝箱を開けてください。中を見ろ』
いつの間にか、と言う表現がぴったりな感じで箱がそこに在った。確かに宝箱といえば宝箱に違いない。が、おもちゃの箱と言われればそうにも見える。大きな鍵穴も付いているようだが、これは飾りだろう。だって蓋を開けるも何も、既に大口を開けているじゃないの。——仕方ない、どれどれ、何が入っているのかなぁ、……中は、……空だけど?
『あなたは仮想通貨を入手しました。所持金が1000万になった』
ラッキー。いきなり金持ちじゃないの。ということはこの後、アレもコレも出来ちゃうわけね。……1000万かぁぁぁ、どうしよう、なにに使おうかなぁ。
『前に進んでください。早く歩け』
所持金のことが気になるけれど、ポケットの中には無いようね。どこにあるのかしらって……どこまで歩かせるつもり? だんだん歩きづらくなってるんですけど、これ、壊れてません?
『前方より複数の魔物が出現しました。撃退せよ』
魔物とは……何も禍々しい生物? とは限らない。ごく普通の、人の姿をしながらその心に「魔」を宿す魔物もいるだろう。そういった外見では判断できない分、普通? の魔物より厄介である。しかし今回は普通の魔物、それも数で押し切ろとする魂胆ミエミエの輩である。さて、どうしたものか、やっつけろってこと? 勿論、私の敵ではないが、……どうするのよっと思ったら、目の前に文字らしきものが浮かんで来たぞ。……むむっ、疲れ目?
『攻撃方法を選択してください。好きなのを選べ』
それならそうと早く言ってよね。うーん、どうしよう。好きなものといっても、どれもこれも何なの? まるで全部サッパリだわ。でも、どれかを選ぶ必要があるのね、……うん、これにしよう。
『攻撃方法が選択されました。それでいいんだな?』
「いいよ。やっちゃって!」
『攻撃、「天地異変」、敵は一掃されました。全滅』
軽いわね。一時はどうなるかと思ったけど、うじゃうじゃいた得体のしれない魔物? どころか町? ごと押し潰されて吹き飛んで大爆発よ。ちょっと手加減すれば良かったと思うけど、やるなら徹底的にね。これなら私の敵じゃないわ。もっと強い敵、カモーン。
『仮想通貨 800万の消費。使いすぎ』
なんですと! 私の資産が、財産が……って、ここだけの話なのね。なら、いくら減っても問題ないでしょう。ちょっとだけ夢を……勘違いしただけよ。
『残りの所持金 200万です。生活苦』
それが、どうしたの? 別にここで暮らす訳じゃないから平気、平気、……たぶん。
『検査項目 #1 を終了しました』
これは、満点コースね。こんなのはサッサと片付けて、再教育なんとかを阻止しないといけないわね。この私にそれが必要とは到底思えないけど、たぶん誰かの策略と思うのよ。——うむ、その可能性は大いに高いだろう。私のように突出した者ほど良くも悪くも注目を集めてしまうもの、賞賛と憎悪は表裏一体とはよく言ったものである(出典:私)
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