不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

文字の大きさ
54 / 59

54 領外探索

しおりを挟む

 俺たちの悪名がゴブリンたちの間で広まったのか、妖魔の組織的な侵攻はほぼなくなった。それにより村民たちの農地拡大が進み、数カ月もすると、郊外の元々農地だった広大な平野までもが俺の支配下に収まった。

 それは良いのだが、魔狼の縄張りと領地の形がちぐはぐになってしまった。このままではせっかくの魔狼の力が活かせない。

 仕方がないので、魔狼の群を五つの村ごとに分けることした。
 魔狼たちの犬舎もそれぞれの村の中に移した。これにより、それぞれの村をそれぞれの魔狼の群がカバーする形になった。
 ポチは俺のもとで遊撃魔狼部隊を率いることになった。基本的には庁舎の周辺をぐるりと警戒している。


 ある時、オギ村の村長をしているハンスが俺に言った。

「問題は村内の人手が圧倒的に不足していることです。
 他の村も同様の問題を抱えております」

 安全で食料も十分なら、そのうち人口も増えていくだろう。とはいえ、赤ん坊が働ける歳まで育つには相応の時間がかかる。今すぐ人手が必要ということなら、他所から持って来るしかないだろうな。

「ハメルンの街に、まだ人が残ってるんじゃないかな」

「確かに、その可能性はありますね……」

 俺はハンスから街のだいたいの位置を聞きだし、街へ行ってみることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ブラド、私も連れて行ってくれ」

 ジャンヌがやはり行きたがるが、今回は留守番をしてもらうことにした。

「出かけている間に領内の警備が手薄になってしまうだろ。
 侵入してくる妖魔は少なくなったが、ゼロではないからな。
 それに、今回はちょっと見てくるだけだから。
 なるべく戦闘はしないつもりだ」

「しっ、しかしだな……」

「俺一人の方が速く動けるというのもあるんだよ。
 不測の事態になったら素早く逃げたいんだ。すまんな」

 ジャンヌは戦闘においては超人級だが、それでも人間なのは確かだ。俺のように常人をはるかに超越した非常識な存在ではないのだ。

「う……。分かった、しかたない」

 ジャンヌがガクッと肩を落とす。

「ブラドさん、守りの魔法をかけます」

「おぅ。でもそれってそもそも、どれくらいもつんだ?」

 せいぜい半日くらいかと思っていたが、違うのだろうか。

「守りの魔法は、数日は効果を発揮します」

「お! そうなのか。ぜひ頼む」


 俺はかなり久しぶりに、単独の小旅行をすることになった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 領内は空き地が目立つが、瓦礫などが完全に撤去されて、以前よりもずっときれいになっている。道路の状態も、元の世界の状況と遜色ないレベルだ。村民たちがかなり頑張ってくれたんだろう。

 しかし、領の外に出ると光景は一変した。
 人工物と自然物が混然一体となった、ちょっとしたジャングルになっていたのだ。草木が道を覆い隠して、どこがどこやら分からない。道に残っている標識などを頼りに現在位置を推測する。なんとなく予想はしていたが、ここまでとは思っていなかった。自然に還る勢いが加速しているようだ。

 ともかく、俺は持って来たマチェットで草木を刈り払い、周りに注意をしながら歩く。ちなみに今回の武器はそのマチェットだけだ。
 ドラゴンスレイヤーもヤツメウナギも携帯性が最悪だし、偵察に持って来るには大げさすぎる。一応、戦闘服は着ているが、なるべく戦闘はしたくない。

 妖魔の気配はそれなりに感じる。こちらの力量が分かるのか、連中の方から襲い掛かってくる感じはない。楽に進めるので助かる。


 タワーマンションを見つけたので登ってみることにした。
 一階ロビーの玄関は意外にもピッタリと閉じ、ガラスのドアにヒビ一つない。ぶち割って中に入ることもできたが、そうはせず、外階段の二階部分から侵入した。
 二階程度なら軽くジャンプするだけで手間もいらないのだ。俺もさすがにDⅠ〇様みたいなことはできないが、これくらいなら簡単なことだ。

 何十階か忘れたが、あっという間に屋上に到着。マンションの周りを見回してみる。俺の領地もここからだと良く見えた。それから、ハンスに聞いていた場所に城塞都市らしきものを発見した。ここから今のペースで一日といったところだな。

「確かにあれは現代の建物じゃない。あれがハメルンの街に違いないな。
 それにしても……、この辺りって、こんなに緑が多かったっけ?」

 元々このマンションの周辺は、郊外の住宅地だったはずだが、今はどこもかしこも見渡す限り緑色だ。もちろん背の高いビルなどは顔を出しているが、それすらも半ばツタなどに覆われてしまっている。遠くに見える大都市だった辺りも、今は緑の海に沈んでいるのだった。

 南米のアステカ文明だったか、マヤ文明だったか、あんな感じになってしまうのだろうか。今さらになって一抹の寂しさを覚えた。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

成り上がりたいのなら勝手にどうぞ。僕は『テリトリー』で使い魔と楽しく過ごす事にします

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 スキルを持っている事が国民として認められるレビューブ皇国では、スキルを持って生まれた者を『シルバー』と呼び、スキルを買って得た者を『ブラック』と呼ぶ。魔獣が蔓延るこの大陸では、シルバーで編成されたスキル隊と、シルバーがマスターとなってギルドを形成する冒険者が、魔獣を駆除していた。  そこには、成り上がる事を目指す者も。  そんな中、ラシルは使い魔と楽しく暮らす事を選ぶ事にするのだが――。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...