6 / 38
ライブラリーカフェ
重苦しい空気を打ち破ったのはロッテでした。
「お兄さま。王立図書館の幽霊の間って、クレメンタイン公爵家が買い上げたんですよね? あそこでカフエができませんかね。 家賃タダだし、水回りも完備しているし、業務用に改造しても改造費は安いでしょ。コーヒーなら匂いにつられて6階まで人がくるかも?」
ナオはその提案に心が躍りました。
王都みたいな街は家賃が高いことで知られています。
いくらセディの援助があるからと言って、高い家賃を払ってカフェをやればとても宰相閣下が期待するような利益なんて出せるとは思えません。
ナオはメイド喫茶で働いていましたから、店長が家賃や人件費で四苦八苦していたのを見て知っていたのです。
「それ面白いんじゃないか? 私はあんまり本を読む方じゃないけど、カフェで本読んだり勉強しているやつけっこういたよ」
ナオは嬉しそうにロッテの提案に賛成しましたが、ロッテの仲間たちは図書館とカフェという組み合わせに納得がいかないようです。
喫茶店というのは、人通りの多い街中にあって、歩き疲れた人が休息に使うものだと思っているようでした
それなら一度王立図書館の幽霊の間を見てから考えようと、ナオと仲間たちはひとまずクレメンタイン公爵家が所有しているという幽霊の間を見に行くことにします。
図書館へいく途中で役所によって、戸籍の申請をすれば一石二鳥ではありませんか。
「おい、役所はここみたいだぞ」
「ふぇー。立派な建物だなぁ」
「入り口に兵士がたっているけど、大丈夫なのか」
「大丈夫だって。こっちには宰相閣下が認めて下さった仮戸籍があるんだからな」
「ちょっと。みんなが見てるじゃない。恥ずかしいから黙って!」
たかが役所への届け出。
しかも、提出するだけの書類を用意してもらっているというのに、カムイたち一行はドギマギ、ギクシャクと役所に入っていきました。
警備兵に止められなかったのは、メイドさんたちに着せられた新しい服がかなり上等だったからでしょう。
役所に入ってきょろきょろしていると、グレーのプリンセスラインのワンピースを着た女性がにこやかに声をかけてきました。
「お手伝いいたしましょうか?」
「はい、助かります。私たち戸籍の届け出にきたんです」
ナオがほっとした顔で、仮戸籍を取り出して見せましたが、その印章をみるなり女性の顔はみるみるうちにこわばってしまいました。
「大変失礼いたしました。ご案内いたします。どうぞこちらに」
ナオ達は役所の2階にある豪奢な応接室に通され、ほとんど待つことなく偉そうな男の人が飛び込んできました。
「ご連絡を頂ければ、私共の方から係の者を派遣いたしましたのに、わざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。私はこの役所の責任者を致しておりますトビィ・アンドリュー・グプタでございます」
ナオたちはあっけにとられてしまいました。
家名持ちってことは、貴族かさもなければナイトの位階を持っている人に違いありません。
それがナオたちみたいな平民どころか戸籍も持たないような子供たちに頭を下げるんですから。
けれどもすぐにカムイは、これは自分達ではなくクレメンタイン公爵家の威光だと気がつきました。
「いいんです。さきほど宰相閣下から馬車を出すと言われたのですが、僕たちは町を歩いてみたかったしそのついでにこちらに寄ったのですから」
「おぉ。宰相閣下直々にこちらの書類を渡されたのですか。それはそれは。戸籍の登録場所がクレメンタイン公爵家の離宮となっておりますが、皆さま方は公爵家とはそのう……」
どうやらお役人はナオたちと公爵家の関係を知りたいようです。
もしかしてこの子たちは、公爵の隠し子なのでしょうか?
それともここにいる女性が、公爵家の誰かの愛人ってことだって考えられます。
わからないのは、なんで5人もそろって離宮に住まわせることにしたのかということです。
ともかくもこの書類にはクレメンタイン公爵家の認証がありますし、しかも住まいもクレメンタイン公爵家の離宮なのですから、丁寧に扱っておくにかぎります。
「あぁ、ここにいるナオがもう1人の異界渡りの姫君なんだ。この姫君は少し変わり者でね。市井で暮らしたいと希望されたので、僕らが側近として選ばれたんですよ」
「なんと! 異界渡りの姫君がもう一方おいでとは!」
役人の目はキラリと光ました。
うまくナオを取り込もうとでも思ったのでしょうか。
「あぁ、言っとくけどナオさまは既にプレシュス辺境伯が正式に猶子とされています。クレメンタイン公爵家も非公式ながら後ろ盾を表明しているから、これ以上の庇護は必要ないわよ」
シリルがそんな役人の願望をすぐさま打ち消してしまいました。
こうしてナオたちは役所で、下へもおかぬもてなしを受けたので愉快でたまりません。
王立図書館に入った時には、とっくに役所から連絡が入っていて、ナオ達はビップ待遇で図書館内や幽霊の間を案内されることになってしまいました。
そんなナオの姿は、成り上がろうとする人々にとってはまたとない獲物でしたから、図書館の中では既になんとかナオに取り入ろうとする人々が集まっていたのです。
これが貴族ならば平民から声をかけることなんて出来ませんし、貴族と知り合いたければ御大層な紹介状を手に入れる必要があります。
なのにナオはそんな人々の欲望の前に、哀しい程無防備な姿をさらしていますし、ナオを守る若者たちは貴族社会や上流社会の恐ろしさをまったくわかっていないのです。
ロッテやクレメンタイン公爵家が憂慮した事態は、すでにその口を開けていたのでした。
しかもナオが持つ、クレメンタイン公爵家にざまぁしてやろうというような、幼い稚気がナオの意思に反して大きなうねりになっていくことになります。
そんなこととは知らないナオたちは幽霊の間の設備に歓声を上げていました。
「うわぁー。凄い。業務用のオーブンが標準装備なんて信じられないわ」
「うん、水回りは完璧だね。これならすぐにでもカフェがはじめられるぞ」
「でも、少し狭くない?」
「あぁ、それならオープンカフェ方式にするといいのよ。どうせ図書館の中なんだもの。天候にも左右されないしね」
「オープンカフェって何よ!」
「お部屋の外に、テーブルや椅子を出して、そこにもお客様に座ってもらうのよ」
「おい、そんなことしていいのかよ」
「大丈夫よ。オープンカフェってお洒落なんだからね」
わいわい、がやがやと騒いでいるといつの間にかそんなナオたちの周りには人だかりができています。
「異界渡りの姫君がもう1人現れたんですってよ」
「その姫君がこちらでカフェを開かれるんですって」
「ナオさまとおっしゃるそうよ。気さくに平民ともお話なさるんですって」
「まぁ、ナオさま。私、カフェができたら常連になりますわ」
「あら、抜け駆けするなんてずるいわ。ナオさま、私こそ絶対にカフェを応援いたしますわ」
そんな応援の声を聞いて、ナオ達はもう上機嫌です。
これならきっと喫茶店は上手くいくでしょう。
大いに儲けて、あの偉そうな宰相閣下をぎゃふんといわせてやろうじゃありませんか。
ナオ達は、もうすっかり喫茶店が大成功する未来しか見えなくなっていました。
若いナオ達は知らなかったのです。
良く知らない相手に、真っ先に親切そうにすり寄ってくる人こそ、最も危険な相手であるということを。
ナオ達が上機嫌でクレメンタイン公爵家に帰宅すると、ロッテが吉報を聞かせてくれました。
図書館でカフェを開く許可を取るために、セディが図書館の本を守る術式を掛ければいいのではないか?というのです。
確かに図書館で火器を使うのですから、それぐらいのことをしないと王立図書館でのカフェの認可はおりないでしょう。
宰相閣下がセディさえ図書館防御の術式を展開することに同意すれば、カフェ設立の認可は取ってくれると言って下さったそうです。
それを聞いたナオたち5人は揃ってセディを見つめました。
「わかった。わかった! 降参だと。防御の術式ぐらいいくらだって作ってやるさ」
とたんにドッとナオ達が歓声をあげました。
「さすが。セディ」
「セディ、ありがとう」
「いよ! セディは男だね」
「セディは頼りになると思ってたわ」
「セディ、恩に着るぜ」
セディはナオたちにお礼を言われて照れています。
「いいから、いいから。兄貴には私から頼んでおくよ。明日は模様替えの為に業者にいかなきゃなぁ。今夜は自分達でカフェに必要なものを書き出しておけよ」
そう言ってセディはこの場から逃げ出してしまいました。
残ったロッテの側には美しい少女と凛々しい貴公子がいます。
それに気づいてナオが質問しました。
「あんたたち、誰?」
「ごめんなさい、自己紹介が遅れたわね。私はリリー、こちらが兄のアンバーよ。二人ともロッテの友達なの。なんだか楽しそうなことをしているわね。私たちもてつだうわ。」
そのリリーの言葉にかぶせるようにアンバーも言いました。
「図書館でカフェなんて、凄いアイデアじゃないか! 僕にも手伝わせてくれ。アンバーだ」
「ナオよ」
「アリスです」
「カムイだ」
「シリル」
「ソルだ」
彼等はあっという間に友達になると、家でカフェのことをもっと相談しようぜ!とぞろぞろと図書館を出ていってしまいました、
なぜかアンバーまで、仲間みたいにあとに続いています。
いいのかなぁ?
ロッテは横目でリリーを覗きこみました。
リリーを見ると、リリーは澄ました顔でお茶を飲んでいます。
リリーはナオ達に身分を明かしませんでしたが、その正体はリリアナ・メンドーサ・マクギネス公爵令嬢にして、現王太子殿下の婚約者です。
つまりリリーは将来は王妃様になる訳で、その兄であるアンバーは当然未来のマクギネス公爵閣下なのです。
そんなアンバー公子が、壁外出身の若者たちと仲間みたいにつるむというのは、本来はいけないことだと思うのですが……
けれどもロッテはリリーがあまりにも平然としているので、ともかくはまぁいいことにしてしまいました。
一方、ナオ達にとっては、すでにアンバーはただの友達として認識されてしまったのです。
「お兄さま。王立図書館の幽霊の間って、クレメンタイン公爵家が買い上げたんですよね? あそこでカフエができませんかね。 家賃タダだし、水回りも完備しているし、業務用に改造しても改造費は安いでしょ。コーヒーなら匂いにつられて6階まで人がくるかも?」
ナオはその提案に心が躍りました。
王都みたいな街は家賃が高いことで知られています。
いくらセディの援助があるからと言って、高い家賃を払ってカフェをやればとても宰相閣下が期待するような利益なんて出せるとは思えません。
ナオはメイド喫茶で働いていましたから、店長が家賃や人件費で四苦八苦していたのを見て知っていたのです。
「それ面白いんじゃないか? 私はあんまり本を読む方じゃないけど、カフェで本読んだり勉強しているやつけっこういたよ」
ナオは嬉しそうにロッテの提案に賛成しましたが、ロッテの仲間たちは図書館とカフェという組み合わせに納得がいかないようです。
喫茶店というのは、人通りの多い街中にあって、歩き疲れた人が休息に使うものだと思っているようでした
それなら一度王立図書館の幽霊の間を見てから考えようと、ナオと仲間たちはひとまずクレメンタイン公爵家が所有しているという幽霊の間を見に行くことにします。
図書館へいく途中で役所によって、戸籍の申請をすれば一石二鳥ではありませんか。
「おい、役所はここみたいだぞ」
「ふぇー。立派な建物だなぁ」
「入り口に兵士がたっているけど、大丈夫なのか」
「大丈夫だって。こっちには宰相閣下が認めて下さった仮戸籍があるんだからな」
「ちょっと。みんなが見てるじゃない。恥ずかしいから黙って!」
たかが役所への届け出。
しかも、提出するだけの書類を用意してもらっているというのに、カムイたち一行はドギマギ、ギクシャクと役所に入っていきました。
警備兵に止められなかったのは、メイドさんたちに着せられた新しい服がかなり上等だったからでしょう。
役所に入ってきょろきょろしていると、グレーのプリンセスラインのワンピースを着た女性がにこやかに声をかけてきました。
「お手伝いいたしましょうか?」
「はい、助かります。私たち戸籍の届け出にきたんです」
ナオがほっとした顔で、仮戸籍を取り出して見せましたが、その印章をみるなり女性の顔はみるみるうちにこわばってしまいました。
「大変失礼いたしました。ご案内いたします。どうぞこちらに」
ナオ達は役所の2階にある豪奢な応接室に通され、ほとんど待つことなく偉そうな男の人が飛び込んできました。
「ご連絡を頂ければ、私共の方から係の者を派遣いたしましたのに、わざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。私はこの役所の責任者を致しておりますトビィ・アンドリュー・グプタでございます」
ナオたちはあっけにとられてしまいました。
家名持ちってことは、貴族かさもなければナイトの位階を持っている人に違いありません。
それがナオたちみたいな平民どころか戸籍も持たないような子供たちに頭を下げるんですから。
けれどもすぐにカムイは、これは自分達ではなくクレメンタイン公爵家の威光だと気がつきました。
「いいんです。さきほど宰相閣下から馬車を出すと言われたのですが、僕たちは町を歩いてみたかったしそのついでにこちらに寄ったのですから」
「おぉ。宰相閣下直々にこちらの書類を渡されたのですか。それはそれは。戸籍の登録場所がクレメンタイン公爵家の離宮となっておりますが、皆さま方は公爵家とはそのう……」
どうやらお役人はナオたちと公爵家の関係を知りたいようです。
もしかしてこの子たちは、公爵の隠し子なのでしょうか?
それともここにいる女性が、公爵家の誰かの愛人ってことだって考えられます。
わからないのは、なんで5人もそろって離宮に住まわせることにしたのかということです。
ともかくもこの書類にはクレメンタイン公爵家の認証がありますし、しかも住まいもクレメンタイン公爵家の離宮なのですから、丁寧に扱っておくにかぎります。
「あぁ、ここにいるナオがもう1人の異界渡りの姫君なんだ。この姫君は少し変わり者でね。市井で暮らしたいと希望されたので、僕らが側近として選ばれたんですよ」
「なんと! 異界渡りの姫君がもう一方おいでとは!」
役人の目はキラリと光ました。
うまくナオを取り込もうとでも思ったのでしょうか。
「あぁ、言っとくけどナオさまは既にプレシュス辺境伯が正式に猶子とされています。クレメンタイン公爵家も非公式ながら後ろ盾を表明しているから、これ以上の庇護は必要ないわよ」
シリルがそんな役人の願望をすぐさま打ち消してしまいました。
こうしてナオたちは役所で、下へもおかぬもてなしを受けたので愉快でたまりません。
王立図書館に入った時には、とっくに役所から連絡が入っていて、ナオ達はビップ待遇で図書館内や幽霊の間を案内されることになってしまいました。
そんなナオの姿は、成り上がろうとする人々にとってはまたとない獲物でしたから、図書館の中では既になんとかナオに取り入ろうとする人々が集まっていたのです。
これが貴族ならば平民から声をかけることなんて出来ませんし、貴族と知り合いたければ御大層な紹介状を手に入れる必要があります。
なのにナオはそんな人々の欲望の前に、哀しい程無防備な姿をさらしていますし、ナオを守る若者たちは貴族社会や上流社会の恐ろしさをまったくわかっていないのです。
ロッテやクレメンタイン公爵家が憂慮した事態は、すでにその口を開けていたのでした。
しかもナオが持つ、クレメンタイン公爵家にざまぁしてやろうというような、幼い稚気がナオの意思に反して大きなうねりになっていくことになります。
そんなこととは知らないナオたちは幽霊の間の設備に歓声を上げていました。
「うわぁー。凄い。業務用のオーブンが標準装備なんて信じられないわ」
「うん、水回りは完璧だね。これならすぐにでもカフェがはじめられるぞ」
「でも、少し狭くない?」
「あぁ、それならオープンカフェ方式にするといいのよ。どうせ図書館の中なんだもの。天候にも左右されないしね」
「オープンカフェって何よ!」
「お部屋の外に、テーブルや椅子を出して、そこにもお客様に座ってもらうのよ」
「おい、そんなことしていいのかよ」
「大丈夫よ。オープンカフェってお洒落なんだからね」
わいわい、がやがやと騒いでいるといつの間にかそんなナオたちの周りには人だかりができています。
「異界渡りの姫君がもう1人現れたんですってよ」
「その姫君がこちらでカフェを開かれるんですって」
「ナオさまとおっしゃるそうよ。気さくに平民ともお話なさるんですって」
「まぁ、ナオさま。私、カフェができたら常連になりますわ」
「あら、抜け駆けするなんてずるいわ。ナオさま、私こそ絶対にカフェを応援いたしますわ」
そんな応援の声を聞いて、ナオ達はもう上機嫌です。
これならきっと喫茶店は上手くいくでしょう。
大いに儲けて、あの偉そうな宰相閣下をぎゃふんといわせてやろうじゃありませんか。
ナオ達は、もうすっかり喫茶店が大成功する未来しか見えなくなっていました。
若いナオ達は知らなかったのです。
良く知らない相手に、真っ先に親切そうにすり寄ってくる人こそ、最も危険な相手であるということを。
ナオ達が上機嫌でクレメンタイン公爵家に帰宅すると、ロッテが吉報を聞かせてくれました。
図書館でカフェを開く許可を取るために、セディが図書館の本を守る術式を掛ければいいのではないか?というのです。
確かに図書館で火器を使うのですから、それぐらいのことをしないと王立図書館でのカフェの認可はおりないでしょう。
宰相閣下がセディさえ図書館防御の術式を展開することに同意すれば、カフェ設立の認可は取ってくれると言って下さったそうです。
それを聞いたナオたち5人は揃ってセディを見つめました。
「わかった。わかった! 降参だと。防御の術式ぐらいいくらだって作ってやるさ」
とたんにドッとナオ達が歓声をあげました。
「さすが。セディ」
「セディ、ありがとう」
「いよ! セディは男だね」
「セディは頼りになると思ってたわ」
「セディ、恩に着るぜ」
セディはナオたちにお礼を言われて照れています。
「いいから、いいから。兄貴には私から頼んでおくよ。明日は模様替えの為に業者にいかなきゃなぁ。今夜は自分達でカフェに必要なものを書き出しておけよ」
そう言ってセディはこの場から逃げ出してしまいました。
残ったロッテの側には美しい少女と凛々しい貴公子がいます。
それに気づいてナオが質問しました。
「あんたたち、誰?」
「ごめんなさい、自己紹介が遅れたわね。私はリリー、こちらが兄のアンバーよ。二人ともロッテの友達なの。なんだか楽しそうなことをしているわね。私たちもてつだうわ。」
そのリリーの言葉にかぶせるようにアンバーも言いました。
「図書館でカフェなんて、凄いアイデアじゃないか! 僕にも手伝わせてくれ。アンバーだ」
「ナオよ」
「アリスです」
「カムイだ」
「シリル」
「ソルだ」
彼等はあっという間に友達になると、家でカフェのことをもっと相談しようぜ!とぞろぞろと図書館を出ていってしまいました、
なぜかアンバーまで、仲間みたいにあとに続いています。
いいのかなぁ?
ロッテは横目でリリーを覗きこみました。
リリーを見ると、リリーは澄ました顔でお茶を飲んでいます。
リリーはナオ達に身分を明かしませんでしたが、その正体はリリアナ・メンドーサ・マクギネス公爵令嬢にして、現王太子殿下の婚約者です。
つまりリリーは将来は王妃様になる訳で、その兄であるアンバーは当然未来のマクギネス公爵閣下なのです。
そんなアンバー公子が、壁外出身の若者たちと仲間みたいにつるむというのは、本来はいけないことだと思うのですが……
けれどもロッテはリリーがあまりにも平然としているので、ともかくはまぁいいことにしてしまいました。
一方、ナオ達にとっては、すでにアンバーはただの友達として認識されてしまったのです。
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
「お遊戯で子を育てるな」と追放された宮廷養育係——前世の保育士が作った遊びの教育を、王立学院が丸ごと導入した
歩人
ファンタジー
「子供に歌を教え、絵を描かせ、庭で走り回らせる——それが教育だと? ふざけるな」
侯爵令嬢マリカは婚約者にそう嘲笑され、宮廷養育係の職を解かれた。
前世で保育士だった彼女が行っていたのは、遊びに見せかけた発達支援プログラム。数を数える鬼ごっこ、言葉を覚える歌遊び、協調性を育む共同制作——子供たちは「楽しい」と笑いながら、同年代の二年先を進んでいた。
マリカが去り、旧来の家庭教師が戻った途端、子供たちは勉強を拒否し始めた。
王立学院の入学試験で辺境の子供たちが首席を独占したとき——「お遊戯」の本当の意味が明かされる。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。