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学園とピンクのうさぎ
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朝からドキドキして落ち着かない。
学校生活は久しぶりだし、貴族社会の子供たちとどんな話をしていいかもわからないし、昨日のテスト結果も教えて貰ってないし……。
「姫さま、お食事が進みませんか?」
「メリーベル、なんかすごく緊張して食事が喉を通らないの」
「いったいどうしたんだよ。正式なレセプションだって、見事な猫かぶりを披露していたじゃないか?」
横合いからセンが口を挟んでくる。
失礼な奴め!ほら、さっそくメリーベルに叱られてる。
「それでは姫さま、こちらのジュースだけでもお召し上がりください。」
メリーベルはセンを無視してジュースを、渡してくれた。
「おいしい」
王国の果物よりも皇国の果物は、味がギュッと濃縮されている感じがする。好みの問題だけど、どちらもおいしい。
私は朝食はフルーツとお茶だけで十分なんだけど、そうするとセンがそれっぽっちじゃ大きくなれないと、うるさいんだよね。
学校は苦手。
特に女子の、トイレも一緒にいくとか、お揃いの物を身に着けるとか、そういうのがよくわからない。
私の学校生活は、「だってナナちゃんだから」という良く判らない理由によってなんとかクリアできた。
不思議ちゃん認定されていたんじゃないかと、今では思っている。
けれど今は、一応王女だからね。
不思議ちゃん認定される王女なんて、如何なものでしょうか?
「姫さま、お迎えのイスト先生がいらしてますが」
「こちらへお通ししてください。」
おひげがとても見事な長身の先生です。
「今日から姫さまと、セントレア君は第3学年に転入することになりました。担任は引き続き、私が担当いたします。よろしいですかな?」
セントレアって言うのは、センがゴードンさん家に養子に入る時、センだけではあんまりだろうって、付けられた名前なの。
「それじゃ、私もセンと同級生になるのですね?」
「姫さまは、かなり学業が進んでおいでのようですので、1学年と2学年はスキップして頂くことになりました。」
王様の側仕えをしている時、きっと無意識のうちに、多くのことを学んでたのが今回は役にたったみたい。
それにしても初回だけとはいえ、わざわざ先生が迎えにきてくれるなんて、王族ってすごい!
それでもドナドナ気分で、先生の後をついていくと、センが
「心配すんな。困ったら助けてやるから」
って小さく耳元で呟いた。
びっくりして、ちょっと顔が赤くなってしまったけど、あんなにドキドキしていたのが、急に落ち着いて楽に呼吸できるようになった。
学園は皇宮を模しているだけあって、とても荘厳で贅沢なつくりだ。
田舎から出てきた子どもなら、それだけで委縮するかもしれない威圧感がある。
1階は受付と事務室、そしていわゆる購買部門がある。
忘れ物したら、この1階でほとんど購入できる。
2階は1年と2年のクラスと、担当教師の方々のお部屋。
3階が3年と4年。4階が5年と6年の生徒の教室になる。
各階ごとにティールームや食事室が完備しているし、教室の後ろには、それぞれホテルのシングルルームのような個室が用意されている。
まずは先生が入室して、続いて私とセンが入る。
先生が紹介してくださってから、
「レティシア・ウィンディアです。よろしくお願いします。」
「セントレア・バルトです。よろしくお願いします」
そう言って教室を見回してみると、興味津々の26の瞳が迎えてくれた。
このクラスは私たちをいれて、全部で15人になる。
そのうち要注意なのが、皇族のひとりであるアラムだ。
彼は皇帝の甥にあたり王子の称号を持っている。
皇国では皇帝の子どもは皇子、皇帝の兄妹の子どもは王子の称号を与えられる。
王国では王の兄弟の子どもは、プリンス・プリンス。
王子の子供という称号があたえられているのと、同じことだ。
プレスベル皇国の動きは、きな臭いなんてレベルではない。
王国と争っても、帝国に漁夫の利を与えることは知っているはずなのに、しきりに王国にちょっかいをかけてくる。
アラム王子は位階でいえば、プリンセスの称号を持つ私よりも下、けれどひとりだけ私より上の位階をもつ人がいる。
セーラ第1皇女、王国に遊学してきたあの皇子の姉姫だ。
位階でいえば同等とはいえ、養女と実子の立場の違いは大きい。
注意するのは、この2人だろう。
この2人がいるから、私たちをこの学年に編入させたんだろうしね。
授業は午前・午後それぞれ2時間行われる。
2時間の授業がすむと、お昼休憩が3時間。そして午後の授業が2時間という時間割りになってます。
お昼休憩が長いのは、この国にはお昼寝の習慣があるからで、暑い昼間は仕事や勉強に向かないという理由からですね。
お昼休憩は、自宅に帰ってもよいし、個室でお昼寝してもいい。
そのために個室が準備されている訳だしね。
最初のお昼休憩に、真っ先にやってきたのは、セーラ皇女。
「レティシアさま、お昼、よろしければ私の部屋にいらっしゃらない?5階に私室がありますの。」
さすがは皇女殿下、学園に私室を持ってました。
そこへアラム王子が、口をだします。
「セーラ、レティシアさまの私室も用意されてるだろう、先にご案内した方がいいよ。初日で疲れているかもしれないだろ。僕はセントレア君を案内するよ」
「セントレア君、我々男性の私室は6階なんだ、案内するからついてきたまえ」
「センにも部屋を用意して下さったんですの?」
だってセンは従者なので私はびっくりしました。
「当然だろう、ウィンディア王国の大事なお客さまだからね」
そういうとセンを促して出ていきました。
王族というのは、どこでも押しが強いんですかね。
私やセンは、皇国にとっては霊獣という扱いなんでしょうね。
そうなると私としてもセーラさまと、同行するしかない訳です
「ごめんなさい、私レティシアさまと仲良くしたくて、気が利きませんでしたわ。お部屋にご案内させてくださいませ。」
「ありがとうどざいます。セーラさま、どうぞレティとお呼び下さい」
「ありがとうレティ、私もセーラと呼んでね」
女の子らしくウフフ、キャキャキャと話ながら私たちは5階を目指します。
でも絶対わざと私室の事には触れませんでしたね、セーラさま。
自室に連れ込む気満々でしたもの。
やはり侮れないなぁと考えていると
「こちらのお部屋です。部屋付きの侍女がおりますから、何でもおっしゃってね。食事だけでもご一緒致しましょうよ」
「喜んで伺いますわ。セーラ。ではいったん部屋で休みますから、食事の支度が出来たらお呼びくださいませ」
ふぅ、お嬢様ブリッコは疲れます。
部屋は皇宮の私室と全く同じ作りなので、自分の部屋と同じように違和感なくつかえます。
侍女に、簡単に着替えさせてもらうと、準備が整ったのを見計らったかにようにお迎えがきました。
皇女殿下とのランチとなると、着替えが必要になります。
ちゃんと侍女が服を用意して待ち構えていましたからね。
完全に手の平の上ですね。
皇女殿下の私室は、なんといったらよいか、とても乙女チックなお部屋でした。
私はナチュラルティストの部屋が好みなので、皇女殿下の私室は、すこし色彩が多すぎるような気がします。
そう考えると、皇国に来てから与えられて部屋は、私の趣味にぴったりでした。
少しぞくりとしてしまいます。
まるでストーカーにあったような気分がしますが、これもおもてなしなんですよね。
食事室に案内されると、アラム王子とセンがいました。
「やっときたか、セーラといいレティシアといい、女というのは着替えが遅くてかなわない」
「お洒落してきたのに、憎まれ口を叩くものじゃありませんわ。レティ、とてもお似合いよ」
「セーラさまも、お可愛らしくて素敵ですわ」
もう間違いない、セーラさまはロリータ趣味だ。
基本ピンク一色だ。
それに部屋に大きなピンクのうさぎのぬいぐるみが……。
あれ?ぬいぐるみが動いてますけど。
えっ、こっちにやってきますよ。
この学園では、ぬいぐるみが動くんですか?
「やぁ金色さん、初めましてだよね。前の金糸雀とは、喧嘩ばかりしてたんだ。今度はこんなに可愛らしいお嬢さんで、うれしいなぁ。君に逢いたくてずっと皇帝をせっついてたのさ」
犯人が自白しやがりましたよ。
皇国の不可思議な行動の原因は、ピンクのうさぎの霊獣のせいだったんですね。
霊獣は、基本我が儘で、人間の事情などそんたくしませんから、皇国も必死だったんでしょう。
それにしても、「うちのピンクのうさぎが、金色のカナリアに会いたがってるから、ちょっと来てくれませんかね。」なんて正直に言えませんよね。
だからわずか10歳の皇子を人質に出してまで、私を追い込んだんですね。
理由がわかったら、脱力してしまいました。
どうしてくれましょうかね、このうさぎ。
学校生活は久しぶりだし、貴族社会の子供たちとどんな話をしていいかもわからないし、昨日のテスト結果も教えて貰ってないし……。
「姫さま、お食事が進みませんか?」
「メリーベル、なんかすごく緊張して食事が喉を通らないの」
「いったいどうしたんだよ。正式なレセプションだって、見事な猫かぶりを披露していたじゃないか?」
横合いからセンが口を挟んでくる。
失礼な奴め!ほら、さっそくメリーベルに叱られてる。
「それでは姫さま、こちらのジュースだけでもお召し上がりください。」
メリーベルはセンを無視してジュースを、渡してくれた。
「おいしい」
王国の果物よりも皇国の果物は、味がギュッと濃縮されている感じがする。好みの問題だけど、どちらもおいしい。
私は朝食はフルーツとお茶だけで十分なんだけど、そうするとセンがそれっぽっちじゃ大きくなれないと、うるさいんだよね。
学校は苦手。
特に女子の、トイレも一緒にいくとか、お揃いの物を身に着けるとか、そういうのがよくわからない。
私の学校生活は、「だってナナちゃんだから」という良く判らない理由によってなんとかクリアできた。
不思議ちゃん認定されていたんじゃないかと、今では思っている。
けれど今は、一応王女だからね。
不思議ちゃん認定される王女なんて、如何なものでしょうか?
「姫さま、お迎えのイスト先生がいらしてますが」
「こちらへお通ししてください。」
おひげがとても見事な長身の先生です。
「今日から姫さまと、セントレア君は第3学年に転入することになりました。担任は引き続き、私が担当いたします。よろしいですかな?」
セントレアって言うのは、センがゴードンさん家に養子に入る時、センだけではあんまりだろうって、付けられた名前なの。
「それじゃ、私もセンと同級生になるのですね?」
「姫さまは、かなり学業が進んでおいでのようですので、1学年と2学年はスキップして頂くことになりました。」
王様の側仕えをしている時、きっと無意識のうちに、多くのことを学んでたのが今回は役にたったみたい。
それにしても初回だけとはいえ、わざわざ先生が迎えにきてくれるなんて、王族ってすごい!
それでもドナドナ気分で、先生の後をついていくと、センが
「心配すんな。困ったら助けてやるから」
って小さく耳元で呟いた。
びっくりして、ちょっと顔が赤くなってしまったけど、あんなにドキドキしていたのが、急に落ち着いて楽に呼吸できるようになった。
学園は皇宮を模しているだけあって、とても荘厳で贅沢なつくりだ。
田舎から出てきた子どもなら、それだけで委縮するかもしれない威圧感がある。
1階は受付と事務室、そしていわゆる購買部門がある。
忘れ物したら、この1階でほとんど購入できる。
2階は1年と2年のクラスと、担当教師の方々のお部屋。
3階が3年と4年。4階が5年と6年の生徒の教室になる。
各階ごとにティールームや食事室が完備しているし、教室の後ろには、それぞれホテルのシングルルームのような個室が用意されている。
まずは先生が入室して、続いて私とセンが入る。
先生が紹介してくださってから、
「レティシア・ウィンディアです。よろしくお願いします。」
「セントレア・バルトです。よろしくお願いします」
そう言って教室を見回してみると、興味津々の26の瞳が迎えてくれた。
このクラスは私たちをいれて、全部で15人になる。
そのうち要注意なのが、皇族のひとりであるアラムだ。
彼は皇帝の甥にあたり王子の称号を持っている。
皇国では皇帝の子どもは皇子、皇帝の兄妹の子どもは王子の称号を与えられる。
王国では王の兄弟の子どもは、プリンス・プリンス。
王子の子供という称号があたえられているのと、同じことだ。
プレスベル皇国の動きは、きな臭いなんてレベルではない。
王国と争っても、帝国に漁夫の利を与えることは知っているはずなのに、しきりに王国にちょっかいをかけてくる。
アラム王子は位階でいえば、プリンセスの称号を持つ私よりも下、けれどひとりだけ私より上の位階をもつ人がいる。
セーラ第1皇女、王国に遊学してきたあの皇子の姉姫だ。
位階でいえば同等とはいえ、養女と実子の立場の違いは大きい。
注意するのは、この2人だろう。
この2人がいるから、私たちをこの学年に編入させたんだろうしね。
授業は午前・午後それぞれ2時間行われる。
2時間の授業がすむと、お昼休憩が3時間。そして午後の授業が2時間という時間割りになってます。
お昼休憩が長いのは、この国にはお昼寝の習慣があるからで、暑い昼間は仕事や勉強に向かないという理由からですね。
お昼休憩は、自宅に帰ってもよいし、個室でお昼寝してもいい。
そのために個室が準備されている訳だしね。
最初のお昼休憩に、真っ先にやってきたのは、セーラ皇女。
「レティシアさま、お昼、よろしければ私の部屋にいらっしゃらない?5階に私室がありますの。」
さすがは皇女殿下、学園に私室を持ってました。
そこへアラム王子が、口をだします。
「セーラ、レティシアさまの私室も用意されてるだろう、先にご案内した方がいいよ。初日で疲れているかもしれないだろ。僕はセントレア君を案内するよ」
「セントレア君、我々男性の私室は6階なんだ、案内するからついてきたまえ」
「センにも部屋を用意して下さったんですの?」
だってセンは従者なので私はびっくりしました。
「当然だろう、ウィンディア王国の大事なお客さまだからね」
そういうとセンを促して出ていきました。
王族というのは、どこでも押しが強いんですかね。
私やセンは、皇国にとっては霊獣という扱いなんでしょうね。
そうなると私としてもセーラさまと、同行するしかない訳です
「ごめんなさい、私レティシアさまと仲良くしたくて、気が利きませんでしたわ。お部屋にご案内させてくださいませ。」
「ありがとうどざいます。セーラさま、どうぞレティとお呼び下さい」
「ありがとうレティ、私もセーラと呼んでね」
女の子らしくウフフ、キャキャキャと話ながら私たちは5階を目指します。
でも絶対わざと私室の事には触れませんでしたね、セーラさま。
自室に連れ込む気満々でしたもの。
やはり侮れないなぁと考えていると
「こちらのお部屋です。部屋付きの侍女がおりますから、何でもおっしゃってね。食事だけでもご一緒致しましょうよ」
「喜んで伺いますわ。セーラ。ではいったん部屋で休みますから、食事の支度が出来たらお呼びくださいませ」
ふぅ、お嬢様ブリッコは疲れます。
部屋は皇宮の私室と全く同じ作りなので、自分の部屋と同じように違和感なくつかえます。
侍女に、簡単に着替えさせてもらうと、準備が整ったのを見計らったかにようにお迎えがきました。
皇女殿下とのランチとなると、着替えが必要になります。
ちゃんと侍女が服を用意して待ち構えていましたからね。
完全に手の平の上ですね。
皇女殿下の私室は、なんといったらよいか、とても乙女チックなお部屋でした。
私はナチュラルティストの部屋が好みなので、皇女殿下の私室は、すこし色彩が多すぎるような気がします。
そう考えると、皇国に来てから与えられて部屋は、私の趣味にぴったりでした。
少しぞくりとしてしまいます。
まるでストーカーにあったような気分がしますが、これもおもてなしなんですよね。
食事室に案内されると、アラム王子とセンがいました。
「やっときたか、セーラといいレティシアといい、女というのは着替えが遅くてかなわない」
「お洒落してきたのに、憎まれ口を叩くものじゃありませんわ。レティ、とてもお似合いよ」
「セーラさまも、お可愛らしくて素敵ですわ」
もう間違いない、セーラさまはロリータ趣味だ。
基本ピンク一色だ。
それに部屋に大きなピンクのうさぎのぬいぐるみが……。
あれ?ぬいぐるみが動いてますけど。
えっ、こっちにやってきますよ。
この学園では、ぬいぐるみが動くんですか?
「やぁ金色さん、初めましてだよね。前の金糸雀とは、喧嘩ばかりしてたんだ。今度はこんなに可愛らしいお嬢さんで、うれしいなぁ。君に逢いたくてずっと皇帝をせっついてたのさ」
犯人が自白しやがりましたよ。
皇国の不可思議な行動の原因は、ピンクのうさぎの霊獣のせいだったんですね。
霊獣は、基本我が儘で、人間の事情などそんたくしませんから、皇国も必死だったんでしょう。
それにしても、「うちのピンクのうさぎが、金色のカナリアに会いたがってるから、ちょっと来てくれませんかね。」なんて正直に言えませんよね。
だからわずか10歳の皇子を人質に出してまで、私を追い込んだんですね。
理由がわかったら、脱力してしまいました。
どうしてくれましょうかね、このうさぎ。
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