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08 ドワーフの鉱山
しおりを挟むドワーフたちは拠点ごと飛ばされてきたおかげか、あまり困ってない様子だ。
住処も活動の場も鉱山内にあるし、下手な妖魔なら撃退できるだけの武力も持っていた。鉱山にないものは、周辺の廃墟から掘り出したりしていた。
「飛ばされたのが荒野の真ん中なら大変じゃったろうがな。
水もあるし、食い物もあるし、何より酒があるからの」
「そうじゃそうじゃ。ここの酒は良いものじゃ」
「ガハハハッ、そうじゃのぉ」
彼らは元の世界では、貴族の注文で甲冑や剣などの武具を主に作っていたが、こちらでは需要がほぼない。
なので今では、ホビットたちの注文を受けて、農具作りや自転車の修理・改造などをしている。
初めのころは小さないさかいもあったが、しばらくすると共存共栄の関係が作られて行った。
ドワーフは基本的に鍛冶仕事と酒にしか興味がないので、やはりこまごまとした生活周り全般はホビットたちの方が得意だ。ドワーフが鍛冶仕事をして、ホビットたちはその代わりにドワーフの好きな酒を発掘してきたり、新鮮な野菜や果物を提供したりしているのだった。
「なぁ、お前さんに聞きたいのじゃが、あれは乗り物なんじゃろ?」
やはりドワーフたちも自動車が気になるようだ。道端には、錆だらけになった自動車が山ほど放置してあるから、目に付くのは確かだな。量販店の地下駐車場跡などでは無事な自動車も多く見つかっていた。
「そうだよ。さすがに気になるよな。
でも、動かすための燃料が手に入らないから、今はただの置物なんだよ」
「なるほどのぉ。
しかし、雨ざらしで放置とは、なんとももったいない。
あれらをバラしても構わんじゃろうか?」
「外にある錆びたようなのは、別に好きにしてくれて良いぞ。
外側は鉄とガラスだし、エンジンとミッションなんかはアルミだし、
融かして再利用できるだろうからな」
「ふむ。それも良いんじゃが、
わしとしては、きれいに分解して仕組みが知りたいのじゃ」
「あぁ、そういうことか。
じゃぁそのための工具と、あとは仕組みが分かる本を貸すよ」
「ありがたい!」
鍛冶仕事をしているせいなのか、ドワーフたちは機械の仕組みなどにも結構興味があるらしく、また理解も早かった。さすがに日本語は読めなかったが、イラストなどは良く分かるらしい。車の構造が書かれた本を熱心に見ている。
「ふむ、この中で燃料と空気が燃えて、圧力が高まってこれを動かすと」
「この線はなんじゃろ」
「あぁ、そこに電気が流れてその筒の先に火が付くんだよ」
「なるほどのぉ」
俺も学生時代はボロい中古車を買って直しながら乗ってたから、多少は車のことが分かる。分かる範囲で分解する手順を教えたり、車の操作を教えたりしながら少しずつ作業をして行った。
半日もすると、車はすっかりバラバラになった。
「領主様、これはバッテリーですね」
「そうだ。中には酸が入ってるから取り扱い注意な」
「この車輪は鉄ではないんですね」
「それはアルミ製だな」
「ほぉぉ、なんと巧みな細工なんでしょう!
これが組み合わさって動くのですね……」
「そう、それがエンジン、こっちがミッション。
しかしここまでバラバラだともう俺には直せんな」
ホビットたちもやって来て、ワイワイ言いながら見物している。
作業を邪魔されたドワーフたちは機嫌が悪くなる
「こりゃ! ホビットどもはあっちへ行っておれ!
その部品を持っていくんじゃない! そこへ戻すのじゃ」
「まったくもって騒がしいの」
「あいつらは落ち着きがなくていかん!」
ドワーフたちは本に書かれているイラストと本物の部品を見比べて、動きを確認したり素材を確認したり、ドワーフ同士でガヤガヤと熱心に議論している。しばらくすると、エンジンの仕組みなどはおおよそ理解できたらしい。もはや俺よりも詳しいかもな。
「電気のことをもう少し教えてくれんかのぉ」
「う~ん……、正直俺も詳しくない。
そのバッテリーに電気が蓄えられて、その線を通ってあれこれするんだよ」
「ふむ、電気というものは使うと減るんじゃろ?
どうやって作られておるのじゃ」
「あぁ、それはこの部品のここを回すと電気ができる」
俺はオルタネーターを掴み上げてプーリーを回して見せる。
「なるほど、そういえばこの輪っかでエンジンとつながっておったな……。
では、水車でそれを回せば電気が作れるということか?」
「まぁ、そうなるね」
「「「おぉぉぉぉ!」」」
俺の返事にドワーフたちが色めき立つ。
「それで、これに電気を流すと光をだすんじゃろ?」
ライトのバルブを指さして訊いてくる。
「そうだよ」
「「「おぉぉぉぉ! やっぱりそうじゃ!」」」
何を当たり前のことをと思ったが、そうか、彼らの世界には電気がなかったのだ。そういえば、ホビットたちの照明は油を使ったランプだったか。
俺は夜目が効くから照明いらずだし、あまりにも電気が身近だったせいか、よくよく考えていなかったが、彼らにとっては夢のテクノロジーということになるな。
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