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草原に煌く夢
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世界和平会議開催を翌日に控え、プレスペル皇国、ウィンディ王国、そして砂漠の民の軍勢の天幕が、広大なゴルトレス帝国の草原地帯に煌びやかな花々のように散らばっている。
対するゴルトレス帝国も、軍勢を草原に集めているのは、全ての国の軍勢は帝都に入らないとの約束を果たすためである。
現在帝都は要人を守るための近衛と治安部隊が中心に街を守っている状態なのだ。
なんだか世界中から軍隊が平原に集まったみたいだけれども、さすがにそんなことはなく、国元を守るための軍は、どこの国だって残している。
どこまでいっても結局今は、戦国時代なので、鬼の居ぬ間に王都や皇都を奪おうとする国があってもおかしくはないからだ。
すでに要人たちは、帝国の城内に入っていて、明日の和平会議に向けて最後の準備をしているはずなのですが……。
お父様もレイも、私に久しぶりに会えたのが嬉しいらしく、砂漠の国でどんな風に過ごしていたかを、とても聞きたがっている。
明日の準備は万端で、あとはのんびりするだけなのでしょう。
いつも思いますが、お父様もレイもオンとオフの切り替えがとても上手です。緊張と弛緩が上手いんです。
私は砂漠の国で見た、美しい大河や、恐ろしい迷宮のことを、話して聞かせました。
私では迷宮を超えられないので、ノリスの次元倉庫に私のお家があることや、その家が失礼なことに鳥かごに似ていると話したところで、保護者様たちに冷気がやどり、ノリスを呼びに行かせました。
ノリスは砂漠の長と打ち合わせの最中だったはずなんですが、なぜだかセンと一緒にやってきました。
最近この2人よくつるんでいますね。お互い婚約者を持つ者同士話が合うのかもしれません。
ノリスはやってくる早々、保護者さまたちのブリザードに気づき固まっています。
「ノリス、私の娘が移動に使うという家をここに出しなさい。」
お父様が厳しい声で命じますと、一瞬だけ抗おうという姿勢を見せたノリスが、しぶしぶ家を部屋にだしてみせました。
「家が見たいんだ、悪いけど家具だのタペストリーだの、特に家をかこっている覆いは全て倉庫に収納してくれ。嫌なら私がするが。」
レイもとっても冷たい声でいいました。
そしてにっこりと私の方を見ると
「ナナ、今回もこのお家でここまで来たのかな?」
と、たずねました。
なんだか答えてはいけない気がしましたが、しぶしぶ
「はい、外に出る時はそのお家で移動します。」と答えました。
センがなんだかブルブルしながら
「ノリス兄貴さすがだぜ。男のロマンだ。しかしホントにやるとは半端ねぇ」と呟いています。
ノリスによって装飾が全て取り払われた家は、金色の鳥かごでした。いつもなんか似ているなぁとは思っていたのですが、砂漠の民がつかう天幕みたいに、沢山の布で覆われていたので、わからなかったのです。
金色の鳥かごには、見事な装飾が施され、止まり木に模したブランコも揺れています。なんで部屋にブランコがあるのか不思議でしたが、鳥かごなら止まり木がいりますものね。
すでにノリスは絶望的な顔色になっていましたが、お父様とレイによって、引っ立てられていきました。ちなみに鳥かごはレイの倉庫に強制収容されてしまいました。
「レイったら、お家がないと砂漠の国には帰れなくなっちゃうのに、どうしたのかしら?」
と、わたしが言うとセンは
「多分、もう二度どあれを見ることはないと思うぜ。っていうかしばらくノリスは出入り禁止だろうなぁ。ナナもこれが終わればウィンディア王国に帰るんだしな。」
そっかぁ、ノリスと結婚するのはあと3年後ですものね。実はあの第1回世界霊獣会議の日が、私の13歳の誕生日でした。霊獣さまたちから、加護を付与したプレゼンとを貰って、とてもハッピーなお誕生日だったんです。
「そーいえば、センから貰った髪飾りってどんな加護があるの?」
「あー、ちゃんとつけてるな。いつも付けとけよ。それは警報機だ。ナナがもしも動けなくなるようなことがおきたら、その髪飾りが霊獣に助けを呼ぶ。霊獣以外には聞こえねぇから、外されたり、壊されたりすることもないはずだ。」
「まぁ、どーせ真っ先に駆けつけるのはノリスの兄貴だと思うけどな。」
「センってノリスのこと兄貴って呼ぶようになったね。なんで?」
「そりゃ、まぁいろいろとね。オレ一人っ子だったから、兄貴が欲しかったんだ。ノリスはいい奴だぜ。」
どうもノリスとセンが組むとろくなことにならないような気がするのは、何故でしょうか。いちどセーラとゆっくり話せるといいのですがねぇ。
「セーラとセンはいつ結婚するの?」何気なく聞いただけなのにセンは真っ赤になって
「オレはすぐにも結婚したいんだけど、プレスペル皇国では男は18歳まで結婚出来ないんだって。オレ今16歳だから、あと2年だな。その2年間オレ、公爵領で統治の勉強するんだ、セーラにも会えなくなる。」
「そっかぁ、お互いまだまだこれからだねぇ。早く大人になりたいなぁ」
「そーだなぁ、オレやっぱりアイオロス王みたいな、あんなカッコイイ男になりたいなぁ。いつもはダレてるけど、決める時は決めるもんな。」
「そーだね。じゃあ私の目標はお母様かなぁ。あのお父様が頭が上がらないんだよ。普段はとても上品でおしとやかなのに、いざとなったらとても強いの。」
そーして2人して大きなため息をつくと、
「お互い目標には遠いねぇ~。」
と、言いました。
でも目標は大きいほうが、がんばれるからね。
明日はいよいよ、そのカッコイイ大人たちが、いい仕事をしてくれるはずです。
「ねぇ、セン。このお城で一番高くて、そして外が見える場所に連れていって。」
「いいけど、どーしたんだ?」
「無性に祈りを込めてフルートが吹きたいの。」
その夜、塔の上から地上に向けて、私はフルートを奏でました。今この場にきているすべての人の安穏と、そして明日の成功を祈りながら……。
フルートから流れ落ちる金色の粒子は、風にのって遠く遠くへと流れていきます。
その夜、人々は、美しい夢をみました。
誰もがお互いに、手をつなぎ、その人々の輪が果てしない宇宙にまで、届く夢でした。
対するゴルトレス帝国も、軍勢を草原に集めているのは、全ての国の軍勢は帝都に入らないとの約束を果たすためである。
現在帝都は要人を守るための近衛と治安部隊が中心に街を守っている状態なのだ。
なんだか世界中から軍隊が平原に集まったみたいだけれども、さすがにそんなことはなく、国元を守るための軍は、どこの国だって残している。
どこまでいっても結局今は、戦国時代なので、鬼の居ぬ間に王都や皇都を奪おうとする国があってもおかしくはないからだ。
すでに要人たちは、帝国の城内に入っていて、明日の和平会議に向けて最後の準備をしているはずなのですが……。
お父様もレイも、私に久しぶりに会えたのが嬉しいらしく、砂漠の国でどんな風に過ごしていたかを、とても聞きたがっている。
明日の準備は万端で、あとはのんびりするだけなのでしょう。
いつも思いますが、お父様もレイもオンとオフの切り替えがとても上手です。緊張と弛緩が上手いんです。
私は砂漠の国で見た、美しい大河や、恐ろしい迷宮のことを、話して聞かせました。
私では迷宮を超えられないので、ノリスの次元倉庫に私のお家があることや、その家が失礼なことに鳥かごに似ていると話したところで、保護者様たちに冷気がやどり、ノリスを呼びに行かせました。
ノリスは砂漠の長と打ち合わせの最中だったはずなんですが、なぜだかセンと一緒にやってきました。
最近この2人よくつるんでいますね。お互い婚約者を持つ者同士話が合うのかもしれません。
ノリスはやってくる早々、保護者さまたちのブリザードに気づき固まっています。
「ノリス、私の娘が移動に使うという家をここに出しなさい。」
お父様が厳しい声で命じますと、一瞬だけ抗おうという姿勢を見せたノリスが、しぶしぶ家を部屋にだしてみせました。
「家が見たいんだ、悪いけど家具だのタペストリーだの、特に家をかこっている覆いは全て倉庫に収納してくれ。嫌なら私がするが。」
レイもとっても冷たい声でいいました。
そしてにっこりと私の方を見ると
「ナナ、今回もこのお家でここまで来たのかな?」
と、たずねました。
なんだか答えてはいけない気がしましたが、しぶしぶ
「はい、外に出る時はそのお家で移動します。」と答えました。
センがなんだかブルブルしながら
「ノリス兄貴さすがだぜ。男のロマンだ。しかしホントにやるとは半端ねぇ」と呟いています。
ノリスによって装飾が全て取り払われた家は、金色の鳥かごでした。いつもなんか似ているなぁとは思っていたのですが、砂漠の民がつかう天幕みたいに、沢山の布で覆われていたので、わからなかったのです。
金色の鳥かごには、見事な装飾が施され、止まり木に模したブランコも揺れています。なんで部屋にブランコがあるのか不思議でしたが、鳥かごなら止まり木がいりますものね。
すでにノリスは絶望的な顔色になっていましたが、お父様とレイによって、引っ立てられていきました。ちなみに鳥かごはレイの倉庫に強制収容されてしまいました。
「レイったら、お家がないと砂漠の国には帰れなくなっちゃうのに、どうしたのかしら?」
と、わたしが言うとセンは
「多分、もう二度どあれを見ることはないと思うぜ。っていうかしばらくノリスは出入り禁止だろうなぁ。ナナもこれが終わればウィンディア王国に帰るんだしな。」
そっかぁ、ノリスと結婚するのはあと3年後ですものね。実はあの第1回世界霊獣会議の日が、私の13歳の誕生日でした。霊獣さまたちから、加護を付与したプレゼンとを貰って、とてもハッピーなお誕生日だったんです。
「そーいえば、センから貰った髪飾りってどんな加護があるの?」
「あー、ちゃんとつけてるな。いつも付けとけよ。それは警報機だ。ナナがもしも動けなくなるようなことがおきたら、その髪飾りが霊獣に助けを呼ぶ。霊獣以外には聞こえねぇから、外されたり、壊されたりすることもないはずだ。」
「まぁ、どーせ真っ先に駆けつけるのはノリスの兄貴だと思うけどな。」
「センってノリスのこと兄貴って呼ぶようになったね。なんで?」
「そりゃ、まぁいろいろとね。オレ一人っ子だったから、兄貴が欲しかったんだ。ノリスはいい奴だぜ。」
どうもノリスとセンが組むとろくなことにならないような気がするのは、何故でしょうか。いちどセーラとゆっくり話せるといいのですがねぇ。
「セーラとセンはいつ結婚するの?」何気なく聞いただけなのにセンは真っ赤になって
「オレはすぐにも結婚したいんだけど、プレスペル皇国では男は18歳まで結婚出来ないんだって。オレ今16歳だから、あと2年だな。その2年間オレ、公爵領で統治の勉強するんだ、セーラにも会えなくなる。」
「そっかぁ、お互いまだまだこれからだねぇ。早く大人になりたいなぁ」
「そーだなぁ、オレやっぱりアイオロス王みたいな、あんなカッコイイ男になりたいなぁ。いつもはダレてるけど、決める時は決めるもんな。」
「そーだね。じゃあ私の目標はお母様かなぁ。あのお父様が頭が上がらないんだよ。普段はとても上品でおしとやかなのに、いざとなったらとても強いの。」
そーして2人して大きなため息をつくと、
「お互い目標には遠いねぇ~。」
と、言いました。
でも目標は大きいほうが、がんばれるからね。
明日はいよいよ、そのカッコイイ大人たちが、いい仕事をしてくれるはずです。
「ねぇ、セン。このお城で一番高くて、そして外が見える場所に連れていって。」
「いいけど、どーしたんだ?」
「無性に祈りを込めてフルートが吹きたいの。」
その夜、塔の上から地上に向けて、私はフルートを奏でました。今この場にきているすべての人の安穏と、そして明日の成功を祈りながら……。
フルートから流れ落ちる金色の粒子は、風にのって遠く遠くへと流れていきます。
その夜、人々は、美しい夢をみました。
誰もがお互いに、手をつなぎ、その人々の輪が果てしない宇宙にまで、届く夢でした。
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