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16 本当の力

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...コンコン
なんの音だろう...。ノックだろうか。私は...。
「ナチ?僕だけど...。入るよ?」
ガチャっ。という音とともにえなが部屋に入ってきた。
「ナチ大丈夫?もしかして寝てた?」
寝ていたのだろうか。そのせいでどうも頭の回転が遅い。
「うん。寝てたみたい。なんか、懐かしい夢を見たきがした。」
「そっか。」
えなはそういい、私の隣に座った。
「それで、話って...?」
「うん。魔法具のことなんだけど...。アビスが言ってないことが沢山あるから言っておこうと思って。どうせ時がくれば言わなければならなくなるし。」
えなはそういい、魔法具について語り出した。













そもそも魔法具が何故作られたか。
それは、昔にも今と同じ、つまり人間界と精霊界が繋がり、モンスターが現れたことがあったからなんだ。その時はまだ魔法具もなければ魔術もろくなものがなかった。そんな中あんな化け物達を相手にしていたらしい。当然犠牲者は今回の数百倍に匹敵する数になったさ。そんな絶望に光を指したのがひとりの聖剣士、アリスだったんだ。人々は聖剣士アリスの剣技にとても驚いた。そしてアリスが使っていた剣が普通ではないことを知った。それを知った人間界と精霊界の科学者は、2度とこの悲劇を繰り返さないようにと魔法具を作った。魔法具に意思を宿し、汚れた心をもっていないもの、蓄積魔力量が高いもの、自分を使いこなせるものを見極めさせ、魔法具の主を探すようにもした。更に今持っているナチの魔法具は完全な姿ではない。魔法具はあまりに強力故に、科学者達が本来の姿を封印したのだ。その封印を解けるものは真に魔法具と通じたもののみ。ナチの剣の場合、まずはその剣に属性である火をまとわせることができなければならない。それが魔法具本来の力。そして魔法具が存在する意味なのだ。魔法具は強力すぎるため、1人につき1つの魔法具しか使えないようになっている。本来は、ね。例外もあるかもしれないが、それはもう精神力と意志の問題だ。それと1つとっても重要なこと。それは、ひとつの魔法具につき、ある特殊能力がひとつ持ち主につくこと。例えば透視能力とか相手の心を読み取るとか少しだけ未来がみえるとか。これは練習しなくても案外簡単に使えてしまうんだ。自分の魔法具がもつ能力さえ分かればね。ただ、特殊能力といっても人間が魔法に近いものを使うには相当な体力が必要になる。だから特殊能力発動後には数秒間のタイムラグができてしまう。それが能力の弱点。だからあまり使うことはおすすめしないね。















「と、まぁ。こんな感じで魔法具はちょっと面倒な武器なんだけど。」
えなが話した魔法具の秘密は人間の私には理解し難いことばかりだった。剣が本来の姿になるとか、火を宿すとか...。でもなぜこのタイミングでそれを私に伝えたのだろうか。
「なぜそれを今私に?言うならアビスがいた時でも良かったんじゃない?」
「...そうだね。でもこれは僕とナチ以外の魔法具使いが現れた時に話そうと思ってたんだ。」
「どういうこと?」
「さっき話した通り、魔法具はとてもやっかいな武器だ。人間が簡単に持ってちゃいけないもの。ナチだって例外じゃない。だからあの子をなんとなしないと。」
あの子とはきっとななせさんのことだろう。でも何とかしないとと言われても何をどうするつもりなのか。
「なんとかって、具体的になにをするの?」
「そうだなぁ。流石に魔法具を手放せなんて言えないし...。」
結局えなも何も考えていなかったようで困ってしまった。やれやれ。これだから私のパートナーの思考力は頼りがいがない。
「まあ、とりあえず監視しようか。何かわかるかもしれない。」
当て無しの適当な選択だ。しかしこれしか無さそうだ。
「やれやれ、仕方ないな。わかったよ。」
他に方法もないようなので、仕方なく賛成したが、先々が心配だ。
「さてと。明日のことも決まったことだし、そろそろ寝ようかな」
えなはそういい、ふぁぁ...。と大きなあくびをしてから私の部屋を出ていった。私も大きく背伸びをし、時計らしきものを見た。精霊界の時刻なのではっきりとは分からないが、恐らく午後11時を回った頃だろう。流石にこの時間にもなると急激に睡魔が襲ってくる。私はその睡魔に抗うべく自分の愛剣を手に取った。どこをどう見ても普通の剣。炎などでるようには見えない。それにこの魔法具に宿されている能力とは何なのだろう...。
えなの話のことを思いながら剣をまじまじと見つめていたが、そろそろ本当に眠い。明日はななせさんの監視があるのでもう寝た方が良さそうだ。そう思い私は剣を壁に立てかけてベットへと潜り込んだ。
今日は知らないことだらけでとても疲れていたのか、すぐに意識が遠のいていった。
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