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~大学生編~
第27章 運命の人
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履修登録も無事に終わり、本格的に授業開始です。一年次に取らなくてはならない必修科目だけでも相当な分量で、講義の内容も難しく、一限から五限までみっちり授業のある日は力尽きそうになります。
全学部共通の選択科目で、週に二回、一佳と同じ講義を受けることになりました。そのうちの一回は、このみちゃん、経済学部の千夏ちゃん森田くんも一緒です。潤くんもいましたが、常にキレイな女の子たちに囲まれハーレム状態なので近くに寄ることも出来ません。
千夏ちゃんと森田くんは、高校の時よりラブラブ度が増したみたい。いつも一緒で授業中でも時々見つめ合い微笑み合っています。もう、当てつけられてクラクラしちゃいますよ!
「大変だったのよ!卒業式の後、修羅場でさー。」
授業のあとでお茶をしながらこのみちゃんがクククと笑いました。
「吹奏楽部の後輩の女の子がいきなり打ち上げにやってきて、森田と付き合っているってバラしちゃって、二股掛けられたって真帆ちゃんは泣いてるし、千夏ちゃんも怒りだして、それでも頑として森田のこと信じてて、結局、森田は千夏ちゃんを選んだのよ。」
「そんなことがあったんだ……」
「そーよ!七海と一佳が揉めている間にね。あの時は一佳も荒れてて大変だったんだから!薫ちゃんが宥めて収まったけど。」
ああ、あの頃は、一佳の言葉に傷ついてメソメソしていたっけ……懐かしい思い出です。て言うか、その後すっかり一佳に丸めこまれたような……
「飯島と永井ちゃんは別れちゃったのよ。浪人が決まった飯島を振って、永井ちゃんはおんなじ大学の男の子に走ったみたい。」
「え、そんな!あそこは大学が違っても安泰だと思ったのに。」
「一番安泰なのは、アンタたちでしょ?」
安泰?どこが!一佳に振り回され続けているだけで、別に付き合っている訳では無いのです、誤解ですよ、誤解!
でも、一佳に『一番大切な友達』って言われちゃった、えへへ。あのプリクラを時々眺めてはこっそり悦に入っています。私たちはお友達、今はそれで満足です!
授業の回数を重ねるにつれ、一佳の周りには熱い視線を送る女子が増えて来て、私は相変わらず冷たい視線を浴びています。だけど、一佳は隣りに座っていても全然ラブラブじゃないし、むしろあれをやれこれをやれって口うるさく言うだけです。どう見ても恋人同士じゃないですよ。
そう言えば、一佳は男子の友達が増えました。新しい友達と軽口を叩きあっている姿を見ると、ちょっと安心します。もともと何もしなくても周りが放置しておきませんからね。その気になれば、いつでも友達百人くらい出来そうです。
その日も選択科目を終えて、次の授業を受けに行く一佳や森田くんと別れ、千夏ちゃんこのみちゃんとお茶をしに二号館のカフェテリアに向かいました。
「あ、あの!」
呼び止められて振り向くと、めちゃくちゃ可愛い女の子が顔を赤らめ、私たちを見つめていました。
「あなた達とさっき一緒にいた男の子、N高校の藤原くん、ですよね?」
「藤原一佳のことですか?」
「そうです!わああ、偶然!信じられない!おんなじ大学になったって聞いて、探していたんですよ!」
女の子はパアッと明るく微笑みました。
「あなた、経済学部の奥村翼さん、ですよね?」
同じ経済学部の千夏ちゃんが不思議そうに尋ねると、彼女は嬉しそうにうなずきました。
「そうです!良かったら、一緒にお茶しませんか?私、藤原くんのことが知りたいの!」
物怖じしない翼ちゃんに圧倒され、私たち三人は一緒にカフェテリアに行くことにしたのです。
あとで千夏ちゃんに聞いた話では、華やかな顔立ちでお洒落でスタイルの良い翼ちゃんは、お父さんが大手商社にお勤めのお金持ちのお嬢さまで、帰国子女で英語とフランス語がペラペラ。そのうえ性格も明るく朗らか、誰に対しても分け隔て無く優しく親切なパーフェクトな女の子なのだそうです。一佳や潤くん薫ちゃんで慣れたとは言え、世の中には何にでも優れた人がまだまだいるんだとしみじみ感動しました。
私たちはカフェテリアの丸いテーブルに腰掛け、翼ちゃんの様子を伺いました。
「奥村さん、どうして一佳のことを知っているの?」
同じく物怖じしないこのみちゃんが、単刀直入に質問しました。
「私の仲の良い、一つ年上の従姉が、N高校に通っていたんです。一昨年、従姉の高校最後の合唱コンクールだからって観に行って、その時、ミュージカルに出ていた藤原くんに一目惚れしたの!従姉にあれこれ彼のことを尋ねたけれど知らなくて……でも、同じK大に入ったって、N高校だった友達に聞いて嬉しくて、友達になれたらいいなと思っていたんですよ!」
「そうなんだー。」
「うん!ずっと好きで好きで、でも逢えるとは思っていなくて、そしたら偶然同じ大学で知り合えるなんて!藤原くんはきっと私の運命の人だよ!」
はしゃぐ翼ちゃんを見ながら、私たちは顔を見合わせました。そのあと、あれこれ尋ねられるがままに一佳のことを答えたのです。
「藤原くんが出ている授業は分かりますか?」
「明日の三限の、選択科目に出ますよ。私たちも一緒なの。大講堂で授業があるわ。明日はそのあと講義は無いはずよ。」
「じゃあ、藤原くんに逢いに行きますね!」
翼ちゃんは晴れやかな笑顔で手を振ってお別れしました。
「今の、何?」
「一佳に突撃する気だ。」
「まあ、こっぱ微塵にされるんじゃない?」
千夏ちゃんとこのみちゃんはクスクスと可笑しそうに笑い出しました。
「七海、少しは焦った?」
「え、え?そんなことないってば……」
「心配無いか!一佳が他の女にしっぽを振るとは思えないもんね。」
確かに今までの一佳なら、見知らぬ女の子に声を掛けられてもぶっ飛ばしそうです……
次の日の三限、大講堂で授業を受けながらも、翼ちゃんのことが気になって落ち着きませんでした。
「何そわそわしてるんだよ。」
当たり前のように隣りに座ってふんぞり返る一佳はジロリと私を睨みました。
「一佳、あのね、授業のあとで、一佳に逢いたいって子が居るの。」
「なにそれ、七海の友達?」
「昨日知り合ったばかりだよ。お洒落で可愛くて、凄く親しみやすい子だった。」
「だからって、俺が逢わなきゃいけねー理由になってないだろ。」
憮然として一佳は答えました。それもそうですよね……
授業が終わって、一佳と一緒に大講堂を出ました。
「藤原くん!」
翼ちゃんが待っていました。ぽーっと一佳に見惚れています。
「経済学部の、奥村翼さんよ。一昨年のうちの高校のミュージカルを観て、一佳と友達になりたいってずっと思っていたんだって。」
「奥村です!良かったら、お友達に……いえ、お付き合いして下さい!」
ぎゃー!いきなりですか!私は愕然として後ずさりしてしまい転びそうになりました。
「俺、アンタのこと知らないし、いきなり付き合ってって言われても付き合う気はないよ。」
またそう言うことを言うーーーー!高校の時と全然変わっていません。
「そうですよね、ごめんなさい、焦り過ぎました。良かったら、お友達になってください!」
「はあ、嫌だって言ってるだろ!」
「一佳、そう言わないで、お友達くらい、いいでしょ?」
涙目になる翼ちゃんが気の毒になって、私はつい口出ししてしまいました。結局、一佳が珍しく折れて、一佳も私も翼ちゃんと連絡先を交換したのです。
「私、このあと授業があるの!だから今度一緒に遊びましょう!七海ちゃんもこれからよろしくね!」
嬉しそうに走り去る翼ちゃんの後ろ姿を見ていたら、バコンと頭を叩かれました。
「勝手に俺に女を紹介するんじゃねえ!」
「ごめんなさい!」
一佳は怒ってズンズンと歩いて行ってしまいました。
はあ、だけど、一佳と翼ちゃん、並んでいたらテレビドラマに出て来る恋人同士みたいに良く似合っていましたよ。
なんとなく、不安な日々の始まりを感じながら、歩き去る一佳を私は急いで追い掛けました。
全学部共通の選択科目で、週に二回、一佳と同じ講義を受けることになりました。そのうちの一回は、このみちゃん、経済学部の千夏ちゃん森田くんも一緒です。潤くんもいましたが、常にキレイな女の子たちに囲まれハーレム状態なので近くに寄ることも出来ません。
千夏ちゃんと森田くんは、高校の時よりラブラブ度が増したみたい。いつも一緒で授業中でも時々見つめ合い微笑み合っています。もう、当てつけられてクラクラしちゃいますよ!
「大変だったのよ!卒業式の後、修羅場でさー。」
授業のあとでお茶をしながらこのみちゃんがクククと笑いました。
「吹奏楽部の後輩の女の子がいきなり打ち上げにやってきて、森田と付き合っているってバラしちゃって、二股掛けられたって真帆ちゃんは泣いてるし、千夏ちゃんも怒りだして、それでも頑として森田のこと信じてて、結局、森田は千夏ちゃんを選んだのよ。」
「そんなことがあったんだ……」
「そーよ!七海と一佳が揉めている間にね。あの時は一佳も荒れてて大変だったんだから!薫ちゃんが宥めて収まったけど。」
ああ、あの頃は、一佳の言葉に傷ついてメソメソしていたっけ……懐かしい思い出です。て言うか、その後すっかり一佳に丸めこまれたような……
「飯島と永井ちゃんは別れちゃったのよ。浪人が決まった飯島を振って、永井ちゃんはおんなじ大学の男の子に走ったみたい。」
「え、そんな!あそこは大学が違っても安泰だと思ったのに。」
「一番安泰なのは、アンタたちでしょ?」
安泰?どこが!一佳に振り回され続けているだけで、別に付き合っている訳では無いのです、誤解ですよ、誤解!
でも、一佳に『一番大切な友達』って言われちゃった、えへへ。あのプリクラを時々眺めてはこっそり悦に入っています。私たちはお友達、今はそれで満足です!
授業の回数を重ねるにつれ、一佳の周りには熱い視線を送る女子が増えて来て、私は相変わらず冷たい視線を浴びています。だけど、一佳は隣りに座っていても全然ラブラブじゃないし、むしろあれをやれこれをやれって口うるさく言うだけです。どう見ても恋人同士じゃないですよ。
そう言えば、一佳は男子の友達が増えました。新しい友達と軽口を叩きあっている姿を見ると、ちょっと安心します。もともと何もしなくても周りが放置しておきませんからね。その気になれば、いつでも友達百人くらい出来そうです。
その日も選択科目を終えて、次の授業を受けに行く一佳や森田くんと別れ、千夏ちゃんこのみちゃんとお茶をしに二号館のカフェテリアに向かいました。
「あ、あの!」
呼び止められて振り向くと、めちゃくちゃ可愛い女の子が顔を赤らめ、私たちを見つめていました。
「あなた達とさっき一緒にいた男の子、N高校の藤原くん、ですよね?」
「藤原一佳のことですか?」
「そうです!わああ、偶然!信じられない!おんなじ大学になったって聞いて、探していたんですよ!」
女の子はパアッと明るく微笑みました。
「あなた、経済学部の奥村翼さん、ですよね?」
同じ経済学部の千夏ちゃんが不思議そうに尋ねると、彼女は嬉しそうにうなずきました。
「そうです!良かったら、一緒にお茶しませんか?私、藤原くんのことが知りたいの!」
物怖じしない翼ちゃんに圧倒され、私たち三人は一緒にカフェテリアに行くことにしたのです。
あとで千夏ちゃんに聞いた話では、華やかな顔立ちでお洒落でスタイルの良い翼ちゃんは、お父さんが大手商社にお勤めのお金持ちのお嬢さまで、帰国子女で英語とフランス語がペラペラ。そのうえ性格も明るく朗らか、誰に対しても分け隔て無く優しく親切なパーフェクトな女の子なのだそうです。一佳や潤くん薫ちゃんで慣れたとは言え、世の中には何にでも優れた人がまだまだいるんだとしみじみ感動しました。
私たちはカフェテリアの丸いテーブルに腰掛け、翼ちゃんの様子を伺いました。
「奥村さん、どうして一佳のことを知っているの?」
同じく物怖じしないこのみちゃんが、単刀直入に質問しました。
「私の仲の良い、一つ年上の従姉が、N高校に通っていたんです。一昨年、従姉の高校最後の合唱コンクールだからって観に行って、その時、ミュージカルに出ていた藤原くんに一目惚れしたの!従姉にあれこれ彼のことを尋ねたけれど知らなくて……でも、同じK大に入ったって、N高校だった友達に聞いて嬉しくて、友達になれたらいいなと思っていたんですよ!」
「そうなんだー。」
「うん!ずっと好きで好きで、でも逢えるとは思っていなくて、そしたら偶然同じ大学で知り合えるなんて!藤原くんはきっと私の運命の人だよ!」
はしゃぐ翼ちゃんを見ながら、私たちは顔を見合わせました。そのあと、あれこれ尋ねられるがままに一佳のことを答えたのです。
「藤原くんが出ている授業は分かりますか?」
「明日の三限の、選択科目に出ますよ。私たちも一緒なの。大講堂で授業があるわ。明日はそのあと講義は無いはずよ。」
「じゃあ、藤原くんに逢いに行きますね!」
翼ちゃんは晴れやかな笑顔で手を振ってお別れしました。
「今の、何?」
「一佳に突撃する気だ。」
「まあ、こっぱ微塵にされるんじゃない?」
千夏ちゃんとこのみちゃんはクスクスと可笑しそうに笑い出しました。
「七海、少しは焦った?」
「え、え?そんなことないってば……」
「心配無いか!一佳が他の女にしっぽを振るとは思えないもんね。」
確かに今までの一佳なら、見知らぬ女の子に声を掛けられてもぶっ飛ばしそうです……
次の日の三限、大講堂で授業を受けながらも、翼ちゃんのことが気になって落ち着きませんでした。
「何そわそわしてるんだよ。」
当たり前のように隣りに座ってふんぞり返る一佳はジロリと私を睨みました。
「一佳、あのね、授業のあとで、一佳に逢いたいって子が居るの。」
「なにそれ、七海の友達?」
「昨日知り合ったばかりだよ。お洒落で可愛くて、凄く親しみやすい子だった。」
「だからって、俺が逢わなきゃいけねー理由になってないだろ。」
憮然として一佳は答えました。それもそうですよね……
授業が終わって、一佳と一緒に大講堂を出ました。
「藤原くん!」
翼ちゃんが待っていました。ぽーっと一佳に見惚れています。
「経済学部の、奥村翼さんよ。一昨年のうちの高校のミュージカルを観て、一佳と友達になりたいってずっと思っていたんだって。」
「奥村です!良かったら、お友達に……いえ、お付き合いして下さい!」
ぎゃー!いきなりですか!私は愕然として後ずさりしてしまい転びそうになりました。
「俺、アンタのこと知らないし、いきなり付き合ってって言われても付き合う気はないよ。」
またそう言うことを言うーーーー!高校の時と全然変わっていません。
「そうですよね、ごめんなさい、焦り過ぎました。良かったら、お友達になってください!」
「はあ、嫌だって言ってるだろ!」
「一佳、そう言わないで、お友達くらい、いいでしょ?」
涙目になる翼ちゃんが気の毒になって、私はつい口出ししてしまいました。結局、一佳が珍しく折れて、一佳も私も翼ちゃんと連絡先を交換したのです。
「私、このあと授業があるの!だから今度一緒に遊びましょう!七海ちゃんもこれからよろしくね!」
嬉しそうに走り去る翼ちゃんの後ろ姿を見ていたら、バコンと頭を叩かれました。
「勝手に俺に女を紹介するんじゃねえ!」
「ごめんなさい!」
一佳は怒ってズンズンと歩いて行ってしまいました。
はあ、だけど、一佳と翼ちゃん、並んでいたらテレビドラマに出て来る恋人同士みたいに良く似合っていましたよ。
なんとなく、不安な日々の始まりを感じながら、歩き去る一佳を私は急いで追い掛けました。
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