不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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 ドワーフの鉱山に行くたびに、変貌具合に驚かされる。
 元あった作業スペースのさらに奥に、いつの間にか新しい部屋が出来ていた。

 その部屋には、ビーカーやフラスコ、試験管などが並び、棚には薬品が一杯だ。
 ドワーフたちが欲しがるので、学校の理科室とか保健室や薬局などから調達して届けていた。何に使うのだろうかと思っていたら、化学実験をしていたようだ。

「いったい何を作っているんだ?」

 ドルフが車のバッテリーを持って来た。

「鉛蓄電池の構造はそれほど難しくはない。
 電極と電解液が用意できれば、意外と簡単に再現できるんじゃ。
 それで、電極はすぐに作れたんじゃが、電解液が用意できんかった。
 書物によると、希硫酸というものらしいがの」

「そうそう、希硫酸だ。
 でも、希硫酸なら、あそこにある硫酸を蒸留水で薄めれば出来るだろ?」

 俺は化学実験用の硫酸のビンを指さす。

「もちろん、それは分かっておるとも。
 わしらはその硫酸自体を作れんものかと、あれこれやっておったのじゃ」

「へぇ!? それで、出来たのか?」

「当たり前じゃ。わしらは錬金術もかじっておったからの。
 わしらにかかれば朝飯前じゃよ」

「ということは、つまり……」

「そう、わしらはバッテリーを量産できるようになったのじゃ」

「な!? マジか!」

「マジじゃ。
 せっかく便利なものがあるんじゃ、活用せんでは罰が当たるわぃ。
 それに、わしらとしては、いつかアレを動かしてみたいというのもある」

 そこには、ドワーフたちによって一度完全にバラされた後、また組み直された自動車があった。
 ボディーに浮いていた錆は削り落とされ、防錆塗装が施されている。ぺったんこだったタイヤも無事なものに付け替えられている。完全なポンコツだったのに、今はずいぶんとシャキッとした雰囲気になっていた。

「なるほどなぁ。でも道は長いと思う。そもそも燃料がないんだぞ?」

「うむ、そうじゃ。道は長い。しかしその道は無限に長いわけではないし、
 道をたどればちゃんと目的地まで行けるのじゃ」

 ドワーフたちの信念の強さには驚かされる。
 まぁ、確かにゼロから作るわけではないから、なんとかなる可能性はある。
 参考資料もあるし、傷んでいるとはいえ現物もあるし。

「わかった。なるべく力を貸すから、頑張ってくれ」

「無論じゃ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 我が家に帰ると問題が勃発していた。
 迷惑エルフのサラと女騎士ジャンヌがにらみ合っていたのだ。
 原因は聞くまでもない。

「おいサラ。その服はお前のじゃないだろ?」

「えぇ!? 何のことかな。これは僕のだよ?」

「聞いてくれ、ブラド。
 この女が私の大事な服を持ち逃げしようとしているんだ!」

 俺はジャンヌをなだめる。

「うん、分かっている。その服は世界に一つしかないからな。
 サラ、今のうちにその服を返すのなら、今回は見逃してやる」

 サラは心底呆れた顔をしてため息をつく。

「ふぅぅぅぅ。ちょっと意味が分からないんだけど?
 君たちは僕の服を奪おうというのかな?」

 ジャンヌが真っ赤な顔をして怒鳴る。

「ふざけるな! それは私の服に決まっているだろう、いいから返せ!」

 サラはにくたらしい顔をして、肩をすくめる。

「やれやれ、下等生物の言うことは意味が分からないな」

「サラ、またコイツを食らいたいのか?」

 俺は右手の人差し指と中指で輪を作って、サラの前でグッと力を入れる。
 サラは額を手で隠してうろたえながらも虚勢を張るのだった。

「な! 君たちは暴力で僕の物を奪うつもりなのか?
 それは強盗というんだぞ!
 知らないのか? 君らは原始人なのか?」

「いやいや、お前がその服を盗もうとしているのは明白なんだよ。
 明白過ぎて、逆に指摘をする側が困惑するぐらいだ。
 とにかく、これは最後の警告だ。黙って返すんだ」

「いや――うっ!」

 この期に及んでまだごねるサラに、俺は無言でボディブローを叩きこんだ。
 こちらに倒れ込んできたサラを、ガッチリと脇に抱えこみ、パンツごとズボンをずり下げて尻を丸出しにしてやる。

「きゃぁぁぁぁぁ! やめてぇ!」

 わめくサラに構わず、俺は怒りのこもった音速の尻叩きをお見舞いしてやった。

「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 スパパパパパパパパパァァァァンと景気の良い衝撃音がホールに鳴り響いた。
 サラは小便をもらしながら叫ぶ。

「変態がぁぁぁぁぁ!」

「その通り。
 もういっちょ!
 オラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 白目を向いて伸びてしまったサラを、小便まみれになった床に放り出す。
 サラは床の上で、いつか見せた無様なマングリ返しをまた披露した。
 サラを睨んでいたジャンヌも、さすがに目をそらす。
 しばらくしてヨロヨロと起き上がったサラは叫ぶ。

「このゴミムシ以下の糞野蛮人どもがぁ!」

「とっとと帰れ。まだ食らい足りないのか?」

「ヒィィィ……」

 サラは真っ赤に腫れ上がった尻を丸出しのまま外へ走っていった。


「あいつにはこれぐらいしないとダメだ。悪さをしたら即お仕置きだ」

 ジャンヌはちょっと困った顔をして言う。

「あっ、ありがとう。助かった」

「またやらかすと思うから、ドアには鍵を付けておかないとな」

「さすがにこれで懲りただろう?」

「あいつは懲りないだろうな。残念だけど……」

 自転車を乗り逃げするサラの後ろ姿を見ながら俺は言った。












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