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朝食と私の設定
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車椅子に和咲を乗せると、二人きりのダイニングテーブルへと向かう。
「朝食はどうしようか?」
「フルーツが食べたいわ。盛り沢山のフルーツから好きな実を一つ一つ食べるの。それからヨーグルト。食後は紅茶をいただこうかしら」
「了解。お姫様」
歯の浮くような台詞を撒き散らしながら、朝食の準備に取り掛かる。演技だ。私は元来、こういう性格ではないが、演技はそこそこできる自信がある。なぜなら、私は和咲が初主演を飾った映画『全ては演技の上で』の台本だからだ。あちこちに線が引かれ、何度も読み返された台本は、年月が経ちボロボロになっても和咲の大切な宝物として、大事にしまわれていた。
和咲を敬う今の私の設定はこうだ。
「幼い頃から芸能の世界に入った和咲が大人になり初めて真剣に恋をした恋人。そして、別れた恋人。心の底で忘れられないその恋人は、和咲が不治の病にかかったことを知り、家庭もキャリアも全てを投げ売って和咲の元へと舞い戻ってきた」
和咲の心の底からの願望が叶い、私は付喪神として異例の別人として変化しこうして演技をすることになった。
私達の家にはレストランで扱うような巨大な冷蔵庫があり、大抵のものはなんでも揃っている。フルーツは、ぶどうにバナナにオレンジにピーチにイチゴにグレープフルーツにりんごにライチ。そして、ヨーグルトと食後の紅茶。
果物は大きな籠に入れ、取り分ける深皿はガラス製。ヨーグルトは木の皿に入れて、紅茶は一人分を用意する。私は、コーヒーしか飲まないからだ。
全部をテーブルへ運んで食事の開始だ。ここで気をつけなければいけないのは、フルーツの選択。私が嫌いなのはピーチにグレープフルーツにそしてライチ。反対に和咲が好きなのは、バナナにいちごにオレンジ。これらを把握した上で取り分けなければならない。
「ありがとう。やっぱり、ライチはお嫌い?」
「ああ。やっぱり昔の思い出がね。小学校のときに給食で出たライチが初ライチだったんだけど口に合わなくてね。それでも残してはいけないと無理やり食べさせられた記憶があるからさ」
ハハ、と軽く笑う。ここまでで台詞が終わる。僕ではなく私の記憶が蘇るのだから簡単だ。
「朝食はどうしようか?」
「フルーツが食べたいわ。盛り沢山のフルーツから好きな実を一つ一つ食べるの。それからヨーグルト。食後は紅茶をいただこうかしら」
「了解。お姫様」
歯の浮くような台詞を撒き散らしながら、朝食の準備に取り掛かる。演技だ。私は元来、こういう性格ではないが、演技はそこそこできる自信がある。なぜなら、私は和咲が初主演を飾った映画『全ては演技の上で』の台本だからだ。あちこちに線が引かれ、何度も読み返された台本は、年月が経ちボロボロになっても和咲の大切な宝物として、大事にしまわれていた。
和咲を敬う今の私の設定はこうだ。
「幼い頃から芸能の世界に入った和咲が大人になり初めて真剣に恋をした恋人。そして、別れた恋人。心の底で忘れられないその恋人は、和咲が不治の病にかかったことを知り、家庭もキャリアも全てを投げ売って和咲の元へと舞い戻ってきた」
和咲の心の底からの願望が叶い、私は付喪神として異例の別人として変化しこうして演技をすることになった。
私達の家にはレストランで扱うような巨大な冷蔵庫があり、大抵のものはなんでも揃っている。フルーツは、ぶどうにバナナにオレンジにピーチにイチゴにグレープフルーツにりんごにライチ。そして、ヨーグルトと食後の紅茶。
果物は大きな籠に入れ、取り分ける深皿はガラス製。ヨーグルトは木の皿に入れて、紅茶は一人分を用意する。私は、コーヒーしか飲まないからだ。
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「ありがとう。やっぱり、ライチはお嫌い?」
「ああ。やっぱり昔の思い出がね。小学校のときに給食で出たライチが初ライチだったんだけど口に合わなくてね。それでも残してはいけないと無理やり食べさせられた記憶があるからさ」
ハハ、と軽く笑う。ここまでで台詞が終わる。僕ではなく私の記憶が蘇るのだから簡単だ。
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