【完結】婚約破棄される侯爵令嬢を救いたい!想いの重い鑑定士は乙女ゲームのフラグをぶち壊す!

たらふくごん

文字の大きさ
35 / 70

35.舞奈と絵美里1

しおりを挟む
あの後俊則が起きて、可哀そうなくらい落ち込んでいた。
私にもすごく謝ってきた。
もう怒ってないよって言ってもずっとごめんねって。
でも私は逆にそんな俊則をもっと好きになった。

だから可愛い顔を作って「今度は頑張ってね。期待しているよ」って煽っておきました。
このくらいは良いよね?
赤い顔の俊則は可愛い。

取り敢えず私は俊則をお母様とお父様に紹介して、お母様はすごく気に入ってくれたけど、お父様は…うん。
私凄く愛されているのが分かったんだよね。

「まさかもう一線を越えたのではあるまいな?」

そう言われてビクッとしたけど、越えていないのは本当だから。
越えようとしたけどね。
まあ未遂だから問題はないと思う。

でも最終的には認めてくれたから、俊則もほっとしていた。
なんか俊則『神の意志を継ぐもの』っていう称号持ちらしいから、追い出すことなんてできないんだけどね。
まあ同室は許してくれなかったから、俊則は今客間にいるけれど。

それからいろいろお話をして、状況を共有することもできた。
俊則また女の子を助けていたし。
まあまだ小さい女の子らしいけど。

家の従業員の娘だった。
助けられて良かった。

そして私は今ミリー嬢がいる貴族牢に来ているところだ。

同席を望んだ俊則だったけど、お父様が死罪にはしないと決めた後だ。
私を信じてほしいって言ったら俊則にっこり笑って。

「俺の後輩をよろしく」

って、送り出してくれた。

だから私は彼女と話をするために来たんだ。
断罪するつもりはもうなかった。

※※※※※

貴族牢は名前の通り、高貴な者を閉じ込める施設なので、出入りの制限がある以外は立派な客間だ。
ちゃんと侍女もついている。
まあ今はお茶だけ用意してもらってから退席してもらったけどね。

ミリー嬢は貴族牢のベッドに座り俯いていた。
私に気づくと土下座をしようと正座したので、私が止めた。

「ミリーさん、いいえ、絵美里。お父様が決めたことを反故にするつもりはありません。お話がしたいの。座ってくださる?」

私は応接スペースへ行きソファーに腰かけた。
絵美里はおずおずと私の正面に座り深々と頭を下げる。

「ロナリア様、申し訳ありませんでした。ご温情、感謝の念に堪えません」
「頭を上げてくださるかしら?言ったでしょ?話し合いに来たの。それから…私は高坂舞奈よ。あなたの1個上だから舞奈さんでも高坂先輩でも呼びやすい方で呼んでね」

「はい。舞奈さん。……ごめんなさい……わたしが本田先輩を……」

私は大きくため息をつく。

「反省しているのよね?」
「はい」
「ふうー、もういいわ。……俊則も怒っていないし」
「…そう…ですか」

俯く絵美里。
私は大きな声で絵美里に言葉を投げかける。

「もう、良いって言ったでしょ?話し合いをしたいの。いい加減にしてよ」
「っ!?……はい。ごめんなさい……わかりました」
「私は正直、あなたを許せそうにはない」
「……はい」
「でも…俊則に聞いた。あなたも大変だったって」

絵美里は目を見開き、驚愕が顔に浮かぶ。

「……どうして…なんで本田先輩…優しすぎるよ」
「あげないわよ」
「っ!?……ごめんなさい……諦められません」
「はあ……そうだと思った」

私は絵美里をじっと見つめた。

「ねえ、私鑑定の能力があるの」
「……はい」
「見ていいかな?あなたの事」

絵美里は覚悟を決めた目をして私を真直ぐに見つめた。

「私以前、子供の頃の記憶がなかったんです」
「……」
「でもこの世界にきて、養父に犯されたときに全部思い出したんです」

この子は!
……この世界の男は…くっ。

「どうして私に伝えるの?」
「きっと鑑定だと分かると思ったから……たぶん、ショックが大きいと思いました」

ああ、きっとひどい目にあったんだ。
今のこの子は理知的だし……とてもいい子に見える。

「……聞かせてくれる?私、なんで貴女があんな事をしたのか知りたいの。話してくれるならその方が良い。……辛いだろうけど貴女のせいで辛い思いをした人がたくさんいる。……いいわね?」
「はい。当然だと思います。…でも泣く事は許してください。冷静にはお話しできないと思うから」

そして強い子だ。
俊則が尊敬するって言ったのが分かってしまう。

「ええ………ごめんなさい。私、いやな女だ」
「…本田先輩が好きになる訳ですね……舞奈さん、優しいです」

気付けば私は涙を流していた。
絵美里も泣いていた。

絵美里はそれから小さい頃の話をぽつぽつと泣きながら話してくれた。
そしてどうして俊則を殺したのかも。
自分が自殺した経緯も。

「この世界がゲームだったことは知りませんでした」
「そうね。そりゃあ止められないわけだ」

沢山泣いて二人の顔は今パンダみたいになっている。
さっき思わず二人で笑っちゃったしね。

「ねえ絵美里」
「はい」
「友達になろっか」
「えっ?」

ものすごく驚いた顔をしている。
あれ?私なんか変なこと言った?

「その、私、悪い人ですよ?たくさん酷い事した極悪人ですけど」
「プッ、あはは、あははははははっ、あははっ」
「???」

私はお腹を抱えて笑う。
絵美里は意味が分からないように困惑している。

「じ、自分で『悪人』とか言う悪人いないからね?もう、絵美里。おかしい」
「えっ、でも……その、私……」

顔を染める。
うん、さすが主人公だわ。
めっちゃ可愛い。
スタイルも改めて見ると凄いな……F?

「あのね、あなた法的には無罪なのよね。今のところ」
「えっ?でも……」
「今って惑わした人ってどうなっているの?」
「えっと、多分もう支配力はないはずです。全部解除しましたから」

お父様も言っていた。
王都はほぼ通常に戻っている。
一部彼女の能力でタガが外れたような輩が暴れているだけだ。

きっとこの子は無自覚だろうけど、破壊行動をするような人は元々その因子がある人だ。
だから能力に囚われなくても、いつか罪を犯す可能性の高い者が今回暴れた。

相当数の人が死んだけど……今からはむしろ治安が良くなる可能性が高い。
だからと言って許される事ではないけれどね。

異性を襲うのは……まあ全員あるよね。
因子くらいは。

だから100%悪いわけではない。
お父様から聞いたよ?
きっとそういう欲望が、少なからずあったって。

私はもう、この子を助ける方向へ思考をシフトしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...