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27 日記
しおりを挟むある廃屋の冷蔵庫で、ホビットがそれを見つけたという。
そのノートはジップロックに入れられて、製氷室の奥にあったらしい。
不思議に思って俺に見せに来たということだった。
「確かに、不思議というか不審だな……」
ノートの前半は日記だ。
最初の日付は、俺が眠りに落ちた夜から一週間くらい後のものだ。
○○年4月18日
マスコミ報道なんて嘘ばかりだ。地震の原因についてあれこれ言ってるが、そんなもの聞くだけ無駄だ。だれも本当のことなど公表するはずがないんだから。しかし、地震があったのは事実だし、それが今まで経験したものと違うのも事実だ。
○○年4月19日
この家が無事だったのは運が良かった。町内で古い家は結構倒壊している。亡くなった人も多い。いまだ自衛隊の救助活動が続いているが、何か様子が変だ。救助にしては物々しい恰好をした隊員がいる。
○○年4月21日
最寄りの小学校へ避難するよう勧められたが、今のところは断っている。家は大丈夫だし、不自由はしていない。水や食料の備蓄はまだある。住み慣れた家を離れるのは嫌だし、体育館で雑魚寝などはごめんだ。
○○年4月25日
昨晩遅くに銃声を聞いた気がする。空耳にしてはリアルだった。家の周辺にはもうあまり人がいない。テレビでは的外れなことを言って政権批判をしている。そんなことはどうでもいい。
○○年4月27日
自衛隊の車両があわただしく行き来している。やはり災害の救助活動だけではない感じだ。顔見知りの隊員に話を訊くが、ぼんやりした答えしか返ってこない。心ここにあらずという様子。
・
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○○年5月3日
余震も収まった。うるさかったマスコミのヘリもいなくなった。そろそろ落ち着くかと思ったが、今になって避難命令がでた。明日までに貴重品をまとめて家を出ないといけない。行き先はなぜか隣の県の避難所だ。何から非難するというのか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
瓦礫の下から骸骨がこんにちは、ってことはゼロではなかったが、それでも非常に少なかった。この規模の街で、これだけの状態になってるんだから、あちこちに遺体が転がっていても不思議ではないのに。
妖魔が食ったんじゃないかとぼんやり考えていたんだが、なるほど、自衛隊が片付けていたのなら説明はつくか。片付けが完ぺきじゃないのは、次第にそれどころじゃなくなっていったからだろう。
ノートの後半は、地震の発生原因に関する考察になっている。
テレビ新聞雑誌といったマスコミ情報とネット情報を合わせた上で考えたことが、あれこれと綴られている。もちろん、一般人の書いたものなのでどこまで信じて良いのかは分からない。
曰く、
某大学がフリーエネルギーの研究をしていた。
異世界のエネルギーを一方的に吸い取る、というのが原理。
実用化まであと一歩だったが、某団体の妨害を受け頓挫。
さらに、某国スパイの破壊工作により実験装置が暴走した。
この装置の暴走により、不完全な形で異世界とこの世界がつながった。
それこそが今回の地震の発端である。
根拠となる新聞雑誌記事の切り抜きとか、ネット記事をプリントアウトしたものなどが糊付けされていたが、ちょっとぶっ飛びすぎな気がする。
「ハハハ、SFかよ。
けど、意外と良いところ突いてるのかもな」
この時点ではまだ、異界震という言葉もなかった。異世界がどうとかという発想にたどり着いただけでも、すごいことなのかも知れない。
日記を書いた人は、その後この家に戻ることはなかった。ノートが残されていたんだからそういうことだろう。
避難先で何事もなく余生を過ごしてノートのことなど忘れたのか、それとも帰ってこれない事情ができたのか。
「結局、異界震を経験した当時の人でも良く分からなかったってことか。
自衛隊員には何か知らされていたふうだけど……」
考察にあった某大学の名前は、後の週刊誌記事などでもチラホラ見た覚えがある。
フリーエネルギーの研究にしても、一個人の妄想というわけではなさそうだ。
幸いと言うべきか、ここからその某大学まではそれほど遠くない。
「ちょっと行って確かめてみるか……」
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