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それぞれの婚約
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私たち『お話の学び舎』ソサエティーの識字グループのメンバーは、ワード子爵家のお茶会に招かれました。
主催はガルシア嬢。
「ハロウィンのイベント成功を祝して、打ち上げパーティを開かない。ワード家のコックはスイーツが得意なのよ。お茶会に招待するから識字グループ全員で来てね」
そう言われて、みんなでガルシアのお家に遊びに来ています。
ガルシアは、小説のネタを探しているだけだとおもいますけれどもね。
それでもスイーツの誘惑に抗える女子は少ないと思いますよ。
「さぁ、順番にハロウィンの様子を教えてよ。お菓子はたっぷり用意しているでしょう」
確かにガルシア嬢の言う通りです。
テーブルの上には、ケーキやパイ。ジュレにプリン。サンドウィッチやフルーツなどが、沢山並んでいます。
しかも全部食べたいという乙女心をよく承知しているらしくて、どれも一口サイズなんです。
テーブルにならんだ、可愛らしいスイーツを目の前にしてガルシアに逆らえる猛者はいません。
「じゃぁ私からね」
とディが口火をきりました。
「私とエンジェルは、お話妖精に扮したのよ。私が薄いブルー、エンジェルが白いドレスを纏って小さな羽と花冠、そして鐘を鳴らして歩いたの。黙ってね。なのに後ろからぞろぞろ子供たちがついてくるから、語り部のブースはすぐにいっぱいになったわ」
「それはきっと、あなたが本物の妖精よりも、お美しかったからに違いありませんね」
いきなりそんな声をかけてきたのは、銀髪に鳶色の瞳という幾分色素の薄い紳士でした。
「お兄さま! いきなり紹介もなしにレディに声をかけるなんて! 私に恥をかかせたいの? ごめんなさいねディ。そいつは私の兄のディマよ。ごめんなさい。普段は女性から逃げ回ることはあっても、自分から声をかけたりしない真面目な男なのよ」
ガルシアが慌てて兄を注意しましたが、慌てるガルシアを気にもとめないで、ディマはディを見つめています。
「お美しいお嬢様。よろしければ庭園を案内しましょう。子爵家とはいえ庭師が熱心でね。珍し花を御覧にいれますよ」
そういうなりさっさとディを攫っていってしまいました。
「語り部のブースのお話は、私がするわ。あの分じゃディはきっと開放されないでしょうから」
エンジェルが悟りきった顔をしていますが、私もそう思います。
ディマの目は、私を発見した時のセディと全く同じ目をしていましたもの。
「まぁ、ではもう決まりですのね。残ったのは私だけですわ」
メラニーがすっかりしょんぼりしてしまいました。
そうですよね。
友達が次々と婚約者を見つけているのに、自分だけ残ってしまっては辛いでしょうね。
お茶会はいつのまにか、しょんぼりしたものになってしまいました。
そこに空気を読まないガルシアが元気よくメラニーに声をかけます。
「メラニー、なに焦ってるのよ。私だって婚約者なんていないんですからね。でも全然平気よ。結婚だけが人生じゃないのよ」
それはガルシアはそうでしょうね。
全員がそう突っ込んでいることも気に掛けないガルシアのおかげで、いつの間にかお茶会はいつもの愉快なお喋りに戻ってしまいました。
概ね『お話の学び舎』ソサエティーのハロウィンイベントは大成功だったみたいです。
それよりも『癒しの手』ソサエティーのジェシカ嬢はどうだったのでしょうか?
そのあたりの情報収集にかけてもガルシアは優秀でした。
どうやら『癒しの手』ソサエティーでは、子供病院を立ち上げようとしているようです。
入院中の子供たちの為に、可愛い猫や犬を連れてお見舞いに行ったんですって。
確かにアニマルセラピーは効果がありますものね。
その様子を逐一おかかえ記者に取材させていたということで、あっと言う間に癒しの手』ソサエティーの評判が王都中に広まりました。
おかげで『癒しの手』ソサエティーの子供病院建設に、たくさん寄付が集まったようです。
ジェシカ嬢って本当に優秀ですよね。
それなのになんで私なんかを目の敵にするのかしらね。
全く訳がわかりません。
ひとわたりハロウィンの話が終われば、あとはお決まりの恋バナになるのですが、なにしろメラニーがどっぷりと落ち込んでいるので、そんな話をするわけにもいかず私たちは早々に解散してしまいました。
それにしてもメラニーのお相手、誰かいませんかねぇ。
メラニーは貴族にしては元気すぎるというか、はっきりと言い過ぎるところがあって、貴族子息の受けがよくないんです。
大方の貴族の跡取りたちは、堅実に家を守るような大人しめのご夫人を好む傾向があるんです。
好みが保守的なんですよ。
メラニーの天性の明るさや元気の良さって、素晴らしい資質だとおもうんですけれどもねぇ。
あれ?
誰かいましたよ。
明るくて元気なこ。
そうだ!
ナオです。
メラニーはナオに似ているんですよ。
私は帰りに、少しセディの仕事場に寄り道しました。
仕事場と言ってもセディの場合、魔術塔の最上階をぜんぶ自分の私室にしていますから、他の方に迷惑をかけませんしね。
私が尋ねるとセディは大喜びで、私を迎えてくれました。
「ロッテが仕事場に来てくれるなんて、初めてだね。どうかしたの? 困りごと?」
「いいえ、『お話の学び舎』ソサエティーの打ち上げパーティを、ワード子爵家で行ってくれたのです。今はその帰りに、ちょっとセディの顔を見たくなって寄り道したんですよ」
セディはわかりやすく顔をほころばせました。
「お茶会の帰りなら、お腹は空いていないね。お茶もたっぷり飲んだろうしね。コーヒーでも入れようか。カムイスペシャルがあるんだ」
「ありがとう。セディ」
コーヒーならいつでも大歓迎です。
私もセディもコーヒー中毒かもしれません。
コーヒーのアロマって、どうしてこういやされるんでしょうねぇ。
私が目を細めてコーヒーを堪能しているのを見て、セディもゆったりと自分のコーヒーを堪能します。
いつの間にか、私たちはこうして何も言わない時間を楽しめるような関係になっていました。
「ねぇセディ。アンバー公子は今どうしていらしゃるかしら?」
「あぁ、あいつなら最近領地から戻ってきているよ。あと半年でリリーの結婚だからね。公子がいつまでも領地にいつ訳にはいかないだろう。しかし妹が結婚するというのに、アンバーにはお相手の影すらない。マクギネス公爵も頭が痛いよな」
「まぁセディ。ちょうどよかったわ。相談ってそのことなのよ」
私はメラリーを熱心にセディに売り込みました。
「なるほどね。アンバーが初めて興味をしめしたのはナオだったからね。彼女に似ているっていうなら可能性はあるかな? よしそのメラニーを家の昼食会に呼びなよ。私はアンバーを呼んでおくからね。けどアンバーは知っての通り変わり者だ。上手く行かなくても恨まないでね」
「もちろんよ。セディ。チャンスを貰えるだけでいいのよ。とにかく早くメラニーに婚約者を見つけないと、私たちなんだかぎくしゃくしちゃうのよねぇ」
思わず本音を漏らしたロッテを優しく抱きしめたセディは、家までロッテを送っていってくれました。
メラニーはロッテの家の昼食会には、ほとんど期待を寄せていませんでした。
なにしろクレメンタイン公爵家の子息は、ひとりは結婚し、もうひとりはロッテの婚約者です。
およそ時間の無駄としか思えない昼食会に参加したのは、ひとえにロッテへの友情のためです。
まぁ少しはクレメンタイン公爵と友誼を持ちたいとは思いましたが……。
「メラニーって面白い子なんだねぇ。どうして僕らは出会わなかったんだろう?」
「いいんじゃない。こうして出会えたんだし。そっちの方が大事だと思うわよ」
「そりゃそうだ。ねぇメラニー。こんなところはさっさと退散しないか? 僕としてはリリーの結婚式の前に、結婚しておきたいんだ」
「それってアンバー公子。私と結婚したいって意味なの?」
「当然じゃないか。まさかメラニー。僕とは結婚したくないの?」
「いいえ、いいえ。勿論OK よ!」
アンバー公子のプロポーズも少しも貴族らしくないものでしたが、それでもメラニーが公爵夫人になれるなら大出世です。
めでたし。めでたしですね。
これで『お話の学び舎』ソサエティーも平和になるでしょう。
「なんだか嵐みたいな奴らだなぁ。あれじゃマクギネス公爵夫妻の頭痛はとうぶん続きそうだけどな」
セディが少し前までは自分がクレメンタイン公爵夫妻の頭痛の種だったことを棚に上げてそんなことを言っています。
「それでもあるべきものが、あるべき場所に納まるのはいいことだわ。ロビンもナオと上手くいっているみたいじゃない?」
「あぁ、最近はナオも落ち着いてきたようだしね。結婚式は領地で挙げるって言っていたよ。ロビン程の男ならいくらでも結婚相手に事欠かないというのに、なんでよりにもよってナオなんだ。理解に苦しむよまったく」
「そうやって反対する人が多いから、ロビンも王都で結婚式を挙げられないんじゃないの。でも太陽がまた王都に降臨する訳かぁ。なんだか面倒ごとの予感がするわね」
「ほらごらん。ロッテだって、ナオを信じちゃいないんだろう。しかも今度はプレシュス辺境伯夫人としてやって来るんだよ。ロビンは天才だが女の見る目がなさすぎる。プレシュス辺境伯家は、この国に打ち込まれた楔みたいなもんだ。下手すりゃ王家が滅ぶぞ」
「まさかセディ。いくらなんでもそれは考えすぎっていうものよ」
ロッテはそう言いながらも、何だか騒動の予感に怯えるのでした。
主催はガルシア嬢。
「ハロウィンのイベント成功を祝して、打ち上げパーティを開かない。ワード家のコックはスイーツが得意なのよ。お茶会に招待するから識字グループ全員で来てね」
そう言われて、みんなでガルシアのお家に遊びに来ています。
ガルシアは、小説のネタを探しているだけだとおもいますけれどもね。
それでもスイーツの誘惑に抗える女子は少ないと思いますよ。
「さぁ、順番にハロウィンの様子を教えてよ。お菓子はたっぷり用意しているでしょう」
確かにガルシア嬢の言う通りです。
テーブルの上には、ケーキやパイ。ジュレにプリン。サンドウィッチやフルーツなどが、沢山並んでいます。
しかも全部食べたいという乙女心をよく承知しているらしくて、どれも一口サイズなんです。
テーブルにならんだ、可愛らしいスイーツを目の前にしてガルシアに逆らえる猛者はいません。
「じゃぁ私からね」
とディが口火をきりました。
「私とエンジェルは、お話妖精に扮したのよ。私が薄いブルー、エンジェルが白いドレスを纏って小さな羽と花冠、そして鐘を鳴らして歩いたの。黙ってね。なのに後ろからぞろぞろ子供たちがついてくるから、語り部のブースはすぐにいっぱいになったわ」
「それはきっと、あなたが本物の妖精よりも、お美しかったからに違いありませんね」
いきなりそんな声をかけてきたのは、銀髪に鳶色の瞳という幾分色素の薄い紳士でした。
「お兄さま! いきなり紹介もなしにレディに声をかけるなんて! 私に恥をかかせたいの? ごめんなさいねディ。そいつは私の兄のディマよ。ごめんなさい。普段は女性から逃げ回ることはあっても、自分から声をかけたりしない真面目な男なのよ」
ガルシアが慌てて兄を注意しましたが、慌てるガルシアを気にもとめないで、ディマはディを見つめています。
「お美しいお嬢様。よろしければ庭園を案内しましょう。子爵家とはいえ庭師が熱心でね。珍し花を御覧にいれますよ」
そういうなりさっさとディを攫っていってしまいました。
「語り部のブースのお話は、私がするわ。あの分じゃディはきっと開放されないでしょうから」
エンジェルが悟りきった顔をしていますが、私もそう思います。
ディマの目は、私を発見した時のセディと全く同じ目をしていましたもの。
「まぁ、ではもう決まりですのね。残ったのは私だけですわ」
メラニーがすっかりしょんぼりしてしまいました。
そうですよね。
友達が次々と婚約者を見つけているのに、自分だけ残ってしまっては辛いでしょうね。
お茶会はいつのまにか、しょんぼりしたものになってしまいました。
そこに空気を読まないガルシアが元気よくメラニーに声をかけます。
「メラニー、なに焦ってるのよ。私だって婚約者なんていないんですからね。でも全然平気よ。結婚だけが人生じゃないのよ」
それはガルシアはそうでしょうね。
全員がそう突っ込んでいることも気に掛けないガルシアのおかげで、いつの間にかお茶会はいつもの愉快なお喋りに戻ってしまいました。
概ね『お話の学び舎』ソサエティーのハロウィンイベントは大成功だったみたいです。
それよりも『癒しの手』ソサエティーのジェシカ嬢はどうだったのでしょうか?
そのあたりの情報収集にかけてもガルシアは優秀でした。
どうやら『癒しの手』ソサエティーでは、子供病院を立ち上げようとしているようです。
入院中の子供たちの為に、可愛い猫や犬を連れてお見舞いに行ったんですって。
確かにアニマルセラピーは効果がありますものね。
その様子を逐一おかかえ記者に取材させていたということで、あっと言う間に癒しの手』ソサエティーの評判が王都中に広まりました。
おかげで『癒しの手』ソサエティーの子供病院建設に、たくさん寄付が集まったようです。
ジェシカ嬢って本当に優秀ですよね。
それなのになんで私なんかを目の敵にするのかしらね。
全く訳がわかりません。
ひとわたりハロウィンの話が終われば、あとはお決まりの恋バナになるのですが、なにしろメラニーがどっぷりと落ち込んでいるので、そんな話をするわけにもいかず私たちは早々に解散してしまいました。
それにしてもメラニーのお相手、誰かいませんかねぇ。
メラニーは貴族にしては元気すぎるというか、はっきりと言い過ぎるところがあって、貴族子息の受けがよくないんです。
大方の貴族の跡取りたちは、堅実に家を守るような大人しめのご夫人を好む傾向があるんです。
好みが保守的なんですよ。
メラニーの天性の明るさや元気の良さって、素晴らしい資質だとおもうんですけれどもねぇ。
あれ?
誰かいましたよ。
明るくて元気なこ。
そうだ!
ナオです。
メラニーはナオに似ているんですよ。
私は帰りに、少しセディの仕事場に寄り道しました。
仕事場と言ってもセディの場合、魔術塔の最上階をぜんぶ自分の私室にしていますから、他の方に迷惑をかけませんしね。
私が尋ねるとセディは大喜びで、私を迎えてくれました。
「ロッテが仕事場に来てくれるなんて、初めてだね。どうかしたの? 困りごと?」
「いいえ、『お話の学び舎』ソサエティーの打ち上げパーティを、ワード子爵家で行ってくれたのです。今はその帰りに、ちょっとセディの顔を見たくなって寄り道したんですよ」
セディはわかりやすく顔をほころばせました。
「お茶会の帰りなら、お腹は空いていないね。お茶もたっぷり飲んだろうしね。コーヒーでも入れようか。カムイスペシャルがあるんだ」
「ありがとう。セディ」
コーヒーならいつでも大歓迎です。
私もセディもコーヒー中毒かもしれません。
コーヒーのアロマって、どうしてこういやされるんでしょうねぇ。
私が目を細めてコーヒーを堪能しているのを見て、セディもゆったりと自分のコーヒーを堪能します。
いつの間にか、私たちはこうして何も言わない時間を楽しめるような関係になっていました。
「ねぇセディ。アンバー公子は今どうしていらしゃるかしら?」
「あぁ、あいつなら最近領地から戻ってきているよ。あと半年でリリーの結婚だからね。公子がいつまでも領地にいつ訳にはいかないだろう。しかし妹が結婚するというのに、アンバーにはお相手の影すらない。マクギネス公爵も頭が痛いよな」
「まぁセディ。ちょうどよかったわ。相談ってそのことなのよ」
私はメラリーを熱心にセディに売り込みました。
「なるほどね。アンバーが初めて興味をしめしたのはナオだったからね。彼女に似ているっていうなら可能性はあるかな? よしそのメラニーを家の昼食会に呼びなよ。私はアンバーを呼んでおくからね。けどアンバーは知っての通り変わり者だ。上手く行かなくても恨まないでね」
「もちろんよ。セディ。チャンスを貰えるだけでいいのよ。とにかく早くメラニーに婚約者を見つけないと、私たちなんだかぎくしゃくしちゃうのよねぇ」
思わず本音を漏らしたロッテを優しく抱きしめたセディは、家までロッテを送っていってくれました。
メラニーはロッテの家の昼食会には、ほとんど期待を寄せていませんでした。
なにしろクレメンタイン公爵家の子息は、ひとりは結婚し、もうひとりはロッテの婚約者です。
およそ時間の無駄としか思えない昼食会に参加したのは、ひとえにロッテへの友情のためです。
まぁ少しはクレメンタイン公爵と友誼を持ちたいとは思いましたが……。
「メラニーって面白い子なんだねぇ。どうして僕らは出会わなかったんだろう?」
「いいんじゃない。こうして出会えたんだし。そっちの方が大事だと思うわよ」
「そりゃそうだ。ねぇメラニー。こんなところはさっさと退散しないか? 僕としてはリリーの結婚式の前に、結婚しておきたいんだ」
「それってアンバー公子。私と結婚したいって意味なの?」
「当然じゃないか。まさかメラニー。僕とは結婚したくないの?」
「いいえ、いいえ。勿論OK よ!」
アンバー公子のプロポーズも少しも貴族らしくないものでしたが、それでもメラニーが公爵夫人になれるなら大出世です。
めでたし。めでたしですね。
これで『お話の学び舎』ソサエティーも平和になるでしょう。
「なんだか嵐みたいな奴らだなぁ。あれじゃマクギネス公爵夫妻の頭痛はとうぶん続きそうだけどな」
セディが少し前までは自分がクレメンタイン公爵夫妻の頭痛の種だったことを棚に上げてそんなことを言っています。
「それでもあるべきものが、あるべき場所に納まるのはいいことだわ。ロビンもナオと上手くいっているみたいじゃない?」
「あぁ、最近はナオも落ち着いてきたようだしね。結婚式は領地で挙げるって言っていたよ。ロビン程の男ならいくらでも結婚相手に事欠かないというのに、なんでよりにもよってナオなんだ。理解に苦しむよまったく」
「そうやって反対する人が多いから、ロビンも王都で結婚式を挙げられないんじゃないの。でも太陽がまた王都に降臨する訳かぁ。なんだか面倒ごとの予感がするわね」
「ほらごらん。ロッテだって、ナオを信じちゃいないんだろう。しかも今度はプレシュス辺境伯夫人としてやって来るんだよ。ロビンは天才だが女の見る目がなさすぎる。プレシュス辺境伯家は、この国に打ち込まれた楔みたいなもんだ。下手すりゃ王家が滅ぶぞ」
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