不幸と幸福の反覆

三毛猫マン

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加速

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妹のように可愛がっていた幸福な時を奪われれ私の心はささくれだっていた。

気持ちの整理など子供には出来るはずがない。



その寂しさを父親からお金を盗み、好きなものを買い心の隙間を埋めていった。

ある日、思い切って一万円を抜き取り、おもちゃ屋さんでBB弾のライフルを買った。



大人向けの商品だったのだろう。

子供の私には持て余してしまう大きさだったのだが、手に入れたことそのものに幸福を感じていた。



射程距離10mと書いていたのでどれほどの威力なのか、発泡スチロールを射撃して試すと貫通こそしないが明らかに破壊力は抜群だ。



こうなると良からぬことを考えるのが子供である。

その辺に野良猫や野良犬がいると撃ってみたい衝動にかられた。



きっと犯罪を犯してしまう子供はこのような経過を辿るのかもしれない。

生き物を撃ちたい衝動はあってもそんな都合よく現れてはくれない。



その辺の葉っぱや空き缶を的にして遊ぶことがせいぜいである。

盗んだお金で買ったおもちゃは家の外に隠しておいた。



とにかく物欲に歯止めがかからず、むしろ加速していった。

それでもあの姉妹の事は少しずつではあったが思い出す頻度が少なくなっていた。



そんなお金を盗む日々に終焉を迎える。



いつものように祖父母の家に預けられていた私は、祖母のタンスを物色していた。

衣類の奥に五十円玉の穴にネックレスのようなひも状の物を通した大金があった。



軽く百枚以上はあっただろうか。

祖母の家ではお小遣いを一日百円ずつもらっていたのだが、金銭感覚が麻痺している私には満足のいく金額ではなくなっていた。



少しずつ五十円玉を盗んでいった。

何度も盗んでいくと、明らかに五十円玉の束が減っていくのだがそんなことはお構いなしだ。



しかし、このことが祖母にばれてしまう。

祖母は私を呼びに来て五十円玉の束を見せる。



「これはおばあさんがコツコツ大切に貯めてきたものなんだよ」とだけつぶやいた。

それ以上は何も話さないし、私を怒るわけでもない。



ただただ悲しんでいるように見えた。

そんな祖母を見た私は少しだけ良心が戻ってきた。



本当に申し訳ないことをしたのだと時間がたつにつれ深く後悔をした。

このことでお金を盗むということはなくなった。



きっと説教をされたり怒られたりしていたら結果は違っていたのかもしれない。

祖母の悲しみを目の当たりにして自分で気づき、後悔し、自らの足で正しい道に戻っていったのだ。



人には反発という能力が備わっている。

強い力が加わるとより強く押し返そうとするものだ。



静かにそして怒らずに私に悟りその姿勢を持って祖母は教えてくれたのだろう。

その時の姿は半生がたった今でも忘れることができないほどに深く記憶に刻まれている。。
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