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#6 中世 イズナ編
#6.2 魔法を会得しよう (1/2)
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イズナは、街外れの一軒家に一人で住み、自給自足の生活をしている。街から離れて暮らすのは面倒じゃないかと聞くと、街と距離があった方が何かと都合がいいらしい。両親はどうしたなんてことは聞かない。それが旅のルールだ。
師匠となった俺は、イズナの所に転がり込んだ。何? イズナは女性じゃないか。そこに行っていいのかって? 俺は師匠だ。それにイズナは気にしないと言っている。俺も、べっべつに、気にしていない。人の好意には、とことん甘えるのが、俺だ。
「僕と師匠が出会う切っ掛けになったこの本、すごいんですよ」
「そうなの?」
「ええ! 著者は不明なんですが、魔法使いの間では絶大の人気がありまして、この”なろう”シリーズ、特に”魔法使いになろう”は絶品中の絶品です。その内容故に出版禁止にされているぐらいです」
ええものを貰うた。有り難う、旅行社。
「それよりも、イズナの魔法、すごいじゃないか」
「とんでもないです。僕のあれは、魔法じゃないです」
「そう、その魔法じゃないって、どういう意味?」
「師匠と違って、僕は詠唱が下手なんです。何故かって言うと、どうしても呪文が、恥ずかしいというか、馬鹿らしいというか。それで、いざ唱えようとすると、頭が白くなって、言えなくなるんです」
「いいじゃないか。呪文ぐらい言わなくても、あれだけ出来れば」
「ダメなんです。魔法とは理の世界に対して、宣言または依頼する言葉なのです。その言葉の力によって初めて、人知を超えた偉大なる力が宿るのです。壮言で美しく、流れ、響き渡るもの。それに比べて僕のは、上っ面を飾っているに過ぎません。それではダメなんです。美しくありません」
「なんだか、大変そうだね」
「そうなんです。ですが、師匠の呟きを聞いた時、僕は衝撃を受けました。あの、普通に話すようば詠唱方法は、どちらで学ばれたのですか?」
「それは~、おいおい」
「(ユウキ。この街全体が、弱い魔力に覆われているようですよ)」
「それで、魔法入門の街なのかな?」
「(おそらくそうでしょう)」
「ということは、この街を出ると使えなくなるとか?」
「(可能性は大きいですね)」
「師匠! お疲れのようなので、もう休んではどうでしょうか?」
「へえ? ……そうだね」
積もる話も置いといて、俺達は寝ることのにした。もちろん。イズナとは、別々の部屋である。
◇◇
俺は、悪夢を見た。
小高い場所に立つイズナ。そのイズナが大声で笑っているのか、叫んでいるのか、両手を高く上げている。空は真っ赤に燃えた隕石で埋め尽くされている。まさに、この世の終わり。イズナの思い通りに、その隕石群が大地を焼き尽くし、地獄絵図と化している。荒れ狂う大地の怒りと、イズナの笑う顔が、やけに印象に残る。そんな夢だ。
それが正夢であったかのように、地震が発生。俺は目を覚ました。家が激しく揺れ、寝ているベットにしがみ付いている。
「(ユウキ。地震は、この家だけのようです)」
「なんだって? 随分、極端な」
「(震源は隣の部屋です)」
「はあ? そんな地震ってあるの?」
「(確認しましょう)」
隣の部屋に這って移動する。まるで夜這いのようだが、イオナ公認である。イズナの部屋に侵入。イズナが寝ているであろうベットが、特に激しく動いている。時折、笑い声のようなものが聞こえるが、その声がピタッと止まった。すると地震も収まったようだ。
「(ユウキ。震源は彼女です)」
「そんな馬鹿な!」
「(前に言いかけましたが、彼女は魔法使いではないようですよ)」
「ええ? なんで?」
「(彼女は、簡単に言えば超能力者です)」
「そうなの?」
「(ユウキも見ましたよね。彼女のデタラメな詠唱では魔法の効果はなくて、無言での行為で噴水に力を及ぼしたことを)」
「そう言われれば、そうかも」
「(元々彼女は、詠唱する必要は無いんです。頭の中イメージさえ出来れば、それを実現出来る能力を持っているようです)」
「それじゃあ、俺は騙されたのかな?」
「(いいえ。それは違うと思います。彼女自身も分かっていないと思いますよ。おそらく、自分のしていることが、魔法だと信じきっていると思います)」
「それはまた、不憫な」
静かになった夜、俺はまた、寝ることにした。
◇◇
寝過ごした朝は気持ちが良い。
「お早う御座います、師匠! よく眠れましたか?」
「もちろん」
なぜかエプロン姿のイズナ。ってこれを不思議がることはないな。そんなことより、テーブルの上に皿が三つある方が不思議だ。
「イズナ、誰か来るの?」
「いいえ、師匠。なんでですか?」
「いや、皿が三つあるから」
「え! どうしてだろう。……そうか。何か感じたんです。誰かがいそうな」
「そ。じゃあ、食べようか」
俺達は黙って食べ始めた。俺は、いい頃合いを見計らって、ポツリ。
「イズナの後ろに人が」
イズナが、持っていたスプーンを落とした。
「誰・で・す・か?」
これは嘘ではなく、本当にイズナの後ろに……イオナが立っていた。
「いや、勘違いだったよ。誰もいないよ」
「そ・う・で・す・か」
「脅かしたら、ダメじゃないか」
「(いいえ、そんなつもりじゃないですよ。ちょっと、気が付くかなって)」
「気づいたかな?」
「(なんとなく、感じる程度には)」
イズナが、持っていたスプーンを、また落とした。
「師・匠! 誰・と・話・し・て・ま・す?」
しまった! ついイオナと会話してしまった。
イズナが泣きそうだ。
「誰もいないって。俺って独り言、大好きだからさ」
「本当ですか?」
「本当だよ。そうだ。いいことを教えてあげるよ」
「なんですか?」
「最強最高の、魔法の呪文だ」
「本当?」
「本当さ。それも、俺のとっておきだ。これを覚えれば向かう所敵なしだ。だから、いざって時にしか、使ってはいけないんだ。いいかい?」
「わかりました」
「じゃあ、言うよ。”白い猫は尾も白い”」
「しろいねこはおもしろい」
「そうそう」
「有り難う御座います。師匠! 大切にします」
和むと思ったけど、不発。イリア達だと笑って済むことが、イズナだとまるで反応が違う。同じようなノリでいたら、まずそうだ。
◇◇
師匠となった俺は、イズナの所に転がり込んだ。何? イズナは女性じゃないか。そこに行っていいのかって? 俺は師匠だ。それにイズナは気にしないと言っている。俺も、べっべつに、気にしていない。人の好意には、とことん甘えるのが、俺だ。
「僕と師匠が出会う切っ掛けになったこの本、すごいんですよ」
「そうなの?」
「ええ! 著者は不明なんですが、魔法使いの間では絶大の人気がありまして、この”なろう”シリーズ、特に”魔法使いになろう”は絶品中の絶品です。その内容故に出版禁止にされているぐらいです」
ええものを貰うた。有り難う、旅行社。
「それよりも、イズナの魔法、すごいじゃないか」
「とんでもないです。僕のあれは、魔法じゃないです」
「そう、その魔法じゃないって、どういう意味?」
「師匠と違って、僕は詠唱が下手なんです。何故かって言うと、どうしても呪文が、恥ずかしいというか、馬鹿らしいというか。それで、いざ唱えようとすると、頭が白くなって、言えなくなるんです」
「いいじゃないか。呪文ぐらい言わなくても、あれだけ出来れば」
「ダメなんです。魔法とは理の世界に対して、宣言または依頼する言葉なのです。その言葉の力によって初めて、人知を超えた偉大なる力が宿るのです。壮言で美しく、流れ、響き渡るもの。それに比べて僕のは、上っ面を飾っているに過ぎません。それではダメなんです。美しくありません」
「なんだか、大変そうだね」
「そうなんです。ですが、師匠の呟きを聞いた時、僕は衝撃を受けました。あの、普通に話すようば詠唱方法は、どちらで学ばれたのですか?」
「それは~、おいおい」
「(ユウキ。この街全体が、弱い魔力に覆われているようですよ)」
「それで、魔法入門の街なのかな?」
「(おそらくそうでしょう)」
「ということは、この街を出ると使えなくなるとか?」
「(可能性は大きいですね)」
「師匠! お疲れのようなので、もう休んではどうでしょうか?」
「へえ? ……そうだね」
積もる話も置いといて、俺達は寝ることのにした。もちろん。イズナとは、別々の部屋である。
◇◇
俺は、悪夢を見た。
小高い場所に立つイズナ。そのイズナが大声で笑っているのか、叫んでいるのか、両手を高く上げている。空は真っ赤に燃えた隕石で埋め尽くされている。まさに、この世の終わり。イズナの思い通りに、その隕石群が大地を焼き尽くし、地獄絵図と化している。荒れ狂う大地の怒りと、イズナの笑う顔が、やけに印象に残る。そんな夢だ。
それが正夢であったかのように、地震が発生。俺は目を覚ました。家が激しく揺れ、寝ているベットにしがみ付いている。
「(ユウキ。地震は、この家だけのようです)」
「なんだって? 随分、極端な」
「(震源は隣の部屋です)」
「はあ? そんな地震ってあるの?」
「(確認しましょう)」
隣の部屋に這って移動する。まるで夜這いのようだが、イオナ公認である。イズナの部屋に侵入。イズナが寝ているであろうベットが、特に激しく動いている。時折、笑い声のようなものが聞こえるが、その声がピタッと止まった。すると地震も収まったようだ。
「(ユウキ。震源は彼女です)」
「そんな馬鹿な!」
「(前に言いかけましたが、彼女は魔法使いではないようですよ)」
「ええ? なんで?」
「(彼女は、簡単に言えば超能力者です)」
「そうなの?」
「(ユウキも見ましたよね。彼女のデタラメな詠唱では魔法の効果はなくて、無言での行為で噴水に力を及ぼしたことを)」
「そう言われれば、そうかも」
「(元々彼女は、詠唱する必要は無いんです。頭の中イメージさえ出来れば、それを実現出来る能力を持っているようです)」
「それじゃあ、俺は騙されたのかな?」
「(いいえ。それは違うと思います。彼女自身も分かっていないと思いますよ。おそらく、自分のしていることが、魔法だと信じきっていると思います)」
「それはまた、不憫な」
静かになった夜、俺はまた、寝ることにした。
◇◇
寝過ごした朝は気持ちが良い。
「お早う御座います、師匠! よく眠れましたか?」
「もちろん」
なぜかエプロン姿のイズナ。ってこれを不思議がることはないな。そんなことより、テーブルの上に皿が三つある方が不思議だ。
「イズナ、誰か来るの?」
「いいえ、師匠。なんでですか?」
「いや、皿が三つあるから」
「え! どうしてだろう。……そうか。何か感じたんです。誰かがいそうな」
「そ。じゃあ、食べようか」
俺達は黙って食べ始めた。俺は、いい頃合いを見計らって、ポツリ。
「イズナの後ろに人が」
イズナが、持っていたスプーンを落とした。
「誰・で・す・か?」
これは嘘ではなく、本当にイズナの後ろに……イオナが立っていた。
「いや、勘違いだったよ。誰もいないよ」
「そ・う・で・す・か」
「脅かしたら、ダメじゃないか」
「(いいえ、そんなつもりじゃないですよ。ちょっと、気が付くかなって)」
「気づいたかな?」
「(なんとなく、感じる程度には)」
イズナが、持っていたスプーンを、また落とした。
「師・匠! 誰・と・話・し・て・ま・す?」
しまった! ついイオナと会話してしまった。
イズナが泣きそうだ。
「誰もいないって。俺って独り言、大好きだからさ」
「本当ですか?」
「本当だよ。そうだ。いいことを教えてあげるよ」
「なんですか?」
「最強最高の、魔法の呪文だ」
「本当?」
「本当さ。それも、俺のとっておきだ。これを覚えれば向かう所敵なしだ。だから、いざって時にしか、使ってはいけないんだ。いいかい?」
「わかりました」
「じゃあ、言うよ。”白い猫は尾も白い”」
「しろいねこはおもしろい」
「そうそう」
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