不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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51 ナイトライダー

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 クロエは時々ドワーフの鉱山へ一人で出かけていく。ドワーフたちから色々と話を聞きたいのだろう、いつもの分厚いノートを抱えて行くのだった。
 一人ではちょっと心配なので、魔狼を一匹護衛に付けてやっている。体の小さな彼女なら、魔狼の背に乗ることもできるしな。

 朝、魔狼に乗って出かけて行ったクロエだが、夕方には別なものに乗っていた。ストトトトトンという軽いエンジン音を響かせて帰ってきたのだ。

「スーパーカブじゃないか! ドワーフにもらったのか?」

「はい。一台持って行けというので、丈夫そうなこれにしました。
 それで昼間はずっとこれに乗る練習をしてたんです」

 ホンダが誇る大ベストセラーマシン。それもクロエが乗っているのはモナカフレームのちょっと古い型だ。質実剛健というか、ある意味クロエらしい選択だな。

 ドワーフたちは、クロエの執拗な質問攻めに辟易しつつも、その熱心さを認めている。ドワーフは気難しくて偏屈だが、気に入った者には気前が良いのだ。
 ホビットたちも集まってきて興味深げにスーパーカブを観察している。

「ちょっと駐車場内を走って見せてやれ」

「はい」

 クロエはスーパーカブで駐車場内をゆっくりと旋回する。カチャンカチャンというシフトの音が懐かしい。

「「「おぉぉぉぉ!」」」

 それだけでホビットたちからやんやの歓声が起こる。
 自転車のようなエンジン付きの乗り物に皆興味津々なのだった。

「あれは漕がなくても走るんだな」

 ジャンヌも感心している。

「あれもエンジンで動くんだよ。
 ドワーフたちがその辺から拾ってきて、どんどん修理していってる。
 車は村に貸し出してるからな、その代わりのおもちゃだ」

「「「領主様ぁ……」」」

 ホビットたちもバイクが欲しいらしい。

「まいったなぁ」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 後日、ドルフに相談すると、渋々といった感じで引き受けてくれた。

「あのちっこい連中はあれじゃが、お前さんには世話になっておるしのぉ。
 まぁ、あの小さいバイクなら、余った燃料で回せるじゃろ」

 ということで、ホビットたちにもスーパーカブが与えられた。

「「「やったー!」」」

 ホビットたちは大喜びでスーパーカブに群がった。

「ヘルメットを被ること。左側通行を守ること。飛ばし過ぎないこと!」

 本当はいろいろ注意しないといけないことがあるが、いっぺんに言っても覚えられないだろうしな。この領地内ならまぁ大丈夫だろう。

「「「わかりました、領主様!」」」

 器用なホビットたちは、あっという間に乗り方をマスターした。
 スーパーカブがホビットたちの自転車に代わる足となった。リヤカーを引けるようにしたり、前かごを付けたり、ホビットたちによる細かな改造が施されて大事にされているのだった。

「ブラド、私も欲しいのだが……」

「なんだジャンヌも欲しいのか?」

 ジャンヌにはサファイア号もあるし、要らないのかと思っていた。

「サファイア号は大事な相棒だからな。それに彼女は結構老齢なのだ。
 もう、あまり危ない場所には連れて行きたくない」

 確かに矢が飛び交うような場所だと、流れ矢を食らう可能性もあるし、あえて馬を狙ってくるような敵もいるかも知れない。
 こないだの無法者みたいなのもいるし、ゴブリンも矢を使うしな。

「わかった。ジャンヌはどんなのが欲しいんだ?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 十日後、ジャンヌのバイクが出来上がった。

「どうだろうか」

 バイクにまたがるジャンヌは嬉しそうにしている。

「これは……」

 自衛隊で使われていたようなオフロードタイプのバイクだ。全体的に都市迷彩風の塗装が施されている。各所には、ガードやホルダーが取り付けられていて、コンパウンドボウや矢筒を固定できるようになっている。座席は高めだが、足の長いジャンヌにはむしろピッタリだった。

「なかなか様になっていて、カッコイイぞ」

「そっ、そうか? ハハハハハ」

 ジャンヌは満更でもなさそうな顔だ。
 バイクにまたがる騎士か。これぞまさしくってやつだな。
 俺もジャンヌに合わせて笑うのだった。






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