不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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52 トロルの襲撃

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 村民たちの努力によって、俺の領地が元の倍ほどに膨らんだ。
 領地と言ってもほとんどが耕作地であり、それも村に付随するものなので、俺には直接の利益はないが、彼ら自身が自活できればそれだけ俺の負担も減るのだ。

 新しく増えた耕作地はポチ達の縄張りの外になるので、妖魔の撃退も自分たちでしないといけない。彼らは手製の武器を手に、結構命がけの農作業をしている。

「トロルの群だ! 皆、境界線まで引き返せ!」

「「「ひぇぇぇぇ!」」」

 彼らの住まいである元学校の校舎には、ドワーフが作った弩が備え付けてあるし、縄張りの中なら魔狼たちの力を借りることもできる。どうしようもない場合には俺やジャンヌが出張るが、そうなれば完全に片が付く。
 なので、ある程度の知能の高い妖魔たちは、あまり深入りしなくなった。
 知能の低い妖魔たちは、たいていの場合、村人たちで対処できる。ということで俺としては面倒が減って満足なのだが……。

「ブラド、妖魔が減ったのではないか?」

 ジャンヌはソファに身をあずけ、不服そうに呟く。
 彼女は根っからの戦士だ。じっとしているのが苦手なのだった。

「暇なのは結構なことじゃないか」

 俺と剣の稽古を続けたことによって、元々なかなかのものだったジャンヌの剣技は、更に研ぎ澄まされてきている。俺の超高速移動にも目が慣れたのか、時には剣を当てにくるほどだ。動体視力も運動神経も常人を大きく上回り、達人どころかもはや超人の域に達しているのだった。

「それはそうなのだが……」

「ジャンヌ、お前ゴブリンたちに恐れられてるぞ」

「な! ばっ、馬鹿を言え。そんなはずは――」

「あるだろうが。
 こないだも百匹はいたゴブリンを、なで斬りにしてたじゃないか。
 連中だってある程度の知能はあるんだぞ」

「いや、あれは少々興が乗りすぎたと思うところだが……」

 ちょうど良いところに、ポチがガゥガゥ言いながらやって来た。
 ジャンヌがガタっと音を立てて立ち上がる。

「ムム! 今度こそ妖魔だな?」

「そうだな。今回は大物っぽいぞ」

「よし! 準備してくる!」

 ジャンヌは風のように自室へ消えた。
 俺も戦闘服に着替えて準備する。ヤツメウナギを四本まとめて保持するためのホルダーをドルフに作ってもらっていた。今回は大物なのでホルダーごと持っていく。背中には愛用のロングソードだ。
 俺が戻ると、ジャンヌはすでに戦闘態勢が整っていた。

「クロエは……、今日は図書館か。
 仕方がない。守りの魔法はなしだ」

「大丈夫。敵に後れを取ることはない」

「行くぞ!」

「おぅ!」

 最近、ジャンヌは戦闘に行くときには、サイクロン号に乗るようになった。
 サイクロン号とは、こないだドルフに用意してもらったバイクのことだ。大柄な車体もスラっと長身のジャンヌには丁度良く、練習を重ねた結果、自在に操れるようになった。

 サファイア号はもう老齢なこともあり、留守番が増えた。ホビットたちに連れられて家の周りを散歩したり、サラの尻を噛んだりして過ごしている。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺たちが到着すると、村民たちが防衛線を築いている最中だった。大きな置盾を等間隔に設置し、間には土嚢で障壁を作る。素早い妖魔にはあまり意味がないが、弓などの飛び道具を使うゴブリンには有効だ。
 村長が震える指先を村の外へ向ける。

「トロルです! ゴブリンたちがトロルを使役しているようです」

「よし分かった。お前たちは下がっていろ」

 俺たちの実力をもう十分に知っている村民たちが、一斉に後方へ下がった。

「ジャンヌ、トロルは不死身だと聞いたことがあるが、本当なのか?」

「深い傷を負ってもすぐに塞がるのは確かだ。
 しかし、やつらは完全な不死身ではない。
 胴と首を切り離せば死ぬのだ」

 なるほど、ゾンビと一緒か。弱点があるのなら問題ないな。


 そうこうしていると、トロルとゴブリンの集団がやって来た。トロルが四匹。トロル一匹の後ろにゴブリン十匹ほどが身をひそめている。

 トロルはこないだ戦ったオーガと同じくらいの非常に大きな体で、全身の皮膚は薄い緑色をしていた。ボロボロの辛うじて布といえるようなものを体に巻き付け、手には非常に大きな雑な作りの剣をさげている。ゴブリンに使われるくらいだから、頭はトロいんだろうな。分厚く幅の広い鉄の首輪がはめられており、首輪には鎖がつながっている。鎖の端をゴブリンたちが引っ張って、トロルを御している様子だ。

 ジャンヌがコンパウンドボウで迎撃するが、トロルに当たってもダメージはなさそうだ。ゴブリンはトロルを盾にしていて、当てられない。

「くそっ! 矢では埒が明かない」

 ヤツメウナギでトロルを貫いて後ろのゴブリンを片付けるか? しかし、それだとトロルの制御が効かなくなって、村に突っ込まれるかも知れない。

「首を落とすには、あの首輪が邪魔だな」

「うむ。確かに厄介だ」

 俺たちが話していると、トロルの後ろからゴブリンたちが石礫いしつぶてを放って来た。石礫を放つのにスリングショットを使っている。いわゆるパチンコのようなものだが、もう少し作りがゴツい。奴ら、なかなか頭が良いのでは。
 矢は作るのに手間がかかるし本数に限りがあるが、石ならその辺で調達できる。

 一発の石礫がジャンヌの頬をかすめる。

「ぃつっ! くそぉ!」

「俺がトロルの鉄の首輪をぶち割るから、その後で首を落とせ。
 後のゴブリンはどうとでもなるだろう」

「承知した!」

 俺は靴を脱いで、ロングソードを構える。
 次の瞬間、音速のダッシュで一気に距離を詰め、トロルの頭蓋骨ごと首輪を縦に両断した。ゴブリンたちには何が起こったのかすら分かるまい。
 トロルの傷は瞬時に塞がったが、首を守る邪魔な首輪は地面に転がっている。

 そこをすかさずジャンヌが襲う。ロングソードが横に一閃。トロルの首がボトリと地面に落ちた。
 そこでようやくゴブリンたちが異常に気付くが、もう遅い。返す刀でもう一閃。ゴブリンたちの首が宙を舞う。ボタボタボタ……。

 俺は次のトロルの首輪を落とす。続いてジャンヌがトロルの首をね、ついでのようにゴブリンたちの首を刈る。

 さて次かと思ったら、残りのゴブリンたちが転げるように逃げていった。首を引っぱられたトロルものそのそと方向を変えて引き返していく。

「「「おぉぉぉぉ!」」」

 後ろの方で村民たちの歓声が上がる。


「どうだ、ひと暴れして満足したか?」

 ジャンヌは涼しい顔で事もなげに言う。

「今回はまずまずだった」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ジャンヌさん、血が出てます!」

 クロエが慌てて魔法をかけようとするのをジャンヌは手で制する。

「ただのかすり傷だ。心配ない」

「せっかくなんだから魔法かけてもらえよ。
 可愛い顔に傷が残ったらダメじゃないか」

「にゃ! にゃにをいう……」

 ジャンヌは頬を赤くして部屋に消えていった。








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