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17 矢の主

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チュンチュン…
...鳥の鳴き声が聞こえる...。
今は...何時だろ...?
とても眠い。今日はなにをするんだっけ...。

そこまで考えて私は体をがばっと起こした。
まずい、まずいまずい。完全に寝すぎた!
いまの時刻は午前11時頃。普通なら3、4時間目前に起きてとっくに荒野を歩いてる時間だ。しかも今日はななせさんの監視をする予定なのに、きっともうどこかへいってしまっただろう。とにかく相当まずい時間に起きてしまったことは変わりない。ベットから急いででて、顔を洗い、身だしなみを整え、大急ぎでえなの部屋へ向かった。






「い、いやぁ~。も、申し訳ない。」
あれからえなを叩き起してご飯も食べずに宿をでた。起こしても起こしても起きなかったので最終的には寸止めで剣を振りかざしてやった。本当のとこなら髪の毛の一束や二束は切り落としてやりたいものだが、あいにく私も寝坊をしたのでそこは大目に見てやった。
「で、なんでえなは寝坊したわけ?私が起こしに行かなかったらいつまで寝てるつもりだったの?」
私がニッコリとした顔でえなを凝視すると、えなはぶるっと体を震わせた。
「昨日は遅かったし、ね。その、眠かったというか...ごめん。」
えなはしゅんっとした顔をして私に謝った。その時頭にあるアホ毛もしなっていたのですこし面白かった。
「まあ、今日は私も悪かったからいいけど。これからどうするの?」
しゅんとした顔から戻り、えなは曖昧な答えを言った。
「そうだなぁ。とりあえず次の街か村に行こうかなぁ。そしたらななせさんに会えたりするかもだし…?」
私に肯定して欲しそうな顔でこちらをみているえなにとりあえず呆れた顔をかえして言った。
「それしかなさそうだね。仕方ない。行こうか。」
えなの言っていることは事実。起こってしまったことはどうしようもないので、とりあえず結界の入り口から町を出て、次の街か村に行くことにした。

「にしてもこの道やけに広いね?」
私は今歩いている道を見て、そう言った。広いと感じるだけかもしれないが、なにかやけにきになる。
「たしかに。こういう場所ではモンスターに気おつけとかないとね。」
えなも道が広いと思ったようで、警戒を促す。広い場所では隅々まで気配を察知することは難しい。いつも以上に集中しておこう。そう思った時
「ナチ、あれはモンスターの群れだよ!少なくとも30はいる!」
警戒心を強めた矢先、大量のモンスターが目の前に現れた。しかしそいつらは私達に気づいていないようだ。それもそのはず
「やばいよ!人が囲まれてる!」
見るとモンスターが集まっている中心に旅をしていた人が数人いる。剣ほどの装備はしているようで、なんとか持ちこたえているが、いつまでもつかは定かではない。
「えな、行くよ!」
私はそう叫び、モンスター目掛けて走り出した。モンスターまであと10m、5m...
もう少しという時に、1人の旅人目掛けてモンスターの武器が振り下ろされそうになっている。このままでは間に合わない!諦めかけたその時...
シュンっ...という音が聞こえた気がした。モンスターを見ると、先程武器を振るおうとしていたもの、その周りの2体ほどに矢が刺さっている。そのままそのモンスターたちは倒れ、黒い霧へと変わり消滅した。しばらくその光景に見入ってしまっていたが、我に返り矢の持ち主を探した。すると20mほど離れた場所にある大きな木の枝に人影が見えた。しかしいまはそれが誰かを調べる余裕などない。残りのモンスターを一刻も早く始末しなくてはならない。私は走り出すと同時に剣を抜き、モンスターへ刃を振り下ろした。下級モンスターばかりだったので。一撃で倒れ、仲間の倒れた音を聞いたモンスター達が一気に攻めてきた。剣のひと振りでそのモンスターの胴を真っ二つに切り、残りはえなが倒した。流石にいきなりの戦闘は心の準備がない分少々緊張する。これが下級モンスターだったので良かったものの、もし上級モンスターやボスが相手となっていたら確実にやられている。まだまだ修行不足のようだ。
「助かりました。ありがとうございます騎士様。」
旅の人達は私とえなにお礼を言ってからどこかへ消えてしまった。またモンスターに襲われなければいいのだが。
「ふぅ。旅の人達が無事でよかったね、ナチ。」
えなは剣を鞘に収めながらそう言った。正直見ず知らずの人を命をかけてまで守ってやる義理なんてないのだが、目の前で死なれては色々と困る。だから私はやむを得なく助けているだけである。
なんてえなに言えるわけもなく、
「うん。間に合ってよかった。」
とだけの返事を返した。
そういえばモンスター騒動で忘れていたが、あの木の上にいた人は一体誰だったのだろう?そう思い、先程矢が飛んできた方向へ目を向けると、そこにはもう人影はなかったように見えた。どこかへ行ってしまったのだろうと思い、目を離したその瞬間、
「ナチ!危ない!」
えなの叫び声と共に耳に届いた音は先程の矢が飛んできた時と同じ音。慌てて振り向くとそこには自分の背中目掛けて飛んでくる矢が3本。刺されば色々と後先のことが面倒になる。そう思い自分の愛剣を目にも留まらぬ速さで鞘から引き抜き、矢を一撃で撃ち落とした。剣に斬られた矢は力強さを失くし、地面へと落ちた。一体誰がこんなことを...。
「なるほど。あなたが聖剣士というのはどうやら本当らしい。」
突然聞こえてきた声から発せられたものは想像を絶するものだった。それもそのはず、その声の主は紛れもない、ななせさんだったからだ。
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