23 / 59
23 ジャンヌの新しい服
しおりを挟むバンパイアの俺は、できれば夜型生活を送りたいところなのだが、周りに合わせて昼間に活動することも多い。日に当たっても別に死にはしないし、たいした影響はないのだが、やはり眩しいのが苦手だ。
最近は、日中にサングラスをすることが多いのだが、このサングラスをよくサラにパクられる。もう五つか六つくらいはパクられていると思う。ホームセンターやコンビニにあるような安いやつだが、それでもムカつく。
今日も出かけようとして机を探したら、いつの間にかなくなってた。
「くそぉ、またやられた……」
仕方がないので、そのまま外に出る。
「そろそろ服が出来てるだろう。一緒にドワーフのところに行かないか?」
そう言ってジャンヌを誘うと、彼女はぱぁっと笑顔になった。
「確かに! そういえばそうだった!」
ジャンヌはドワーフに、ワイバーン革の服と靴の製作を頼んでいた。
ワイバーン革の服は恐ろしく頑丈で、俺の戦闘服としても申し分ないものだった。
俺の服が本物のワイバーン革で作られていると知ったジャンヌは、ことあるごとに俺の服を触りにくる。
「はぁぁ、この革の服がいよいよ私のものになるんだな、なんという幸せ……」
そう言いながら、また俺の上着を撫でさすっている。
「でも、騎士の装備と引き換えなんだろ?
あれはあれで中々良い物だが、構わないのか?」
「確かに騎士の装備は、手放しがたいものではある。見栄えも良いしな。
しかしな、甲冑は着けるのが大変で重いし暑いし、実用上は微妙なのだ。
それに、鉄の甲冑はありふれているが、
ワイバーン革の服など、今まで見たことも聞いたこともないほど希少だ」
「なるほどな」
俺たちはリヤカーに届け物を満載して、ドワーフの鉱山に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うむ、服と靴じゃったな。出来ておるぞ」
ドルフは棚から色々と持って来た。
「なんか、これって俺の服とずいぶん違わないか?」
「おぉぉぉぉ! これが私のものに……」
服を抱えてジャンヌがワナワナと震えている。どれだけ嬉しいのか。
「まぁ、とりあえず着てみてくれ。
細かいサイズ直しがいるかもしれんしの」
「わかった!」
その場でいきなり服を脱ごうとするジャンヌを試着室に押し込む。
それにしても、いつのまに試着室など出来たのだろう……。
「ど、どうだ?」
試着室から出てきたジャンヌを見て俺は仰天した。
「なぁっ!?」
俺の服はライダース風で補強なども控えめなのだが、ジャンヌの服はもう服というよりも、革の鎧と呼んだ方がしっくりくるようなものだった。
華美すぎない質実剛健なデザインで、それが長身でキリッとしたジャンヌにはピッタリ合っていた。実に恰好良くきまっていたのだ。
「すごいな! 良く似合ってるよ。何というか、カッコイイな」
「おほっ、そっ、そうかぁ?」
ジャンヌの頬がゆるむ。
「これはオマケじゃ」
ドルフが革貼りの兜とグローブを持って来た。
もちろんこれもワイバーン革だろう。
「いいのか!? ありがとう」
さっそくジャンヌはそれも身につけた。
頭からつま先まで、総ワイバーン革の渋い暗赤色の戦闘装束は、なんともいえない凄みすら感じる。
「そうだなぁ……例えるなら、紅の竜騎士って感じだな」
俺はなんとなくそれっぽい単語を口に出した。
「なぁっ!? ブラドは世辞が上手いな、ハハハ」
ジャンヌは顔を真っ赤にして照れている。
「どうじゃ? サイズ直しの必要はありそうかの?」
「いや、驚くほどピッタリだ」
「そうじゃろうそうじゃろう、わしらの作るものに狂いはないのじゃ」
ドルフは自慢げに胸を張るのだった。
「あとは剣じゃったの。
わしらが鍛えた本物の剣じゃ。人間の作ったナマクラとは違うぞ」
ジャンヌがもらった剣は、俺のよりももう少しだけ長い。
「剣の長さは体格に合わせてある。
まぁ、お前さんなら二メートルの剣でも振れるじゃろうが、
やはり使い勝手を考えれば、体格に合ったものが良い」
「おぉぉぉぉ! これは、これは本当に良い物だ。ありがとう」
剣を受け取ったジャンヌは感激している。
「ドワーフの剣は見た目も良いけど、切れ味もなかなかだよな。
こないだゾンビ集団を倒したときも、サクサク首が落とせて助かったし」
「当たり前じゃ。ゾンビなぞ斬ったうちに入らんわぃ。ただの剣のサビじゃ。
わしらが鍛えた剣なんじゃ。ドラゴンをも倒せるはずじゃ……たぶんの」
「ふぅぅぅむ。確かにこの剣なら、あるいは……」
ジャンヌの鼻息が荒くなるのだった。
ドワーフが作ったワイバーン革の戦闘装束も剣も、ジャンヌが想像していた以上に良い物だったのは間違いない。帰り道では、いつにもまして上機嫌なのだった。
満面の笑顔でスキップする女騎士を見て、俺もいつの間にか笑顔になっていた。
1
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる