神意再誕~ゲームマスターの少女は原初で微笑む~※旧『可愛くて最強?!知識チートの黒髪黒目の少女はゲーム世界に転移する?!』

たらふくごん

文字の大きさ
68 / 267

第64話 イシュターク伯爵救出作戦

しおりを挟む
侯爵家地下牢。

基本領主邸やそれなりの地位にある者の屋敷には地下牢が存在する。
罪人の一時拘留や酔っ払いなどを保護するのが通例だ。

しかし侯爵家の地下牢。
おそらく拷問などを行っているのだろう。
明らかに“人の物”である血のシミが数多く残されていた。

石畳のそこはベッドなど必要最低限の物すら存在せず、侯爵の残虐性の一端が見受けられていた。

突然兵を伴いイシュターク家に押し入ってきた侯爵家の当主ゾルナル・リッケル侯爵。
捕らえられたラナント・イシュターク伯爵は殴られ腫れた顔を押さえつつ、隣で蹲る妻カナリーナの背を優しくさすっていた。

「カナリーナ、大丈夫か?……12月も半ばだ。ここは冷えるからな。女性である君には辛いだろう。…しかしまさか公衆の面前で手を上げるとは……」

「ありがとう、あなた。私は大丈夫です」

当然連行を拒否した伯爵。
しかし相手は効く耳もたずにいきなり暴力に訴えてきた。

「ふっ、しかし相変わらずカナリーナは強いな。まさか私をかばうとは。……ああ、君はとても素晴らしい女性だ」
「もう。おだてても何も出ませんよ?……ロッドはまだ見つかっていないのね」

「うむ。ミカからの連絡がないからな。無事だとは思うが……一緒に居た黒髪の女性……もしや『ゲームマスター』かもしれぬ」

数日前、聖王の勅命でこの世界に降臨されていることが公表されていた。
その時に伝えられた容姿が、息子と一緒に居たとされている女性と似ているのだ。

「もうこの街は限界だ。侯爵の横暴は日増しに酷くなってきている。まるで何かに憑かれたかのようだ。……いくら奴でも、ここまで直接的な手段はとらなかったはずだ」

そう言い座り込み、天を見上げるラナント伯爵。

少しでも妻を温めようと彼は彼女を膝の上に抱き優しく包み込んだ。
その様子にカナリーナは不安そうにしながらも、ラナントの手を握り締め頬を赤く染めていた。


※※※※※


「その救出任務、俺とモナークにやらせてほしい」

先ほど調査に赴いたミルライナがザッカートに懇願する。

よっぽど強く歯を食いしばったのだろう。
彼の口元からわずかに血が流れていた。
信望する美緒の、あまりの取り乱しように彼は行き場のない怒りを抱えていた。

「ああ、そうだな。……“抜け忍”の力、あてにさせてもらう。モナーク、場所は分かってるな?」
「おう。すでにミカの情報で把握済みだ。……ミルライナ、俺達はスキルで陰に隠れる事が出来るが……最悪の場合罠や扉の解除には手間取っちまう。スフォード」

「お、おう」
「おまえも来い。親方、良いっすよね?」

「もちろんだ。なあに、安心しろ。俺達が少し“騒ぎ”を起こす。お前たちはその隙に確実に救出してくれ」

今すでに、美緒の指示でエルノールとリンネは聖王の居城であるシュルツヘルン城へと転移していた。
残されたザッカートが作戦の指揮を執る。

イシュターク伯爵夫妻の救出と、最悪の場合街の住民の避難を行うためだ。

「よし。案内役としてミカを連れていけ。ミカ、良いな?」
「はっ。勅命、必ずや」
「お、おう。まあなんだ、俺達はそこそこ戦える。お前は主人の身の安全を第一に考えてくれ」
「はい。……坊ちゃんの無念、私が責任をもって晴らして見せます」

使命に燃えるミカ。
その様子にザッカートは内心不安を感じていた。

この世の中で『忍』の文字のあるジョブはとてつもなく強い。
だがミカは。
さすがにギルド本部にいる者たちとは比較にならないほど未熟だ。

(しょうがねえ。ここはマールさんに頼むか……万が一、があれば美緒が悲しむ)

「ふっ、我は高みの見物としよう。なあに『豚』と『ゴミ』がいる。何も心配はあるまい。何より我は美緒殿を守ろう。この中で『一番強いが一番脆い』のでな。……異存はあるまい?」

(っ!?先手を打たれた?……まあ、大丈夫か……それにしても『豚』と『ゴミ』って……良かった俺。弟子に志願しなくて……)

ザッカートが内心安心していたことはともかく。
速やかに決まっていく作戦の立案。

美緒は改めて、仲間の能力の高さに感嘆の念を抱いていた。

「ミルライナ」
「は、はい」
「……ありがとう、心配してくれて……口、見せて?……『ヒール』……うん。治った……ごめんなさい」

「っ!?い、いえ……絶対に成功させます。もちろん“自分の安全”も、です」
「うん。信じてる」

「美緒さま。俺っちも皆を守る。新たな力『アーツ』……俺っちの活躍、期待して下せえ」
「うん。サンテス。……怪我しないでね?」
「へい」

「ふふっ、美緒殿、大船に乗ったつもりでいるといい。何より師匠直々の命令だ。腕が鳴る。……天使族の力、見せつけてやる」
「……はあ、ミリナ?……ほどほどにしてくださいね?あなたが本気出したら全員殺しちゃうでしょうに」

「むう?そ、そんな事はないぞ?まったく、ダリーズは心配性だな」
「…いや、俺もそう思う。ミリナはイノシシみたいなところあるからな」

「っ!?カイ?……イノシシって……」

あはは。
ごめんミリナ。
私もそう思う。

因みに天使族のカイとダリーズ以外の勇士たちは、最近建設された新たな拠点のほうで警戒に当たってもらっていた。
この作戦にはミリナとカイに参加してもらう。

「何はともあれ作戦を実行するぞ。転移門の許可があるのはドレイクたち諜報部の5人だ。これで25人がいける。ダリーズは通信石での連絡役を頼む。美緒はマールさんと待機だ。何かあったら念話を」

鋭い眼光。
でもその瞳には同時に信頼の色が浮かぶ。

「……先発隊の4人は伯爵の救出、10人は別れて事前に掴んでいる場所の掃除、残りの11人で侯爵邸前で抗議の声を上げる。――みんな、腹くれよっ!!」

「「「おうっ!」」」
「はいっ!」
「んにゃ!!」

そして皆ギルド本部の地下4階から、フィリルス聖王国、第3の都市ウィリナークへと転移していった。

作戦が始まる。


※※※※※


「ふむ。美緒殿」
「ん?なあにマール」

見届けた私は不意にマールから問いかけられた。

「先ほどの若者……どうやら目覚めたようだ。説明が必要ではないのか?」

「っ!?……凄いねマール。あなたわかるんだ」
「ふむ。修練の賜物だ。我が魔眼が教えてくれる。美緒殿だってすぐに習得するさ。同行しよう」

「うん」


※※※※※


そして私とマールはロッドランドの覚醒に触れることになる。
彼の悲しみ、そして希望。

――淡い恋物語。


シナリオとは違う方向で進んでいくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第2巻発売中です!】 逞しく成長したリューク、そしてジーナ、ユフィオ、キスティーが大活躍します! 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【書籍第3巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。アニスもレムも超カワで、表紙もカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【2024年10月23日コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...