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パロディ罵倒るファンタジー
《《00000111》》=7.本気出してみてもビギナークラス
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それなりに役割の都合上、色んな人間を見てきた。その殆どと話す機会がなかった、当然と言えば当然だ。彼らから見ればただの案内役、道具に過ぎない。だが、こいつらはいつも奴らとは違った。一言で言ってしまえばおかしな奴らだ。もっと強い奴がいた。もっと頭の良い奴がいた。もっと仲間思いの奴がいた。もっと、もっと凄い奴らを見てきた。その点、こいつらには特筆すべき凄さはない。強さで言えば中の中...品性で言えば下の下。チームワークは欠片もないし、バランスがいいわけでもない。でも、一つだけ...明らかに今までと違うことが一つある。
――――俺もその輪の中にいるのだ。
道具であるはずの...いや、道具であることを知った上でこいつらは生きているモノのように接している。それは今までなかった事でなかったからこそ、ずっと奥底に眠っていた疑問が目を覚ましてこちらを覗き込んでくる。そう、俺は何故...
...こっからは作戦会議だ。そう言ってドヤ顔をしているアキリをガン無視し、木の棒で地面に何かを描き始めたルーナを囲うように皆が円形に集合する。
「ふふっ、これがこの山の大まかな地形だね」
そこには歪な楕円が何重にも描かれており、一番外側の楕円に掛かるように一本の波線と『イマココ(*´ `*)⤴︎︎︎』の文字...
「それで実際のところ龍はどの辺に居るんだい?」
「大体、この辺かァ?」
そう言って堕鳥は外側から見て三つ目の楕円の右端の方を指す。
「つまり、憲兵隊が接敵したのはこの辺りかな?」
ルーナは一番外側の楕円の右端を木の棒で突く。
「そうだ、その辺りだァ。よく分かったなァ」
「龍がこの山を出ていたらもっと大事になってるだろうからね。多分だけど、龍は憲兵隊と戦闘後にもう一度、山に戻ったんじゃないかな」
「そうだ、理由は分からねェが憲兵隊を襲った後、山に戻って行ったァ。そこからは特に目立った動きはねェ」
「...少し、質問よろしいでしょうか?」
ダリアが何か考える素振りを見せながら堕鳥に尋ねる。
「そもそも、この龍は誰が最初に見つけたのでしょうか」
「あァ、この近辺を通過した行商人が『全長1m程の猫の龍に襲われた』と、報告してきたのが発端だァ」
「1mだと?それはもう猫って大きさじゃないだろ」
「いや、実際は違ったんだァ」
アキリの言葉に堕鳥は首を振り、一呼吸置いて告げた。
「憲兵隊が襲われたのは全長6m程の猫だったそうだァ」
「...6m?」
「ふふふ、それはもう...龍殺しが束になって対処する規模の龍だね」
「...それは最初の行商人の報告が間違っていたということでしょうか?」
「行商人の護衛にも確認したがァ、確かに1mだったとよォ」
「つまりなんだ?猫が巨大化したとでも?」
「現状そうなったとしか考えられねェ。事実、この山の周囲に全長6mの龍がいた痕跡は何処にもない、いきなり山の中で出現したと考えるのが妥当だァ」
「そンなことがアり得るのでスか?」
「前例は無ェ」
人間は演算を出力することで世界に想像を上書きしている。故に、見えないモノを演算するのは非常に高度な技術が必要である。ただ、見えないモノとは『想像できないモノ』という意味合いの方が近い。そしてそれは勿論、自分自身も当てはまる。殴る、蹴るといった動作自体に演算を与えることは比較的簡単な部類に入る。しかし、自分自身の肉体改造...筋力の強化や思考速度の向上は不可能に近いとされている。先ず、第一として自分自身を正しく認識することが非常に難しいという事、そして二つ目に『自分を見ることが出来ない』ということだ。例え鏡に自分を映したとしても目の前のソレを自分そのものと認識することが不可能に近いのだ。誰しもが鏡の性質を理解しているが故にソレをどうあっても鏡に映った自分と認識してしまう。だからこそこれを成功させるには『鏡は感覚を、人生を、思想を全て共有した何一つ寸分違わぬ自分の分身を映すモノ』だと定義した人間でなければいけない。要するに、たった一人で自己完結する身体強化はほぼ不可能なのだ。であるなら今回の巨大化していく龍も何かしらの外部要因があると考えていいだろう。
「...色々不可解なことが多いね、とはいえここまで来たらやるしかない」
「そうだな」
ルーナの一言とアキリの相槌で重たかった空気が少しだけ軽くなる。
「それでェ?どうやって龍に挑むんだァ?」
「ふふっ、その前にいくつか聞いてもいいかな?」
「何だァ?」
「龍は鎖に繋がれているって聞いたけどアレはどういうことなんだい?」
「あァ、マスターがだいぶ内容を端折って説明したみたいだなァ。正確に言うと首と両前足に千切れた鎖の付いた枷が嵌められていたんだとよォ」
「それも一緒に巨大化したのかい?」
「そうだ、恐らく龍からしたら手足の一部って認識なんだろうよォ」
「...そうか。なら、もう一つ...龍は憲兵隊を襲った後、山に戻ったんだよね?」
「あァ、そうだァ」
「今はどうしているんだい?」
「別に何もしてねェなァ...今もマスターが双眼鏡で見た限りは猫らしく毛繕いしてるぞォ」
「そうか」
それを聞いたルーナは何か考える素振りをした後、直ぐに立ち上がって堕鳥の方を見る。
「少し探してほしい場所があるんだが」
「それはいいんだが何か作戦があるのかァ?」
「作戦なんていう程のものでもないよ。ここは異世界モノのラノベの世界でもなければモンスターをハントするゲームの世界でもない...遥か昔から獣の狩り方なんて決まってるよ」
そういうルーナは凄く残酷な笑みを浮かべながら...チラリとダリアを見た。
――――俺もその輪の中にいるのだ。
道具であるはずの...いや、道具であることを知った上でこいつらは生きているモノのように接している。それは今までなかった事でなかったからこそ、ずっと奥底に眠っていた疑問が目を覚ましてこちらを覗き込んでくる。そう、俺は何故...
...こっからは作戦会議だ。そう言ってドヤ顔をしているアキリをガン無視し、木の棒で地面に何かを描き始めたルーナを囲うように皆が円形に集合する。
「ふふっ、これがこの山の大まかな地形だね」
そこには歪な楕円が何重にも描かれており、一番外側の楕円に掛かるように一本の波線と『イマココ(*´ `*)⤴︎︎︎』の文字...
「それで実際のところ龍はどの辺に居るんだい?」
「大体、この辺かァ?」
そう言って堕鳥は外側から見て三つ目の楕円の右端の方を指す。
「つまり、憲兵隊が接敵したのはこの辺りかな?」
ルーナは一番外側の楕円の右端を木の棒で突く。
「そうだ、その辺りだァ。よく分かったなァ」
「龍がこの山を出ていたらもっと大事になってるだろうからね。多分だけど、龍は憲兵隊と戦闘後にもう一度、山に戻ったんじゃないかな」
「そうだ、理由は分からねェが憲兵隊を襲った後、山に戻って行ったァ。そこからは特に目立った動きはねェ」
「...少し、質問よろしいでしょうか?」
ダリアが何か考える素振りを見せながら堕鳥に尋ねる。
「そもそも、この龍は誰が最初に見つけたのでしょうか」
「あァ、この近辺を通過した行商人が『全長1m程の猫の龍に襲われた』と、報告してきたのが発端だァ」
「1mだと?それはもう猫って大きさじゃないだろ」
「いや、実際は違ったんだァ」
アキリの言葉に堕鳥は首を振り、一呼吸置いて告げた。
「憲兵隊が襲われたのは全長6m程の猫だったそうだァ」
「...6m?」
「ふふふ、それはもう...龍殺しが束になって対処する規模の龍だね」
「...それは最初の行商人の報告が間違っていたということでしょうか?」
「行商人の護衛にも確認したがァ、確かに1mだったとよォ」
「つまりなんだ?猫が巨大化したとでも?」
「現状そうなったとしか考えられねェ。事実、この山の周囲に全長6mの龍がいた痕跡は何処にもない、いきなり山の中で出現したと考えるのが妥当だァ」
「そンなことがアり得るのでスか?」
「前例は無ェ」
人間は演算を出力することで世界に想像を上書きしている。故に、見えないモノを演算するのは非常に高度な技術が必要である。ただ、見えないモノとは『想像できないモノ』という意味合いの方が近い。そしてそれは勿論、自分自身も当てはまる。殴る、蹴るといった動作自体に演算を与えることは比較的簡単な部類に入る。しかし、自分自身の肉体改造...筋力の強化や思考速度の向上は不可能に近いとされている。先ず、第一として自分自身を正しく認識することが非常に難しいという事、そして二つ目に『自分を見ることが出来ない』ということだ。例え鏡に自分を映したとしても目の前のソレを自分そのものと認識することが不可能に近いのだ。誰しもが鏡の性質を理解しているが故にソレをどうあっても鏡に映った自分と認識してしまう。だからこそこれを成功させるには『鏡は感覚を、人生を、思想を全て共有した何一つ寸分違わぬ自分の分身を映すモノ』だと定義した人間でなければいけない。要するに、たった一人で自己完結する身体強化はほぼ不可能なのだ。であるなら今回の巨大化していく龍も何かしらの外部要因があると考えていいだろう。
「...色々不可解なことが多いね、とはいえここまで来たらやるしかない」
「そうだな」
ルーナの一言とアキリの相槌で重たかった空気が少しだけ軽くなる。
「それでェ?どうやって龍に挑むんだァ?」
「ふふっ、その前にいくつか聞いてもいいかな?」
「何だァ?」
「龍は鎖に繋がれているって聞いたけどアレはどういうことなんだい?」
「あァ、マスターがだいぶ内容を端折って説明したみたいだなァ。正確に言うと首と両前足に千切れた鎖の付いた枷が嵌められていたんだとよォ」
「それも一緒に巨大化したのかい?」
「そうだ、恐らく龍からしたら手足の一部って認識なんだろうよォ」
「...そうか。なら、もう一つ...龍は憲兵隊を襲った後、山に戻ったんだよね?」
「あァ、そうだァ」
「今はどうしているんだい?」
「別に何もしてねェなァ...今もマスターが双眼鏡で見た限りは猫らしく毛繕いしてるぞォ」
「そうか」
それを聞いたルーナは何か考える素振りをした後、直ぐに立ち上がって堕鳥の方を見る。
「少し探してほしい場所があるんだが」
「それはいいんだが何か作戦があるのかァ?」
「作戦なんていう程のものでもないよ。ここは異世界モノのラノベの世界でもなければモンスターをハントするゲームの世界でもない...遥か昔から獣の狩り方なんて決まってるよ」
そういうルーナは凄く残酷な笑みを浮かべながら...チラリとダリアを見た。
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