灰燼の瞳//AI of the monochrome

もみもみ紅葉

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パロディ罵倒るファンタジー

《《00000011》》=3.はみ出しちゃうそんな不器用も言い換えれば個性

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「なぁ?」

「ふふっ、どうしたんだい?」

「一つ聞きたいんだが?」

「『アセルス・テルティウス目的地』までは約126里6町5間くらいかな、途中の宿場町までは約75里25町15間だね」

「おい、いくら書き始めたばっかのラノベだからって設定を盛りすぎるのは良くないぞ、私たちはちゃんとSI単位系に則って生きてるからな?」

「ふふっ、Fフレームは多分SI単位系じゃないよ」

「違う、そうじゃない。私が聞きたいのは」

「この森は比較的整備されているからあまり動物が出る心配もないし平気だよ?」

「お、そうなのかそれなら...って違うそうじゃなくて」

「ルーナ様、これ以上、お嬢様の質問を無視されますと間違えて殺してしまいますよ」

「...ふふっ」

 ルーナが背後に視線を向ける。それに合わせアキリとダリアもとある一点に視線を向ける。木々の隙間、そこから誰かがこちらを見ている。普通であればそれは隠れていると表現するだろう。しかし、アレは違った。ずっとカツンカツンと音を鳴らしてついて来るのだ。その手の持っている物は錫杖しゃくじょう...いや、鳴らして歩くのが正しい使い方なのだから間違ってはいないが色々と間違っている...不審な人物としか表現できない。アレは誰なのか、街を出てから二時間の間ずっとアキリとダリアは気になっていた。ルーナがすまし顔で歩いていたせいで最初はガチの不審者かと思っていたが段々とルーナも無視できなくなってきたのかチラチラと後ろを確認するようになった。それに合わせて不審者も木に隠れたり、目を背けたりし始めた為、やっとそこで(あ、これ知り合いだ...)と二人は理解した。して...アレは誰なのか、その答えは!

「ふふっ、アレは...不審者だよ」

「んなことは分かってんだよッ!」
「それは分かっていますッ!」

「...いや、だからその不審者です」

 二人に迫られルーナが絞り出した...珍しく敬語まで使って出た答えが『不審者』である。しかし、これはボケでも何でもない。本当に彼から見たアレは紛れもなくなのだ。

「あノ...おハなし中に御免ゴめんなさい。どうやら、セつハなしみたいダったもので」

「...ふふっ、お久ぶりだね。ス―ちゃん」

「誰?」

 困惑するアキリとダリアの前には先ほどコソコソ隠れていたアレ...張本人が堂々と立っていた。謎の布のような帽子に紫の髪、道化師を思わせるような紫色の踊り子の服に白衣...そして血ような赤と深海のような青の瞳。そしてキャラ設定の渋滞のように思える錫杖...

ハじめましてセつは『ムイミ』とモウします。いマだ修行の身、未熟ミじゅくな求道者にゴざいます」

「ふふっ、それでなんで君はいつも僕のストーカーなんてしているのかな?」

「そレは勿論モちろん貴方様アなたさまオしえの賜物タまものにゴざいます」

 ...二名の冷たい視線がルーナに突き刺さる。しかし、本気で心当たりがないのかルーナも助けを求める涙目で二人を見ている。

「...ふふふ、そんな目で見ないでくれないか?別にそんなこと教えてないよ僕は」

「...分かった。分かったからそんな目するな...お前もだいぶアレに困ってるんだな」

「それで、ルーナ様、彼女は...その旅のお仲間なのですか?」

「無害なストーカーだよ...多分。あ、でもいたら意外と便利だね」

「...無害で便利なストーカーってなんだy」

 ――――――!

 瞬間、全員が動いた。右前方、六メートル先の木々が...僅かに揺れた。風ではなく地面ごと響くような振動。これは間違いなく...。刻一刻と大きくなる振動に全員が目配せをして距離をとる。ドスン、ドスンという音がだんだんと、大きくなっていく!そして...――――――ドカン!

「...ッ!」

 木々をなぎ倒して現れた巨体...それは赤い毛皮に覆われており、小さな角が生えている。二足歩行で大きな鉤爪...これはだ。

「おい、動物は出ないんじゃなかったか?」

「こんな所に熊が出るなんて珍しいね。普段はもっと山の中にいるはずなんだけどね」

「あれは火熊ヒグマでしょうか?」

「イえ、アれハ終ノ禍熊ツキノワグマデすね。古代コだいからる肉食動物デす」

 ――――――ウガッ!

「!」

 巨体の腕に目の前の木が吹っ飛ばされてこちらに飛んでくる!アキリとダリアは躱そうと足に力を入れ...一切、躱す気のないルーナに目を見開く。この時、二人の考えていることは概ね一緒だった。『何をやっているんだアイツは!』、『なんで避けないんだ!下手したら死ぬぞ』。そう、我々は適正者で演算ができるとは言え死者蘇生なんて出来ないし専門的な治療が必要になれば医者に頼むしかない。なにより別に超人ではないのだ、殴られれば痛いし怪我もする。あんな大木が直撃してもし下敷きにでもなればちゃんと死ぬ。だからこそ『避けろ!』と叫ぼうとして...あることに気づく。あのストーカーが!一体どこに...そう思って二人が目線を動かした瞬間!

 ――――――スパンと木が二つに割れた。いや、割れたというより分かれた真っ二つに...そして左右に飛んでいく。

「...は?」

 いや、なんだそれは...意味が分からない。木が二つに割れたことがではない。この世界にはそういうことが出来る人間など腐る程いるし、やろうと思えば多分、私でも出来る。だから意味が分からないのはそこではなく...今、その大木を真っ二つにしたであろう少女。いつの間にか目の前にいたストーカーの持っていたモノに驚きを隠せない。

「...ふふっ、いつ見ても君のそれはどうやって振っているのか分からないね」

 それは、言うなれば太刀たち...要するに刀だ、ただ一つだけ明らかに見てわかる異常な点がある。...のだ。約三メートルはある...少女の身長がおそらく140cm代なので身長の倍以上ある。それを涼しい顔して構えて、目の前の巨体と相対している。

「ふふっ、ここはス―ちゃんに任せておけばいいよ」

「強いのか?」

「強いわけではないね」

「なんだそれ」

「見てれば分かるよ」

 ...巨体と同じくらいの大太刀を構える少女。しかし、その顔はとてもこれから切りかかろうという人の顔ではなかった。なんと表現すればよいか、慈愛に満ちた...いや、申し訳なさそうな...そんな表情。だからだろうか、少女の行動に俄然興味が湧いた。

「...人は法則を明かし、明かした数の法則に縛られ生きるのだーーーー『自戒則じかいそく』」

 そう一言呟いた少女は刀を大地に突き刺した...僅か一瞬の出来事。その瞬間、誰の視界からも少女が消えた。いかに本能で生きている獣といえどその目には獲物が消え去ったようにしか見えなかっただろう。だからこそ、その存在に気づいてももう遅い。気が付けば少女は獣の頭上、その手をそっと獣の額に当てていた。

「汝は我が深き業をうつす虚像なりーーー『反射業はんしゃごう』」

 そう唱えた瞬間、巨体の目から光が消え、その腕がだらんと力なく重力に引っ張られる。巨体はただ呆然と力なく何かに取り憑かれたようにその場に立っていた。そして思い出したかのように踵を返し、虚ろな目と脱力した身体...まるでゾンビのようにのそりのそりと何処かへ歩き出した。

「今、何を...まさか!?」

「ふふっ、その通り。演算の内容は大雑把に言うと脳の操作...ス―ちゃんがよく使う演算だよ。気絶させたり簡単な暗示をかけたりね」

 克明詠唱こくめいえいしょう...自らの演算内容を言葉コードとして記録し、唱えることで演算の負荷を軽減し処理速度をあげる行為、『詠唱』。その言葉コードの内容自体を命名ファイリングしていつでも読み込める状態にしたモノを克明詠唱という。行為を言葉で記録している関係上、それ以外に使用出来ず、克明詠唱まで行くとその行為にしか適用できない。例えば氷を演算する言葉コードがあったとして詠唱するだけなら氷を出すことが出来るがそれに『氷塊』という命名ファイリングを施すと演算工程をかなり簡略化出来る代わりに氷塊しか出せなくなる。飲み物を冷やす為に氷を演算しようにも出てくるのはコップに入り切らない大きさの氷塊になってしまう。故に自由度がかなり下がる為、言葉コードはともかく命名ファイリングまでする人は少ない。しかし、その逆でその行為を即座に行う為に言葉コードではなく動作に命名ファイリングを行う場合がある。ちなみに演算の練度などが高くなれば別に詠唱も必要無くなる為、言葉コードはそれを頻繁に行うけどあまり得意ではない人がよく使う。

「脳の操作とか...全然無害なストーカーじゃないだろ」

「脳の操作と言ってもかなり短時間で効果もそこまで高くないよ。暗示に関しては演算できる人間には基本効かないね」

「そうなのか」

ヒと弱点ジゃくてん勝手カってハなすのはドうかと思います」

「別に減るものでもないだろう?」

ります。主にセつ生存率セいぞんりつとかそうイうのがります」

「ふむ...」

 アキリはふと考え込むように無言で地面を見つめる。そしてニヤリと絶対ろくでもないことを思いついた顔でムイミを見て一言...

「手合わせしてみないか」

 と、案の定ろくでもない提案をかましてきた。

手合テあわせデすか?」

「あぁ、ストーカーするということはこの旅について来るんだろう?なら実力を知っておいた方が何かと便利だ」

ふふっ、勝手にストーカーを公認しないでもらえるかな?「無闇な殺生は好みマせんが手合わせなら受けて立チます」ねぇ、僕の話聞いてる?「よし決まりだ」

「たダ一つ、相手はそコのメイドさんにシてもらえマすか?」

「ん、ダリアの事か?別に構わないが...」

 アキリは確認するようにチラリとダリアを見る。

「お嬢様が宜しければわたくしは構いませんが」

「じゃ、決まりだな」

「なら、立会人は僕がするよ」

 そう言いながらルーナはダリアとムイミを一瞥しお互いに距離をとるように促す。それを受け二人は約10メートル程の距離をとりお互いに向き直る。

「そうだね...お互いに納得の出来る一撃が入ったら終了、ヤバそうな一撃だったら入る前に僕が止める。それ以外のルールは...それでいいかな?」

「ハい」
「ええ」

「ふふっ、お互いに準備は良さそうだね。あぁ、それはそうと...?」
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