不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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26 夜警

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 ある日の朝。
 ジャンヌとまた剣の稽古をすることになった。
 といっても、普通にやったら全く稽古にならないので、ハンデ付きだ。

「ブラド、始めるぞ!」

「よし、こい!」

 俺は普通の服を着て普通の靴を履いている。俺が非常識な動きをして、それらが破けると俺の負けとなる。左手には短い木刀、右手は使用不可だ。持ち前の超絶スピードを縛られた俺は苦戦することになる。

 ジャンヌは軽快な足さばきでフェイントを交えつつ、あの鋭い突きを見舞ってくる。俺の動体視力と反射神経は縛られていないので、剣の軌道は分かるし一応身をかわすことはできる。しかし、ゆっくり丁寧に動かないと服や靴が破けてしまう。
 スローモーションでチャンバラをやっているような不思議な難しさがあったが、それが俺にとっては良い練習になった。

 なにしろジャンヌの剣術は実践的な泥臭いもので、それこそ縦横無尽にあらゆる手を使って攻撃を加えてくる。俺が不死身なのを知っているので、目やノドなどの急所も平気で狙ってくるのだ。
 俺はジャンヌの身のこなしに感心しながら、ギリギリのスローモーションチャンバラを楽しんでいた。間近でゆっくり観察しているから、ジャンヌがいかに無駄のない動きをしているのかが分かった。

 俺はジャンヌの攻撃をかわしつつ、機会をうかがう。疲れてきたジャンヌの顔に焦りが見えた。ジャンヌにしてはやや無駄の大きい攻撃によって一瞬の隙が出来た。その隙に乗じて、俺は短剣の間合いにグッと踏み込んだ。
 ジャンヌが「しまった!」という顔をする。その瞬間、

ビリィィィ!

「あっ靴が破けた。俺の負けだ」

「ゼイゼイ……、いや靴があと少し丈夫ならブラドが勝ってたと思う」

「ジャンヌもやっぱり騎士なだけあって、動きに無駄がないな」

「くそぉ、ブラドは全然余裕じゃないか」

「いや、ギリギリだぞ。でも、だいぶ体の動かし方が分かった気がする」

「私もまだまだか……」



 その日の夜。

「ブラドは夜中に何をしている?」

「日によって違うが、今日は見回りでもしようかと思ってる。満月だしな」

 魔狼たちの警戒網はなかなか優秀だが、それでも漏れがある。いつのまにやら妖魔が入り込んでいることもなくはないのだ。

「私も同行させてもらえないだろうか?」

「うぅぅん、おススメはできないな。
 俺は夜目が効くから良いけど、ジャンヌはどうするんだ?
 満月とはいえ、建物の陰は暗いぞ」

「私はこれがある」

 ジャンヌは頭に付けるタイプの懐中電灯をとりだした。
 たいていの電池は液漏れしたりして、ダメになっていたが、奇跡的に使えるものが残っていることもある。そんな電池を集めて、こういった道具も使えるようにしてあるのだ。

「なるほど、ヘッドライトか。
 分かった。ちょっと危険だが、ジャンヌなら大丈夫だろう」

「ついて行って良いんだな? よろしく頼む!」

 ジャンヌはいそいそと準備を始めた。よほど戦いが好きなのだろう。
 すぐにワイバーン革の戦闘服に身を包んで出発の準備ができた。

「じゃぁ、俺たちはちょっと見回りに行ってくる。
 遅くなるから先に寝てろよ」

「「「お気を付けて、領主様」」」



 俺とポチとジャンヌは庁舎を出て、徒歩でしずしずと廃屋などを見て回る。

「ごくた~まに、妖魔が入り込んでることがあるんだ。
 たいていはポチが先に気づくから、それほど心配はいらないがな」

「なるほど」

 俺たちはあっちの廃墟からこっちの廃墟へと次々と見て回った。
 市内には小中学校も多い。

「学校の校舎は施錠できない場所があったりして、隠れる場所が多いんだ」

「そうか。
 それにしても、この街にはいったい何人が暮らしていたのだ?
 この巨大な建物が学校ということは、子供だけでも相当数いたことになる」

「詳しくは知らんが、この周辺だけでも数万人くらいだろ」

「それだけの数がそっくりいなくなるとは、いったい何があったのだろうか……」

「俺が聞きたいくらいだよ。
 まぁ、エルフの鉱山ができたり、森ができたりしてるわけだから、
 逆にこちらの世界からどこかへ飛ばされたという可能性もなくはない」

「なるほどな。
 私やホビットたちも、良く分からないままこの世界に来た。
 それでブラドたちに会ったわけだ。なんという運命だろう」

 ジャンヌはフッと笑った。

「あっちに戻りたくはないのか?」

「確かに戻りたい気持ちもある。両親や親戚や友に会いたい。
 しかし騎士になった時点で、ある程度の覚悟はできている」

「ガゥガゥガゥ」

 ポチが何かを見つけたが、俺の超感覚では察知できない。

「何かいるらしいが……」

「なにっ!」

 ジャンヌが慌ててロングソードを抜く。
 しばらく息をひそめていると、近くの植え込みから鹿が数匹飛び出してきた。

「なんだ鹿か……」

「ふぅぅ」

 道理でなんの殺気も感じなかったわけだ。
 ジャンヌはあからさまに残念そうだったが、俺はホッとした。


 俺たちは明け方近くまで街をウロウロしたが、結局何もなかった。

「はぁぁぁ、成果なしか……」

「いやいや、何もない方が良いんだよ。
 じゃあ俺は寝るから、おやすみジャンヌ」

「わふわふ」

「あっ、ああ、おやすみブラド。
 私も寝よう……」








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