『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん

文字の大きさ
34 / 147

第33話 侵略者、異星の神の眷属たちの胎動

しおりを挟む
聖協国リーディルド―――降臨の間。

数年前に突然現れた、自称神の使い。

『隻眼のジグルダ』は苦虫をかみつぶしたような顔をしながら魔力で起動している水晶玉を睨み付けていた。


「くそっ、何なのだあのガキは。…見た目の魔力は…ふむ。俺よりは低い――だが…」

先ほどもたらされた報告。
保護し、呪縛で捕らえていたマイハルド王国の教皇ルベストイの姿が突然消え失せていた。

もちろん自分にとってあの男に大した価値などない。
たまたま国内有数の貴族家の系譜。

正直数多ある金づるの一人。
死のうがどうなろうが興味はない。

しかしそうはいっても一国の教皇にまで上り詰めた男だ。

それなりには楽しめると思っていた矢先、まるで『おもちゃを取り上げられた』ような口惜しさにジグルダは囚われていた。

「失礼します」

そんな彼の部屋に入ってくる妙齢の女性。
彼の信者の一人、ルアッタだ。

「…なんだ?…ふん。…『神への奉仕』か?―――ちょうどいい。こっちへ来い」
「はい」

今この国はすべて自分の思い通りに動かすことが出来ていた。
理由は分からないが自身の中に存在するすさまじい力。
そして見つめるだけでほとんどの者は彼に逆らえなくなっていた。

最後まで抵抗した第3王子、ムッハバラードですら調教が完了。
そしてマイハルド王国へと攻めさせることが出来たというのに。

ジグルダはおもむろに今部屋に来たルアッタを乱暴に抱き寄せる。

「っ!?あ、あんっ…ジグルダ様…」
「ふん。物好きな女め…ふう…確かに良い…心が躍るな…」

手を引き自分の膝の上に乗せ、楽しむジグルダ。
『神による祝福』――そう信じているルアッタは感動に打ち震える。

その様子。
洗脳されているとはいえ――あまりに滑稽だ。

だんだんと嗜虐的な欲望が膨れ上がっていく。

「…そろそろ頃合いか?…ルアッタ」
「は、はい…」
「…『神の世界』へ招待しよう」
「っ!?ついに……っ!?―――ひぎいいっ?!!」

突然経験のない激しい痛みがルアッタの首に駆け抜ける。
噛みつかれ引き裂かれる首。

消える意識―――
まるで糸の切れた人形のようにルアッタは崩れ落ちた。

敬虔な信者の表情を張り付けて。


「ふん。脆弱な…しかし…この肉の匂い…たまらぬ」

そしてまるで獣が咀嚼するような悍ましい音が、彼にあてがわれた降臨の間に響き渡っていた。

「くくく…力がみなぎる…やはり『肉』は女が良い…」

独り言ちるジグルダ。
その様子はまるで獣。

間違いなくこの星の生物ではない。


誰も経験したことの無い『異質な魔力』を噴き上げさせていた。


※※※※※


「ふうん。『神の使い隻眼のジグルダ』ね。…そいつ強いの?」

「はっ。残念ながら今我が国は奴に全権を握られております。私は最後まで抵抗したのですが…気付けば軍を挙げ、マイハルド王国へと攻め込んでおりました」

マイハルド国王の執務室は静寂に包まれた。

いきなり姿を消したライト。
今度は聖協国リーディルドの第3王子、ムッハバラードを同行。

驚愕の告白をしていた。

ごくりとつばを飲み込む音が響く。
どうにか再起動したロキラス殿下が、低い声で問いかけた。

「ムッハバラード王子…では今回の襲撃、直接の原因は教皇ではなく、その“ジグルダ”と言う男の指示なのだろうか」

「貴殿は…そうか。貴殿があの閃光、ロキラス副長か。…ええ。確かにあの男、ルベストイからそのような要請は来ておりました。しかし実際に動く指示を出したのは間違いなくジグルダです」

眉間にしわを寄せながらも悔しそうに零すムッハバラード。
操られようが事実として彼は我が国に攻めてきた。

そして敗戦。

この先は政治的決着の話し合いが待っている。

「…ムッハバラードよ」
「…はっ」

国王は静かに問いかける。

「今回我が国には大きな被害はない。ここにいるライトと女神ティアリーナさまのおかげでな」

「っ!?なっ?!…おおっ、ま、まさか…女神ティアリーナ様…降臨なされたのですね…」

途端に顔を染め、敬うような表情を浮かべる。

確かに失われて久しい女神様。
すぐ近くにいる今の状況―――正直彼には刺激が強すぎだろう。

「ふう。まあそういう訳だ。…此度の騒動、すでに情報は広がっている。だが今のそなたの国の状況、楽観視は出来ん」

大きく息をつく陛下。
そして真剣なまなざしを僕へ向ける。

「…ライト、それから女神様。…恥を忍んでお頼み申す。どうか、かの国、聖協国リーディルドの平定――ご助力願えないだろうか」


まあね。
当然そういう流れになっちゃうよね。

僕はちらりと父上とティアに視線を投げる。
一応僕はまだ父上の庇護の下にある。

僕が決めるわけにはいかない。

僕の視線に気づいた父上は顔をひきつらせた。
そしてその様子に、陛下はじめこの場に居る重鎮全ての視線が父上に注がれた。

「ぐうっ、ラ、ライト?ここで父に決断しろ、と?」
「はい。だって僕、――まだ9歳ですよ?」

にっこり微笑んで見せた。
なぜか父上怒ってる?

てへ♡


まあ冗談はともかく。

乗り掛かった舟だし僕には楽しい学園生活が待っている。
何よりそいつのおかげで多くの人が死んでいる。

許せないし、“面倒ごと”は片づけておきたい。

「ノイド様?わたくしからもお願いします。どうかライト様の参戦、お認めいただけないでしょうか」

「め、女神様まで…はあ。…ライト、勝てるのか?」
「ええ。とりあえずそのジグルダ?捕まえて国中を解呪します。それでだめなら…」

「…ダメ…なら?」

僕はにっこり微笑んだ。

「少しきつめのお仕置き、ですかね」

何故かここにいる全員が大きくため息をついた。

ええっ?
皆殺し、とかよりよっぽどいいじゃんね?


解せぬ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...