私を追放した王子と妹へ、聖女の力が本物だと証明して差し上げましょう 他

星山遼

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ニセ聖女呼ばわりされて追放されたら、戦闘狂と噂の辺境伯から求婚されました

後編

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 リフィが驚いて顔を上げると、全身が透けてきらきらした鱗粉りんぷんを振り撒く女性が立っていた。
 見覚えのあるーー否、忘れようのないその容貌。
「女神っ?貴女あなた今までどこで何してたのよっ?」
 女神をぶっ飛ばしそうな勢いで食ってかかる。リフィに一方的に力を与えておきながら、突然その力を取り上げた張本人。そのせいでどれだけ苦労した事か!
『うっかり居眠りしている間に、アナタに付与していた力が消失しちゃった。てへ』
「てへ、じゃないわよ!」
 ぺろりと舌を出して笑う女神に、リフィは拳を握り締める。
『だからごめんてっば。で、力、戻してあげようか?』
 即行でお断りしようとして思い留まる。家に残る弟妹達を思うと、女神の提案を拒絶出来ない。
 しかし、再び力を得たとしても、一度ニセ聖女の烙印らくいんを押されてしまった以上、王城には戻れない。でも、けれど。
 迷うリフィの肩に、ヴァレルが手を置いた。
「行くあてがないなら、ここにいれば良い」
「で、でもあたしは追放された身だし、ヴァレル・・・・・・様にご迷惑が」
「構わん。オレも結婚相手が見つからなくて困っていたからお互い様だ」
 そうですか、と納得しかけて、ん?と首を傾げる。今、結婚とか言われた様な?
 顔を上げると、手を取られた。
「オレの顔を見て逃げ出さなかったのはお前が初めてだ。この先、こんな女性は見つからないかも知れないからここで捕獲しておく」
 あたしは珍獣ですか。と言うかそんなに簡単に決めて良いものなのか。
 突っ込みたくなるが、リフィとしても悪い話ではない。行き倒れたリフィを介抱してくれる優しさもあるし、実力も身分もある伯爵が結婚相手となれば周囲も黙るだろう。
 それに何より、不思議とヴァレルには肩肘を張らずに済んで気楽だ。一言で言えば『居心地が良い』
 リフィは己の直感を信じて決断した。
「分かりました。その話、お受けします」
 戦に挑む覚悟で返答したら、何故か満面の笑みを返された。首を傾げつつ、女神に向き直る。
「じゃあ聖女の力、頂戴」
『はいはーい。いつ居眠りしても平気な様に、向こう百年は効力を継続させるから安心してねー』
「寿命が先に来そうね……と言うか居眠りするのは確定なの?」
 呆れ顔で言うと、女神は何故か胸を張った。
『神様って大変でねー。そんな神様がラクをする為の聖女制度システムなのよ?』
「ぶっちゃけ過ぎじゃない?」
 げんなりするリフィの額に、女神の指が触れる。現れた柔らかな光がリフィの中へ吸い込まれた。
『直接顕現けんげんしたらこの世界が崩壊しちゃうから、こうして影を降ろさないとだし、結構気を遣うのよー?って事で後は宜しくねー』
 明るく言い残して鱗粉が弾け、女神の姿が消える。
「あの女性、森の精霊かと思っていたら女神だったのか」
 女神がいた辺りに残る残光を見つめながらヴァレルが呟く。
「女神の気さくさにも驚いたが、神におくせず対等に言い合うお前もたいがい大物だな。まぁ、その気概きがいがあればオレの妻も務まるだろう」
 呆れているのか誉めているのか、ヴァレルの評価は微妙に分かりにくい。
 それでも『聖女という特殊性』ではなく『リフィ自身』に価値を見い出してくれているみたいだし、悪気はないのだろうと思っておく事にする。
「では早速、結婚の証に何か贈り物をするとしようか」
 辺境とはいえ伯爵、しかも数々の勝利を上げて国王の信頼もあつく名声もある。宝飾品とかご馳走とか貰えたりするのだろうか、と心を躍らせるリフィに、ヴァレルは自慢げに言った。
「魔獣の首の剥製はくせいか、地底獣の卵を使った珍味か・・・・・・何が希望だ?」

 前言撤回。噂にたがわぬ戦闘狂だわこの人。
 ちょっと早まったかも?と冷や汗を垂らしつつ、リフィは引きつった笑顔を返した。
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