21 / 29
21 メンバーが増えた
しおりを挟むデサントスを出発してから約六日、途中魔物の襲撃はあったものの、無事にヨルデノールに到着することができた。引き受けた護衛の任務は、さらに荒野を抜けた先にあるバイファまでなので、ここでようやく行程の半分といったところだ。
依頼主であるポポスは、ヨルデノールの冒険者ギルドの前で突然俺に言い放った。
「雷のお二人は、この任務に不適当なのでここで解雇します。
これまでの仕事内容にも不満がありますので、報酬はお支払い出来ません」
「はあぁぁぁ⁉」
俺よりも先に、アマンダが抗議の声を上げた。
「いやいやいや。ポポスさん、不適当ってそりゃないでしょ」
「さすがに無茶苦茶では?」
「……」
ケイトとメルキアも不満を口にする。カーシャはあまりのことに唖然としている。
「依頼主がそう思うなら仕方ないですね。
では、冒険者ギルドに正式に解雇届を出してください」
ポポスの浅ましさにほとほと嫌気がさしていたので、俺は肩をすくめるだけであえて反論はしなかった。この男と議論しても、どうせ堂々巡りするだけだし。
「もちろん、そうさせてもらうよ」
俺たちはポポスの後についてギルドの受付に向かった。
「この依頼の件なんだが――」
ポポスは受付職員に向かって自分に都合の良い話だけをして、俺が自己都合で仕事を降りたので報酬は払えないと言い捨てた。職員はその話を能面のような顔で聞き終えて、それから俺に向き直った。
「間違いはありませんか?」
「話にいろいろとくいちがいがあるようだ。
魔物の撃退と、ここまでの道中の警戒という、
護衛としての役割は間違いなく果たしたつもりだ」
自分の署名入りの報告書を取り出して、冒険者証と共に受付職員に手渡した。
「詳細はこれに書いてある通りだ。
内容について嘘偽りがないことを誓う」
職員は俺とカーシャの冒険者証の情報を読み取って確認する。
「はい。あ、雷のお二方でしたか。
今回の件については、ギルドの正式な記録として残されます。
この報告書はギルドの運営のために活用されますが、よろしいですか?」
ギルドにおいては、銀級冒険者の書いた報告書は、信用度の高い資料として扱われる。一見さんのクレームとは重みがだいぶ違うのだった。俺の報告書は、悪質依頼主の事例として、新米冒険者向けの対策テキストに利用されるだろう。
「もちろん構わないよ」
「ご報告ありがとうございました」
ポポスは職員が俺に頭を下げる様子を不満気に見ていたが、フンと鼻を鳴らして、俺を押しのけるように職員の前に出た。
「それじゃあ、別な冒険者を追加で雇いたい――」
「悪いけど、あたし達もこの依頼、降りさせてもらうわ」
黒百合のアマンダがポポスを遮るように声を上げた。
「な! 勝手に辞めるつもりか? だったら報酬は払わんぞ!」
ポポスはやや慌てた様子だが、それでも高圧的な態度は変えない。
「ああ、それで構わないよ。
さっきから聞いていたが、あんたはウソばかりで信用できん。
サンダーがいなけりゃ、あたし達はあそこでやられてただろう。
その一番の功労者を難癖付けて追い出すつもりかよ。
だいたい、飯だって毎回パン一個だけってのはひどすぎるぜ。
サンダーが恵んでくれたから何とかやってこれたが、
そうじゃなきゃ、あんたに有り金全部むしられるところだった」
アマンダが良く通る大きな声で不満を爆発させた。
俺たちの様子を後ろからうかがっていた冒険者たちがざわつき出した。この手のトラブルについて、冒険者は凄く敏感なのだ。なにしろ死活問題だからな。
職員のポポスを見る目が、氷のように冷たくなっていく。
「ま、まて! 人聞きの悪いことを言うな!」
「本当のことだし、仕方ないよね」
「そうね。あれはあこぎな商売だと思う」
ケイトとメルキアもアマンダに加勢する。
「そういえば、あたし達が倒した大サソリの分け前をもらってないけど?」
「な、何を言う! あれは依頼主である私のものだ!」
ポポスはあくまでもがめついのだった。
「ふ~ん。そういうことなら、もういいや。いらないよ。
ところで、サンダー。あたし達と組まないか?」
アマンダはポポスを意識の外へ追い出して、やぶから棒に話を持ちかけた。
「俺たちとパーティーを組むってことか?」
「そうだ。あたし達が組めば無敵だと思うんだよ」
「あ! それ良いねぇ。私も大賛成!」
「悪くないと思う」
黒百合のメンバー主導で勝手に話が進んでいく。
「待てまて! カーシャは構わないか?」
「はい、私もその方が良いと思います。
でも、サンダーさんの目的はどうします?」
「そうだな……。
俺たちは東を目指しているんだ。
最終的にはワラキア大公国に行くつもりなんだが……」
「良いねぇ、それ!」
「壮大な目標!」
「私もかねがね行きたいと思っていた」
黒百合のメンバーが即座に乗ってきた。これは断れない状況だな。
「分かった、組もう。アマンダが代表な」
「馬鹿か、銀級のあんたが代表に決まってるだろうが!」
「じゃあパーティー名は雷だぞ」
「よし決まった!」
ということで、俺たちのパーティーに黒百合の三人が加わることになった。
パーティーの手続きをしていると、職員から依頼を受ける。
「この封筒をバイファのギルドへ届けていただきたいのですが」
「期日は?」
「できれば一週間以内で。報酬は10万ジェニーです」
「よし、受けよう」
「ありがとうございます。
この依頼書を一緒に出せば、あちらで報酬が出ますので。
それと、ポポス氏の依頼未達成については、不問といたします」
「そうか、ありがとう」
俺たちは冒険者ギルドを後にした。
ギルドに置き去りにされたポポスは、もう誰からも相手にされなかった。
悪質依頼者として知れ渡ったので、彼の依頼を引き受ける者は誰もいないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる