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11 戦力を強化
しおりを挟むダンジョンの入口を発見した翌日。
新しくしもべに加えたスケルトンたちを整列させて考え込む。
ステータスは全部同じ。生成されてすぐの新品のスケルトンだからだろう。
術者:イチロウ・トオヤマ
名前:なし
種類:スケルトン
用途:汎用
状態:良好
熟練:小
特記:なし
熟練という項目が、たぶんRPGで言うところの経験値みたいなものだろう。最初にしもべにしたスケルトンたちはそこが「極」になっていた。長い年月活動していて経験を積んでいたってことだろうな。
たぶん、小 → 中 → 大 → 極 みたいな流れでランクアップするはず。
「考えても分らん。とりあえず試してみよう」
俺はスケルトン・ファイターを連れて来る。装備している剣を取り上げて、適当な棒切れを持たせる。
新米スケルトン二体と、棒切れを装備したスケルトン・ファイターを戦わせる。
「よし、始め!」
新米スケルトンたちは動きがぎこちなくて乱雑だ。対してファイターは素早く滑らかな動き。
カンカンカン!グワシャァ……。
二対一では全然勝負にならず、一瞬で新米スケルトンたちがバラバラにされた。それでも心配はいらない。スケルトンは核になる部位さえ無事ならすぐに復活するのだ。
とはいえスケルトンは疲れを知らないので、何回やっても同じ結果になる。しかたないのでもう三体加えて、五対一での勝負。
「……だめだ、これでも差がありすぎる……」
結局、十対一(装備にハンデあり)でようやく力が均衡した。スケルトン・ファイター強いなぁ……。いや、新米スケルトンが弱すぎるのか?
リサも見物にやって来た。
「すごい! ファイター強いねぇ」
「リサの見た感じだと、どれくらい強い? 人間の剣士よりも強いのかな」
「う~ん、普通の人はスケルトン三体に囲まれたら、もうダメだって聞いたことがある」
「なるほど、そうなのか」
スケルトン十体と渡り合えるあいつは相当強いらしいな。
しばらく均衡していた戦いは、徐々にファイターが押し始めた。
「えぇ~、なんでやねん」
ステータスを見て納得。ファイターの熟練度が小から中にランクアップしている。戦いの最中にどんどん強くなるのかよ……。すごいな。
新米スケルトンを入れ替えて、まんべんなく訓練させる。
そうこうしているうちに、全ての新米スケルトンの熟練度が極になった。そしてファイターの熟練度も極になった。
「む~ん、どうしたものかね。リサは手伝いのスケルトンは何体ぐらい欲しい?」
スケルトンたちには、リサの命令も聞くように命じてある。
「えぇっ、五体もいれば十分だと思うけど……。よくわからない」
「そうか。まぁ、余裕を見て汎用スケルトンは十体にしとこうかな」
今いるのが四体だから、六体をお手伝い組へ編入。
残り十四体。二体ずつクラスチェンジさせて、余った二体はファイターだな。やはり前衛は多い方が安心。
ということで、
汎用が十、ファイターが五、その他が三体ずつとなった。
「そうだ! 熟練が極になったファイターはどうしよう……」
悩む俺をリサがちょっと冷めた目で見ている。
たいていの女はこういうの興味ないからなぁ。いやいや、これも防衛力強化に必要なことなのだ! さぁどうしようかな……。
「おぉ! ナイトかウォーリアーか選べるのか!」
ナイトは防御力が高く、攻撃魔法も使える。ウォーリアーは近接戦闘特化型か。悩ましいなぁ。なんと男心をくすぐる設定なんだろうか!
あ、リサが死んだ目で俺を見てる。なんでやねん。
「やはり、ナイトだな。ナイトにクラスチェンジ!」
ファイターに光の粒がふわぁっと集まり、強い光に包まれる。光がスゥっと収まると、外形が変化していた。
ピカピカのプレートアーマーをまとい、これまた立派なロングソードと大きな盾を装備している。ファイターも格好良いが、ナイトはさらに一段と格好良いぞ!
「はぁぁ、かっちょいいなぁ」
「へぇ~、良いじゃない。全員これにしたら?」
彼らの装備は魔素から合成されるから、どんなデザインにでもできるはずだ。じゃあなんで、汎用のスケルトンだけボロボロの装備なんだろう。
リサの表情が微妙なのは、自分の手下の汎用スケルトンがボロばかりだからなのかもしれない。私にボロばかり押し付けやがって、とか思ってないよな……。
「そ、そうだ、一段落したから飯にしようぜ。肉を食おう、肉を」
「イチロウ、何か私の気をそらそうとしてない?」
「えぇ!? 何言ってんだか……」
「ふ~ん」
飯を食いながらスケルトンたちのステータス画面をいじくりまわす。何かあるだろうと見ていると、右上のすみのほうに何かあった。枠のデザインの一部かと思っていたが、違うな。そこに意識を集中するとメニューがスルッと出てきた。
【設定】
「おぉ、これだ!」
「な、何!?」
「いいの、気にするな」
「もぅ、なによぉ」
やはり、見た目を変更できるみたいだぞ。いろいろなデザインがあるようだが、一番小綺麗なものを選択。スケルトンの音声も有り無しを選べるようだ。デフォルトでは術者のみが聞こえるようになっていたが、普通に誰にでも聞こえるように設定。よし、これでOK。全ての汎用スケルトンの設定を見直した。
「あれ!?」
「ふふん、気が付いた?」
「なんか綺麗になってる!」
「だろう?」
「変えてくれたの?」
「まぁな」
リサがニコニコしている。機嫌が直ったらしい……。
『フフフ……、お主も大変じゃのぉ』
『彼女も難しいお年頃だからなぁ。グレられても困るし』
『抱いてやれば良いではないか。あの娘もまんざらでもないはずじゃ。機嫌というものは、思いの外肉体に引きずられるものじゃからの』
『え!? いや、ちょっと早すぎないか?』
『この世界ではそうでもないがの、フフフ……』
そうは言ってもなぁ。万が一リサと家庭を作ったとしてだ、こんな世界でちゃんとやっていけるんだろうか。王族や貴族の機嫌を損ねただけで首が飛ぶかもしれない、治安だって良いとはいえないこんな世界で、平和にやっていけるのかな?
『お主は自覚がないかもしれんが、お主にはそれを実現できるだけの力があるではないか』
『俺としては、平地に波瀾を起こすようなことはしたくないよ』
『フフフ………、考えすぎじゃ。単に盾として使えば良いのじゃ』
『う~ん……』
「どうしたの? 難しい顔してぇ」
「いや、スケルトンをどうするか考えてた」
「またぁ? ご飯のお代わりはどうする?」
「うん、もらうよ。そういえば、畑の野菜はどうなったんだっけ?」
「あぁ、もうすぐ収穫できそうよ」
「そうか、早いなぁ……」
その後スケルトンたちを鍛えまくった。といっても、俺が何かやったわけじゃなく、スケルトン同士を戦わせただけだけど。
メイジとプリーストは魔力が拮抗しているようで、向かい合わせにして勝手に戦わせれば簡単にランクアップした。
アーチャーは三角に配置して撃ちあいをさせた。スケルトンには弓矢がほとんど効かないので特に損耗なくランクアップ。
他のスケルトンたちは武器を取り上げて、同種同士で棒切れで打ち合いをさせた。彼らは疲れ知らずなので、機械的に休みなく動けるのだった。
メイジはウィザードへ、
プリーストはビショップへ、
アーチャーはスナイパーへ、
レンジャーはニンジャへ、
ランサーはファランクスへクラスチェンジした。
性能的には上位互換だったので、悩むまでもなかった。
汎用十体、ナイト三体、ウォーリアー二体、ウィザード三体、ビショップ三体、スナイパー三体、ニンジャ三体、ファランクス三体、という構成になった。
ひょっとしたら、まだ上のクラスがあるかもしれないが、さすがにキリがないからなぁ。
スケルトンが三十体というのは、戦闘集団としてはたいした数ではないかもしれないが、個人が持つ武力としては大きいかもしれない。山賊の頭くらいにはなれるかなぁ。
いや、そもそも俺は戦いを望んでるわけじゃない。平和な暮らしを維持するために、不当な暴力から身を守るために自衛しているだけだからな。
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