薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

文字の大きさ
52 / 181
第1章 洞窟出現編

52話 元の世界

しおりを挟む
 それにしても、異世界との時間の流れが違うのであれば、こちらでの1日が向こうでは3日くらい経っていると言う事。
 それって、早く歳をとってしまうと言う事では。
 3倍速で体の老化が起きると考えたら、ゾッとするのだ。
 ただ、ずっと異世界にいるなら気にすることでは無いのだろうが。

 私はベッドに転がりながら、ふと思ったのだ。
 この薬華異堂薬局の名前はもしかしたら、ハナさんの華なのでは。
 考えすぎか・・・
 まあ名前の由来なんてどうでもいいけど。
 何だか、疲れたかも・・・
 私はそのまま眠りについたのである。

 次の日、目が覚めると真っ先に首にかかっているペンダントを見たのだ。
 今までのことが夢ではない事の証なのだ。
 
 予定より早く戻って来たので、仕事に出る日まで、まだ数日あった。
 少しのんびりすることにしたのだ。
 一階の本店の方に行くと、そこは静まりかえっていた。
 今日は漢方の予約の患者さんは来ないらしく、私がウロウロしていても問題ないようだ。
 まだ、異世界から帰って1日だが、向こうの世界にとっては3日くらいたっているはず。
 もしかしたら、カクからの手紙があるかと思い、秘密の扉を開けたのである。
 すると、私が思った通り本棚の奥にあった扉を鍵で開けると、古びた布袋の中に新しい封筒が入っていたのだ。
 そう言えば、ヨクはカタカナを知っていたけど、カクはこっちの文字を知っていただろうか?
 私は異世界の文字を勉強しなかったことに少し後悔した。
 話したことが思念で上手く伝わっていたので、必要が無かったのだ。
 ただ、手紙を書くとなると読み書きが出来なければ、困るのだ。

 封筒を開けると、カクからの手紙であった。
 上手とは言えない文字だが、一生懸命さが伝わる手紙だった。
 きっとヨクから怒られながら習って書いてくれたのだろう。
 そこにはカタカナで、またこの世界に来てほしいとか、寂しくなったとか、カクらしい言葉が並んでいた。
 私も急いで手紙を書いたのだ。
 今の時代、メールやSNSでのやりとりが多い中、手紙を書くのは久しぶりであって、とても新鮮であった。
 また光の鉱石が採掘されたら呼んでほしいこと、
 私も仕事を頑張るから、カクも頑張るようにと、
 そして、ヨクを大事にするようにと書いたのだ。

 全てカタカナで書くのはとても奇妙だった。
 書いた手紙を見ると、暗号のように感じたのだ。
 カクには今度、ひらがなを覚えてもらおうと思った
のだ。

 そして、書いた手紙を同じように、古い布袋に入れて扉を閉じたのである。
 カクのことだから、毎日扉を確認していそう。
 すぐに手元に届くだろう。

 私は本棚を元に戻すと、久しぶりの仕事に向けて準備をする事にした。
 そして、胸にはブラックから貰ったペンダントが光っていた。

            ○

            ○

            ○

 ・・・あれから2ヶ月くらい経っただろうか。
 私はいつも通りの薬華異堂薬局の仕事に着いていた。
 カクからは週に一回くらい手紙が届いていた。
 私も手紙を返しているが、よく考えると時間の流れが3倍だと、届いた時には3週間くらいたっているのだろう。
 そのためか、手紙を心待ちにしていると言うような文面が多かった。
 流石にそんなに暇でもないので、週に一回が限度であるのだ。

 そんな時、カクからいつもの王室での話や愚痴ではなく、気になる事を書いてきたのだ。
 それは魔人の王ブラックからの伝言のようだ。
 カクは意味がわからないと書いてあったが、私に伝えてほしいと言われたようだ。

     モリ ガ アブナイ

 そして、一緒に光の鉱石の粉末も入っていたのだ。

 ・・・行かなくては。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編。 リーナ視点が主です。 ----- また続けるかもしれませんが、一旦完結です。 ※小説家になろう様にも掲載中。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...