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#1 中世 イリア編
#1.1 受付のお姉さんは綺麗に見える (1/2)
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中世ヨーロッパ風の街並み。
均整のとれた建物が並ぶ、これぞヨーロッパといえる風景が…あった場所。
今、街は瓦礫の残骸で荒れ果てている。
そして、人は誰もいない。
いや、俺達を除いては。
俺の横には12人の少女達がいる。彼女達は服装も出身もまちまちだ。そんな俺達の目の前には、一人の男と、同じく12人だが、正統派の美少女親衛隊がいる。
そんな正規軍と寄せ集め同然の俺達、救世軍は一触即発の状態にある。総勢26人の睨み合いが続く中、俺は次の一手を考えていた。
心地良い風が吹いたはずなのに、瓦礫と化した家々から埃が舞い上がる。
誰が? 何故?
その答えは、目の前の男が知っている。
瓦礫の隙間から、一匹の猫が這い上がって来た。そして、ニャーと鳴いた。(可愛いぜ。モフモフしたい)お前は生き延びたんだな。お前の明日を、未来を取り戻してやる。
さあ、12人の乙女達よ。これは運命だ。俺に出会ったのが運の尽きだと思って諦めてくれ。そして、今の俺のように、このどうしようもない状況を何とかする、次の一手を考えてくれ。
俺はその先を考える。
なぜ、こうなったのか? もっと早く気付けなかったのか? 思い出そう、記憶の限り。
そう、これは、たった11時間24分前に始まったことだ。まだ、記憶は確かだ。
確認しよう、ひとつずつ……
◇
俺は目を、そっと開けた。
そこは……中世ヨーロッパ風の街並みが見える。多分、そうだろう。初めて見たけど。とうとう来てしまった異世界。憧れの異世界、癒しの異世界、心の友、異世界。
そして、俺を待っていた異世界。俺も待っていた。
活気のある街。古風な服装。電気で動く物は何もない。もちろん、スマホを見ながら歩いている者もいない。ここが何処なのか分からないが、とにかく異世界だ。
青く澄み切った空。飛行機なんて飛んでいない。電柱も、ネオンも、スーツを着た人達もいない。まさしく、それらしい。
道の両脇に人が集まりだした。人が、どんどん増えてくる。そして、道の真ん中だけ空いている。これは、何かのパレードが始まるようだ。
そういえば、両手が重い。目の前の光景に感動して気が付かなかった。両手には大きなカボチャのようなものを持っていた。すごく重い。これは何だ? 何で持っているんだ? そんな疑問を探っていると、地響きが伝わってくる。何かが来る。
カパカパ、ゴトゴト。馬車の列がやって来た。集まった人達が歓声の声を挙げ、手を振ったり、人の頭を叩いたりと、大賑わいになってきた。
馬車が一台、また一台と通り過ぎて行く。
「これは、何だろう?」
思わず声に出して言ってしまった。すると、それに応えるように話しかけられた。
「あれはね、勇者ケンジ様の馬車よ」
勇者? ケンジ? 誰?
「あなた、他所から来たの? でも、勇者ケンジ様のことは知ってるわよね」
いつの間にか、女の子が隣に立っていた。
キター、イベント、キター。
俺と同じか、少し年下のような、髪の長い少女だ。ここは、平素を装って、返答してみよう思う。
「誰ですか? 知らないんです。(もっと言ってみよう)もし、良ければ教えてもらえませんか(よく言った! 俺)」
「チッ、これだから田舎者は」
舌打ちされたー。おかしいな、これってお約束のイベントじゃないの?
「仕方ないわね。あれは、勇者ケンジ様と従者の一行よ。魔王からお姫様を救い出した勇者ケンジ様と、その従者12名を乗せた馬車。そして、お姫様が待つお城に向かっているところよ。さすがに、それだけ人数がいると馬車も7台必要になるのね。それに……」
「それに?」
彼女の顔が急に険しくなったように見えた。
「それに、従者って、全員女性なのよね……ケンジのやつ」
最後だけ、ぼかすように声が小さかった。
なんて羨ましい野郎だ、ケンジってやつは。どうりで、先頭の馬車の男がニコニコしているなって思ったら、あれはニヤついていたのか! それに、それにしても、だ。後続の馬車には可愛い女の子が二人ずつ乗っているのが見える。ナンテコッタイ。女の子12人がケンジの従者だって! どうなっているんだ! この世界は!?
”早い者勝ちですよ”そんな言葉が過ぎった。馬車の列が通り過ぎると、土埃が舞い、集まった人達が散っていく。初っ端から、なんてものを見せてくれんだ。そう思ったが、もしかしたら、これは俺に見本を見せてくれたのかもしれない。そう思い直すことにした。
隣にいた彼女が俺の袖を引っ張っている。彼女もまた、あの従者に負けず劣らずの美人だ。そう、俺のイベントは始まったばかりなのさ。
「ちょっとあなた、お金、お金を払いなさいよ」
「お金?」
「とぼけるつもり? じゃあ、あなたの、その手に持っているものは何?」
「何って、カボチャかな?」
「かな? じゃないでしょう。うちのお店から持ち出しておいて。もう、全く。今なら、怒らないから、さっさと支払ってちょうだい」
「お金? 金貨とか? ここの通貨は何だろう?」
「あなたね、どこの国から来たの? まさか、異世界から来たって言わないわよね」
「そのー、その、まさかだったりして」
「ふざけないで! もう、怒ったわ」
そう言うと彼女は俺の胸ポケットにあったカードを取り上げた。
「それは大事なものなんだ。返してくれ、ないか?」
「なにこれ? 虹色に輝いてる。綺麗ね……ってお金じゃない!」
「そうだよ、だから返して…」
「お金が無いなら、これは没収です。返して欲しければ、私について来て!」
そう言いながら彼女は、俺が持っているカボチャにグーパンチを当てた。こえー。付いて行かないと何をされるか分からない。可愛くて気の強い女の子に付いて行くのはいいが、コレジャナイ感が止まらない。
◇
均整のとれた建物が並ぶ、これぞヨーロッパといえる風景が…あった場所。
今、街は瓦礫の残骸で荒れ果てている。
そして、人は誰もいない。
いや、俺達を除いては。
俺の横には12人の少女達がいる。彼女達は服装も出身もまちまちだ。そんな俺達の目の前には、一人の男と、同じく12人だが、正統派の美少女親衛隊がいる。
そんな正規軍と寄せ集め同然の俺達、救世軍は一触即発の状態にある。総勢26人の睨み合いが続く中、俺は次の一手を考えていた。
心地良い風が吹いたはずなのに、瓦礫と化した家々から埃が舞い上がる。
誰が? 何故?
その答えは、目の前の男が知っている。
瓦礫の隙間から、一匹の猫が這い上がって来た。そして、ニャーと鳴いた。(可愛いぜ。モフモフしたい)お前は生き延びたんだな。お前の明日を、未来を取り戻してやる。
さあ、12人の乙女達よ。これは運命だ。俺に出会ったのが運の尽きだと思って諦めてくれ。そして、今の俺のように、このどうしようもない状況を何とかする、次の一手を考えてくれ。
俺はその先を考える。
なぜ、こうなったのか? もっと早く気付けなかったのか? 思い出そう、記憶の限り。
そう、これは、たった11時間24分前に始まったことだ。まだ、記憶は確かだ。
確認しよう、ひとつずつ……
◇
俺は目を、そっと開けた。
そこは……中世ヨーロッパ風の街並みが見える。多分、そうだろう。初めて見たけど。とうとう来てしまった異世界。憧れの異世界、癒しの異世界、心の友、異世界。
そして、俺を待っていた異世界。俺も待っていた。
活気のある街。古風な服装。電気で動く物は何もない。もちろん、スマホを見ながら歩いている者もいない。ここが何処なのか分からないが、とにかく異世界だ。
青く澄み切った空。飛行機なんて飛んでいない。電柱も、ネオンも、スーツを着た人達もいない。まさしく、それらしい。
道の両脇に人が集まりだした。人が、どんどん増えてくる。そして、道の真ん中だけ空いている。これは、何かのパレードが始まるようだ。
そういえば、両手が重い。目の前の光景に感動して気が付かなかった。両手には大きなカボチャのようなものを持っていた。すごく重い。これは何だ? 何で持っているんだ? そんな疑問を探っていると、地響きが伝わってくる。何かが来る。
カパカパ、ゴトゴト。馬車の列がやって来た。集まった人達が歓声の声を挙げ、手を振ったり、人の頭を叩いたりと、大賑わいになってきた。
馬車が一台、また一台と通り過ぎて行く。
「これは、何だろう?」
思わず声に出して言ってしまった。すると、それに応えるように話しかけられた。
「あれはね、勇者ケンジ様の馬車よ」
勇者? ケンジ? 誰?
「あなた、他所から来たの? でも、勇者ケンジ様のことは知ってるわよね」
いつの間にか、女の子が隣に立っていた。
キター、イベント、キター。
俺と同じか、少し年下のような、髪の長い少女だ。ここは、平素を装って、返答してみよう思う。
「誰ですか? 知らないんです。(もっと言ってみよう)もし、良ければ教えてもらえませんか(よく言った! 俺)」
「チッ、これだから田舎者は」
舌打ちされたー。おかしいな、これってお約束のイベントじゃないの?
「仕方ないわね。あれは、勇者ケンジ様と従者の一行よ。魔王からお姫様を救い出した勇者ケンジ様と、その従者12名を乗せた馬車。そして、お姫様が待つお城に向かっているところよ。さすがに、それだけ人数がいると馬車も7台必要になるのね。それに……」
「それに?」
彼女の顔が急に険しくなったように見えた。
「それに、従者って、全員女性なのよね……ケンジのやつ」
最後だけ、ぼかすように声が小さかった。
なんて羨ましい野郎だ、ケンジってやつは。どうりで、先頭の馬車の男がニコニコしているなって思ったら、あれはニヤついていたのか! それに、それにしても、だ。後続の馬車には可愛い女の子が二人ずつ乗っているのが見える。ナンテコッタイ。女の子12人がケンジの従者だって! どうなっているんだ! この世界は!?
”早い者勝ちですよ”そんな言葉が過ぎった。馬車の列が通り過ぎると、土埃が舞い、集まった人達が散っていく。初っ端から、なんてものを見せてくれんだ。そう思ったが、もしかしたら、これは俺に見本を見せてくれたのかもしれない。そう思い直すことにした。
隣にいた彼女が俺の袖を引っ張っている。彼女もまた、あの従者に負けず劣らずの美人だ。そう、俺のイベントは始まったばかりなのさ。
「ちょっとあなた、お金、お金を払いなさいよ」
「お金?」
「とぼけるつもり? じゃあ、あなたの、その手に持っているものは何?」
「何って、カボチャかな?」
「かな? じゃないでしょう。うちのお店から持ち出しておいて。もう、全く。今なら、怒らないから、さっさと支払ってちょうだい」
「お金? 金貨とか? ここの通貨は何だろう?」
「あなたね、どこの国から来たの? まさか、異世界から来たって言わないわよね」
「そのー、その、まさかだったりして」
「ふざけないで! もう、怒ったわ」
そう言うと彼女は俺の胸ポケットにあったカードを取り上げた。
「それは大事なものなんだ。返してくれ、ないか?」
「なにこれ? 虹色に輝いてる。綺麗ね……ってお金じゃない!」
「そうだよ、だから返して…」
「お金が無いなら、これは没収です。返して欲しければ、私について来て!」
そう言いながら彼女は、俺が持っているカボチャにグーパンチを当てた。こえー。付いて行かないと何をされるか分からない。可愛くて気の強い女の子に付いて行くのはいいが、コレジャナイ感が止まらない。
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