不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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54 領外探索

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 俺たちの悪名がゴブリンたちの間で広まったのか、妖魔の組織的な侵攻はほぼなくなった。それにより村民たちの農地拡大が進み、数カ月もすると、郊外の元々農地だった広大な平野までもが俺の支配下に収まった。

 それは良いのだが、魔狼の縄張りと領地の形がちぐはぐになってしまった。このままではせっかくの魔狼の力が活かせない。

 仕方がないので、魔狼の群を五つの村ごとに分けることした。
 魔狼たちの犬舎もそれぞれの村の中に移した。これにより、それぞれの村をそれぞれの魔狼の群がカバーする形になった。
 ポチは俺のもとで遊撃魔狼部隊を率いることになった。基本的には庁舎の周辺をぐるりと警戒している。


 ある時、オギ村の村長をしているハンスが俺に言った。

「問題は村内の人手が圧倒的に不足していることです。
 他の村も同様の問題を抱えております」

 安全で食料も十分なら、そのうち人口も増えていくだろう。とはいえ、赤ん坊が働ける歳まで育つには相応の時間がかかる。今すぐ人手が必要ということなら、他所から持って来るしかないだろうな。

「ハメルンの街に、まだ人が残ってるんじゃないかな」

「確かに、その可能性はありますね……」

 俺はハンスから街のだいたいの位置を聞きだし、街へ行ってみることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ブラド、私も連れて行ってくれ」

 ジャンヌがやはり行きたがるが、今回は留守番をしてもらうことにした。

「出かけている間に領内の警備が手薄になってしまうだろ。
 侵入してくる妖魔は少なくなったが、ゼロではないからな。
 それに、今回はちょっと見てくるだけだから。
 なるべく戦闘はしないつもりだ」

「しっ、しかしだな……」

「俺一人の方が速く動けるというのもあるんだよ。
 不測の事態になったら素早く逃げたいんだ。すまんな」

 ジャンヌは戦闘においては超人級だが、それでも人間なのは確かだ。俺のように常人をはるかに超越した非常識な存在ではないのだ。

「う……。分かった、しかたない」

 ジャンヌがガクッと肩を落とす。

「ブラドさん、守りの魔法をかけます」

「おぅ。でもそれってそもそも、どれくらいもつんだ?」

 せいぜい半日くらいかと思っていたが、違うのだろうか。

「守りの魔法は、数日は効果を発揮します」

「お! そうなのか。ぜひ頼む」


 俺はかなり久しぶりに、単独の小旅行をすることになった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 領内は空き地が目立つが、瓦礫などが完全に撤去されて、以前よりもずっときれいになっている。道路の状態も、元の世界の状況と遜色ないレベルだ。村民たちがかなり頑張ってくれたんだろう。

 しかし、領の外に出ると光景は一変した。
 人工物と自然物が混然一体となった、ちょっとしたジャングルになっていたのだ。草木が道を覆い隠して、どこがどこやら分からない。道に残っている標識などを頼りに現在位置を推測する。なんとなく予想はしていたが、ここまでとは思っていなかった。自然に還る勢いが加速しているようだ。

 ともかく、俺は持って来たマチェットで草木を刈り払い、周りに注意をしながら歩く。ちなみに今回の武器はそのマチェットだけだ。
 ドラゴンスレイヤーもヤツメウナギも携帯性が最悪だし、偵察に持って来るには大げさすぎる。一応、戦闘服は着ているが、なるべく戦闘はしたくない。

 妖魔の気配はそれなりに感じる。こちらの力量が分かるのか、連中の方から襲い掛かってくる感じはない。楽に進めるので助かる。


 タワーマンションを見つけたので登ってみることにした。
 一階ロビーの玄関は意外にもピッタリと閉じ、ガラスのドアにヒビ一つない。ぶち割って中に入ることもできたが、そうはせず、外階段の二階部分から侵入した。
 二階程度なら軽くジャンプするだけで手間もいらないのだ。俺もさすがにDⅠ〇様みたいなことはできないが、これくらいなら簡単なことだ。

 何十階か忘れたが、あっという間に屋上に到着。マンションの周りを見回してみる。俺の領地もここからだと良く見えた。それから、ハンスに聞いていた場所に城塞都市らしきものを発見した。ここから今のペースで一日といったところだな。

「確かにあれは現代の建物じゃない。あれがハメルンの街に違いないな。
 それにしても……、この辺りって、こんなに緑が多かったっけ?」

 元々このマンションの周辺は、郊外の住宅地だったはずだが、今はどこもかしこも見渡す限り緑色だ。もちろん背の高いビルなどは顔を出しているが、それすらも半ばツタなどに覆われてしまっている。遠くに見える大都市だった辺りも、今は緑の海に沈んでいるのだった。

 南米のアステカ文明だったか、マヤ文明だったか、あんな感じになってしまうのだろうか。今さらになって一抹の寂しさを覚えた。



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