22 / 59
22 グリフォン
しおりを挟むある日の昼間、俺とジャンヌは庁舎の屋上にいた。
「これが太陽の光を受けて、それで電気とかいうものを作っているのか?」
ジャンヌが太陽光パネルを指さして、不思議そうな顔をする。
「詳しい原理は忘れたが、だいたいそんな感じだ」
「光になったり熱になったり冷やしたり、電気というのは便利なものだな」
「まぁな。
俺たちの文明は、電気がなければ成り立たないものだったんだ。
残念ながら、当時の人たちはどこかに消えて、文明は滅んだようだが」
「そうか……」
「ジャンヌたちの世界には電気はないかもしれないが、魔法とかあるんだろ?」
「確かにあるにはあるが、あまり一般的ではない。
ごく少数の異能者が使えるらしいが、私は見たことがないんだ」
「騎士はそれなりに地位が高いんだろ?
それでも見たことがないのか?」
「騎士など、それほど地位が高いわけじゃないぞ。
魔法に触れることができるのは、もっと高位の貴族か王族くらいだろう」
「魔法剣士とか、そういうのはいないのか」
「ハハハ、なんだそれは。ブラドは時々面白いことを言う。
魔法が使えるなら、わざわざ剣などに頼るはずがないだろう。
ところで、ワイバーンはここで迎え撃ったのか?」
「そうだ。あの時はホビットたちと弩の訓練をして、
矢を撃ち尽くして、一息ついたころだったな。時間はちょうど今頃だったか。
南の空に何かが見えて、それがワイバーンだって分かったんだ。
ほら、あそこに鳥が飛んでるだろ? ちょうどあの辺りだな」
そう言ってジャンヌの方を見ると、彼女はずいぶんと険しい顔をしていた。
「ブラド。あれは鳥なんかじゃないぞ。
もっと大きなものだ。近づいてくるぞ!」
「何ぃ!?」
俺は屋上の柵から身を乗り出して、下にいるホビットに向かって叫ぶ。
「おい、お前たち。空から妖魔が来る! 中に入ってくれ!」
下で遊んでいた子供たちがキャァキャァ言いながら中に入っていった。
大人のホビットたちが異変に気付き、すぐにバタバタと屋上に上がってきた。
「南から何か来る。迎撃の準備をしてくれ!」
「「「はい、領主様!」」」
「ブラド。私はどうする?」
ジャンヌは妖魔との戦いを目前にして、高揚しているようだ。
「弩は使えるか?」
「もちろん使えるぞ」
「よし! じゃあ、あの弩で迎え撃ってくれ。
俺はヤツメウナギでとどめを刺す」
「分かった!」
ジャンヌが弩の方へ駆け出す。
「領主様、あれはグリフォンです! グリフォンが三頭来ます!」
目の良いホビットが叫ぶ。
「分かった!
発射の準備は出来たか?」
「「「はい、領主様!」」」
「こちらも、準備完了だ!」
「よし! 矢が届く距離に来たら、各自の判断で撃ってくれ!」
それにしても、ワイバーンに続いてグリフォンとは。グリフォンなんてギリシャ神話の生き物だと思うが、もはや何でもありだな……。
ともかく、ワイバーン来襲の時と違い、今回は迎撃態勢が整っている。
俺は靴と上着を脱ぎ、五本あるヤツメウナギのうちの一本を手に取る。
しばらく見ていると確かにグリフォンらしいものが近づいてくる。
鷲の頭に、かぎ爪の付いた前足、獣の後ろ足、胴には大きな翼。
翼があるにしても、なんであんな形で飛べるのか不思議だ。
しかし、ワイバーンに比べると、ずいぶんとゆっくり飛ぶんだな。
ワイバーンのように一気に近づいてくることもなく、三頭のグリフォンは矢が届くかどうかの位置で停止した。大きさは軽自動車くらいだろうか。大きいことは大きいが、想像していたものよりは小さいと思った。
俺たちの緊張は最高潮だったが、そんなことはどこ吹く風、彼らはそこでホバリングしながらこちらをジッとうかがっている。まさかこちらの人数や武器などを確認しているのだろうか。カクカクと首をかしげる様子がちょっと可愛い。
グリフォンたちはお互いに何か会話をしていたようだったが、しばらくするとぐるりと方向を変えて、一気に南の空へ飛び去ってしまった。こちらに近づいて来たときとは違い、凄い速度であっという間に見えなくなった。
俺たちは全員どうしたものかと呆然としていたが、やはりこの場の責任者の俺が区切りを付けないといけない。
「グリフォンを撃退したぞ!」
ちょっと無理やりだが、撃退したことにした。
「「「おっ、おぉぉぉぉ!」」」
ホビットはやや戸惑いつつも、歓声をあげた。
「ブラド、あれは一体何だったのだ?」
ジャンヌはちょっと不満気だ。
「こちらのことを観察してる様子だったな。
弩があるのを確認して、攻撃をあきらめたのかもしれん」
「確かに、グリフォンは知能がかなり高いと聞いたことはあるが……」
ジャンヌの表情がさえない。
「なんだ、残念そうだな?」
「騎士としては、少し戦ってみたくはあった。
グリフォンと戦う機会など、一生に一度あるかどうかなんだ」
「なるほどなぁ。でも俺は何もない方がうれしい。
ホビットたちもそう思ってるさ。無事なのが一番だよ」
「それもそうか」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる