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第3章 後悔
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英梨花は翌日山の麓の教会の庭園で見つかった。
連絡を受け、現場に母と共に駆け付けた茉莉花の目に、冷たくなった英梨花の姿が映った。
生前と変わらない美しく穏やかな微笑みを浮かべ、仰向けになって胸の上で手を組み、まるで眠っているように地面に横たわっていた。前夜降り積もった雪が身体を覆い、純白の花嫁衣裳を着ているかのようだった。
突然の娘の死に、母の藍咲は無言を貫いた。遺書は無かったが、大量の睡眠薬を飲んでいるため自殺であることは間違いない。しかし、彼女は断固として娘の事故死を主張した。
葬儀の日、喪服を着た茉莉花は抜け殻のようになった彬智のそばに付き添った。彼は一言も発せず、時折涙を流しながら虚ろな瞳で集まった弔問客を眺めるだけだった。
恭弥がやってきた。幼馴染みの死を悲しみ泣きはらした目を赤くしている。彬智は彼が来ても何の反応も示さない。
「マリ、藍咲さまからの伝言だ。今のうちに親戚の方たちに挨拶をしてきて。」
「分かった。」
「ついでに何か食べておいで。青い顔をしているよ。」
「ああ……忘れていた……そんな余裕も無かった……」
「手伝うことがあるなら俺が代わりに済ませるよ。何でも言って。」
「ありがとう、キョウ……アキをお願いね。」
恭弥はニコリと笑い大きな手でグシャリと茉莉花の頭を撫でた。ホッとため息を吐き、茉莉花はその場を離れた。
高塔家の縁者や会社関係者に挨拶に行くと、誰もが聡明で美しかった英梨花の死を悼んだ。高塔財閥の行く末を案ずる者もいた。その人たち一人ひとりに丁寧に頭を下げ、茉莉花はお礼の言葉を述べた。
「茉莉花、そろそろここにいて。葬儀が始まるわ。」
藍咲に手招きされ、最前列に座った。
「アキをここに呼んでもいい?心配なの。」
「彬智は恭弥に面倒を見させるわ。それに、ここに置いたらきっと噂話の種にされる。」
毅然とした藍咲を、茉莉花は眉を寄せ見つめた。
「でも、アキも一緒にエリを送りたいはずよ。」
「あなたは甘い。彬智の将来に傷つけてしまうわ……英梨花が愚かなことをしなければ……」
「お母さん、エリは亡くなったのよ!エリを悪く言わないで!」
「こんな真似をして、あの子は私たちに恥をかかせたのよ。どれほど頭を下げて醜聞をもみ消したと思っているの。高塔家の将来を担うはずのあの子が……」
悔しげに唇を噛む藍咲の言葉が心に突き刺さる。実の娘を蔑ろにするのか……茉莉花は不意に母を憎んだ。
淡々と葬儀は進んだ。出棺の前に最期のお別れをしようと美しい英梨花の顔を見つめ、茉莉花は初めて涙を流した。
「エリ……エリっ!」
彬智が棺に縋りつき号泣する。大人たちが彼を棺から引き剥がす……
ポンと背中を叩かれた。そのままそっと大きな手で支えられる。振り返ると恭弥が目に涙を浮かべ寄り添っていた。
「キョウ……エリが私に、アキを頼むって言ったの。あの時、私がエリの気持ちに気づいていれば……」
「マリが悪いんじゃない。」
「でも……っ!」
「マリは悪くない。」
ポンポンと優しく背中を撫でられ、崩れ落ちそうになる心を和ませ、茉莉花はその場を持ち堪えた。
数日後、高塔の屋敷に石月祐弥と恭弥が訪れ、藍咲と話し合いをした。茉莉花はお茶の支度をして、その場に加わった。
派手なルックスの恭弥と違って地味な印象の父・祐弥は、穏やかな表情で藍咲の意見にうなずいた。
「では、彬智くんはこのまま我が家でお預かりします。」
「お願いよ。大事な大学受験を控えているの。出来れば隆彬と同じ東京の大学に……」
「藍咲さま、今のアキに受験する余裕はありません。一年間、心を落ち着けさせてやっていただけませんか?」
恭弥は必死な形相で藍咲に頼んだ。しかし彼女は小さく嗤っただけだった。
「馬鹿なことを……隆彬の息子ならばこんなことで挫けたりしないはず。隆彬はいつだって聡明で精力的で、太陽のように明るく皆をグイグイ引っ張っていく人だった。」
「お願いです!アキと亡くなったお父さんを比べるのはやめてください!」
「恭弥……」
父の祐弥がそっと手を差し伸べ、息子を戒めた。
「それから恭弥。あなたも東京の大学を受験しなさい。国内最高峰の学び舎で学んで、卒業したらこの高塔財閥を支えるのよ。」
「俺は……地元の大学に進んで……アキとマリを支えます。」
「恭弥。」
再度父親に促され、恭弥はガクリと肩を落とした。
藍咲と祐弥はその後も話し合いを続け、茉莉花と恭弥は二人で部屋を抜け出した。
「ごめんね、キョウ。お母さんがあんなことを言って……」
「分かっている。藍咲さまにとって一番大切なのは高塔財閥なんだ……」
「でも、キョウは東京に行ってしまうのね……寂しいわ。」
ふっとため息を吐き、恭弥は切なそうに茉莉花を見つめた。
「四年経ったら戻ってくる。そして、マリと高塔財閥を支えられるような男になってくる。」
「キョウなら出来るわ。頭いいもの!」
「アキほどじゃないけどね。」
やっと恭弥は明るく笑った。つられて茉莉花も久しぶりに笑顔を浮かべた。
年が明け、恭弥は国内最高峰の大学に見事合格した。彬智は不合格となり、藍咲の不興を買った。
春休みになり、ぼんやりと部屋で過ごしていた茉莉花のもとに電話が掛かって来た。
恭弥からだった。外の公衆電話かららしく、車や人のざわめきが電話の向こうから聞こえた。
「キョウ、引っ越しの日は決まった?東京に行く前に一度逢いたいわ。」
「うん、そうしよう……あのさ、アキはそっちに行ってない?今朝、家を出たきりどこに行ったか分からないんだ。」
「えっ!?」
ぞくりと背中が震えた。
「もしかして……エリが亡くなった場所?」
「俺もそう思って教会に来てみたんだ。でもいない。まさか……」
「きっと気分転換に遊びに出ただけよ!もし見つけたらすぐにキョウに連絡する!」
「頼んだよ。」
恭弥と次に逢う約束をして電話を切った。
なぜ、こんなに心がざわめくのだろう……
不安に押しつぶされそうになりながら、茉莉花は隣りの屋敷の合鍵を持ち家を出た。
高塔の屋敷の隣りに建てられた小振りの建物には、かつて茉莉花の父が住んでいた。母が父を住まわせるためにわざわざ建てたらしい。
その父は、茉莉花が幼いころに姿を消した。なぜいなくなったのか知る由もなかった。だが茉莉花は知っていた。父は心優しい人で、気性の激しい母と折り合いが合わなかったと、使用人たちに聞かされたことがあった。
中に入ると薄暗く、長らく使っていなかったためにわずかにかび臭く感じる。人の気配は感じない。
ここで、彬智と英梨花は、かつて愛し合っていた……
心がきりきりと痛んだ。
階段を上り、彬智が寝室に使っていた部屋のドアを開けた。天井から紐がぶら下がり、その先は丸い輪になっていた。
そして紐の真下に、彬智が崩れ落ちていた。
「アキ!アキっ!」
彬智の身体を揺さぶると、彼は虚ろな瞳で茉莉花を見つめた。
「まさか、アキ、自殺、しようと……!?」
ふるふると涙を流し、彬智はうなだれた。
「ダメ!死んじゃダメ!」
「……エリを殺したのは、この俺だ……俺が……俺が……藍咲さまに従って、エリを一人ぼっちにしたから……!」
「だからって、死んではダメ!」
「エリがいなければ生きていけない……」
茉莉花は必死で号泣する彬智を抱きしめた。
部屋に落ちる陽が陰るころ、彬智はやっと落ち着きを取り戻した。
「この部屋で、俺とエリは愛し合った……ここはエリの思い出がいっぱいだ……」
「だったらこの屋敷で暮らせばいいわ。お母さんには私が頼む!そして、私とエリの思い出を忘れないでいようよ。そうしたら、エリは私たちの心の中で永遠に生き続けるわ……」
「エリの、思い出……」
「私は、優しくて美しくてそして聡明だった英梨花を忘れたりしない。アキもそうして。エリのために生きて。」
彬智はまた涙を流し、茉莉花にしがみついた。
「アキ……抱きたかったら私を抱いて。エリの代わりでいい、あなたの心が安らぐなら……」
ハッと涙を止め、彬智はまじまじと茉莉花を見つめた。
「そんなことは出来ない。マリが傷つく。」
そっと茉莉花の頬に手を当て、彬智はこつんと額を合わせた。
「エリの元に行きたかった……でも、怖くなって死ねなかった……いつか、エリの元に召されるまで、俺は英梨花を思って生き続ける。それが、俺の贖罪なんだ……」
夕闇が落ち彬智の美しい顔を幻想的に浮かび上がらせた。茉莉花は険しく顔を歪める彬智をギュッと抱きしめた。
「私が護る、アキを護る。だから、私と生きて。」
彬智は茉莉花の腕に身体を預け、ふっと崩れ落ちた。
護ってみせる。たとえ人を傷つけても……どんなに汚れても、アキだけは……
真っ暗な闇の中で、茉莉花は彬智を抱きしめ、いつまでも彼の温もりを愛おしんだ。
連絡を受け、現場に母と共に駆け付けた茉莉花の目に、冷たくなった英梨花の姿が映った。
生前と変わらない美しく穏やかな微笑みを浮かべ、仰向けになって胸の上で手を組み、まるで眠っているように地面に横たわっていた。前夜降り積もった雪が身体を覆い、純白の花嫁衣裳を着ているかのようだった。
突然の娘の死に、母の藍咲は無言を貫いた。遺書は無かったが、大量の睡眠薬を飲んでいるため自殺であることは間違いない。しかし、彼女は断固として娘の事故死を主張した。
葬儀の日、喪服を着た茉莉花は抜け殻のようになった彬智のそばに付き添った。彼は一言も発せず、時折涙を流しながら虚ろな瞳で集まった弔問客を眺めるだけだった。
恭弥がやってきた。幼馴染みの死を悲しみ泣きはらした目を赤くしている。彬智は彼が来ても何の反応も示さない。
「マリ、藍咲さまからの伝言だ。今のうちに親戚の方たちに挨拶をしてきて。」
「分かった。」
「ついでに何か食べておいで。青い顔をしているよ。」
「ああ……忘れていた……そんな余裕も無かった……」
「手伝うことがあるなら俺が代わりに済ませるよ。何でも言って。」
「ありがとう、キョウ……アキをお願いね。」
恭弥はニコリと笑い大きな手でグシャリと茉莉花の頭を撫でた。ホッとため息を吐き、茉莉花はその場を離れた。
高塔家の縁者や会社関係者に挨拶に行くと、誰もが聡明で美しかった英梨花の死を悼んだ。高塔財閥の行く末を案ずる者もいた。その人たち一人ひとりに丁寧に頭を下げ、茉莉花はお礼の言葉を述べた。
「茉莉花、そろそろここにいて。葬儀が始まるわ。」
藍咲に手招きされ、最前列に座った。
「アキをここに呼んでもいい?心配なの。」
「彬智は恭弥に面倒を見させるわ。それに、ここに置いたらきっと噂話の種にされる。」
毅然とした藍咲を、茉莉花は眉を寄せ見つめた。
「でも、アキも一緒にエリを送りたいはずよ。」
「あなたは甘い。彬智の将来に傷つけてしまうわ……英梨花が愚かなことをしなければ……」
「お母さん、エリは亡くなったのよ!エリを悪く言わないで!」
「こんな真似をして、あの子は私たちに恥をかかせたのよ。どれほど頭を下げて醜聞をもみ消したと思っているの。高塔家の将来を担うはずのあの子が……」
悔しげに唇を噛む藍咲の言葉が心に突き刺さる。実の娘を蔑ろにするのか……茉莉花は不意に母を憎んだ。
淡々と葬儀は進んだ。出棺の前に最期のお別れをしようと美しい英梨花の顔を見つめ、茉莉花は初めて涙を流した。
「エリ……エリっ!」
彬智が棺に縋りつき号泣する。大人たちが彼を棺から引き剥がす……
ポンと背中を叩かれた。そのままそっと大きな手で支えられる。振り返ると恭弥が目に涙を浮かべ寄り添っていた。
「キョウ……エリが私に、アキを頼むって言ったの。あの時、私がエリの気持ちに気づいていれば……」
「マリが悪いんじゃない。」
「でも……っ!」
「マリは悪くない。」
ポンポンと優しく背中を撫でられ、崩れ落ちそうになる心を和ませ、茉莉花はその場を持ち堪えた。
数日後、高塔の屋敷に石月祐弥と恭弥が訪れ、藍咲と話し合いをした。茉莉花はお茶の支度をして、その場に加わった。
派手なルックスの恭弥と違って地味な印象の父・祐弥は、穏やかな表情で藍咲の意見にうなずいた。
「では、彬智くんはこのまま我が家でお預かりします。」
「お願いよ。大事な大学受験を控えているの。出来れば隆彬と同じ東京の大学に……」
「藍咲さま、今のアキに受験する余裕はありません。一年間、心を落ち着けさせてやっていただけませんか?」
恭弥は必死な形相で藍咲に頼んだ。しかし彼女は小さく嗤っただけだった。
「馬鹿なことを……隆彬の息子ならばこんなことで挫けたりしないはず。隆彬はいつだって聡明で精力的で、太陽のように明るく皆をグイグイ引っ張っていく人だった。」
「お願いです!アキと亡くなったお父さんを比べるのはやめてください!」
「恭弥……」
父の祐弥がそっと手を差し伸べ、息子を戒めた。
「それから恭弥。あなたも東京の大学を受験しなさい。国内最高峰の学び舎で学んで、卒業したらこの高塔財閥を支えるのよ。」
「俺は……地元の大学に進んで……アキとマリを支えます。」
「恭弥。」
再度父親に促され、恭弥はガクリと肩を落とした。
藍咲と祐弥はその後も話し合いを続け、茉莉花と恭弥は二人で部屋を抜け出した。
「ごめんね、キョウ。お母さんがあんなことを言って……」
「分かっている。藍咲さまにとって一番大切なのは高塔財閥なんだ……」
「でも、キョウは東京に行ってしまうのね……寂しいわ。」
ふっとため息を吐き、恭弥は切なそうに茉莉花を見つめた。
「四年経ったら戻ってくる。そして、マリと高塔財閥を支えられるような男になってくる。」
「キョウなら出来るわ。頭いいもの!」
「アキほどじゃないけどね。」
やっと恭弥は明るく笑った。つられて茉莉花も久しぶりに笑顔を浮かべた。
年が明け、恭弥は国内最高峰の大学に見事合格した。彬智は不合格となり、藍咲の不興を買った。
春休みになり、ぼんやりと部屋で過ごしていた茉莉花のもとに電話が掛かって来た。
恭弥からだった。外の公衆電話かららしく、車や人のざわめきが電話の向こうから聞こえた。
「キョウ、引っ越しの日は決まった?東京に行く前に一度逢いたいわ。」
「うん、そうしよう……あのさ、アキはそっちに行ってない?今朝、家を出たきりどこに行ったか分からないんだ。」
「えっ!?」
ぞくりと背中が震えた。
「もしかして……エリが亡くなった場所?」
「俺もそう思って教会に来てみたんだ。でもいない。まさか……」
「きっと気分転換に遊びに出ただけよ!もし見つけたらすぐにキョウに連絡する!」
「頼んだよ。」
恭弥と次に逢う約束をして電話を切った。
なぜ、こんなに心がざわめくのだろう……
不安に押しつぶされそうになりながら、茉莉花は隣りの屋敷の合鍵を持ち家を出た。
高塔の屋敷の隣りに建てられた小振りの建物には、かつて茉莉花の父が住んでいた。母が父を住まわせるためにわざわざ建てたらしい。
その父は、茉莉花が幼いころに姿を消した。なぜいなくなったのか知る由もなかった。だが茉莉花は知っていた。父は心優しい人で、気性の激しい母と折り合いが合わなかったと、使用人たちに聞かされたことがあった。
中に入ると薄暗く、長らく使っていなかったためにわずかにかび臭く感じる。人の気配は感じない。
ここで、彬智と英梨花は、かつて愛し合っていた……
心がきりきりと痛んだ。
階段を上り、彬智が寝室に使っていた部屋のドアを開けた。天井から紐がぶら下がり、その先は丸い輪になっていた。
そして紐の真下に、彬智が崩れ落ちていた。
「アキ!アキっ!」
彬智の身体を揺さぶると、彼は虚ろな瞳で茉莉花を見つめた。
「まさか、アキ、自殺、しようと……!?」
ふるふると涙を流し、彬智はうなだれた。
「ダメ!死んじゃダメ!」
「……エリを殺したのは、この俺だ……俺が……俺が……藍咲さまに従って、エリを一人ぼっちにしたから……!」
「だからって、死んではダメ!」
「エリがいなければ生きていけない……」
茉莉花は必死で号泣する彬智を抱きしめた。
部屋に落ちる陽が陰るころ、彬智はやっと落ち着きを取り戻した。
「この部屋で、俺とエリは愛し合った……ここはエリの思い出がいっぱいだ……」
「だったらこの屋敷で暮らせばいいわ。お母さんには私が頼む!そして、私とエリの思い出を忘れないでいようよ。そうしたら、エリは私たちの心の中で永遠に生き続けるわ……」
「エリの、思い出……」
「私は、優しくて美しくてそして聡明だった英梨花を忘れたりしない。アキもそうして。エリのために生きて。」
彬智はまた涙を流し、茉莉花にしがみついた。
「アキ……抱きたかったら私を抱いて。エリの代わりでいい、あなたの心が安らぐなら……」
ハッと涙を止め、彬智はまじまじと茉莉花を見つめた。
「そんなことは出来ない。マリが傷つく。」
そっと茉莉花の頬に手を当て、彬智はこつんと額を合わせた。
「エリの元に行きたかった……でも、怖くなって死ねなかった……いつか、エリの元に召されるまで、俺は英梨花を思って生き続ける。それが、俺の贖罪なんだ……」
夕闇が落ち彬智の美しい顔を幻想的に浮かび上がらせた。茉莉花は険しく顔を歪める彬智をギュッと抱きしめた。
「私が護る、アキを護る。だから、私と生きて。」
彬智は茉莉花の腕に身体を預け、ふっと崩れ落ちた。
護ってみせる。たとえ人を傷つけても……どんなに汚れても、アキだけは……
真っ暗な闇の中で、茉莉花は彬智を抱きしめ、いつまでも彼の温もりを愛おしんだ。
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