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爆発音。
次いで、腹の底に響くような衝撃と威圧感がその場にいた全員に襲いかかった。
マタイではない。彼もまた、驚いた表情で音のした方を見ている。音は、ロディとハルルクが消えた氷山の中から響いていた。
ではこの爆発は誰が?
そんなもの、確かめずともレジにはわかった。肌を刺すようなビリビリとした力の余波。レジはこの気配を知っていた。痛いほどの殺気。懐かしくさえある、これは。
「ロディ!」
レジが名を呼ぶのと、二度目の爆発音が響いたのは同時だった。
ガラガラと大きな音を立てて氷山が崩れていく。表面に積もっていた雪が土煙のように舞い上げられ陽の光を反射しながらゆっくりと降下していく。幻想的にも映るその光景を、レジを始め、その場の誰もが指一本動かす事が出来ないまま固唾を呑んで見守った。
やがて視界が晴れて来ると、数分前まで氷山と呼ばれる巨大な氷の塊だったものが見えてきた。中心部から破壊された氷山はいくつかの氷の塊に分かれ、ロディとハルルクが入って行った横穴は完全に塞がれてしまっていた。だが、二人が氷に押しつぶされてしまったのではないかと心配する者は誰もいない。何故なら、そのロディとハルルクが崩れた氷山の上に立っていたからだ。
友の無事な姿に、レジは一先ず胸をなで下ろした。
「おい、ハルルク、何やってんだテメェ。氷山こんなにしちまいやがって、泉はどうした」
マタイがロディの隣に佇むハルルクに向かって怒声を浴びせた。ここの泉は彼らにとって、一時的とはいえ能力を底上げする為の大切な魔法の泉だったのだ。この泉があったから彼らはミッテ広場にだって住みついたのだ。
「おい、聞いてんのか、ハルルク!」
だが猫背で細身の眼鏡男ハルルクは相棒であるマタイがいくら声をかけても答えない。それどころか彼の身体はぐらりと傾ぎ、そのまま崩れ落ちてしまった。よく見れば彼の身体はところどころ焦げて口からは煙を吐き出していた。
「なっ」
マタイが驚愕し青ざめる。
「まさか、あいつも俺と同じ爆破の力を…………?」
ハルルクを気絶させたのはロディ以外考えられない。マタイは一度青くさせた顔を今度は赤くさせた。
「クソがぁ!」
マタイはハルルクが巻き込まれる事も厭わず、ロディの頭上で巨大な爆破を起こした。ロディとハルルクが立っていた場所が粉々に砕かれる。
「ロディ!」
風の檻の中から、アリシアの悲痛な叫び声が響いた。
爆発の煙が消えると、そこにはロディどころかハルルクの姿さえ残されてはいなかった。
「ははははは! 骨も残さず消し飛んだか、ざまぁみろ!」
高笑いを上げるマタイに、レジは「酷い事すんな」と悪態を吐いた。敵であるロディはともかく仲間であるはずのハルルクまで殺そうとした彼の行為に胸が悪くなったのだ。
「同感だ」
レジの言葉に同意するその声はマタイの背後から上げられた。マタイが息を呑む。次の瞬間には、気を失ったハルルクだけでなく、人質としてマタイに囚われていたはずのエルドまで脇に抱えたロディがマタイから数メートル離れた場所に立っていた。瞬間移動でもしたかのような速さだった。マタイは慌てて自分の腕を確かめたが、先ほどまで感じていた人のぬくもりも重さもそこにはなかった。先ほどの爆発からどうやってロディが逃れたのかも、どうやってエルドを奪い返されたのかもマタイには全くわからない。ただ、前にしたロディの今までとは違う様子に脂汗を流した。
「レジ」
「あいよ」
名を呼ばれ、レジは心得たとばかりにロディからエルドとハルルクを受け取った。身軽になったロディは改めてマタイと向かい合う。両者がにらみ合ったまま、一陣の風が吹き抜けた。
「う……ん」
レジの腕の中でエルドが目を覚ました。
「あれ、おいら……」
「よ、がきんちょ」
「! お前!」
右腕にエルド、左腕にハルルクを抱えたレジの姿を認めると、エルドは大きく目を見開いた。そして乱暴にレジの腕を払いのけると、レジを睨んだ。
「お前、やっぱり敵だったんだな。おいらを気絶させてどうするつもりだった!」
「あ~、そうくる?」
レジは面倒くさそうに空になった右手で頭を掻いた。
「まぁいいや。とりあえず、ロディがあいつ倒すまででいいから大人しくしててくんない?」
「あいつ?」
エルドはレジを警戒しながらロディとマタイに目を向けた。
「あの余所者! 弱いくせに何やってんだ」
「はは、お前がそれを言うか」
「さっきはやられたけど、今度こそおいらが倒してやる!」
「やめとけって」
「離せ!」
「いいから、見てろ」
エルドはまだ何か言いたそうな顔をしていたが、語気を強くしたレジに気圧されてグッと言葉を呑みこんだ。
「大丈夫。ロディは強いよ」
確信に満ちた声でレジは言った。エルドが眉を潜める。
「あんな、なよっちぃ奴が?」
「今までは色々あって本来の力を出せなかっただけさ」
「けど、相手はゴッドチャイルドだぞ」
「だから?」
エルドは不服そうな顔をした。無鉄砲な少年だが、ちゃんと相手の強さはわかっているようだ。レジはくっと口角をあげて不敵な笑みを作った。
「オレだってゴッドチャイルドなんだぜ」
言って、右手に風を集めてみせると、エルドがこぼれんばかりに目を見開いた。その顔がおかしくて、レジはまた笑った。
「まぁ、見てろって、直ぐに片が付くから。なんてったって、あいつはあの魔王を倒した本物の英雄なんだからな」
「え?」
エルドが眉の皺を深くしたのと、戦局が動いたのは同時だった。
次いで、腹の底に響くような衝撃と威圧感がその場にいた全員に襲いかかった。
マタイではない。彼もまた、驚いた表情で音のした方を見ている。音は、ロディとハルルクが消えた氷山の中から響いていた。
ではこの爆発は誰が?
そんなもの、確かめずともレジにはわかった。肌を刺すようなビリビリとした力の余波。レジはこの気配を知っていた。痛いほどの殺気。懐かしくさえある、これは。
「ロディ!」
レジが名を呼ぶのと、二度目の爆発音が響いたのは同時だった。
ガラガラと大きな音を立てて氷山が崩れていく。表面に積もっていた雪が土煙のように舞い上げられ陽の光を反射しながらゆっくりと降下していく。幻想的にも映るその光景を、レジを始め、その場の誰もが指一本動かす事が出来ないまま固唾を呑んで見守った。
やがて視界が晴れて来ると、数分前まで氷山と呼ばれる巨大な氷の塊だったものが見えてきた。中心部から破壊された氷山はいくつかの氷の塊に分かれ、ロディとハルルクが入って行った横穴は完全に塞がれてしまっていた。だが、二人が氷に押しつぶされてしまったのではないかと心配する者は誰もいない。何故なら、そのロディとハルルクが崩れた氷山の上に立っていたからだ。
友の無事な姿に、レジは一先ず胸をなで下ろした。
「おい、ハルルク、何やってんだテメェ。氷山こんなにしちまいやがって、泉はどうした」
マタイがロディの隣に佇むハルルクに向かって怒声を浴びせた。ここの泉は彼らにとって、一時的とはいえ能力を底上げする為の大切な魔法の泉だったのだ。この泉があったから彼らはミッテ広場にだって住みついたのだ。
「おい、聞いてんのか、ハルルク!」
だが猫背で細身の眼鏡男ハルルクは相棒であるマタイがいくら声をかけても答えない。それどころか彼の身体はぐらりと傾ぎ、そのまま崩れ落ちてしまった。よく見れば彼の身体はところどころ焦げて口からは煙を吐き出していた。
「なっ」
マタイが驚愕し青ざめる。
「まさか、あいつも俺と同じ爆破の力を…………?」
ハルルクを気絶させたのはロディ以外考えられない。マタイは一度青くさせた顔を今度は赤くさせた。
「クソがぁ!」
マタイはハルルクが巻き込まれる事も厭わず、ロディの頭上で巨大な爆破を起こした。ロディとハルルクが立っていた場所が粉々に砕かれる。
「ロディ!」
風の檻の中から、アリシアの悲痛な叫び声が響いた。
爆発の煙が消えると、そこにはロディどころかハルルクの姿さえ残されてはいなかった。
「ははははは! 骨も残さず消し飛んだか、ざまぁみろ!」
高笑いを上げるマタイに、レジは「酷い事すんな」と悪態を吐いた。敵であるロディはともかく仲間であるはずのハルルクまで殺そうとした彼の行為に胸が悪くなったのだ。
「同感だ」
レジの言葉に同意するその声はマタイの背後から上げられた。マタイが息を呑む。次の瞬間には、気を失ったハルルクだけでなく、人質としてマタイに囚われていたはずのエルドまで脇に抱えたロディがマタイから数メートル離れた場所に立っていた。瞬間移動でもしたかのような速さだった。マタイは慌てて自分の腕を確かめたが、先ほどまで感じていた人のぬくもりも重さもそこにはなかった。先ほどの爆発からどうやってロディが逃れたのかも、どうやってエルドを奪い返されたのかもマタイには全くわからない。ただ、前にしたロディの今までとは違う様子に脂汗を流した。
「レジ」
「あいよ」
名を呼ばれ、レジは心得たとばかりにロディからエルドとハルルクを受け取った。身軽になったロディは改めてマタイと向かい合う。両者がにらみ合ったまま、一陣の風が吹き抜けた。
「う……ん」
レジの腕の中でエルドが目を覚ました。
「あれ、おいら……」
「よ、がきんちょ」
「! お前!」
右腕にエルド、左腕にハルルクを抱えたレジの姿を認めると、エルドは大きく目を見開いた。そして乱暴にレジの腕を払いのけると、レジを睨んだ。
「お前、やっぱり敵だったんだな。おいらを気絶させてどうするつもりだった!」
「あ~、そうくる?」
レジは面倒くさそうに空になった右手で頭を掻いた。
「まぁいいや。とりあえず、ロディがあいつ倒すまででいいから大人しくしててくんない?」
「あいつ?」
エルドはレジを警戒しながらロディとマタイに目を向けた。
「あの余所者! 弱いくせに何やってんだ」
「はは、お前がそれを言うか」
「さっきはやられたけど、今度こそおいらが倒してやる!」
「やめとけって」
「離せ!」
「いいから、見てろ」
エルドはまだ何か言いたそうな顔をしていたが、語気を強くしたレジに気圧されてグッと言葉を呑みこんだ。
「大丈夫。ロディは強いよ」
確信に満ちた声でレジは言った。エルドが眉を潜める。
「あんな、なよっちぃ奴が?」
「今までは色々あって本来の力を出せなかっただけさ」
「けど、相手はゴッドチャイルドだぞ」
「だから?」
エルドは不服そうな顔をした。無鉄砲な少年だが、ちゃんと相手の強さはわかっているようだ。レジはくっと口角をあげて不敵な笑みを作った。
「オレだってゴッドチャイルドなんだぜ」
言って、右手に風を集めてみせると、エルドがこぼれんばかりに目を見開いた。その顔がおかしくて、レジはまた笑った。
「まぁ、見てろって、直ぐに片が付くから。なんてったって、あいつはあの魔王を倒した本物の英雄なんだからな」
「え?」
エルドが眉の皺を深くしたのと、戦局が動いたのは同時だった。
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