異世界転生者と始めるギルドづくり~稼げるギルド目指します~

フクロウ

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第8章 ギルド長の任務は大変だ

第122話 チハヤ・ナゲカワは魔王

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 吐き出すものはすべて吐き出し、治療はすんだところで改めて階段を上り始める。予想通りというかなんというか、上り切った先には一人の騎士が立ちはだかっていた。

「魔王を守る騎士といったところでしょうか。全身が黒い鎧でおおわれて、悪魔のようですわね」

 マリーの言うとおり全身黒づくめかつ、騎士の体の周りを黒いモヤが覆っている。騎士の後ろには大きな扉があり、おそらくはこの扉の先でチハヤが待っている。

「執事の手のひらの上で踊らされているようで癪だが、ここはマリアンヌ様と共闘するしかねぇみたいだな」

 トーヴァは大剣を握り締めると、挑発的な笑みを浮かべる。

「同感ですわ。ですが、ようやく戦えます。フランチェスカ、レオン、ヤマト。みなさん見捨てていくようで心苦しかったですから」

 マリーも剣を取ると、騎士の方をにらみつける。

「あの! 先輩! 一応私もいます!」

 そして、リリアも二人の横に並んだ。

「見た感じアンデットっぽい雰囲気もありますから、神聖魔法がないときついですよ!」

 3人を前にして、騎士も剣を構える。一触即発の雰囲気が漂っていた。

「わかっていますわね、サラ」

 そんな雰囲気でマリーは私に向かって微笑んだ。

「もう泣き言は許しません。ここまで来たら、あなたの役割はチハヤを連れ戻すこと」

「……わかってるよ。でもちょっと待って」

 私は髪を整える。エルサさんに切ってもらったばかりの髪はトゥルトゥルしていて、これからチハヤに会うには申し分ない。そして、なにより。

 ずっと握っていた手のひらを開く。チハヤがくれた幸運のお守り「四葉のクローバー」は、優しい光を帯びていた。

 クローバーを髪にセットし、準備は完了。私は扉を見上げた。

「うん、いいよ。マリー、私がチハヤを止めに行く。なにがなんでも、止めてみせる!」

 チハヤが死んで終わりなんて、そんな物語は私にとってなんの意味もないから。

「その意気ですわ! では、わたくしたちが一斉に掛かるのを合図に扉を開けてください。それでは、行きますわよ!!」

 マリーを筆頭に3人は突撃していった。剣を上段から振り下ろした黒い騎士の一撃は重く、3人とも吹き飛ばされるのが視界に入ったけど、私は構わず騎士の後ろに回り込む。

 そして、大きな扉を開けるとなかから眩いほどの白い光があふれ出てきた。







 ここは、どこ?

 真っ白なだけの世界が広がっている。壁も床も天井もない、本当にただの白い世界。まぶしさに慣れた目で周囲を見回してみても、状況は変わらなかった。

 また転移したのだろうか? 村の転移装置から魔王の根城まで来たように、今度は扉からチハヤのところへ飛んだ?

「チハヤ! いるのか!!」

 自分の声がこだまするだけだった。なにもない世界で私は立ち尽くすしかなかった。

 ところが、クローバーから音が聞こえてくる。コツコツコツコツ、と歩くような音。音はどんどん大きくなっていって、急に止まった。

『そんなに長くは経っていないはずですが、なぜか懐かしく感じてしまいますね。サラ様』

 突然、脳内に流れてきたのは紛れもなくチハヤの声だった。落ち着いて聞きやすく、低い声。……私がずっと聞きたかった声。

 私はぎゅっと両手を握る。なにかをつかんでいないと、たおれてしまいそうだったから。

「チハヤ! どこにいるんだ!?」

『ここですよ』

「ここって……!?」

 振り返ればそこにチハヤがいた。当たり前のように執事の燕尾服を着たままのチハヤが。いつものように微妙な微笑みを浮かべているチハヤが、いた。

 バッと手を振ると、後ろへ下がって距離を取る。

「い、いつも言ってるだろ。急に現れるなって」

「そうでしたね。失礼しました。ですが、ここはそういう場所ですので」

「どういうことだよ……?」

 チハヤは目を閉じると、白い手袋をはめたまま胸に手を当てた。

「時空魔法は障害物があると上手く使いこなせないのです。ですから、力を存分に発揮するためにはこのようななにもない空間が必要です」

 なにをごちゃごちゃと──いや、つまりこいつは時空魔法を使いまくると言っているのか?

「まだ、戦う気なのかチハヤ? 私はここまで来たんだ! みんなの力も借りて」

「ええ、もちろん知っています。状況は常に、サラ様のクローバーを通して把握していましたから」

 やっぱり、こいつ……!! 聞こえていたのに無視しやがって!

「くっそ。わかるんだったら今すぐモンスターを退けてくれ!」

「それはできません」

「なんでだよ! チハヤだって別にみんなを傷つけたくないだろ!?」

 グレースも、クリスさんもエルサさんも、チハヤはずっと守ってきた。仲間だと言っていた。本当は絶対に危険な目に合わせたくないはずだ。

 でも、チハヤは首を横に振った。

「できません」

「なんで!? じゃあ、私が命令するから! チハヤは私の執事なんだから、言うこと聞いてくれるんでしょ!?」

 そんなわけない。そうわかっていても、口からはムリな言葉ばかりが出てくる。

 チハヤの目が開く。その瞳はいつもの黒色ではなく、赤く、血のような赤色をしていた。

「サラ様。全て理解しているはずです。このやり取りも意味がないということも」

「いや! 意味はあるよ! 私はチハヤを止めに来たんだ!」

 チハヤは呆れたようにため息を吐いた。

「いいですか。何度も言っているように、ギルドは魔王討伐に欠かせない存在です。この世界では、職業ジョブの選択も能力スキルの付与もギルドが。怪物モンスター討伐から猫の捜索まで依頼は全てギルドが。そうして圧倒的かつ理不尽な強さを持つ魔王に匹敵する人間集団を育てる、これら全てがギルドの仕事です。ギルドにおいて必要なのは、能力の高いギルド員の確保。これが大前提です」

「そうだよ。何度も聞いたよ、その言葉は! でも、それがなんなんだよ!!」

「ですから、魔王は討伐しなければいけません。そのために私はギルドをつくり、魔王に匹敵できる強さを持つ人間集団を育ててきたのです」

 チハヤはまるで新しいコーヒーのレシピでも話すように、さらさらと恐ろしいことを言ってのけた。
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