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#18 転生システム管理者の涙
#5 その時は、永遠に
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一人残された私は、そこにある壁と、無数のカケラを相手に観測を続けた。そして、アベルが戻るのを待ちながら、無限とも思える時を過ごし、壁に付き添うように星を何度も回り続けた。
それは退屈な時間であり、同時に意味のある事とは思えなくなった、そんな頃だっただろうか。私は、アベルがしていた事を真似てみようと思い立ち、間近でカケラを観察することにした。が、アベルのように、何かが聴こえたり、感じることはなく、改めてアベルの特異性に感服したものだ。だが、アベルに出来て私に出来ないとなると、何故か無性に悔しい思いが私に芽生えてしまったようだ。と同時に、私にそんな負けず嫌いな一面があったことにも驚いている。
私は、目に入るカケラに片っ端から話し掛けた。「おい、何とか言ったらどうなんだ。ウンともスンとも言わないとは卑怯だぞ」と、相手の心を揺さぶって見たが、——残念ながら、応えようとする気概のあるカケラは一つも無かった。勿論、私に聞く耳はある、アベルのように愛情という名の愛の鞭でペシペシと表面を叩いて、いや、愛撫もした。だが、何奴も此奴も一様に押し黙ったまま沈黙を続けるばかり。そうこうしているうちに私は物言わぬカケラに飽きてしまったようだ。
そんなある日、私はカケラに触れた時の感触をふと思い出した。ただ黒く硬い表面は、一見するとツルツルしているものだと思えたが、蘇った感触を再生すると、「アレはツルツルではなくザラザラだったぞ」と思い出した訳である。そこで早速、その正体を暴こうとカケラの表面を——「おおぉぉぉ、ツルツルの中に、微かにザラザラを感じる」となった。そこで早速、目を凝らして表面を見つめると——「うおぉぉぉ、何も見えん」となった。そこで早速、分解能を高めに高めると——「えぇぇぇぇ、なるほど。全て分かった」となった。
こうして私は、君たちが居る地球について、——正確には、人についての知識を得た。——それは何故か。それは、生きているカケラから得られた知識であり、生きているカケラとは人であるからだ。
さて、君たち自身である人とカケラとでは、似ても似つかぬ存在ではないのか、という疑念が生じていることだろう。確かに姿形は大いに異なるが、人を人たらしめる、精神、意志、感情、思考など、人の非肉体的部分が、カケラに存在している。それを他の言葉で言い換えれば、魂と言うことになるだろうか。それがカケラの中に、またはカケラそのものに魂としての情報が存在している、言わば魂の器と呼ぶべき存在なのである。
だが、更に疑問が増えたことだろう。私の声を聴いている人は、「自分はまだ生きている。なのでその魂とは死者の魂ということになるはずだ。そうでなければ、自分の魂はここにあり、カケラとは何ら関係が無い」と考えるだろう。それは、半分だけ正解である。
では、全ての答えを理解するために、魂の振る舞いについて説明していこう。どの時点からでも良いのだが、まずは、生きているカケラから話を進めるとしよう。
生きているカケラとは、なにがしらの動作をしている状態であり、ちょうど電子回路に電気が流れている、ようなものだ。この状態をアベルや私が何かを感じ取った動き、と想像してもらいたい。そしてこの状態をカケラが魂の器として機能しているとする。但し、この状態であっても器との意思疎通や情報を取得できる訳ではない。
この器が機能を停止した瞬間、正確には停止する寸前、これと対になる存在に対して量子テレポーテーションが起こる。これは、器の状態を、もう一つの存在に対して転送したということである。但し補足しておくが、転送と言っても移動したのではなく、対になる存在が同時に同じ状態になることである。
では、器と対になる存在とは何か? であるが、それが人に宿るとされる魂である。では、器と人の魂が何時、どのようにして対になったのか。それは私にも遂に解けなかった謎である。
次に、魂が人から離れた時、これも正確には離れる寸前に、先程とは逆の現象が起き、停止していた器がまた動き出す。これを、それぞれの器が、それぞれの間隔で繰り返している、というのが全ての答えである。
最後に、私がどのようにして、これらの現象を知り得たか? だが、それは簡単なことだった。物言わぬカケラに手を焼いていた私だが、対の存在を知った時、その存在を観察すれば済むことである。私にとってそれが容易であったことは幸いであった。
以上、お分かり頂けただろうか。
追伸。アベルが居ない間、君たちを観察したのは良い暇つぶしになった。これからも大いに励め、人類よ。そして、私を楽しませてくれることを期待する。——それと、金を借りたら返すのが宇宙規模での常識である。さもないと君は死後、カケラに戻ることは叶わず、地獄に落ちるだろう。その時は永遠に「さようなら」だ。
◇
「なんだとぉぉぉ、ちょっと待てよ。最後のは絶対、勝手に付け足したな! 宇宙人が、いや、この場合は宇宙雲か、どっちでもいいが、そんな細いことを絶対、知ってるはずがない、絶対だ。……何が宇宙規模の常識だよ、それこそ勝手に俺たちを覗きやがって、その方がよっぽど非常識ってもんだ」
何かをやり遂げたという、それはそれは満足そうな笑顔で、持っていたノートをテーブルの上に叩きつけ、オマケに嘘を混ぜてこねくり回すおっさんだ。誰が許せるだろうか、まったく。
「はあ? 付け足す、さあ、なんのことだ。無添加、純真、真心の詰め合わせだ。それに、『お前のことは見ているぞ』と言っていただろう。不審な行動は慎んだ方が賢明だ。……ところで、どうなんだ? 地球外生命の呟きは。これだから話したくはなかった、というのが分かっただろう。お前のことだ、よく考えもしないで、そのまま発表して、いい笑い者になることだろう。……いいか、これがどんなにすごい発見かどうか、である前に、話の真偽が問われるはずだ。いや、それさえ無いかもしれない。多分お前の創作、ホラ話だとして誰も耳を貸さないだろう、そういうことだ。分かったらサッサと金を払って楽になれ」
鳥が飛んでいる。今にも雨が降りそうな、どんよりとした雲の下を、だ。そして、「かぁー、かぁー」ではなく、「かねぇー、かねぇー」と鳴きながら飛んで行く、老いた鳥だ。……雲と言えば例の宇宙雲のことを連想してしまった。見上げる空に、どんよりした宇宙雲が目を輝かせながら浮かんでいる光景は想像しただけでもゾッとする。
おっさんが来訪するまでの3ヶ月で、自分が発見した惑星を忘れていたのには訳がある。それは、——実はその惑星、すぐに観測できない状態になっていたのだ。平たく言えば、「どっかに行った」ということだ。勿論、他の方法でも観測を試みたが、どうも惑星の質量が小さ過ぎるのか(無理もない。なにせ惑星の正体が壁だったとは誰が思うものか)、観測されることはなかった。その惑星を誤観測していた、という可能性はほぼ皆無と断言しよう。何故なら、「俺は俺を信じている」から、「俺が俺を信じる」しかないのだ。それに、例の宇宙雲からの電波も受信した。よって、惑星が存在し、今は都合により、一時的に見えないだけだよ~ん、よ~ん、よ~ん、という訳で、興味を無くした俺は、序でに記憶も削除した、だから覚えていない、忘れていた、ということになる。
「さあ、出すもの出してスッキリしろ。……但し、現金でだ、振込はダメだ。俺も急ぐ用事がある。わざわざ、こんな所まで出てきたんだ、さあ、急いでくれ、手ぶらじゃ帰れないからな」
揉み手をして、催促のように騒ぎ立てるおっさんだ。他に誰もいない人里離れた天文台で間違いを起こされては困る。おっさんは残り少ない人生を無駄にしないためにも、早く自宅という古巣に戻った方がいいだろう。少ないとは言え、まだまだ人生は続くのだから、——で思い出したが、アベルのその後も語っていたので、俺が代わりに呟いておこう。——
隕石の衝突で砕け散ったカケラと自身の心を抱えたアベルは、カケラの再生を願い、カケラを創造した何者かを探す旅に出た。取り敢えず、その者を神としておこう。そうして宇宙のあっちこっちで神を探したが、当然見つかるものではない。それもそのはず、神の名前どころか、その姿形され分からないときたら、それは無理ってものだろう。だがアベルは俺と同様、諦めるという意味を知らなかった。だから、どこまでも、どこまでも、宇宙の隅から隅まで、果てという果てを放浪したようだ。
それで、今でもアベルは宇宙のどこかを彷徨っている、で終わりではなかったのじゃ。なんと! 奇跡か、それとも奇跡か、あれもか……そう、奇跡が怒ったのだ、いや、起こったのだ。それはもう、運命と言うしかあるまい。
神に出会ったアベルは、何度も頭を下げ、カケラの復活を頼んだ、そうだ。アベルが広げる手の平には、砕けたカケラが。それを愛おしむように見つめる神であった。(アベルは雲のようなものなので、頭とか手などは無いが、飽く迄、そんな感じと思ってもらいたい)
だが、アベルの嘆願も虚しく、ただ首を横に振る神である。そして、「終わりからは何も始まらぬ。だが……」とアベルに告げた、そうだ。これに落胆したアベルは——、今までの、長旅の疲れもあったのだろう、ぽっくりと、そう、ぽっくりとじゃ。
その頃、カインはカケラが一つ増えたことに気が付いた、そうだ。それは多分、虫の知らせというものだろう。そしてそれが、すぐにアベルの魂を宿した器だと分かった、そうだ。
久しぶりにアベルと対面したカインは、暫くその場に佇んでいたが、ある事を思い出すと顔を顰めた、らしい。それは、ある場所にもカケラが新しく誕生したのだが、それは中身の無い、空っぽのカケラだった、そうだ。しかし最近、それに魂が宿ったらしく、活動し始めた、そうだ。カインがそれを思い出し顔を顰めたのは、「どうやら、神というのは気が利かないようだ。それとも、最後の仕上げは私にしろ、ということか」と思ったから、のようだ。
そうしてカインは、アベルの器と、新しく器となったカケラを隣り合わせに、そう、寄り添うように配置した、そうだ。そして、神が言い残し、アベルが聞かなかった言葉の続きを呟いた、そうだ。「——だが、魂は永遠である」と。
「お前、泣いているのか? まさか、金を持っていないとか言わないよな。どうなんだ」
それは退屈な時間であり、同時に意味のある事とは思えなくなった、そんな頃だっただろうか。私は、アベルがしていた事を真似てみようと思い立ち、間近でカケラを観察することにした。が、アベルのように、何かが聴こえたり、感じることはなく、改めてアベルの特異性に感服したものだ。だが、アベルに出来て私に出来ないとなると、何故か無性に悔しい思いが私に芽生えてしまったようだ。と同時に、私にそんな負けず嫌いな一面があったことにも驚いている。
私は、目に入るカケラに片っ端から話し掛けた。「おい、何とか言ったらどうなんだ。ウンともスンとも言わないとは卑怯だぞ」と、相手の心を揺さぶって見たが、——残念ながら、応えようとする気概のあるカケラは一つも無かった。勿論、私に聞く耳はある、アベルのように愛情という名の愛の鞭でペシペシと表面を叩いて、いや、愛撫もした。だが、何奴も此奴も一様に押し黙ったまま沈黙を続けるばかり。そうこうしているうちに私は物言わぬカケラに飽きてしまったようだ。
そんなある日、私はカケラに触れた時の感触をふと思い出した。ただ黒く硬い表面は、一見するとツルツルしているものだと思えたが、蘇った感触を再生すると、「アレはツルツルではなくザラザラだったぞ」と思い出した訳である。そこで早速、その正体を暴こうとカケラの表面を——「おおぉぉぉ、ツルツルの中に、微かにザラザラを感じる」となった。そこで早速、目を凝らして表面を見つめると——「うおぉぉぉ、何も見えん」となった。そこで早速、分解能を高めに高めると——「えぇぇぇぇ、なるほど。全て分かった」となった。
こうして私は、君たちが居る地球について、——正確には、人についての知識を得た。——それは何故か。それは、生きているカケラから得られた知識であり、生きているカケラとは人であるからだ。
さて、君たち自身である人とカケラとでは、似ても似つかぬ存在ではないのか、という疑念が生じていることだろう。確かに姿形は大いに異なるが、人を人たらしめる、精神、意志、感情、思考など、人の非肉体的部分が、カケラに存在している。それを他の言葉で言い換えれば、魂と言うことになるだろうか。それがカケラの中に、またはカケラそのものに魂としての情報が存在している、言わば魂の器と呼ぶべき存在なのである。
だが、更に疑問が増えたことだろう。私の声を聴いている人は、「自分はまだ生きている。なのでその魂とは死者の魂ということになるはずだ。そうでなければ、自分の魂はここにあり、カケラとは何ら関係が無い」と考えるだろう。それは、半分だけ正解である。
では、全ての答えを理解するために、魂の振る舞いについて説明していこう。どの時点からでも良いのだが、まずは、生きているカケラから話を進めるとしよう。
生きているカケラとは、なにがしらの動作をしている状態であり、ちょうど電子回路に電気が流れている、ようなものだ。この状態をアベルや私が何かを感じ取った動き、と想像してもらいたい。そしてこの状態をカケラが魂の器として機能しているとする。但し、この状態であっても器との意思疎通や情報を取得できる訳ではない。
この器が機能を停止した瞬間、正確には停止する寸前、これと対になる存在に対して量子テレポーテーションが起こる。これは、器の状態を、もう一つの存在に対して転送したということである。但し補足しておくが、転送と言っても移動したのではなく、対になる存在が同時に同じ状態になることである。
では、器と対になる存在とは何か? であるが、それが人に宿るとされる魂である。では、器と人の魂が何時、どのようにして対になったのか。それは私にも遂に解けなかった謎である。
次に、魂が人から離れた時、これも正確には離れる寸前に、先程とは逆の現象が起き、停止していた器がまた動き出す。これを、それぞれの器が、それぞれの間隔で繰り返している、というのが全ての答えである。
最後に、私がどのようにして、これらの現象を知り得たか? だが、それは簡単なことだった。物言わぬカケラに手を焼いていた私だが、対の存在を知った時、その存在を観察すれば済むことである。私にとってそれが容易であったことは幸いであった。
以上、お分かり頂けただろうか。
追伸。アベルが居ない間、君たちを観察したのは良い暇つぶしになった。これからも大いに励め、人類よ。そして、私を楽しませてくれることを期待する。——それと、金を借りたら返すのが宇宙規模での常識である。さもないと君は死後、カケラに戻ることは叶わず、地獄に落ちるだろう。その時は永遠に「さようなら」だ。
◇
「なんだとぉぉぉ、ちょっと待てよ。最後のは絶対、勝手に付け足したな! 宇宙人が、いや、この場合は宇宙雲か、どっちでもいいが、そんな細いことを絶対、知ってるはずがない、絶対だ。……何が宇宙規模の常識だよ、それこそ勝手に俺たちを覗きやがって、その方がよっぽど非常識ってもんだ」
何かをやり遂げたという、それはそれは満足そうな笑顔で、持っていたノートをテーブルの上に叩きつけ、オマケに嘘を混ぜてこねくり回すおっさんだ。誰が許せるだろうか、まったく。
「はあ? 付け足す、さあ、なんのことだ。無添加、純真、真心の詰め合わせだ。それに、『お前のことは見ているぞ』と言っていただろう。不審な行動は慎んだ方が賢明だ。……ところで、どうなんだ? 地球外生命の呟きは。これだから話したくはなかった、というのが分かっただろう。お前のことだ、よく考えもしないで、そのまま発表して、いい笑い者になることだろう。……いいか、これがどんなにすごい発見かどうか、である前に、話の真偽が問われるはずだ。いや、それさえ無いかもしれない。多分お前の創作、ホラ話だとして誰も耳を貸さないだろう、そういうことだ。分かったらサッサと金を払って楽になれ」
鳥が飛んでいる。今にも雨が降りそうな、どんよりとした雲の下を、だ。そして、「かぁー、かぁー」ではなく、「かねぇー、かねぇー」と鳴きながら飛んで行く、老いた鳥だ。……雲と言えば例の宇宙雲のことを連想してしまった。見上げる空に、どんよりした宇宙雲が目を輝かせながら浮かんでいる光景は想像しただけでもゾッとする。
おっさんが来訪するまでの3ヶ月で、自分が発見した惑星を忘れていたのには訳がある。それは、——実はその惑星、すぐに観測できない状態になっていたのだ。平たく言えば、「どっかに行った」ということだ。勿論、他の方法でも観測を試みたが、どうも惑星の質量が小さ過ぎるのか(無理もない。なにせ惑星の正体が壁だったとは誰が思うものか)、観測されることはなかった。その惑星を誤観測していた、という可能性はほぼ皆無と断言しよう。何故なら、「俺は俺を信じている」から、「俺が俺を信じる」しかないのだ。それに、例の宇宙雲からの電波も受信した。よって、惑星が存在し、今は都合により、一時的に見えないだけだよ~ん、よ~ん、よ~ん、という訳で、興味を無くした俺は、序でに記憶も削除した、だから覚えていない、忘れていた、ということになる。
「さあ、出すもの出してスッキリしろ。……但し、現金でだ、振込はダメだ。俺も急ぐ用事がある。わざわざ、こんな所まで出てきたんだ、さあ、急いでくれ、手ぶらじゃ帰れないからな」
揉み手をして、催促のように騒ぎ立てるおっさんだ。他に誰もいない人里離れた天文台で間違いを起こされては困る。おっさんは残り少ない人生を無駄にしないためにも、早く自宅という古巣に戻った方がいいだろう。少ないとは言え、まだまだ人生は続くのだから、——で思い出したが、アベルのその後も語っていたので、俺が代わりに呟いておこう。——
隕石の衝突で砕け散ったカケラと自身の心を抱えたアベルは、カケラの再生を願い、カケラを創造した何者かを探す旅に出た。取り敢えず、その者を神としておこう。そうして宇宙のあっちこっちで神を探したが、当然見つかるものではない。それもそのはず、神の名前どころか、その姿形され分からないときたら、それは無理ってものだろう。だがアベルは俺と同様、諦めるという意味を知らなかった。だから、どこまでも、どこまでも、宇宙の隅から隅まで、果てという果てを放浪したようだ。
それで、今でもアベルは宇宙のどこかを彷徨っている、で終わりではなかったのじゃ。なんと! 奇跡か、それとも奇跡か、あれもか……そう、奇跡が怒ったのだ、いや、起こったのだ。それはもう、運命と言うしかあるまい。
神に出会ったアベルは、何度も頭を下げ、カケラの復活を頼んだ、そうだ。アベルが広げる手の平には、砕けたカケラが。それを愛おしむように見つめる神であった。(アベルは雲のようなものなので、頭とか手などは無いが、飽く迄、そんな感じと思ってもらいたい)
だが、アベルの嘆願も虚しく、ただ首を横に振る神である。そして、「終わりからは何も始まらぬ。だが……」とアベルに告げた、そうだ。これに落胆したアベルは——、今までの、長旅の疲れもあったのだろう、ぽっくりと、そう、ぽっくりとじゃ。
その頃、カインはカケラが一つ増えたことに気が付いた、そうだ。それは多分、虫の知らせというものだろう。そしてそれが、すぐにアベルの魂を宿した器だと分かった、そうだ。
久しぶりにアベルと対面したカインは、暫くその場に佇んでいたが、ある事を思い出すと顔を顰めた、らしい。それは、ある場所にもカケラが新しく誕生したのだが、それは中身の無い、空っぽのカケラだった、そうだ。しかし最近、それに魂が宿ったらしく、活動し始めた、そうだ。カインがそれを思い出し顔を顰めたのは、「どうやら、神というのは気が利かないようだ。それとも、最後の仕上げは私にしろ、ということか」と思ったから、のようだ。
そうしてカインは、アベルの器と、新しく器となったカケラを隣り合わせに、そう、寄り添うように配置した、そうだ。そして、神が言い残し、アベルが聞かなかった言葉の続きを呟いた、そうだ。「——だが、魂は永遠である」と。
「お前、泣いているのか? まさか、金を持っていないとか言わないよな。どうなんだ」
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