不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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53 ドラゴンスレイヤー

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「まったく……。何を斬ったらこうなるんじゃ」

 俺が愛用しているロングソードは、ドワーフが作った業物わざものだ。
 それが刃こぼれどころか亀裂まで入って、酷いことになっている。
 剣を点検していたドルフが大きなため息をついて、じろりと俺を見る。

「こいつをぶち割ったんだよ」

 俺はこないだ倒したトロルの首輪を手に、戦闘の顛末てんまつを説明した。

「……ふん、まぁそれなら仕方がないかもしれんが、
 それにしても常識外れの無茶苦茶な使い方じゃわぃ。
 この剣はあくまでも人間用に鍛えたものじゃからの」

「俺用の剣じゃなかったってことか。
 ドワーフと言えども、バンパイア用の剣はさすがに作れないか?」

「何をぬかすか! わしらに作れぬものなどないわぃ!
 鍛冶仕事はわしらの天職なんじゃ、望み通りの剣を打ってやる。
 どんな剣なら満足なんじゃ?」

「ドラゴンでも真っ二つにできるようなのが欲しい」

 ドルフの目がギラリと光った。

「……いいじゃろう。
 打ってやろうとも、ドラゴン殺しをの」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 一カ月後。

「どうだ?」

「もちろん、出来ておるわぃ」

 ドルフはニヤリと不敵な笑顔を浮かべる。
 ドルフが奥に声をかけるとドワーフたちが数人がかりで運んできた。

「こっ、これは剣なのか?」

 新しい武器見たさに付いて来たジャンヌが驚きの声を上げる。

 俺の前にそれがドスンと置かれた。
 それは剣というよりも細長い鉄板だった。確かによく見れば両刃の剣だが、そのあまりの分厚さ大きさに、人が扱える物には見えないのだ。刃の先から柄頭まで俺の身長程もある。ドワーフが作ったにしては、装飾も少なくずいぶんと無骨だ。

「わしらが丹精込めて打ったんじゃ、振れぬとは言わせぬぞ」

 ドルフがギロリと俺を睨む。

「上等だ!」

 俺は念のために靴を脱いで裸足なる。本気で動くと靴に穴が開くからな。
 柄をグイっとつかんで、気合と共に上段に構える。

「ぐぬぅ……、せいっ!」

 重さで足が地面に少し沈んだ。

「「「おぉぉ!」」」

 ドワーフたちがどよめく。

「あんなものを持ち上げただと……」

 ジャンヌも仰天している。

「ふん!」

 一気に剣を振り下ろし、地面すれすれでとどめる。
 ブオンと風が起こり、砂ぼこりがブワッと吹き上がった。
 下手をすると剣の重さで体が前転しそうだ。

「「「おぉぉぉぉ!」」」

 ドワーフたちもジャンヌも歓声を上げた。

「何とぉ! 振りおったぞ!」

 ドルフもまさか俺がこの剣を振れるとは思ってなかったんだろうな。
 俺に一泡吹かせるつもりだったんじゃないか?

「確かに重いが、振れないことはないな。
 でも、これってどうやって持ち運ぶんだよ」

「うむ、それ用の帯剣ベルトは作ってあるんじゃが……」

 それは安全帯のフルハーネスのように縦横に革ベルトが組み合わさった、拘束衣のような何かだった。確かにこれくらいじゃないとこの剣は固定できないだろうが、いちいちこんな物着るのはちょっとな。

「今、これはないと思ったじゃろ?」

「ぁ、ああ、バレたか、ハハハ!」

 俺は乾いた笑いでごまかす。

「わしらも、それはさすがにダメじゃと思って、こうした」

 今度は、鞘自体に肩ベルトが付いたものだった。なんというか、巨大な鞘の形をしたランドセルのようなものだ。

「こうやって剣を背負う感じだな。なるほどこれなら問題ないな」

 拘束衣のような帯剣ベルトよりはだいぶマシだな。

「背負ったままでは剣が抜けんじゃろうから、
 そのたびごとに背から降ろす必要があるがの」

「まぁ、それは今までもそうだったから大丈夫」

「ブ、ブラド、私にもその剣を持たせてくれ」

 武具マニアのジャンヌが我慢できなくなったようだ。

「かまわないけど、滅茶苦茶重いぞ?」

 下手に倒れると危ないので、とりあえず地面に置いた。
 さっそくジャンヌが柄に手をかける。

「ふん! ぬぅぅぅぅぅ……」

 地面から少し浮くが、それ以上は持ち上がらない。
 ジャンヌは真っ赤な顔でプルプル震えていたがダメだった。
 ドスンと床に剣を置いた。

「ぷはぁ、ハァハァハァ……。
 これは、私には無理だ」

 持ち上げられなかったジャンヌは、しょんぼりとうなだれる。

「それは人用ではないからのぉ。振れる方がおかしいんじゃ」

「さすがはドワーフ。まさかこんな物まで作れるとはな。
 コイツでいつかドラゴンを真っ二つにしてやるぜ」

 俺は剣を構えて、言わなくても良いことを宣言する。

「楽しみに待っておるぞ。
 その剣の代金は倒したドラゴンの皮と骨じゃ、ガッハッハ!」

 ドルフたちは大笑いするのだった。





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