【完結】婚約破棄される侯爵令嬢を救いたい!想いの重い鑑定士は乙女ゲームのフラグをぶち壊す!

たらふくごん

文字の大きさ
36 / 70

36.舞奈と絵美里2

しおりを挟む
「ねえ、俊則のどこが好き?」
「えっ?うあ…そ、その…や、優しいところ…あと…可愛い」

顔を赤くして俯く。
はあ、これ俊則もいけないよね。
あの人優しすぎだもん。
きっと無自覚に色々していそうだわ。

「いつから好きなの?きっかけは?」
「えと…中学1年生の時からです…私色々あって……怖い先輩に囲まれて……その、体を…」
「あー、わかった。ごめん、良いよ言わなくても。それで俊則が助けてくれたのね?」

ふーん。
もう、辛い子を颯爽とカッコよく助ければそりゃ惚れちゃうよね。

「俊則カッコよかったの?でも意外だな。彼喧嘩とか全然だって言っていたのに」
「はい。弱かったですよ。3人に殴られたり蹴られても、先輩ただずっと私を守ってくれるだけで……手とか全然出さなかったです。ずっと耐えていて……」

思い出したんだね。
なんだか可愛い顔しているし。

「それで先輩傷だらけなのに、にっこり笑って……『大丈夫?怪我無い?』って……自分は顔から血も出ているしいっぱい怪我しているのに……わたしと関係ないのに…」

そして涙があふれる。

「それで帰り道、色々お話ししたんです。そしたら先輩……ポロポロ泣いて…わたしがずっと誰にも言えないくらい、辛くて、歯を食いしばっていたことを……褒めてくれたんです。…嬉しかった……もう大好きでした」

私は思わず天を見上げる。
あー、俊則のたらしめ。

そりゃ惚れちゃうわ。
そして多分、ううん絶対……彼、下心なかったはずだ。
高校1年の時の絵美里確かにすごく可愛かった。
たぶん中学の時だって相当可愛かったはずなのに……

「それでそのあと声とか掛けなかったの?もう好きになったんでしょ?」

俊則は彼女とか居たことないって言っていた。
あの無自覚優しい男、絶対好きになる女の子居たはずなのに。

「……一度だけ、お話ししました。でも先輩……お医者さんになりたいから、勉強頑張りたいって……そして3年になったら急に暗くなっちゃって、誰も寄せ付けなくなって……」

……お父さんが亡くなったんだ。
そして現実を知って……諦めたんだ。

「私辛くて……ごめんなさい。でも嬉しくて……だって誰も先輩のこと好きにならなくなったから……それまでは多分10人くらいの女の子たちがいつもキャーキャー言っていたから……その、ごめんなさい」

「うん。いいよ。……わたしも好きになったとき、俊則カッコ悪くて安心していたから」

うん。
もういいかな。

たぶんこの子はもう、他人を傷つけるようなことはしないはずだ。
目がそう言っている。

だけど彼女はいつからこの世界にいたのだろう。
神様に会ったのかな?
なんか創造神様『あれはミスじゃ』とか言っていたけど……

「ねえ絵美里、あなた転生したときって神様とお話ししたの?」
「……私狂っていたんです」
「うん?」
「えっと、全部がそうか分からないけど、自殺すると魂が穢れて因果が刻まれるって、死んだとき怖い鬼みたいな人に言われたんです。だからみんな、えっとその時は多分100人くらい私と同じような人がいたのですが……俯いていたのだけど……わたし泥棒したんです。鬼が持っていた光る石みたいなものを」

「……」

「そしたらこの子、ミリーの中にいて……その……3人くらいの男の人に乱暴された後みたいで……わたし怖くてずっと黙っていたら……その、男の人たちぎゃはぎゃは笑いながらいなくなって……必死に逃げたんです。そこで養父に拾われました」

あーこのくそ世界、くそ運営め……
ダメだ。
絶対にどうにかしないと。

「そしてやっぱり養父にも……そのあと泣きながら湯あみしていたら突然光に包まれて、聖魔法と精神魔法が使えるようになったんです。そして本田先輩の事が浮かんできて……分からないけど絶対また会えるって、感じました」

たぶん元のミリー嬢はその時死んだんだ。
男にいたぶられ凌辱され……

絵美里は可哀そうなほど酷い目に遭いすぎていた。
むしろ今正常なのは奇跡だろう。

はあ、愛ってすごいな。

どうしよう。
この子の恋、応援したいかも。
でもそれって………無理無理無理。

でも確かこの世界は……一夫多妻OKだよね。
……うー、どうしよう。
でもこの子をこのまま王都に戻すことは絶対にできない。
養父も死んでいるし、他につながりもないこの子は、多分そういう仕事をするしかない。

「あのさ、絵美里。……家で働かない?私が責任を持ってお父様に許可をもらうから」
「えっ?……良いんですか?私は嬉しいけど……でも…その」

私は大きくため息をつく。
もう分っている。
俊則は絶対に最終的にはこの子の事も愛するはずだ。
近くにいればね。

あーどうしよう。
俊則が他の女抱くとか……
死にたくなる。

でも………
私、今もうこの子の事も大好きだ。

「あのさ、絵美里さ、その……俊則の事今でも好きだよね?」
「はい。心から愛しています」
「私と一緒でも良い?」
「えっ?どういう……」
「この世界はさ、一夫多妻OKなんだよね。……か、勘違いしないでよね、私だっていやなんだから……でも、もうあなたを放っておけないよ」

たぶん今の私凄く変な顔してる。
でも、嘘じゃない。
本心だ。

「舞奈さん………わたし負けませんよ?正妻狙っちゃいます♡」

メチャクチャ色っぽい?!
くっ、まずい、そういう系のスキルは勝てる気がしない!!

「わ、私だって負けないからね!!絶対俊則の童貞は私がもらうんだから!!」

やばい。
私顔真っ赤だ。
そしてとんでもないこと言っちゃった気がする。
絵美里は目をぱちくりさせた。
そして、肩を震わせながら笑う。

「ぷっ、あはははっ、もう、舞奈さん、可愛い。……ありがとう。嬉しいです」
「でも……きっと本田先輩、あなたを選びます。だから私は2番目でいい。それでも天に昇るほど嬉しい。……ありがとうございます。希望をくれて」

そして二人、いつの間にか抱き合って泣いていた。
子供みたいに。

私はわざわざ恋敵を作ってしまっていた。
……違うね。
同志だ。

俊則?
覚悟してね。

主人公は女としてチートなんだから。
私だって負けないからね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...